4 / 13
パーティ当日・朝
しおりを挟む
お城でのパーティー当日、継母らは「王子がダメでも近衛騎士との出会いが……」と騒ぎながら、日の出前にはお城に出発しました。
家にポツンと一人残されたシンデレラは3人が姦しく出ていったのを見届けると、手に持っていた雑巾を床に叩き付け、「よっしゃー!自由だー!」と叫びながらガッツポーズをとりました。
「ん~っ!やっと出発したぁ!しかしまぁ、朝っぱらから気持ち悪いモン見たなぁ」
やれやれと言った様子で、呟いたのはシンデレラ。姉らが使うドレッサーを見ながら頬に付いた煤を乱暴に腕で拭うと、粗雑に椅子に腰を掛けます。
「そろって化粧濃すぎるし。普段遅くまで寝てるくせに今日は早起きしたせいか、寝不足で酷い顔だし。髪の盛りなんてあれウ○コの形だろ……。しかも甘い香りの香水を大量に吹きかけて……。キツい、あれは無いって。男は絶対萎える」
シンデレラは毎日の小言やいびりで溜まった鬱憤を吐き出すように、思った事を口に出します。
「ああ、コレ参考にしたんだ……。花嫁メイクって……何考えてるんだ?しかも、やたらと白い白粉塗って……顔色に合ってないって気づかないか?フツー」
偶々目についたこの国のファッション誌を適当にペラペラと捲ります。
『失敗しない花嫁メイク術!』
『男を魅了する話し方テクニック!』
「……胡散臭っ。……こんなのに金使うなよ」
どれもこれも奇抜という言葉を体現したようなものばかりが紹介されており、その雑誌にはご丁寧に所々丸が付けられています。おそらく、それらを真似たのでしょう。シンデレラがドン引きしたウ○コ盛りの髪型もそこに載っています。
へらへらと馬鹿にしながらページを捲っていくと特集ページの題が目に飛び込んできました。題は『王子を射止めるのは貴女! 王子様特集』とあり、ちょうど本日の昼間からあるガーデンパーティーの主役である、この国の第三王子のことが触れられていました。
どうやら、誕生日パーティは貴族と平民分かれて開催されるらしく、今日開かれるパーティは男爵家と平民が参加対象のようです。
「うわぁ……王子って大変なんだな。一庶民でよかったわ……」
プライベートなんてまるで無いのではないかという情報の多さに、思わず雑誌を閉じて放り投げます。王太子ではなく第三王子という点がちょうど良いと継母らが騒いでいたのも思い出し、若干の同情も覚えます。
「……っと、それより今日はいつもより豪勢な朝食にしようっと」
ぐーっと伸びをすると、普段はあまり口にしていない凝った料理を作ろうと台所にへと足を向けた時、玄関から来訪者を告げる音がします。
「は~い。あれ?」
ドアの外には薬師のお婆さんが立っていました。
このお婆さんは、シンデレラのことをとても可愛がってくれていて、よくご飯を食べさせてくれたり薬学を教えてくれたりしています。だからこそ、シンデレラはこの家庭環境で餓えることもなく強く生きていられました。
「お婆さん、こんにちは。この家に来るなんて珍しいですね」
「こんにちは。今日はイライザ達に頼まれて作った『惚れ薬』の代金を受け取りに来たのよ。イライザ達はいるかしら?」
ニコニコと笑顔のお婆さんは、どうやら薬の代金の取り立てに来たようです。
継母達はお婆さんにまでツケで買い物しているのかと、シンデレラは思わず遠い目をしてしまいました。
「ごめんなさい、お婆さん。継母達は王城で開かれる第三王子の誕生日パーティに行ってしまいました。代金をお支払いしたいのですが……あいにくお金を持ってなくて……」
シンデレラには父の遺産がありますが、まだ未成年のシンデレラは勝手に遺産を使う事ができません。15歳の成人までは司法が管理しており、毎月一定の生活費のみが支給されています。
その生活費も継母達の暴飲暴食でなくなってしまいますが……。
継母達がドレスやアクセサリーを購入しているのは、父親がシンデレラへと残してくれた店舗でツケにして購入しているのです。シンデレラが成人して財産の管理がシンデレラへと映った瞬間に、全財産は自分達の物になると信じて疑っていないのです。シンデレラの財産はあくまでもシンデレラの物なのに……。
今、店舗は副店長が店長代理として経営を継続してくれています。シンデレラが成人した時に、シンデレラが経営者となれるよう店を守ってくれているのです。
父は幼いシンデレラを1人家に残しておくこともできず、また、勉強も兼ねてシンデレラを仕事先へと連れ歩いていました。そこで事業の知識や礼儀作法などを徹底的に教え込んでいました。
シンデレラは父の厳しい指導に嫌な顔一つせず、努力し続けていました。
そんなシンデレラの頑張りを周りの大人達はずっと見守っていました。可愛らしく努力家で働き者のシンデレラは従業員一同のアイドル的存在であり、愛されていました。
現在、店舗を守ってくれている副店長のザイールは、元々勤めていた商店で同僚から嫌がらせや裏切りに遭い、職を辞して路頭に迷っていた所をシンデレラの父に拾われました。シンデレラの父への感謝の念もあり、忘れ形見であるシンデレラを守ろうと心に決めています。
ただ、シンデレラが未成年のうちは、継母といえど母親であるイライザの存在が邪魔です。表立ってシンデレラの手助けをすると、継母達がどんな行動に出るかわかりません。だからシンデレラが成人するまでは、陰から応援してくれる大人がシンデレラの周りにはいました。
成人さえすれば、商会の経営権はシンデレラのもの。シンデレラには生活のあてがある。ザイールとも相談し、成人と同時に離縁届を提出し、継母達との縁を切る事を決めていました。そう思えばこそシンデレラはこの生活に耐えられていました。
家にポツンと一人残されたシンデレラは3人が姦しく出ていったのを見届けると、手に持っていた雑巾を床に叩き付け、「よっしゃー!自由だー!」と叫びながらガッツポーズをとりました。
「ん~っ!やっと出発したぁ!しかしまぁ、朝っぱらから気持ち悪いモン見たなぁ」
やれやれと言った様子で、呟いたのはシンデレラ。姉らが使うドレッサーを見ながら頬に付いた煤を乱暴に腕で拭うと、粗雑に椅子に腰を掛けます。
「そろって化粧濃すぎるし。普段遅くまで寝てるくせに今日は早起きしたせいか、寝不足で酷い顔だし。髪の盛りなんてあれウ○コの形だろ……。しかも甘い香りの香水を大量に吹きかけて……。キツい、あれは無いって。男は絶対萎える」
シンデレラは毎日の小言やいびりで溜まった鬱憤を吐き出すように、思った事を口に出します。
「ああ、コレ参考にしたんだ……。花嫁メイクって……何考えてるんだ?しかも、やたらと白い白粉塗って……顔色に合ってないって気づかないか?フツー」
偶々目についたこの国のファッション誌を適当にペラペラと捲ります。
『失敗しない花嫁メイク術!』
『男を魅了する話し方テクニック!』
「……胡散臭っ。……こんなのに金使うなよ」
どれもこれも奇抜という言葉を体現したようなものばかりが紹介されており、その雑誌にはご丁寧に所々丸が付けられています。おそらく、それらを真似たのでしょう。シンデレラがドン引きしたウ○コ盛りの髪型もそこに載っています。
へらへらと馬鹿にしながらページを捲っていくと特集ページの題が目に飛び込んできました。題は『王子を射止めるのは貴女! 王子様特集』とあり、ちょうど本日の昼間からあるガーデンパーティーの主役である、この国の第三王子のことが触れられていました。
どうやら、誕生日パーティは貴族と平民分かれて開催されるらしく、今日開かれるパーティは男爵家と平民が参加対象のようです。
「うわぁ……王子って大変なんだな。一庶民でよかったわ……」
プライベートなんてまるで無いのではないかという情報の多さに、思わず雑誌を閉じて放り投げます。王太子ではなく第三王子という点がちょうど良いと継母らが騒いでいたのも思い出し、若干の同情も覚えます。
「……っと、それより今日はいつもより豪勢な朝食にしようっと」
ぐーっと伸びをすると、普段はあまり口にしていない凝った料理を作ろうと台所にへと足を向けた時、玄関から来訪者を告げる音がします。
「は~い。あれ?」
ドアの外には薬師のお婆さんが立っていました。
このお婆さんは、シンデレラのことをとても可愛がってくれていて、よくご飯を食べさせてくれたり薬学を教えてくれたりしています。だからこそ、シンデレラはこの家庭環境で餓えることもなく強く生きていられました。
「お婆さん、こんにちは。この家に来るなんて珍しいですね」
「こんにちは。今日はイライザ達に頼まれて作った『惚れ薬』の代金を受け取りに来たのよ。イライザ達はいるかしら?」
ニコニコと笑顔のお婆さんは、どうやら薬の代金の取り立てに来たようです。
継母達はお婆さんにまでツケで買い物しているのかと、シンデレラは思わず遠い目をしてしまいました。
「ごめんなさい、お婆さん。継母達は王城で開かれる第三王子の誕生日パーティに行ってしまいました。代金をお支払いしたいのですが……あいにくお金を持ってなくて……」
シンデレラには父の遺産がありますが、まだ未成年のシンデレラは勝手に遺産を使う事ができません。15歳の成人までは司法が管理しており、毎月一定の生活費のみが支給されています。
その生活費も継母達の暴飲暴食でなくなってしまいますが……。
継母達がドレスやアクセサリーを購入しているのは、父親がシンデレラへと残してくれた店舗でツケにして購入しているのです。シンデレラが成人して財産の管理がシンデレラへと映った瞬間に、全財産は自分達の物になると信じて疑っていないのです。シンデレラの財産はあくまでもシンデレラの物なのに……。
今、店舗は副店長が店長代理として経営を継続してくれています。シンデレラが成人した時に、シンデレラが経営者となれるよう店を守ってくれているのです。
父は幼いシンデレラを1人家に残しておくこともできず、また、勉強も兼ねてシンデレラを仕事先へと連れ歩いていました。そこで事業の知識や礼儀作法などを徹底的に教え込んでいました。
シンデレラは父の厳しい指導に嫌な顔一つせず、努力し続けていました。
そんなシンデレラの頑張りを周りの大人達はずっと見守っていました。可愛らしく努力家で働き者のシンデレラは従業員一同のアイドル的存在であり、愛されていました。
現在、店舗を守ってくれている副店長のザイールは、元々勤めていた商店で同僚から嫌がらせや裏切りに遭い、職を辞して路頭に迷っていた所をシンデレラの父に拾われました。シンデレラの父への感謝の念もあり、忘れ形見であるシンデレラを守ろうと心に決めています。
ただ、シンデレラが未成年のうちは、継母といえど母親であるイライザの存在が邪魔です。表立ってシンデレラの手助けをすると、継母達がどんな行動に出るかわかりません。だからシンデレラが成人するまでは、陰から応援してくれる大人がシンデレラの周りにはいました。
成人さえすれば、商会の経営権はシンデレラのもの。シンデレラには生活のあてがある。ザイールとも相談し、成人と同時に離縁届を提出し、継母達との縁を切る事を決めていました。そう思えばこそシンデレラはこの生活に耐えられていました。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
愛しの第一王子殿下
みつまめ つぼみ
恋愛
公爵令嬢アリシアは15歳。三年前に魔王討伐に出かけたゴルテンファル王国の第一王子クラウス一行の帰りを待ちわびていた。
そして帰ってきたクラウス王子は、仲間の訃報を口にし、それと同時に同行していた聖女との婚姻を告げる。
クラウスとの婚約を破棄されたアリシアは、言い寄ってくる第二王子マティアスの手から逃れようと、国外脱出を図るのだった。
そんなアリシアを手助けするフードを目深に被った旅の戦士エドガー。彼とアリシアの逃避行が、今始まる。
誰でもイイけど、お前は無いわw
猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。
同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。
見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、
「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」
と言われてしまう。
悪役令嬢の涙
拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。
【完結】見えてますよ!
ユユ
恋愛
“何故”
私の婚約者が彼だと分かると、第一声はソレだった。
美少女でもなければ醜くもなく。
優秀でもなければ出来損ないでもなく。
高貴でも無ければ下位貴族でもない。
富豪でなければ貧乏でもない。
中の中。
自己主張も存在感もない私は貴族達の中では透明人間のようだった。
唯一認識されるのは婚約者と社交に出る時。
そしてあの言葉が聞こえてくる。
見目麗しく優秀な彼の横に並ぶ私を蔑む令嬢達。
私はずっと願っていた。彼に婚約を解消して欲しいと。
ある日いき過ぎた嫌がらせがきっかけで、見えるようになる。
★注意★
・閑話にはR18要素を含みます。
読まなくても大丈夫です。
・作り話です。
・合わない方はご退出願います。
・完結しています。
悪役令嬢は手加減無しに復讐する
田舎の沼
恋愛
公爵令嬢イザベラ・フォックストーンは、王太子アレクサンドルの婚約者として完璧な人生を送っていたはずだった。しかし、華やかな誕生日パーティーで突然の婚約破棄を宣告される。
理由は、聖女の力を持つ男爵令嬢エマ・リンドンへの愛。イザベラは「嫉妬深く陰険な悪役令嬢」として糾弾され、名誉を失う。
婚約破棄をされたことで彼女の心の中で何かが弾けた。彼女の心に燃え上がるのは、容赦のない復讐の炎。フォックストーン家の膨大なネットワークと経済力を武器に、裏切り者たちを次々と追い詰めていく。アレクサンドルとエマの秘密を暴き、貴族社会を揺るがす陰謀を巡らせ、手加減なしの報復を繰り広げる。
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
ヴェルセット公爵家令嬢クラリッサはどこへ消えた?
ルーシャオ
恋愛
完璧な令嬢であれとヴェルセット公爵家令嬢クラリッサは期待を一身に受けて育ったが、婚約相手のイアムス王国デルバート王子はそんなクラリッサを嫌っていた。挙げ句の果てに、隣国の皇女を巻き込んで婚約破棄事件まで起こしてしまう。長年の王子からの嫌がらせに、ついにクラリッサは心が折れて行方不明に——そして約十二年後、王城の古井戸でその白骨遺体が発見されたのだった。
一方、隣国の法医学者エルネスト・クロードはロロベスキ侯爵夫人ことマダム・マーガリーの要請でイアムス王国にやってきて、白骨死体のスケッチを見てクラリッサではないと看破する。クラリッサは行方不明になって、どこへ消えた? 今はどこにいる? 本当に死んだのか? イアムス王国の人々が彼女を惜しみ、探そうとしている中、クロードは情報収集を進めていくうちに重要参考人たちと話をして——?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる