3 / 13
パーティ前日。今日のご飯は芋です。
しおりを挟む
お城でのパーティ前日、シンデレラはいつもと変わらない生活を送っていました。
早起きをして家事を済ませ、姦しい継母達から逃げるように家を出ます。そしてその足で向かうのは街外れにある薬屋です。
「おはようございます!」
「はい、おはようございます。今日もよろしくね」
シンデレラの声を聞き、薬屋の奥から出てきたのはニコニコと温厚な笑顔のお婆さん。シンデレラはいつもここで食事をもらい、薬師の勉強を受けています。そのかわり、習った知識を活用し薬草の採取をしたり調合の手伝いをしたりしています。
「さあ、まずはご飯を食べましょう。今日は街中が騒がしいから採取へは行かず、ここで調合の練習をしましょうね」
「まるで孫ができたようだわ」とシンデレラを可愛がってくれるお婆さん。二人で楽しくご飯を食べた後は、そんな孫馬鹿お婆さんから一転、鬼教師となります。
「もっと丁寧に薬草は扱いなさい」
「同じ事を二度聞くものではないわ」
「姿勢が悪い。背筋を伸ばして」
「図鑑を見る時に肘をつかない」
正直、薬師とは関係のない礼儀作法や知識まで指導されます。スパルタ指導ですが、シンデレラの将来を思いしてくれているとわかるので、真面目に従います。
「さあ、今日はここまでにしましょうか。これを持って帰りなさい」
あまり遅くなると、継母達から何を言われ、何をされるかわかりません。その事を理解してくれているお婆さんは、いつもシンデレラの帰宅時間を気にしてくれます。また、成長期にまともな食事を与えられていないシンデレラに食べ物をくれるのもいつもの事。今日渡されたのはパンと林檎です。
それを見つからないように隠し持ち薬屋を後にします。
「おや、薬屋のお婆さんの用事は終わったのかい?」
何か食材を採取して帰らないと……今日の夕飯のメニューに頭を悩ませていると、八百屋の奥さんがシンデレラへと声をかけてきました。
「こんにちは。お婆さんの所は終わって、今からどこに食材を探しに行こうかと悩んでた所です」
ははっと苦笑いしながらシンデレラは答えます。
(金ないからなぁ。前はこの店でも野菜買ってたけど、今は買う金ないからなぁ。はぁ……なんか、情けなくて泣けてくる)
シンデレラには父親の遺産があります。しかし、未成年の内は司法に管理されており、定期的に生活費が振り込まれていますが、そのお金は継母達の無駄遣いで無くなってしまいます。
(はぁ……。無駄飯食い達の食材探し、面倒臭いなぁ。今日はどこに探しに行こうかな)
肉がないだの、野菜がないだの、野草を使えば苦いだの、一発グーで殴ってやろうかと思う日々が続きます。
この国では、未成年者は必ず親権者に従わなくてはいけなくなっており、今のシンデレラでは逆らえません。
(どっかで食材流れてないかなぁ。どんぶらこ、どんぶらこって)
遠い目をしながら深いため息を吐くシンデレラ。そんなシンデレラの気持ちを知ってか知らずか、八百屋の奥さんはシンデレラに素敵な一言を告げます。
「お芋たくさんもらったのよ。良かったら持って帰らない?」
「ホント?!いる!いる!ください!」
街のみんなが生まれた頃からシンデレラのことを知っています。また、現在シンデレラが苦労している事も知っています。
真面目で誠実な商売をしていたシンデレラの父と、優しく温厚で顔の広かった母は街の人気者でした。
そんな二人の子供であるシンデレラも、幼い頃に母を亡くし、それでも腐る事なく父親と二人三脚で頑張っていた姿を街のみんなが知っています。だからこそ、声をかけ手助けをしようとしてくれます。
しかし、そんなシンデレラを虐げ傲慢な態度で接してくる継母達は街のみんなから嫌われていますが。
「ありがとう!美味しく頂くね」
八百屋で食材もゲットし、帰路に着くシンデレラ。普段はお金がない時は森へ山菜を取りに行ったりもしますが、今日は籠いっぱいのお芋が手に入りました。
(やった!今日はラッキーな日だ!楽できる)
まあ、継母達が納得するかは別として、今夜はお芋尽くしです。
我儘三昧の継母達が芋尽くしのメニューで満足するかというと……。
「ちょっとシンデレラ!なんなのよ!この芋尽くしは!」
「貧乏人の食べ物じゃないのよ!未来の王子妃にこんなもの食べさせる気なの?!」
「明日は大事な日なんだから!もっと肌に良さそうな物を出しなさいよ!」
「…………嫌なら食べなくて結構です」
案の定文句タラタラ。しかし、これを食べなければ食べるものがないと言う事は、継母達も知っています。
「なによ!可愛くない子ね!」
「口ばかり達者になって!」
「あんたは言う事聞いてれば良いのよ!」
文句を言いながらもしっかり食べる女性3人。物を口に入れたまま喋るなよとシンデレラは思いながら物陰で舌打ちをしています。
「まったく……次はもっとまともな物を作りなさいよね」
食べ終わった後には、シンデレラの分は残っていませんでした。
「全部食ってんじゃん!ふざけんなよ!」
今夜もシンデレラのご飯はありません。シンデレラは自室でこっそりお婆さんがくれたパンと林檎を食べようと隠し持っていた物を出します。
「あ、これチョコ入ってる!チョコなんて貴族しか食べられないはずなのに……こっにはドライフルーツ。美味い……。後は林檎と……オレンジもある!いやぁ…贅沢な晩餐になったなぁ」
シンデレラはお腹いっぱい食べて床につきました。
早起きをして家事を済ませ、姦しい継母達から逃げるように家を出ます。そしてその足で向かうのは街外れにある薬屋です。
「おはようございます!」
「はい、おはようございます。今日もよろしくね」
シンデレラの声を聞き、薬屋の奥から出てきたのはニコニコと温厚な笑顔のお婆さん。シンデレラはいつもここで食事をもらい、薬師の勉強を受けています。そのかわり、習った知識を活用し薬草の採取をしたり調合の手伝いをしたりしています。
「さあ、まずはご飯を食べましょう。今日は街中が騒がしいから採取へは行かず、ここで調合の練習をしましょうね」
「まるで孫ができたようだわ」とシンデレラを可愛がってくれるお婆さん。二人で楽しくご飯を食べた後は、そんな孫馬鹿お婆さんから一転、鬼教師となります。
「もっと丁寧に薬草は扱いなさい」
「同じ事を二度聞くものではないわ」
「姿勢が悪い。背筋を伸ばして」
「図鑑を見る時に肘をつかない」
正直、薬師とは関係のない礼儀作法や知識まで指導されます。スパルタ指導ですが、シンデレラの将来を思いしてくれているとわかるので、真面目に従います。
「さあ、今日はここまでにしましょうか。これを持って帰りなさい」
あまり遅くなると、継母達から何を言われ、何をされるかわかりません。その事を理解してくれているお婆さんは、いつもシンデレラの帰宅時間を気にしてくれます。また、成長期にまともな食事を与えられていないシンデレラに食べ物をくれるのもいつもの事。今日渡されたのはパンと林檎です。
それを見つからないように隠し持ち薬屋を後にします。
「おや、薬屋のお婆さんの用事は終わったのかい?」
何か食材を採取して帰らないと……今日の夕飯のメニューに頭を悩ませていると、八百屋の奥さんがシンデレラへと声をかけてきました。
「こんにちは。お婆さんの所は終わって、今からどこに食材を探しに行こうかと悩んでた所です」
ははっと苦笑いしながらシンデレラは答えます。
(金ないからなぁ。前はこの店でも野菜買ってたけど、今は買う金ないからなぁ。はぁ……なんか、情けなくて泣けてくる)
シンデレラには父親の遺産があります。しかし、未成年の内は司法に管理されており、定期的に生活費が振り込まれていますが、そのお金は継母達の無駄遣いで無くなってしまいます。
(はぁ……。無駄飯食い達の食材探し、面倒臭いなぁ。今日はどこに探しに行こうかな)
肉がないだの、野菜がないだの、野草を使えば苦いだの、一発グーで殴ってやろうかと思う日々が続きます。
この国では、未成年者は必ず親権者に従わなくてはいけなくなっており、今のシンデレラでは逆らえません。
(どっかで食材流れてないかなぁ。どんぶらこ、どんぶらこって)
遠い目をしながら深いため息を吐くシンデレラ。そんなシンデレラの気持ちを知ってか知らずか、八百屋の奥さんはシンデレラに素敵な一言を告げます。
「お芋たくさんもらったのよ。良かったら持って帰らない?」
「ホント?!いる!いる!ください!」
街のみんなが生まれた頃からシンデレラのことを知っています。また、現在シンデレラが苦労している事も知っています。
真面目で誠実な商売をしていたシンデレラの父と、優しく温厚で顔の広かった母は街の人気者でした。
そんな二人の子供であるシンデレラも、幼い頃に母を亡くし、それでも腐る事なく父親と二人三脚で頑張っていた姿を街のみんなが知っています。だからこそ、声をかけ手助けをしようとしてくれます。
しかし、そんなシンデレラを虐げ傲慢な態度で接してくる継母達は街のみんなから嫌われていますが。
「ありがとう!美味しく頂くね」
八百屋で食材もゲットし、帰路に着くシンデレラ。普段はお金がない時は森へ山菜を取りに行ったりもしますが、今日は籠いっぱいのお芋が手に入りました。
(やった!今日はラッキーな日だ!楽できる)
まあ、継母達が納得するかは別として、今夜はお芋尽くしです。
我儘三昧の継母達が芋尽くしのメニューで満足するかというと……。
「ちょっとシンデレラ!なんなのよ!この芋尽くしは!」
「貧乏人の食べ物じゃないのよ!未来の王子妃にこんなもの食べさせる気なの?!」
「明日は大事な日なんだから!もっと肌に良さそうな物を出しなさいよ!」
「…………嫌なら食べなくて結構です」
案の定文句タラタラ。しかし、これを食べなければ食べるものがないと言う事は、継母達も知っています。
「なによ!可愛くない子ね!」
「口ばかり達者になって!」
「あんたは言う事聞いてれば良いのよ!」
文句を言いながらもしっかり食べる女性3人。物を口に入れたまま喋るなよとシンデレラは思いながら物陰で舌打ちをしています。
「まったく……次はもっとまともな物を作りなさいよね」
食べ終わった後には、シンデレラの分は残っていませんでした。
「全部食ってんじゃん!ふざけんなよ!」
今夜もシンデレラのご飯はありません。シンデレラは自室でこっそりお婆さんがくれたパンと林檎を食べようと隠し持っていた物を出します。
「あ、これチョコ入ってる!チョコなんて貴族しか食べられないはずなのに……こっにはドライフルーツ。美味い……。後は林檎と……オレンジもある!いやぁ…贅沢な晩餐になったなぁ」
シンデレラはお腹いっぱい食べて床につきました。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
愛しの第一王子殿下
みつまめ つぼみ
恋愛
公爵令嬢アリシアは15歳。三年前に魔王討伐に出かけたゴルテンファル王国の第一王子クラウス一行の帰りを待ちわびていた。
そして帰ってきたクラウス王子は、仲間の訃報を口にし、それと同時に同行していた聖女との婚姻を告げる。
クラウスとの婚約を破棄されたアリシアは、言い寄ってくる第二王子マティアスの手から逃れようと、国外脱出を図るのだった。
そんなアリシアを手助けするフードを目深に被った旅の戦士エドガー。彼とアリシアの逃避行が、今始まる。
誰でもイイけど、お前は無いわw
猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。
同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。
見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、
「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」
と言われてしまう。
悪役令嬢の涙
拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。
【完結】見えてますよ!
ユユ
恋愛
“何故”
私の婚約者が彼だと分かると、第一声はソレだった。
美少女でもなければ醜くもなく。
優秀でもなければ出来損ないでもなく。
高貴でも無ければ下位貴族でもない。
富豪でなければ貧乏でもない。
中の中。
自己主張も存在感もない私は貴族達の中では透明人間のようだった。
唯一認識されるのは婚約者と社交に出る時。
そしてあの言葉が聞こえてくる。
見目麗しく優秀な彼の横に並ぶ私を蔑む令嬢達。
私はずっと願っていた。彼に婚約を解消して欲しいと。
ある日いき過ぎた嫌がらせがきっかけで、見えるようになる。
★注意★
・閑話にはR18要素を含みます。
読まなくても大丈夫です。
・作り話です。
・合わない方はご退出願います。
・完結しています。
悪役令嬢は手加減無しに復讐する
田舎の沼
恋愛
公爵令嬢イザベラ・フォックストーンは、王太子アレクサンドルの婚約者として完璧な人生を送っていたはずだった。しかし、華やかな誕生日パーティーで突然の婚約破棄を宣告される。
理由は、聖女の力を持つ男爵令嬢エマ・リンドンへの愛。イザベラは「嫉妬深く陰険な悪役令嬢」として糾弾され、名誉を失う。
婚約破棄をされたことで彼女の心の中で何かが弾けた。彼女の心に燃え上がるのは、容赦のない復讐の炎。フォックストーン家の膨大なネットワークと経済力を武器に、裏切り者たちを次々と追い詰めていく。アレクサンドルとエマの秘密を暴き、貴族社会を揺るがす陰謀を巡らせ、手加減なしの報復を繰り広げる。
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
ヴェルセット公爵家令嬢クラリッサはどこへ消えた?
ルーシャオ
恋愛
完璧な令嬢であれとヴェルセット公爵家令嬢クラリッサは期待を一身に受けて育ったが、婚約相手のイアムス王国デルバート王子はそんなクラリッサを嫌っていた。挙げ句の果てに、隣国の皇女を巻き込んで婚約破棄事件まで起こしてしまう。長年の王子からの嫌がらせに、ついにクラリッサは心が折れて行方不明に——そして約十二年後、王城の古井戸でその白骨遺体が発見されたのだった。
一方、隣国の法医学者エルネスト・クロードはロロベスキ侯爵夫人ことマダム・マーガリーの要請でイアムス王国にやってきて、白骨死体のスケッチを見てクラリッサではないと看破する。クラリッサは行方不明になって、どこへ消えた? 今はどこにいる? 本当に死んだのか? イアムス王国の人々が彼女を惜しみ、探そうとしている中、クロードは情報収集を進めていくうちに重要参考人たちと話をして——?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる