歳時記カフェ

青西瓜

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【28 1月27日 雨情忌】

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・【28 1月27日 雨情忌】


 お風呂上がり。
 こたつに座ってまったりしているテイに、この前のカラオケで、なんとなくテイが童謡のことを好いていることは分かったので、今日が野口雨情の忌日である・雨情忌だと話すと、テイは饒舌に喋り出して、今ここ。
「やっぱりシャボン玉が最大のマスターピースだと思うんだけども、俺は七つの子も好きだよねぇ! でも忘れちゃいけないのが十五夜お月さんね! いやぁ、野口雨情さんの詩は最高だよねぇ!」
 ずっと同じようなことをペラペラ語っている。
 勿論内容に触れている時もあるけども、基本はこのあたりのことを繰り返し、でも感嘆しながら、感情を込めて言ってる。
 私は正直、童謡はあんまり好きじゃないので、あしらうように、
「童謡のどこがいいの?」
 と言うと、テイがこちらをガッと見てきて、
「童謡は環境と感情なんだ!」
 と声を上げて、何か私的には興味をそそるフレーズ出たな、と思って、
「どういう意味なの?」
 とさっきよりは人間味のある声で聞くと、またテイが早口に喋り出した。
「童謡は特に詩が良くて、この日本文化という環境に詩人の感情が乗っかって、まだ見ぬ言葉が生まれるんだよ! そりゃ日本人は昔から慣れ親しんでいるからまだ見ぬ言葉という俺の言葉に違和感があるかもしれないけども! 異世界から来た人間にとっては全てが新鮮な言葉・フレーズ! それが何度聴いても染み渡る、否、聴けば聴くほど没入していくんだ!」
 詩、ね。
 つまりポエムか。
 まあ確かに童謡の子供っぽさって、曲調に起因する部分が大きいもんね。
 子供の音楽と思っていたけども、詩に注目するという点は私に無かった視点かも。
 というか、
「テイは詩が好きなんだね」
「そう! 童謡の詩にはどこか切なさがあって、そこが美しいんだ! 野口雨情さんは詩人だし!」
「そっか、テイはポエマーが好きなんだ」
 と言いつつ私はちょっと笑ってしまった。
 だってポエムって、日本人的にはあんまり好まれない趣味だから。いわゆる黒歴史ってヤツで、まあ私もノートに書いたことあるかもだけども、まさしく”ソレ”で。
 でもテイは大真面目といった感じに、こう叫んだ。
「ポエマーと言ってくれるなんて最高だ! 俺は真のポエマーになりたいよ! だって言語が文化的に発達した社会じゃなきゃ存在しない呼び名だもん!」
 そんな考え方あるんだ、と同時に、バカにした目線を持っていたこと、少し反省した、顔をしたのだろう、テイが私の顔を見ながらこう言った。
「どうしたの? 何かちょっと元気が無いけども」
 どうしよう、日本ではポエマーってちょっとバカにされてる意味合いの説明をしようかな、と思ったその時だった。
 クラがこたつから飛び出して、こう言った。
「つい寧のことが知りたくて、読心魔法を使っちゃったんだけども、ポエマーって日本ではバカにされているらしいよっ」
 私はクラの読心魔法という言葉に驚愕し、テイはポエマーがバカにされていることに多分目を丸くしている。
 先に声を出したのは私だった。
「ちょっとクラ! 人の心の中を読むって良くないことだからね!」
 するとクラが自信満々にこう言った。
「いいや、こういう趣味をバカにする目線のほうが悪いと思う!」
「それはその! 結果論でしょ! 結果的に私がバカにしていたということで、まずスタートとして心の中を読んじゃダメなんだって!」
「寧のことが知りたくて、つい」
 と、てへっと舌を出したクラ。
 可愛いけども、全然可愛くない。
 とにかく!
「今後は禁止だからね! 心の中を読むことは! あと感情の身代わりも! ついでに今言っとくけども! 何か似てるから!」
「分かったよ~」
 とゆるく笑いながらサムズアップしたクラ。
 いや絶対またする気じゃん、何かあったらする気じゃん、本当クラったら、こんな時は動物感たっぷりなんだから。
 と、ずっとクラのほうを見ていたんだけども、ふとテイのほうを見ると、青ざめるように震えていて、わっ! と思ってしまい、
「テイ! その! 一般論! これは一般論なの!」
 と慌てると、テイは俯きながら、
「日本人はみんな言語感覚に優れているという自慢かい……? 今更、詩人程度ということかい……?」
 とブツブツ言い始めた時に、確かに何かその気はあるかもと思ってしまった。
 日本人は文字を使ったSNSが好きだ。特に年上は写真や動画よりも、文字のSNSのほうを使っている。
 それは多分自分の言語センスに自信があるということかもしれない。
 テイは続ける。
「詩人を舐めないでほしい。その程度を詩と思わないでほしいという気持ちは常々あるよ。正直動画コンテンツを見ていて分かっていたよ、日本人が詩人をバカにしていること。でもまさかこんなちゃんと知るなんて……寧と言っていることは間違いないから……」
「ちょっと、落ち込みつつ、私に強い信頼感を感じさせないでよ、いやいいけども。確かに日本人は詩人をバカにしているところはあると思う。でも私はさっきテイの言ったことで反省したんだ、反省してたんだよね? 私は」
 とクラのほうを見ると、クラはプイッとしてから、
「読心魔法使わないので分かりませ~ん」
 と言って、なんて役に立たないんだ、と思ってしまった。
 いやもうここはちゃんと言うしかない。
「詩人が文化的に発達した社会じゃなきゃ存在しない呼び名ってテイが言ったでしょ? それに私は納得したの! そういう考え方もあるんだって! 識字率が高いことも日本の特徴だし、それを肯定的に捉えてくれるって日本人として嬉しいよ! 本当に!」
「そう……」
 と言いながら、ゆっくりこたつのテーブルにアゴをつけて、ぐでっとしたテイ。
 ヤバイ、テイのこと本気で傷つけてしまった。
 こんなこと今まで無かったから、どうすればいいか分からない。
 そっか、そうだよね、自分の好きなモノを否定されたら誰だってそうだよね。
 何でそんなことに気付かなかったんだろうか。
 ポエムはバカにしていいものって、何か勝手に決められていて、そのままその流れにアホみたいに乗っかっていて。私ってバカみたいだ。いいやバカだ。
 こんな悲しみは雨になって流れてしまわないものか、雨情だけに、なんて、この程度のポエムのせいで詩がバカにされてしまっているんだ。
 結局この日は、その後あんまり盛り上がらず、それぞれ眠りについた。
 私とテイはいつも二階の別々の部屋で寝ている。
 明日、いつもの顔で挨拶できればいいんだけども。
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