歳時記カフェ

青西瓜

文字の大きさ
26 / 46

【26 1月25日 初天神】

しおりを挟む

・【26 1月25日 初天神】


 なんとなくお風呂場で反芻する。
 今日は初天神の話をテイとクラにした。
 天神様は毎月25日が縁日で、その今年初めての日が1月25日だから初天神。
 何で25日になったか、それは菅原道真が2月25日にお亡くなりになったから。
 菅原道真は学問の神様で(それを天神様と言う)平安時代の政治家であり、学者。
 死後、生前の功績が認められて、今は学問の神様と祀られている。
 人間から神様になるなんてすごいなぁ、と思っていると、居間のほうからテイとクラの叫び声が聞こえてきた。
 何だろうと耳を澄ますと、何か揉めているようで。
 一瞬私の元カレが押しかけてきたのでは、と思い、青ざめた。
 でもテイは元勇者っぽいし、きっと大丈夫なはずと思いつつも、元カレがあることないこと言ったら……と思ったら、もう立ち止まることができず、私は急いでお風呂から出てきて、体を拭いて、服を着替えて、脱衣所を飛び出した。
「どうしたの! テイ! クラ!」
 居間に戻ってくると、テイの肩に乗って、テイの頬をグイグイ引っ張るクラがいた。
 どうやら元カレ案件じゃなくて、ホッとしていると、クラが声を荒らげた。
「寧は僕のことのほうが好きでしょ!」
 するとテイがかなり余裕ありげにこう言った。
「いいや、寧は俺のほうが好きに決まっているよ」
 すぐさまクラが、
「そんなことない! 僕のことを可愛いと思っているよ!」
「いいや! 俺のことをカッコイイと思ってくれているよ!」
 と、何かしょうもないこと言って、張り合っていたのでちょっと笑ってしまうと、
「「真剣!」」
 と叫んで、私は口を押えた。
 まあ、まあまあ、と思いながら私がこたつの中に足を入れたところで、テイが、
「今、学問の神様の初天神ということもあって、クラと寧検定を出し合っていたんだ」
「寧検定って何?」
 とついオウム返しをしてしまうと、クラが大きな声でこう言った。
「テイと交互に寧のクイズを出し合って、答え合っていたんだよ!」
 この二人、暇だなぁ、と思いながら一応相槌を打っていると、テイがテーブルをバンと叩いて「おぉっ」とつい声を漏らしてしまうと、
「寧はどっちが好きかという問題をクラが出してきて! 俺! と答えたら! クラはクラと答えたんだよ!」
 即座にクラがテーブルに飛び乗って、私の顔の真ん前に来て、
「だってそうだよね! 寧はクラのほうが好きだよね!」
 と唾飛ばすくらいの勢いでそう言ったので、ちょっとだけ上半身を仰け反ってから、
「そんな、どっちも好きだよっ」
 と答えると、テイが口を大きく開いて叫んだ。
「どっちか決めてくれよ! 俺だろ!」
「いいや僕だ!」
 とかなりヒートアップしている様子。
 どうやら私がいない間にだいぶ言い合ったみたいで、もう二人の熱量がえらいことになっているらしい。
 困ったなぁ、と思ったけども、まあこう言えば収まるだろうと思って、言うことにした。
「それはね、酸素が大切かご飯が大切か言っているようなことなの。二人とも私にとっては欠かせない存在なの。どっちが好きとか無いよ。二人とも大好きだよ」
 よっしゃ、決まったと心の中でガッツポーズしていると、テイとクラがそれぞれこう言った。
「で、どっちが酸素でどっちがご飯?」
「僕が酸素だと思う」
「いいや酸素が俺だ」
「ううん、僕が酸素」
 どうやら二人にとっては酸素のほうがだいぶ上らしい。
 何かご飯食べなくても生きていける魔法とかあんのかな?
 まあもういい、それならもういい、
「そもそも寧検定なんでしょ? 検定ということは上限の点数が決まっていて、両方満点をとっている状態なの。検定という枠組みなら同率一位にするしかないんだってば」
 あえて今やっている設問の答えからはズラしてそう答えた。
 こういう政治家が使うような巧妙なズラしには二人はついていけないと思ったからだ。
 するとテイが、
「まあ同率一位か、それならまあしょうがないか。検定って百点満点だしな」
 クラもうんうん頷きながら、
「そうだね、両方百点だったらしょうがないね、それが検定というものだね」
 良かった、微妙にズラしたことに気付いていない。
 納得してくれて良かったと思うと同時に、やっぱりこういうズラしはあんまり正しくないよね、とも思った。
 まあ今日のところは使わせてもらいました。
 でも今後はもっと一直線にテイとクラのこと褒めてあげようと思った。今回やっていた言い合いは全然褒められないけども。何だ、寧検定って、そもそも。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

踏み台(王女)にも事情はある

mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。 聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。 王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

あやかし家族 〜五人の兄と愛され末妹〜

南 鈴紀
キャラ文芸
 妖狩りにより両親を奪われ、囚われの身となった半妖の少女・鈴音は浄化の狐火を利用するだけの道具のように扱われていた。呪いにより成長は止まり、容姿も思考も幼いまま、感情が消え失せてもなおただ生かされるままに生きていた。  しかし妖保護部隊本部第一部隊との出会いにより、鈴音の止まっていた時間が動き出す。  掴みどころはないが頼れる氏神・雅仁、兄には厳しいが弟妹には優しい狼の妖・千里、人間嫌いだが人当たりの良い振りが得意な人間・遥杜、可愛いもの好きで元気いっぱいの猫又・鴇羽、大人しいが思いやりに溢れる猫又・瑠璃。  五人の兄と過ごす時間の中で、無いものだらけだった鈴音にもやがて大切なものが増えていく。  妖×家族の心温まる和風ファンタジー。

【完結】非モテアラサーですが、あやかしには溺愛されるようです

  *  ゆるゆ
キャラ文芸
疲れ果てた非モテアラサーが、あやかしたちに癒されて、甘やかされて、溺愛されるお話です。 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

処理中です...