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養子縁組
しおりを挟む「……養子?俺を?」
「そうよ。前々から考えていたのよ。今回のパーティで甥…陛下達にあなたを紹介したの。そして、ヴィーが望めばイライザ達と縁を切る許可を出して私の養子とする許可を貰ってきたわ」
ウフフッと楽しげに笑っているお婆さんをシンデレラもといヴィルヘルムは青い顔で見つめていました。
(おいおい、あのパーティで俺は王族にチェックされてたってのか?怖い!怖いよ!)
「とすると、私はヴィーと親類関係になるのか」
ジョシュアがなんとなく呟く一言に、さらに青ざめるヴィルヘルム。話が大きすぎる。そもそも平民で、しかも使用人以下の扱いを受けているヴィルヘルムに王族の養子など荷が重すぎる。
(無理無理!絶対に無理!)
断ろう。
口を開こうとしたヴィルヘルムを遮るようにお婆さんが話し始めます。
「私は貴族位を捨てています。今まで王族との接触を避けていたけれど、今回のヴィーとの養子縁組にはイザベラ達との姻戚関係の離縁をしなくてはいけなくて……。どうしても司法長である王弟と陛下の許可が必要だったから、王城へ向かっただけよ。だから、ヴィーが心配するような煩わしい人間関係はないからね」
ニッコリと笑いながら、ヴィルヘルムが心配していた事をお婆さんは言ってきます。心が読めるのかよと、ヴィルヘルムは引き攣った笑顔を浮かべながらお婆さんの話に耳を傾けます。
「あと、ヴィーは成人したらイザベラとの縁を切る予定だったのでしょうけど、家族との離縁は司法長の許可がいるのよ。普通はそう簡単に離縁できないの」
つまり、今回の件を断れば、イザベラ達との関係を切れないかもしれないって事か。
「私とヴィーでは祖母と孫になるかしらね。ヴィーにはお父様が残したお店があるのは知っているわ。だから、私の店を継いで欲しいとは思っていないの。あれは私の老後の趣味のようなものだから。ただ、成人するまでは手伝ってくれたら嬉しいわ」
話を聞き、考えれば考えるほど、ヴィルヘルムにはメリットしかない。何故、ここまでしてくれるのか疑問しか浮かばなかった。
「どうして、俺を養子にしようと思ったのですか?」
「可愛いからよ。見た目の話じゃないわよ。前向きに必死に生きているヴィーがとても可愛くて可愛くて、力になりたいと思ったのよ」
「俺の中身……?」
「そうよ。ヴィーとの食事も勉強も採取も、とても幸せで私の新たな生きがいになったの。だからお願い。私の孫になって欲しいわ」
父親が亡くなってから、苦労はしたけれど、今まで元気に生きてこれたのは、今目の前にいるお婆さんのおかげでもあります。今までのお婆さんとの生活を思い出して、話を聞いて、ヴィルヘルムは決心しました。
「お婆さん……俺……迷惑いっぱいかけるかもしれないけれど、よろしくお願いします」
頭を下げるヴィルヘルムをお婆さんは満足げに見つめ、嬉しそうに手を叩きます。
「よかったわ!ありがとうヴィルヘルム!さあ、そうと決まればとりあえず私の店に移動するわよ!衣服や日用品は用意してあるから、それ以外の大事な物をまとめてちょうだい」
お婆さんの店に引っ越す……。そうなると、この家を手放す事になるのか?ヴィルヘルムの不安げな表情をお婆さんは見逃さず、すぐに不安を解消する一言をくれます。
「この家は手放さなくて大丈夫よ。成人したら戻ってこれるわ。心配しなくて大丈夫。私達大人に任せて、ヴィルヘルムは甘えていなさい」
本当に心が読めるのかよとヴィルヘルムは思い、ま、このお婆さんが大丈夫だっていってるんだから大丈夫だろう。
「荷物はありません。このまま出発できます。よろしくお願いします」
ヴィルヘルム達はそのまま家を後にしました。
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