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【29 1月28日 初不動】
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・【29 1月28日 初不動】
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朝起きると、もうテイが起きていたらしく歯磨きをしている音が聞こえる。
歯磨きしている時に後ろから話し掛けるのも悪いので、洗面台での音が消えたところで、私はそそくさと歯ブラシを取りに行った。
するとテイの声がした。
「おはよう! 寧! 今日も可愛いね!」
テイはいつも通り過ぎて、何だか私は違和感を抱いてしまった。
いやそれでいい、というかそもそもテイはそんな引きずるほうじゃないので、これが当然なんだけども。
「今日はなんとかフェアとか無いよね! いつも通り頑張っていこう!」
そう言って一階へ降りて行ったテイ。
結局昨日のことをモヤモヤ考えてしまっているのは私だけで。
いつも通りすればそれで過ぎ去ることだとは思うんだけども、何かそれじゃいられない気持ちがあって。
歯を磨いて、着替えて、軽く化粧してから一階へ降りて行くと、もうテイが朝ご飯の準備をしていて。
「今日は目玉焼きでいいよねっ、昨日のサラダもあるし、あとは食パン今クラが焼いているから」
と言われてオーブントースターの前を見ると、クラが焼き上がりをじっと眺めていた、が、私が来るなり、
「おはよう、寧! 食パンは任せて!」
とクラもいつも通り。
何だかなぁ、と思うのは私自身の心へ、で。
テイが目玉焼きを皿に移して、こたつのテーブルに持ってきたところで、
「寧、今日は醤油にする? ソースにする? まあ両方持ってくるねっ」
と言ったところで私から出た言葉は、
「テイ、今日は初不動と言って不動明王の縁日なんだ。不動明王というのはその名の通り、どっしり構えて、何事にも動じない精神ということ。だからテイもそんな私に尽くす感じじゃなくて、今日はどんと構えてみたら?」
正直、私なんかに好き好き言ってもらうなんて、ちょっとおこがましいというか、そんなこと言われるほどの人間じゃないと思ってしまって、こんなことを言ってしまった。
テイは一瞬キョトンとしたんだけども、すぐさま、
「うん、分かった! 今日は初不動だからそうするよ! でもそれは今日だけだよ!」
そう笑って、醤油とソース、両方持ってきた。
いやだからその行動も、と思ったんだけども、そこまで言うのは重箱の隅をつつき過ぎなので、言うことは止めた。
三人で朝ご飯を食べ始めた。
私が目玉焼きに醤油を掛けたところで、テイがソースを掛けて、多分後出しというかなんというか、私が目玉焼きにどっち掛けるか待って、じゃないほうを掛けたんだなとなんとなく察した。
ちなみにクラは醤油とソースをちょっとずつ交互に掛けて、味の違いを楽しんでいた。まあクラは天然だろうけども。
食べ終えたところで食器をテイが下げて洗おうとしたので、
「後片付けは私がするよ」
と言うと、テイは素直にそれを受け入れて、テイは一旦二階へ行った。
大体いつも私のそばにいるのに、今日はいなくなるんだなと一瞬寂しく思ったけども、まあ私がそういうこと言ったし、と思って、じゃあいいかってなった。
クラはこたつの中に入って、私は片付けを終えたところで今日のカフェの準備をし始めた。
そのタイミングでテイがやって来たんだけども、その恰好に驚愕してしまった。
何故なら伊達メガネを掛けて、辞書を持っていたからだ。
何この、クールな不動ってこういうことでしょ? 感。
いやそういうことじゃないでしょ、多分。
テイは伊達メガネをやたらクイクイしながら、こっちへ近付いてきて、
「寧、俺は寧のこと大好きだよ」
と甘い声で言ってきて、ちょっ、おい、
「不動はどうしたの? 恰好も何なのって感じだし」
「今日はクールでいこうと思ってね、でも寧への気持ちはいつも通りさ。好きだよ、寧」
「クールが伊達メガネと辞書って何? アホ学生のイメージ・コスプレじゃん」
「寧ってさ、昨日のこと引きずってるでしょ」
と急に核心を突かれて、ドキッとしてしまうと、テイはフフッと笑ってから、こう言った。
「俺は全然気にしてないよ、反省しているとも寧は言っていたし。人はどんどん変わっていくからね。昨日の自分なんてもういないんだよ。それでも俺は毎日寧を愛す。何故なら寧のことが好きという気持ちは細胞レベルで変わらないからね」
「昨日のことは、本当にゴメンなさい。人の趣味を笑うって絶対ダメだもんね……私もやられたら嫌だしぃ……」
「つまり寧はいつでも成長できるってことだね! 俺も頑張って寧に負けないようにするよ!」
「まあ、そういう元気なところがテイの良いところでもあるけどさ、今日は不動なんじゃないの?」
と言うと、テイは辞書を開きながら、こう言った。
「不動だよ。辞書で調べたんだけども、ほら、不動ってつまり心の迷いを払うことなんでしょ? 俺は迷わずいつも君のことが好きなんだから、それでいいんだよっ」
明るいテイに触れていると、本当に気持ちも弾んでくるというか。
「ありがとう、テイ。私はもう大丈夫だから、じゃあ今日も楽しく好きって言い合おう。私も好きだよ、テイ」
するとテイは嬉しそうにバンザイしたので、一緒にハイタッチをした。
・【29 1月28日 初不動】
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朝起きると、もうテイが起きていたらしく歯磨きをしている音が聞こえる。
歯磨きしている時に後ろから話し掛けるのも悪いので、洗面台での音が消えたところで、私はそそくさと歯ブラシを取りに行った。
するとテイの声がした。
「おはよう! 寧! 今日も可愛いね!」
テイはいつも通り過ぎて、何だか私は違和感を抱いてしまった。
いやそれでいい、というかそもそもテイはそんな引きずるほうじゃないので、これが当然なんだけども。
「今日はなんとかフェアとか無いよね! いつも通り頑張っていこう!」
そう言って一階へ降りて行ったテイ。
結局昨日のことをモヤモヤ考えてしまっているのは私だけで。
いつも通りすればそれで過ぎ去ることだとは思うんだけども、何かそれじゃいられない気持ちがあって。
歯を磨いて、着替えて、軽く化粧してから一階へ降りて行くと、もうテイが朝ご飯の準備をしていて。
「今日は目玉焼きでいいよねっ、昨日のサラダもあるし、あとは食パン今クラが焼いているから」
と言われてオーブントースターの前を見ると、クラが焼き上がりをじっと眺めていた、が、私が来るなり、
「おはよう、寧! 食パンは任せて!」
とクラもいつも通り。
何だかなぁ、と思うのは私自身の心へ、で。
テイが目玉焼きを皿に移して、こたつのテーブルに持ってきたところで、
「寧、今日は醤油にする? ソースにする? まあ両方持ってくるねっ」
と言ったところで私から出た言葉は、
「テイ、今日は初不動と言って不動明王の縁日なんだ。不動明王というのはその名の通り、どっしり構えて、何事にも動じない精神ということ。だからテイもそんな私に尽くす感じじゃなくて、今日はどんと構えてみたら?」
正直、私なんかに好き好き言ってもらうなんて、ちょっとおこがましいというか、そんなこと言われるほどの人間じゃないと思ってしまって、こんなことを言ってしまった。
テイは一瞬キョトンとしたんだけども、すぐさま、
「うん、分かった! 今日は初不動だからそうするよ! でもそれは今日だけだよ!」
そう笑って、醤油とソース、両方持ってきた。
いやだからその行動も、と思ったんだけども、そこまで言うのは重箱の隅をつつき過ぎなので、言うことは止めた。
三人で朝ご飯を食べ始めた。
私が目玉焼きに醤油を掛けたところで、テイがソースを掛けて、多分後出しというかなんというか、私が目玉焼きにどっち掛けるか待って、じゃないほうを掛けたんだなとなんとなく察した。
ちなみにクラは醤油とソースをちょっとずつ交互に掛けて、味の違いを楽しんでいた。まあクラは天然だろうけども。
食べ終えたところで食器をテイが下げて洗おうとしたので、
「後片付けは私がするよ」
と言うと、テイは素直にそれを受け入れて、テイは一旦二階へ行った。
大体いつも私のそばにいるのに、今日はいなくなるんだなと一瞬寂しく思ったけども、まあ私がそういうこと言ったし、と思って、じゃあいいかってなった。
クラはこたつの中に入って、私は片付けを終えたところで今日のカフェの準備をし始めた。
そのタイミングでテイがやって来たんだけども、その恰好に驚愕してしまった。
何故なら伊達メガネを掛けて、辞書を持っていたからだ。
何この、クールな不動ってこういうことでしょ? 感。
いやそういうことじゃないでしょ、多分。
テイは伊達メガネをやたらクイクイしながら、こっちへ近付いてきて、
「寧、俺は寧のこと大好きだよ」
と甘い声で言ってきて、ちょっ、おい、
「不動はどうしたの? 恰好も何なのって感じだし」
「今日はクールでいこうと思ってね、でも寧への気持ちはいつも通りさ。好きだよ、寧」
「クールが伊達メガネと辞書って何? アホ学生のイメージ・コスプレじゃん」
「寧ってさ、昨日のこと引きずってるでしょ」
と急に核心を突かれて、ドキッとしてしまうと、テイはフフッと笑ってから、こう言った。
「俺は全然気にしてないよ、反省しているとも寧は言っていたし。人はどんどん変わっていくからね。昨日の自分なんてもういないんだよ。それでも俺は毎日寧を愛す。何故なら寧のことが好きという気持ちは細胞レベルで変わらないからね」
「昨日のことは、本当にゴメンなさい。人の趣味を笑うって絶対ダメだもんね……私もやられたら嫌だしぃ……」
「つまり寧はいつでも成長できるってことだね! 俺も頑張って寧に負けないようにするよ!」
「まあ、そういう元気なところがテイの良いところでもあるけどさ、今日は不動なんじゃないの?」
と言うと、テイは辞書を開きながら、こう言った。
「不動だよ。辞書で調べたんだけども、ほら、不動ってつまり心の迷いを払うことなんでしょ? 俺は迷わずいつも君のことが好きなんだから、それでいいんだよっ」
明るいテイに触れていると、本当に気持ちも弾んでくるというか。
「ありがとう、テイ。私はもう大丈夫だから、じゃあ今日も楽しく好きって言い合おう。私も好きだよ、テイ」
するとテイは嬉しそうにバンザイしたので、一緒にハイタッチをした。
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