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【30 1月29日 氷瀑】
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・【30 1月29日 氷瀑】
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お風呂も上がって、あとはこたつのある居間でまったりするだけだな、と思っていると、クラがこう言った。
「今日は歳時記としては、どんな日なの?」
そう言えば今日はまだその話をしていなかったなと思って、私はテイもいるこたつの中に座りながら喋り出した。
「水沢腹(あつ)く堅しって七十二候という季節の分け方では言うんだけども、この季節は沢の流れも厚く堅い氷になるって季節で、寒さの厳しい地域は滝も凍っちゃうんだって」
「滝が凍るなんて! 美味しそう!」
そう声を荒らげたクラ。
いや、
「美味しくはないよ、いや美味しいか? 綺麗な清水なら美味しいだろうけども、美味しさの話じゃなくて。そういう凍結した滝を意味する氷瀑(ひょうばく)を名物として、祭りにしているところもあるんだってさ」
するとテイが頷きながら、
「まあ美しそうではあるね、寧みたいに」
「私のような小さいサイズじゃなくて。もっと大きくて壮大らしいよ。ちなみに寒いと言えば今日は昭和基地開設記念日だね。まあ寒いなんてレベルじゃないけども」
「昭和基地って南極大陸だよね、きっと寧みたいに純真な生き物が清く生きているんだろうね」
「そこまで言ったら何か嫌味にも感じてくる」
「そんなことないよっ」
と会話していると、クラが急にこう言った。
「凍ると美しいんだぁ、じゃあ僕、いろんなモノを今から凍らせるよっ」
と言ったので、ん? と思っていると急にクラから凍てつく冷気が発生して、わわわわっ、と思っていると、テイが焦りながら、
「ちょっと! 家の中で冷気魔法は止め止め!」
でもクラからはどんどん、まるで吹雪のような雪の結晶も飛び出してきて。
「クラ! 家の中の氷瀑は全体的に小さいサイズだから美しくないよ!」
と私が的確にツッコんだつもりだったんだけども、もうクラは目を瞑って集中しているようで。
部屋の中はどんどん寒くなっていき、何だか窓のサッシが凍り出して、こたつの上のみかんもカチカチになっているような気がする。
試しに触れてみると、そのまま皮膚にくっつきそうで慌てて手を放した。
いつの間にかストーブは消えていて、まるで外にいるほどに凍え始めた体。
「クラ!」
と私が声を荒らげると、クラは眠そうに少しだけ目を開けて、
「あとは寧とテイで氷瀑を楽しんでねぇ~」
と言って、なんとそのまま寝てしまったのだ!
「テイ! どうすればいいの!」
「これは、一からストーブつけてあったまるしかないよ」
と言いながらテイはこたつから立ち上がってストーブをつけに行った。
私は『あっ』と思って、すぐさまキッチンの蛇口のほうへ行くと、案の定蛇口が固まっていて、水が出なくなっていた。
何か嫌な予感がして、IHキッチンにスイッチを入れようとしても、全然オンにならず、えぇーっと思っていると、テイが居間のほうから、
「ストーブ付かない!」
と言ってきて、完全に寒さによって不具合生じていると思った。
私とテイはとりあえずこたつの中に入って、一緒に震えていた。
テイがふと、といった感じにこう言った。
「俺、まだ夕ご飯食べてない、かも……」
「えっ、私がお風呂の時に何か食べるって言ってたじゃない?」
「つい見たいテレビが佳境で……」
「炊飯器の中のお米も、多分凍ってるよね」
と言いながら私は炊飯器があるキッチンへ見に行くと、その後ろをテイもついてきていて、一緒に炊飯器の中を見ると、
「……これ、水でさらせばいけそう」
「でもその水が無いんじゃ……」
「そうだ、冷蔵庫の中はどうかな?」
と言って私は冷蔵庫を開けると、冷蔵庫の中は普通に冷蔵状態で、
「茶粥ならいけるかも、何なら冷蔵庫の飲み物が一番温かいみたいな状態だろうし」
「茶粥?」
オウム返しするテイに、私は説明しながら調理を開始した。
「今日は簡易的だから厳密な茶粥とは違うんだけども、冷蔵庫に入れてる緑茶を半分凍ってるお米に入れて、そうすればお米もふやけるはずだし、あとは常備菜として置いている梅干しをスプーンで潰せば、はい、味付きの茶粥になったよっ」
「ちゃんと料理になってる! すごい! 寧!」
「まあちゃんとした料理にはなっていないけども。こうやって作れば洗い物も出ないし、そのままスプーンで食べてね」
「ありがとう! 寧!」
茶粥はこたつに持っていて、テイが食べ始めた。
「緑茶のサッパリとした香りと梅干しの酸っぱさが混じり合って、何か夏みたい!」
「すごい寒いけどね」
「やっぱり寒いよね……」
と急に肩を落としたテイ。
何だろうと思っていると、
「寧、温かくなるなら温かくなったほうがいいよね……」
「そりゃ勿論。せめてストーブ付けれるくらいにはなりたいよ」
「じゃあ寧、ちょっとだけ目を瞑っていてくれないかな?」
「目? 雪山で寝たら死んじゃうんだけども」
「すぐに暖かくなるから大丈夫」
「そんなことできるの! 魔法でっ?」
とつい言ってしまうと、テイは額から汗を吹き出しながら(こんなに寒いのに)
「魔法とかは分からないけども、何かできそうな気がするんだ!」
まだ魔法とか言えないことになっているんだ、テイの中では。
でもとにかく、
「なんでもいいからお願い! 目も開けないから!」
そう言ってテイのほうを向いて、ちょっと過剰に目を瞑ると、みるみる部屋が暖かくなっていった。
「もう目を開けていいよ」
という声がしたので、目を開けると、テイがストーブを付けに行っていて、ストーブが付いた時に鳴る”ピッ”という音が鳴ったので、助かったと思った。
というか、
「テイ! ありがとう! 最高過ぎる!」
と言うと、テイは後ろ頭を掻きながら照れ笑いを浮かべた。
でもまあ魔法なんだろうな、と思った。
・【30 1月29日 氷瀑】
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お風呂も上がって、あとはこたつのある居間でまったりするだけだな、と思っていると、クラがこう言った。
「今日は歳時記としては、どんな日なの?」
そう言えば今日はまだその話をしていなかったなと思って、私はテイもいるこたつの中に座りながら喋り出した。
「水沢腹(あつ)く堅しって七十二候という季節の分け方では言うんだけども、この季節は沢の流れも厚く堅い氷になるって季節で、寒さの厳しい地域は滝も凍っちゃうんだって」
「滝が凍るなんて! 美味しそう!」
そう声を荒らげたクラ。
いや、
「美味しくはないよ、いや美味しいか? 綺麗な清水なら美味しいだろうけども、美味しさの話じゃなくて。そういう凍結した滝を意味する氷瀑(ひょうばく)を名物として、祭りにしているところもあるんだってさ」
するとテイが頷きながら、
「まあ美しそうではあるね、寧みたいに」
「私のような小さいサイズじゃなくて。もっと大きくて壮大らしいよ。ちなみに寒いと言えば今日は昭和基地開設記念日だね。まあ寒いなんてレベルじゃないけども」
「昭和基地って南極大陸だよね、きっと寧みたいに純真な生き物が清く生きているんだろうね」
「そこまで言ったら何か嫌味にも感じてくる」
「そんなことないよっ」
と会話していると、クラが急にこう言った。
「凍ると美しいんだぁ、じゃあ僕、いろんなモノを今から凍らせるよっ」
と言ったので、ん? と思っていると急にクラから凍てつく冷気が発生して、わわわわっ、と思っていると、テイが焦りながら、
「ちょっと! 家の中で冷気魔法は止め止め!」
でもクラからはどんどん、まるで吹雪のような雪の結晶も飛び出してきて。
「クラ! 家の中の氷瀑は全体的に小さいサイズだから美しくないよ!」
と私が的確にツッコんだつもりだったんだけども、もうクラは目を瞑って集中しているようで。
部屋の中はどんどん寒くなっていき、何だか窓のサッシが凍り出して、こたつの上のみかんもカチカチになっているような気がする。
試しに触れてみると、そのまま皮膚にくっつきそうで慌てて手を放した。
いつの間にかストーブは消えていて、まるで外にいるほどに凍え始めた体。
「クラ!」
と私が声を荒らげると、クラは眠そうに少しだけ目を開けて、
「あとは寧とテイで氷瀑を楽しんでねぇ~」
と言って、なんとそのまま寝てしまったのだ!
「テイ! どうすればいいの!」
「これは、一からストーブつけてあったまるしかないよ」
と言いながらテイはこたつから立ち上がってストーブをつけに行った。
私は『あっ』と思って、すぐさまキッチンの蛇口のほうへ行くと、案の定蛇口が固まっていて、水が出なくなっていた。
何か嫌な予感がして、IHキッチンにスイッチを入れようとしても、全然オンにならず、えぇーっと思っていると、テイが居間のほうから、
「ストーブ付かない!」
と言ってきて、完全に寒さによって不具合生じていると思った。
私とテイはとりあえずこたつの中に入って、一緒に震えていた。
テイがふと、といった感じにこう言った。
「俺、まだ夕ご飯食べてない、かも……」
「えっ、私がお風呂の時に何か食べるって言ってたじゃない?」
「つい見たいテレビが佳境で……」
「炊飯器の中のお米も、多分凍ってるよね」
と言いながら私は炊飯器があるキッチンへ見に行くと、その後ろをテイもついてきていて、一緒に炊飯器の中を見ると、
「……これ、水でさらせばいけそう」
「でもその水が無いんじゃ……」
「そうだ、冷蔵庫の中はどうかな?」
と言って私は冷蔵庫を開けると、冷蔵庫の中は普通に冷蔵状態で、
「茶粥ならいけるかも、何なら冷蔵庫の飲み物が一番温かいみたいな状態だろうし」
「茶粥?」
オウム返しするテイに、私は説明しながら調理を開始した。
「今日は簡易的だから厳密な茶粥とは違うんだけども、冷蔵庫に入れてる緑茶を半分凍ってるお米に入れて、そうすればお米もふやけるはずだし、あとは常備菜として置いている梅干しをスプーンで潰せば、はい、味付きの茶粥になったよっ」
「ちゃんと料理になってる! すごい! 寧!」
「まあちゃんとした料理にはなっていないけども。こうやって作れば洗い物も出ないし、そのままスプーンで食べてね」
「ありがとう! 寧!」
茶粥はこたつに持っていて、テイが食べ始めた。
「緑茶のサッパリとした香りと梅干しの酸っぱさが混じり合って、何か夏みたい!」
「すごい寒いけどね」
「やっぱり寒いよね……」
と急に肩を落としたテイ。
何だろうと思っていると、
「寧、温かくなるなら温かくなったほうがいいよね……」
「そりゃ勿論。せめてストーブ付けれるくらいにはなりたいよ」
「じゃあ寧、ちょっとだけ目を瞑っていてくれないかな?」
「目? 雪山で寝たら死んじゃうんだけども」
「すぐに暖かくなるから大丈夫」
「そんなことできるの! 魔法でっ?」
とつい言ってしまうと、テイは額から汗を吹き出しながら(こんなに寒いのに)
「魔法とかは分からないけども、何かできそうな気がするんだ!」
まだ魔法とか言えないことになっているんだ、テイの中では。
でもとにかく、
「なんでもいいからお願い! 目も開けないから!」
そう言ってテイのほうを向いて、ちょっと過剰に目を瞑ると、みるみる部屋が暖かくなっていった。
「もう目を開けていいよ」
という声がしたので、目を開けると、テイがストーブを付けに行っていて、ストーブが付いた時に鳴る”ピッ”という音が鳴ったので、助かったと思った。
というか、
「テイ! ありがとう! 最高過ぎる!」
と言うと、テイは後ろ頭を掻きながら照れ笑いを浮かべた。
でもまあ魔法なんだろうな、と思った。
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