歳時記カフェ

青西瓜

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【19 1月18日 初観音】

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・【19 1月18日 初観音】


 私もテイもお風呂から上がって、二人とクラでこたつの中に入って座っている時に、テイがこう言った。
「ところで今日は歳時記としてはどんな日なの?」
「今日は初観音だよ」
 と私が答えると、即座にテイが、
「どういう日なの?」
「毎月18日は観音様と御縁を結び縁日で、1月はそれの始めで初観音。観音様は人々の願いを叶えてくれる仏様で、変幻自在に、三十三種類の姿に変身ができて、その人に合った姿になって、救ってくれるんだってさ」
 と言ったところでクラが挙手したので、何だろうと思っていると、
「僕、何か急に三十三種類の何かに変身できそう!」
 と言ってきたので、私は、
「何それ、クラが私たちにとっての観音様ということ?」
「そうなっちゃうねっ」
 と言って照れたクラ。
 するとテイが、
「でも確かにそうかもしれない。俺はクラに助けられてきたしな。早速何かに変身してほしい」
 と言って、テイって何だかんだで私のことよりもクラのことのほうが信頼しているよね、とちょっと嫉妬してしまうと、クラがぴょんっとテーブルの上に乗って、座禅を組むと、もくもくと煙が出てきた。
 その煙がお香というか、どこかちょっと柑橘系の甘い香りで、マジで仏様系統っぽいと思っていると、なんとテイの頭上から何かが生え始めてきて、じっと見ていると、クラの頭にお花が咲いた。
 いや、
「クラはクラのままなんだ、いやまあそっちのほうが安心だけども」
 テイはクラから出た煙を嗅いで、
「うん! すごく良い香り! 何だか心がいつもより落ち着いてきた! これはすごい効能だ!」
 と言ったんだけども、この香り、そしてクラが頭上に咲かせたこの白い五弁の花、まさしく、
「オレンジフラワーだよね、クラ」
「そうかもしれない」
 と頷いたクラ。
 テイは頭上に疑問符を浮かばせながら、
「オレンジフラワー?」
 と言ったので説明することにした。
「これはその名の通り、果物のオレンジの花で、乾燥したモノはアロマテラピーによく使われるよ。テイの心が落ち着いた通り、気持ちを和らげる効能があるよ」
「だからかぁ」
 と納得したような顔をしたテイ。
 でも何故、オレンジフラワー……と思っていると、クラが、
「じゃあ次にいくね!」
 と言って、そう言えば三十三種類と言っていたなぁ、と思っていると、またクラから煙が出たと思ったら、クラの頭上のオレンジフラワーが一旦枯れて、というかまんま乾燥したオレンジフラワーになってテーブルに落ちて、今度はマリーゴールドが咲いた。
 テイは嬉しそうに、
「これは俺でも分かるよ、マリーゴールドだ」
 私も頷きながら、
「そうだね、マリーゴールドだね。ちなみにマリーゴールドは蚊除けになるらしいね、そういう香りがあるみたい」
 と補足をすると、テイは何だか楽しそうに相槌を打った。
「じゃあ次にいくね!」
 と全く同じことを言ったクラは、また煙を出して、頭上のマリーゴールドが枯れて乾燥したモノになったところで、私はもしやと思ってしまった。
 もしクラがこっちの指定したモノになれたら、そのモノがさっきのオレンジフラワーやマリーゴールドのようにちょっと残るのでは、と。
 乾燥したモノが残っているから、乾燥している状態でも高価なモノならそれが手に入るのでは!
 私がウキウキしているということは、多分クラもテイも露知らず、クラは頭上にカモミールを咲かせた。
「こちらも良い香りっ」
 と笑ったテイ。
 いやいやそれよりもすごいことが起きるぞ、これは、と思いながら、
「クラ、これって私が指定したモノにもなれるの?」
「何かできる気がする。だってその人に合った姿に変身するものだから、観音様は」
「それなら! エメラルドになれるっ? 緑色の宝石!」
 その言葉にテイがちょっと目を丸くしながら、
「宝石ってそんな! 寧を引き立てるアイテムのことだね!」
 と声を上げて、こんなことを言った私を許容してくれていて優しいと思った。
 クラはうんうん頷いて、
「できるよ!」
 と言って煙を出した時に”この煙は鉱山の砂埃か?”と思ったけども、妙に良い香り、というかマスカットのような甘い香りで、まさか、と思っていると、私が思った通りに、まるで線香花火が光っているような白い花、エルダーフラワーになった。
「なってない!」
 と声を出してしまった私。
 でもテイはそんなことより花綺麗ってような顔をしながら、
「このお花は?」
「エルダーフラワーだよ! エメラルドじゃない! ほんの少しだけ語感が似ているけども全然違うよ!」
 テイはニコニコしながら、
「でも鼻がスース―してきたような気がするよ」
「エルダーフラワーは風邪やインフルエンザにも利くって言うからね! じゃあもうこれはいいや! サファイアになれるっ? 宝石の! 青いヤツ!」
「できるよ!」
 そう言ってサムズアップしたクラ。いや元気だけどもさっきはできなかったじゃん。
 またクラが変化していくと、それはもうまごうことなきヒマワリで。
「サファイアじゃなくて! サンフラワーだ!」
 と声を荒らげてしまった。
 でも何だかクラはどんどん優しい表情になっていって、微笑むだけだ。観音様になってきた?
 ならば今こそ成功するかもしれない!
「クラ! パールになって! 真珠のことだよ!」
「できますよ」
 自信満々にそう言ったクラはパッションフラワーを咲かせた。
「またちょっと落ち着くなぁ」
 そう言ったテイに私はワナワナ震えながら、
「パッションフラワーは緊張を緩和する効果、あるからね……」
 と言ったところでテイが私に向かって、こう言った。
「観音様って、その人に合ったモノに変身するんでしょ? つまり寧にはお花が一番似合うということなんだよ!」
 クラは同調するように、
「そういうことです」
 と何かちょっとエコーが掛かった、マジモンの仏様みたいな声でそう言った。
 そっか、そうかぁ……私は宝石じゃないのかぁ……とがっくり肩を落としてしまうと、テイが私に向かってこう言った。
「やっぱり寧は宝石のような硬さよりも柔軟で何よりも生き生きと生きている感じが良い、お花なんだね。俺とクラと一緒に瑞々しく生きていこう!」
 何かこういうポジティブな言葉を聞いたら、宝石なんていいかと思えてきて。
 そもそもテイとクラと一緒にいられるだけで楽しいもんね。
「ありがとう、テイ。じゃあ集まったお花のハーブでハーブティでもいろいろ作ろうっか」
 結局その後、全三十三種類、全てお花で、ハーブとして使えるお花はハーブティにして、三人でしっとりと飲んだ。
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