異世界ツッコミファンタジー

青西瓜

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【現実の話】

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・【現実の話】


 目覚めるとベッドの上だった。
 良かった夢だった、とボヤボヤしながら考えていると、
「毒のあるデカ蜂だったなんて! そりゃ気配を感じないわけだよ! 強いほう! 強いほう!」
 僕はゾッとした。
 何故なら僕の目の前にはナッツさんがいたからだ。
 さらに気難しそうに俯いた大人の男性が一人いた。
 いや夢が覚めていない。
 どういうことだ。
 でも実際、長い夢ってあるから、それかなと思っていると、大人の男性が口を開いた。
「目を見たら間違いない、この子は異世界の子だよ」
 その言葉の意味に気付いてしまうくらい、僕はファンタジー・ゲームの世界を知っていた。
 異世界。
 それは、僕がいる世界じゃない、どこかの世界のこと。
 僕が異世界の子?
 ということはここが異世界ということ?
 えっ? えっ? どういうこと?
 大人の男性がナッツさんのほうを向きながら喋る。
「ナッツが本当に小さい頃にも一度そういう子がいてね、ほら、宿屋のシューカは異世界の子だよ」
「その話! 聞いたことあるけども! まさか! この子も異世界の子なんですか!」
「……すっごいリアクションが大きいね、でもまあそうなっても不思議じゃないか、この子は間違いなく異世界の子で、呪いも掛かってるね」
 会話を聞くことしかできない僕に、さらにショックな言葉がのしかかる。
 呪い。
 呪いって、どういうこと? えっ? 僕に?
 というかどんな呪い? 何キッカケに?
 と思っていることを全て言ってくれるのが、ナッツさんだ。
「呪いってどういう呪いっ? クラッチさん! 分かりますか!」
 あっ、この大人の男性がどうやらクラッチさんらしい。
 そのクラッチさんはこう言った。
「寝ている間に俺の魔法で調べさせてもらったんだけども、ちょっと言葉で言い表しづらいんだが、ツッコミ……でいいのかな? ツッコミを1万回しないと元の世界に戻る選択肢が生まれない、という呪いだ」
「ツッコミっ! じゃあ私がボケまくればいいんですね!」
「……それがなぁ、何かニュアンスが違うような気もするんだが、とりあえずはそういうことだな」
「あと! いつタケルはそういう呪いに掛かったんですか!」
 ナッツさんが怒涛の質問。
 しかしそれに対しては腕を組んで首を傾げてしまったクラッチさん。
 なんとか重い口を開き、
「異世界の子はイレギュラーなことが多いからなぁ、いろんな要素が組み合わさって形成されるから、いつとかは良く分からないんだ」
「そうなんですか……」
 と落ち込んだナッツさん。
 それに対して、クラッチさんは口を尖らせてから、
「例えばシューカの場合は”安心して皆眠れるようにならなければ元の世界に戻る選択肢が生まれない”呪いだった。そこでシューカはこの村に宿屋を作って、旅人が休まるお店を作った。それでシューカは呪いを解いたんだ」
 それを聞いたナッツさんは頭上にハテナマークを浮かべながら、
「……何でシューカさんは元の世界に戻らなかったんですか? それとも後で戻るんですか?」
 確かにそれは僕も思った。
 さて、クラッチさんはどう答えるのかと思っていると、
「シューカは元いた世界がそもそも嫌だったみたいなんだ、だから戻るかどうかの選択肢が生まれた時に戻らないを選択したんだ」
「そういうのもあるんですねぇ」
「そのシューカの呪いとどういう因果関係があるのか分からないが、シューカは元いた世界では奴隷で、安心して眠れる日なんて無かったらしいんだ。だから異世界から来た子には、自分の願望とリンクした呪いが生まれるのでは、と思っているのだが、タケルよ、君はツッコミたいという願望があるのか?」
 そう言って僕のほうを見たクラッチさん。
 ツッコミたいという願望、確かにある。
 だから僕はゆっくり頷いた。
 するとナッツさんが嬉しそうに手を叩いて、
「じゃあ私と一緒にいればすぐ1万回になるよ! ボケまくってあげるからねぇ!」
 そう言って笑った。
 でも僕は、見知らぬ人にはツッコめないし、と思っていると、クラッチさんが僕の左腕のほうを見ながら、
「タケル、君の左腕に何か付いているな、それはなんだ?」
 そう言われて僕は自分の左腕をおそるおそる見ると、そこにはカウンターのようなモノが付いていて”00000”と表示されていた。
 というかカウンターだ、間違いなく、ツッコミ回数をカウントするカウンターだ。
 しかしナッツさんもクラッチさんもカウンターという概念を知らないみたいで、何だ何だみたいな表情をしている。
 だから僕が言って説明しないと、と思うのに、言葉が出てこない。
 クラッチさんの顔を曇ってきたところで、ナッツさんが、
「まあいろいろショックで喋りづらいんだよね! 今日はゆっくり休んで! 走りまくる犬のように!」
 と言うと、クラッチさんが、
「走りまくる犬ほど休んでいない存在は無いだろ」
「いや! このボケはタケル用のヤツだよ!」
「あぁ、そういうことか、悪い悪い」
 と言いながらクラッチさんは立ち上がり、
「じゃあ他に何か悪いことがあったら、気兼ねなく俺に話し掛けると良い」
 そう微笑みながら言うと、ナッツさんが拳を握りながら、語気を強め、こう言った。
「そう言って今日いなかったじゃん!」
「いや狩りについてきてほしいと言われてな」
「何か連絡しておいてよ!」
「何でいちいちナッツに連絡しないといけないんだよ」
 そしてクラッチさんは家から出て行った。
 さて、ここから僕とナッツさんの2人っきりだ。
 何をすればいいのだろうか、いや、ツッコミをしなければ、でも言葉が出せないんだ。
 どうしよう。
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