全ての者に復讐を

流風

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異変

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 愛良が行方不明となった。



 愛良が行方不明になった後に、両親はイジメの実態に気づいた。しかし、学校側からは相手にされず、むしろ売春婦の親として近所からの好奇な目を向けられるようになった。
 それは、両親の仕事にも影響した。日雇いやバイトでなんとか食いつないでいた両親だったが、それすらもクビとなった。家賃の関係と精神的不安により情緒不安定となってしまった妻のため、また愛良が帰って来るかもしれないからと、父は母のアパートに越して来た。
 二人とも生活のために離婚という形をとったが、本来は仲の良い夫婦だった。
 生活保護も考えたが、なかなか受理されず、生活が出来なくなった。
 精神的にも追い詰められた2人は、待ち続けることが出来なかった愛良への謝罪をしたためた遺書を残し、首を吊って死んでしまった。



 ◆◆◆



 愛良の同級生達は高校を卒業し、大学へ行く者、就職する者と、各々の道を進んでいた。
 愛良にレイプしたグループ4人もそれぞれの道を進んだ。
 リーダー格だった阿久津 悠は、大学生になっていた。
 その彼女の西条 真琴は、美容師になるため学校へ通っていた。
 その2人とつるんでいた森田 隼人と小谷 太一は、それぞれ就職していた。隼人は自動車メーカーの販売員に、太一はバーテンダーとしてそれぞれ働いていた。
 4人とも、それぞれの道に進み、愛良の話をする事はなくなかった。

 悠と真琴は、高校を卒業した後も付き合っていた。奔放な悠は、大学の女の子達にも手を出していた。正直、真琴には飽きていて別れたいと考えていたが、愛良をレイプした時の画像を真琴が持っていて、「別れるならこの動画を拡散する」と脅されていた。

 真琴は悠に執着していた。顔が良い悠と一緒にいると、優越感に浸れた。将来は悠と結婚し、幸せな家庭を築く。そんな事を考えていた。

 悠が大学3年の秋、そんな真琴が体調を崩した。
 吐き気がする。そういえば、月の物が来ない。調べてみると妊娠している事がわかった。
 真琴は大喜びで悠に報告をした。悠もこの事実に観念して、真琴と籍を入れ、悠のアパートに2人で住むこととなった。だが、学生同士の2人に収入はない。それぞれの親から生活費を貰い、生活していた。
 自力で金も稼がず、小遣いを貰って生活をしていた悠の甘ったれた性格は改善されず、「大学の研究で泊まり込みの作業があるんだ」と適当な言い訳を言い、女の子と遊び歩いていた。

 遊び歩いている事には気づいていた。それでも、真琴は、弱みを握っているとはいえ、悠に嫌われたくなく、また、お腹の中にいる2人の愛の結晶が産まれたら、悠もずっと側にいてくれるだろうと、目をつぶっていた。

 真琴の妊娠がわかった頃、日本ではある問題が発生していた。
 高熱で寝込んでしまい、最悪死亡してしまう謎の病気が徐々に蔓延していった。
 治療薬はなく、発生原因も不明。発症して命が助かったとしても、体のどこかに何かしらの後遺症が残ってしまう病気だった。

 それは、味覚障害であったり、末端の痺れであったり、ずっと幻聴が聞こえるという者もいた。

 この病気がニュースで取り上げられ出す頃、危機感を覚えた他国は、日本からの人、物流の出入りを制限した。入国制限と輸入出の制限だ。

 食料自給率の低い日本において、また、各種企業が海外へ工場を持っている事もあり、物流のストップは死活問題。
 そこに追い討ちをかけるように異常気象が多発した。集中豪雨で浸水、土砂災害による家屋の破壊、死傷者も多く出た。木材の輸入も、トイレなどの備品も輸入出来ず、住む場所に困る人々が現れ出した。

 日本という国は、徐々に追い詰められていった。

 そんな時に真琴の妊娠が判明したのだ。各種企業が倒産していく中、就活もうまくいかず、かといって農業や水産業などの体を使う仕事に就く気がない悠は、妊娠した真琴が鬱陶しくて仕方なくなっていた。妊娠してから夜も拒まれ、悠は真琴から興味がなくなっていった。

 帰宅時間は遅くなり、女と遊んで帰るようになった。
 精神的ストレスのためか、予定より早く産気づいた真琴。
 悠に知らせるも、我関せずと無視をされてしまった。
 真琴の出産は逆子だったため、時間がかかった。その間に真琴の両親が到着し、出産を見守っていた。

「産まれました」

 そう言われ赤子の元へ向かう両親。しかし、何かがおかしい。静かなのだ。赤子の泣き声も、祝福する助産師達の声も、何も聞こえない。

「ねぇ、私の赤ちゃんは?」

 静かな病室に、真琴の声が響いた。

 両親に目で何かを訴えてくる助産師。その視線に導かれるように、助産師の元へ、その視線の元へ、産まれてきたばかりの赤子を見て、両親は思わず、

「うわぁ!!」
「きゃぁぁ!」

 2人とも思わず叫んでしまった。

 産まれてきた子は、青紫色で所々が赤黒く、そして、全身が腫れ上がっていた。

 死産だった。

 初めて見るその赤子に、助産師達も言葉が出ない。

「ねぇ、私の赤ちゃんは・・・?」

 まだ、状況が、わからない真琴は、恐る恐る問いかける。
 知らせないわけにもいかず、助産師は、

「残念ながら、赤ちゃんは・・・」

 その一言を聞いた瞬間、真琴は飛び起き、赤子に向かっていった。
 産まれて来た赤子を見た瞬間、真琴は、

「いやぁぁぁぁぁ!」

 泣き叫ぶ事しか出来なかった。
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