幼馴染があやかしからラップで守ってくれる話

青西瓜

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昼ごはん

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・【昼ごはん】


「ご飯の季節だな」
 そう言って立ち上がった海人。
 いや。
「ご飯の時間ね、何か作り置きあるの?」
「ううん、これから作るからちょっと部屋で待ってて」
 そう当たり前のように海人が言うもんだから、私はビックリしながら、
「海人って料理できるのっ?」
 と聞くと、海人はコホンと一息ついてから、
「練習した分は、な」
 と言って、そのまま部屋を出て行ったので、さすがに私も手伝いたいと思い、海人についていき、キッチンにやってきた。
「俺の部屋でゆっくりしてていいのに、マンガとかゲームとか好きにしていいぞ」
 そう言いながらテキパキとエプロンをつける海人。
 その感じが何だか凛々しくてカッコイイけども。
 けども。
「じゃあ、あの、俺の考えた武器みたいなノート読んでいていい?」
「……それは困るな、そんなノートは無いけども」
「いやそういうノートがあることはあるでしょ」
「……じゃあ那智はそこに座っていてくれ、少し待っていてくれ」
 そう言って、キッチンの前にあるテーブルとイスを指差した。
 私はそこに一旦座ったけども、こう言う。
「手伝うことない? 食材切るくらいはできるよ」
「いや、何かが起こって那智が指ケガしたら嫌だから、そこにいてくれるだけでいい」
「何かって、何?」
「ほら、外から急な、異臭騒ぎとか」
「無いわ! そんなこと!」
 相変わらず海人はバカだけども、まあ気遣って言っていてくれているので、まあいいでしょう。
 海人は冷蔵庫から事前に切れているネギや、ほぐしているエノキや舞茸を取り出した。
 さらに輪切りになって、茹でているイカまで、取り出してきた。
「……イカあるんだ」
 私がそう言うと、こっちを向いて頷き、また作業を再開した。
 一旦こっちを向くところが可愛いというかなんというか。
 そういう律儀なところも好きだな。
 海人は小麦粉と牛乳を取り出して、ネギやキノコ類を炒めだした。
 何をどう調理しているのか気になって、私は立ち上がり、海人の隣に立った。
「ちょっ、那智、油が跳ねるから危ないぞ」
「全然大丈夫だよ、というか油はオリーブオイル?」
「うん、そう。緑の木の実の油」
「いちいちそんな言い方しなくても分かるわ! というか逆に分かりづらいわ!」
「バターだと最終的にクドくなりがちだから、俺はオリーブオイルで作るんだ」
 いや何を? と一瞬思ったけども、その一瞬はツッコミの台詞的な一瞬で、本当は何を作っているのか大体分かっている。
「グラタン作るんだ」
「よく分かったな! エスパーか! 俺を念力で浮かすなよ!」
「私、サイコキネシス女子じゃないから。というかさっきの質問の時言ってたじゃん、念押しだって」
「まさかそれをヒントにするとはな」
「正直答えだったよ! 冷蔵庫から茹でたイカ出した時にグラタンで確定させたよ!」
 今海人が作っているのは、まさしく私の大好きなイカグラタンだ。
 他の具材も過去に私が好きだと言った具材ばかりだ。
 海人って、私は何気なく言った好きな食べ物、全部覚えてるんだ。
「じゃあ隠していてもしょうがないから言うけどさ、これからイカグラタン作るんだ、俺」
「いやだから分かってるわ!」
 海人は全体的にしんなりしてきたネギとキノコ類のところに小麦粉を入れて、混ぜ、そして少しずつ牛乳を入れ始めた。
 私は気になったことを聞いてみた。
「牛乳って一気に入れないの?」
「入れると小麦粉がダマになるんだよね、すいとん汁みたいになってしまうんだ」
 私はグラタンが好きだが、実際作り方は知らない。
 でも海人は知っている。
 もしかすると私のために勉強してくれたのかな。
 そうだったら、何だか心が躍っちゃうなぁ。
 そして牛乳を全て入れきったら、イカを入れて、塩コショウ、味見しながら煮詰めていく。
「こうやって牛乳がポタポタと落ちるようになったら完成だ。結構簡単だろ?」
「でもちょっとずつ牛乳入れるくだりが面倒だなぁ」
「面倒じゃないよ、食べてもらう人のことを考えながらゆっくりゆっくり作っていけば何も面倒じゃない」
 ……えっ? 私のこと、考えていたの……?
 何それ……ちょっ、何か、ハズいかも……いや、これ、もう、告白では?
「おいしいと言ってもらいたいからさ、そのためだったらいくらでも頑張れるじゃん?」
 そう言って私のほうを見て笑った海人。
 いや告白じゃねぇかぁぁあああ!
 ちょっと顔が熱くなってきたような気がして、これ以上顔を見られたくないので席に戻ろうとしたその時、
「冷蔵庫にコーラ入っているから好きに飲んでいいよ」
 と言われたので、コーラでクールダウンだと思い、冷蔵庫を開けると、
「キャッッッ!」
 と私は大声を上げながら、その場に尻もちをついてしまった。
 いやでもそうなって当然だ。
 だって冷蔵庫の奥には豚の生首が入っていたのだから……!
「あっ、ミミガー? ミミガー怖かったか! ゴメン! ゴメン!」
 そう言うと海人は開けっ放しになっていた冷蔵庫からコーラを取り出して、すぐに冷蔵庫を締めた。
 私はおぞましいモノを見てしまい、一気にクールダウンして、若干マイナスまで落ち込んだ。
「うちのおじいちゃんがミミガー大好きで、よく沖縄に行って、買ってくるんだよね」
「ミミガーっ? ミミガーって言うのっ? それもよく分かんないし!」
「しかもおじいちゃん、ミミガーは直冷え(じかひえ)に限るって言って、冷蔵庫に直接入れるんだよね」
「じかひえなんて言葉無いから!」
「それは俺も言ったことがある」
 というかもうめちゃくちゃビビったわ!
 海人の家の冷蔵庫、地獄と直通なのかと思ったわ!
「グラタンは上にチーズを乗っけて、オーブンで焼くだけだから。ビスケットでも食べながら待ってて」
 そう言って戸棚からビスケットを取り出した海人。
 いや。
「めちゃくちゃ腹が減っている状態でグラタン食いたいから、ビスケットはいらないわ!」
 ……何か思ったより大きな声が出ちゃったな、ミミガーへの怖さがまだ残っていたな、私の中で。
 そう叫んだ私に対して、海人は、
「そっか、そこまでグラタンを楽しみに待っててくれてありがとう!」
 ニコニコしながらそう言った。
 いやそこまで楽しみというわけでも無かったんだけども、まあ良い解釈してくれたからいいや。
 あとはまあ、もしかしたらそこまで楽しみだったかもしれないし。
 そしてグラタン完成。
 鍋敷きの上にグラタンを乗せ、一緒に食べることに。
「熱いから気を付けろよ、熱出した犬の鼻くらい熱いからな」
「例えが分かりづらい上に、多分それよりも熱いだろ!」
 私はしっかりフーフーしながら口に入れると……! おいしい!
 ネギはとろけて、ホワイトソースと一体化して、甘みたっぷり。
 エノキと舞茸は程よく歯ごたえが残って、シャキシャキ感が楽しい。
 イカも野菜と牛乳の旨味と混ざって、コクが深くなっている。
 しかしそのコクは決してねちっこいわけではなくて、むしろ爽やかな後味だった。
「海人! すっごくおいしいよ!」
「そう言ってくれて嬉しいよ、ありがとう、那智」
 海人はホッと胸をなで下ろしたような表情をした。
「というかバターを使わなくてもおいしいんだね! グラタンって!」
「牛乳だけで十分まろやかになるんだぜ、バター入れるとカロリーも高くなるしな」
 二人でニコニコしながら昼食をとった。
 何か、私の今日の土曜日、最高かよ。
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