ボケまみれ

青西瓜

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【後】

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・【後】


 僕と啓太は下校している。
 ”僕は”笑顔の下校だ。
 だって!
 漫才大会で優勝できたんだから!
 でも啓太にとってはこれが通過点。
 幼馴染の前での漫才が待っている。
 そのことで啓太は弱気になっていた。
「絵未に面白いと思ってもらえるかな……」
「……絵未さんってその幼馴染のことだよね?」
「そう、絵未というのが幼馴染の名前で、その、うん、そういうことだ」
 明らかに言葉の切れ味が悪い啓太。
 だから僕は言ってやったんだ。
「啓太、絶対大丈夫だよ。だって漫才大会で優勝したんじゃないか。自信を持って漫才やればいいだけだと思うよ」
 僕が臆病風に吹かれた時、啓太が僕のことを強く押してくれた。
 だから今は、僕が啓太のことを励まさなきゃ!
 ……と自分に自信を持って喋れるようになったのも、啓太と一緒に漫才大会に出たからだと思う。
 だからこれは僕からの恩返しだ。
「啓太、もうここまできたら思い切り漫才をするしかないんだから、元気にやりきろうよ!」
 小さく頷いた啓太。
 僕はもっとだ、と思って
「僕は啓太がいてくれたから漫才ができたんだ。まずそのことに感謝するよ。ありがとう。啓太が一緒に漫才をしようと言ってくれなければ、僕は今もいろんなことに怖気づく子供だったと思う。でも啓太が僕を変えてくれたんだ。啓太は人の気持ちを変える力を持っているんだ。だからきっと大丈夫、啓太はその幼馴染の絵未さんの気持ちも変えられるよ。僕がそれで変わったんだもん。自信を持っていいと思うよ!」
 すると啓太はやっと笑顔になって、
「そうだな、というかうん、ありがとう。俺こそありがとう。一緒に漫才してくれて。じゃあもう一丁、一緒に頑張ってくれよ、駿。俺たちの最高の漫才を絵未に見せてやろうぜ」
 僕と啓太は堅く握手をしてから、それぞれの家路に着いた。
 明日、学校は休みだけども、僕たちは休みじゃなくて本番だ。
 啓太と一緒に絵未さんの家へ行って、漫才をしてやるんだ!
 強く意気込んで、気持ちを高ぶらせていたら、あっという間に明日、つまり今日になっていた。
 準備をして家を出ると、もう家の目の前に啓太がいた。
「じゃあ、いこうか」
「うん! 頑張ろうね!」
 僕と啓太は歩いて、その絵未さんという人の家へ行った。
 そこは本当、啓太の家から目と鼻の先で、啓太の家の前を通ったらすぐだった。
 啓太は絵未さんの家のチャイムを鳴らすと、インターホン越しに絵未さんの家の人の声が聞こえた。
「啓太くん! 本当に漫才大会で優勝したって学校から連絡があったよ! 絵未にも話しているから、ささっ、今、扉を開けるからね!」
 すると絵未さんのお姉さんらしき人が玄関の扉を開けてくれた。
 僕と啓太は一礼してから、絵未さんの家へ入っていった。
 そして招かれるまま、居間に入ると、そこには僕たちと同じくらいの年齢の子がいた。
 すぐさま啓太が、
「絵未! 久しぶりだな!」
 と高揚感のある声で叫んだ。
 しかし絵未さんは黙っている。
 しっかり啓太と絵未さんの目は合っているが、黙ったままだ。
 その様子を見ていた絵未さんのお姉さんらしき人が、
「ゴメンね、啓太くん。絵未ってあんまり人前では感情を表に出さないようになっちゃって」
 それに対して啓太は自信満々にこう言った。
「大丈夫です。俺たちが笑わせますから」
 そして僕と啓太の漫才は始まった。
 決勝で見せた漫才のロングバージョン。
 普通の芸人さんがテレビでやるのと同じくらいの、4分の漫才だ。
 最初は全然リアクションをしてくれなかったけども、徐々に頬が緩むようになっていき、ラストの畳みかけ前でついに絵未さんは笑ってくれた。
 そしてそこから怒涛の掛け合いで、なんと絵未さんは大笑いしてくれたのだ。
「「どうもありがとうございました!」」
 僕と啓太の漫才はここで終了し、啓太が矢継ぎ早に、
「ほら! 笑っただろ! 絵未! やっぱり笑った顔は可愛いな!」
 と満面の笑みで叫んだ。
 それに吹きだしてしまったのは絵未さんのほうだった。
 絵未さんは深呼吸してから喋りだした。
「相変わらず啓太は面白いね、あと相方の駿くん? 君も喋りが達者でプロみたいだよ」
 僕は、自分は喋りが苦手だと思っていたので、そう言ってもらって、すごく嬉しかった。
 絵未さんは続ける。
「そんなに面白い漫才をしているんだったら、私も近くで二人の漫才を手伝いたいなぁ」
 と言ったので、僕はすぐさまこう言ってみた。
「じゃあ三人でグループを組もうよ! トリオコントやったり、シャッフルで漫才コンビを組んでみたり!」
 それに啓太も頷きながら、
「それは面白そうだな。三人でしかできないことも、二人でしかできないことも、いろいろ一緒にやり合いたいな」
 絵未さんはニッコリと微笑みながら、
「いいの? 私、邪魔にならないかな?」
 僕は、
「全然邪魔にならないよね! むしろグループでお笑いやったほうが絶対面白いよ!」
 啓太も語気を強めながら、
「そうそう! だから一緒に学校行って朝の時間とか昼休みとかずっと一緒にお笑いのこと考えようぜ!」
 絵未さんはしっかりと首を縦に動かし、
「うん、じゃあ私も参加させてもらうよ。ありがとう駿くん、勿論啓太もね」
 そして僕たちは三人のお笑いグループになって、新しく活動が始まったのであった。

(了)
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