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【27 1月26日 ちぢみほうれん草】
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・【27 1月26日 ちぢみほうれん草】
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昨日、常連さんから大量のちぢみほうれん草をもらったので、今日はちぢみほうれん草フェアだ。
朝からいろんな料理を作っている。
テイがふと声を漏らした。
「日本っていろんな種類の料理があるねぇ」
「いやそうじゃなくて。日本はいろんな種類の料理を無国籍に食べていく文化なんだ」
「無国籍に食べていくって?」
「日本人は食に旺盛だから、各国の料理を取り入れているんだ。元々の日本文化で言えば、このおひたしと茶碗蒸しくらいだよ」
と言いながら私はおひたしと茶碗蒸しに使う出汁を昆布から取り終えた。
テイは目を丸くしながら、
「じゃあこのキッチェというものは元々日本の料理じゃないんだっ」
「そう、言葉だけでは分かりづらいけどもカタカナの料理は基本的に海外の料理だよ」
テイはキッチェに使う卵液を混ぜながら驚いている。
するとオーブンの前でじっと中を見ているクラが、
「というとこのパウンドケーキも日本の料理じゃないんだね」
「そういうこと」
クラは感心するように頷いた。
テイはう~んと唸ってから、
「日本人ってあんまり統一感とか気にしないほう?」
「そうかもしれないね。異国のイベントをすぐに取り入れちゃうし。それはまあ業者側の策略みたいなのもあるけどね」
「柔軟なんだなぁ」
とほっこりしながら言ったテイ。
いや日本文化にも甘々なんだ、と思った。
でもまあ確かに、
「私も日本のそういうところ好きだよ、良いものは何でも取り入れちゃうところ」
「寧、俺のことも取り入れてくれて有難う」
「取り入れるとかじゃないよ」
するとクラがこっちを見て、
「僕のことも取り入れてくれて有難う」
「生命に取り入れるという言葉使わないからっ」
とツッコむように言っておいた。
さて、そろそろおひたし用のちぢみほうれん草を茹でるかとなった時に、テイが、
「そう言えばちぢみほうれん草って、普通のほうれん草よりも甘いけども品種が、ってこと?」
テイはパウンドケーキに混ぜる時に、まず味見していたので、ちぢみほうれん草の味を知っている。
というかちぢみほうれん草のほうが甘いって分かって、ちゃんとしているなぁ。
「ちぢみほうれん草はね、あえて寒さにさらすことで甘くなるんだ」
「えっ? 俺は温かい場所で一緒に暮らしたほうが甘くなると思うけどな」
「そういう人間的な要素で甘くなるんじゃなくて、ほうれん草は自身の凍結を防ぐために葉が縮まって、水分が減って、糖分や栄養が増えていくの」
「つまり脂肪を付けて体を熱くするみたいなことか」
「人間で例えるとそうなるね」
でもテイは納得いっていない感じで、
「だけど俺はやっぱり優しい言葉を掛けて、温室でまったりしてあげたいよ」
「そうなったらほうれん草は水分たっぷりで糖分も栄養も無い感じになると思うよ」
「いやいや、それはどうかな。まず言いたいことがあって」
と言って呼吸を整えたテイ。
一体何だろうと思っていると、テイが口を開いて、こう言った。
「いろんな料理を知っていて寧はすごい! 手順もしっかりしているし、これからもご教授よろしくお願いします!」
「いや、私への優しい言葉はいいんだってば。ちぢみほうれん草の話だと思っていたのに」
「俺にとっては寧が一番大切だ!」
そう力強く宣言するように言ったテイ。
いや、
「そういう話はいいから。料理をやっていこうよ」
そんな会話をしながら、料理の準備を進めていった。
パウンドケーキが焼き上がったので、まずクラが味見をすることにした。
「ふわふわで、優しい甘さだなぁ。美味しいよ。ちぢみほうれん草の青っぽさが嫌じゃないというか、香りがクセになるよ。爽やかな緑って感じ」
おひたしも一応は完成したので、クラの前に皿を出しながら、
「まだ染み込んではいないから出汁と絡ませながら食べてね」
と私が言うと、クラはすぐさま肉球から五本指になって、箸で食べ始め、
「出汁の旨味とちぢみほうれん草本来の甘みが合わさって、すごく美味しいよ。ちぢみほうれん草のしんなり具合が食べやすくて喉通りがいいよ」
試しに一回作った茶碗蒸しも取り出し、それはテイが食べることになった。
「うん、昆布の出汁に干し椎茸の戻し汁も入れているから旨味は抜群。ちぢみほうれん草の染みてる感じも美味しいし、ちぢみほうれん草は柔らかいから他の具材とも絡んで、別の具材と一緒に食べるごとに新しい発見があるというか。一緒に入ってるゴボウやこんにゃくも美味しい、食感がまた違うから食べるごとに楽しみがある」
キッチェは作り慣れているし、まだ焼くには早いので、卵液だけで止めているけども、おおむね良い感じみたいだ。
テイもクラも笑顔で食べてくれていて、作ったかいがあったというものだ。
確かに私はちぢみほうれん草と違って、こういう甘々な空間のほうがいいなぁ、と思った。
・【27 1月26日 ちぢみほうれん草】
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昨日、常連さんから大量のちぢみほうれん草をもらったので、今日はちぢみほうれん草フェアだ。
朝からいろんな料理を作っている。
テイがふと声を漏らした。
「日本っていろんな種類の料理があるねぇ」
「いやそうじゃなくて。日本はいろんな種類の料理を無国籍に食べていく文化なんだ」
「無国籍に食べていくって?」
「日本人は食に旺盛だから、各国の料理を取り入れているんだ。元々の日本文化で言えば、このおひたしと茶碗蒸しくらいだよ」
と言いながら私はおひたしと茶碗蒸しに使う出汁を昆布から取り終えた。
テイは目を丸くしながら、
「じゃあこのキッチェというものは元々日本の料理じゃないんだっ」
「そう、言葉だけでは分かりづらいけどもカタカナの料理は基本的に海外の料理だよ」
テイはキッチェに使う卵液を混ぜながら驚いている。
するとオーブンの前でじっと中を見ているクラが、
「というとこのパウンドケーキも日本の料理じゃないんだね」
「そういうこと」
クラは感心するように頷いた。
テイはう~んと唸ってから、
「日本人ってあんまり統一感とか気にしないほう?」
「そうかもしれないね。異国のイベントをすぐに取り入れちゃうし。それはまあ業者側の策略みたいなのもあるけどね」
「柔軟なんだなぁ」
とほっこりしながら言ったテイ。
いや日本文化にも甘々なんだ、と思った。
でもまあ確かに、
「私も日本のそういうところ好きだよ、良いものは何でも取り入れちゃうところ」
「寧、俺のことも取り入れてくれて有難う」
「取り入れるとかじゃないよ」
するとクラがこっちを見て、
「僕のことも取り入れてくれて有難う」
「生命に取り入れるという言葉使わないからっ」
とツッコむように言っておいた。
さて、そろそろおひたし用のちぢみほうれん草を茹でるかとなった時に、テイが、
「そう言えばちぢみほうれん草って、普通のほうれん草よりも甘いけども品種が、ってこと?」
テイはパウンドケーキに混ぜる時に、まず味見していたので、ちぢみほうれん草の味を知っている。
というかちぢみほうれん草のほうが甘いって分かって、ちゃんとしているなぁ。
「ちぢみほうれん草はね、あえて寒さにさらすことで甘くなるんだ」
「えっ? 俺は温かい場所で一緒に暮らしたほうが甘くなると思うけどな」
「そういう人間的な要素で甘くなるんじゃなくて、ほうれん草は自身の凍結を防ぐために葉が縮まって、水分が減って、糖分や栄養が増えていくの」
「つまり脂肪を付けて体を熱くするみたいなことか」
「人間で例えるとそうなるね」
でもテイは納得いっていない感じで、
「だけど俺はやっぱり優しい言葉を掛けて、温室でまったりしてあげたいよ」
「そうなったらほうれん草は水分たっぷりで糖分も栄養も無い感じになると思うよ」
「いやいや、それはどうかな。まず言いたいことがあって」
と言って呼吸を整えたテイ。
一体何だろうと思っていると、テイが口を開いて、こう言った。
「いろんな料理を知っていて寧はすごい! 手順もしっかりしているし、これからもご教授よろしくお願いします!」
「いや、私への優しい言葉はいいんだってば。ちぢみほうれん草の話だと思っていたのに」
「俺にとっては寧が一番大切だ!」
そう力強く宣言するように言ったテイ。
いや、
「そういう話はいいから。料理をやっていこうよ」
そんな会話をしながら、料理の準備を進めていった。
パウンドケーキが焼き上がったので、まずクラが味見をすることにした。
「ふわふわで、優しい甘さだなぁ。美味しいよ。ちぢみほうれん草の青っぽさが嫌じゃないというか、香りがクセになるよ。爽やかな緑って感じ」
おひたしも一応は完成したので、クラの前に皿を出しながら、
「まだ染み込んではいないから出汁と絡ませながら食べてね」
と私が言うと、クラはすぐさま肉球から五本指になって、箸で食べ始め、
「出汁の旨味とちぢみほうれん草本来の甘みが合わさって、すごく美味しいよ。ちぢみほうれん草のしんなり具合が食べやすくて喉通りがいいよ」
試しに一回作った茶碗蒸しも取り出し、それはテイが食べることになった。
「うん、昆布の出汁に干し椎茸の戻し汁も入れているから旨味は抜群。ちぢみほうれん草の染みてる感じも美味しいし、ちぢみほうれん草は柔らかいから他の具材とも絡んで、別の具材と一緒に食べるごとに新しい発見があるというか。一緒に入ってるゴボウやこんにゃくも美味しい、食感がまた違うから食べるごとに楽しみがある」
キッチェは作り慣れているし、まだ焼くには早いので、卵液だけで止めているけども、おおむね良い感じみたいだ。
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確かに私はちぢみほうれん草と違って、こういう甘々な空間のほうがいいなぁ、と思った。
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