全ての者に復讐を

流風

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復讐の終わりに

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 悠は寺へと駆け込んだ。


 あの後、怖くなり友人宅へ一泊した。そこで話している時に思い出したのだ。友達と廃墟に遊びに行ったりした時に聞いた事がある除霊で有名な寺。
 思い出してすぐに、その寺へ駆け込んだのだが、住職が留守のため、一晩近くのホテルへ泊まることにした。朝一で寺に乗り込めるように、寺の近くの宿に…。
その間、何処からか漂ってくる鉄錆の匂いと(フヒュー …フヒュー …)という音がまとわりつくように悠から離れなかった。


 翌日、住職を捕まえ、今までの事を洗いざらい話した。とにかく悠は怖くて仕方なかったのだ。

「早く除霊してくれ!俺の命が危ないんだ!なんとかしてくれ!」

 愛良への謝罪もなく、自分の事しか考えていない悠に、住職は呆れ果てた。
 それと共に、恐怖していた。
 悠の背後に見えるドス黒いものは、今まで見たことも無い邪悪なものだったから。

「とりあえず、愛良さんが埋まってる山に向かいましょう」

 住職と悠は、愛良の山に向かった。この時、悠は忘れてしまっていた。家に放置している真琴の事を。
 悠がいた時にも、世話をしていなかった。水すら飲んでいなかった真琴を数日間放置している。

 真琴は、部屋の片隅で息絶えていた。



 ◆◆◆


 悠達の母校へ到着した時、夕方になろうとしていた。早く行かないと暗くなってしまう。
 悠と住職は山中を急ぎ走った。

「たぶんこっちだ」

 悠に言われるまでもない。この先がどんどんドス黒くなっている。

 住職は悠の話を聞いた時、日本で蔓延している奇病はこのせいでは?と思っていた。この場所に来て、間違いないと判断した。

(これは酷い。万が一の時は、この若者を犠牲にしてでも沈めなくては… )

 悠を生贄に捧げなくてはいけないほど、マズイ状況だと住職は判断した。

「たぶんこの辺だ」

 そう言って立ち止まった目の前に、ぽっかり空いた穴があった。

「早く除霊してくれ!」

「除霊するから、もう少し穴に近づいてくれ」

「嫌だよ!怖い!そこから除霊してくれ!」

 怖がって近づこうとしない悠を力強くで連れて行こうと思った時、

「ゆうくん… 」

 女の声が聞こえてきた。

「ゆうくん… 赤ちゃん…いないの…」

 声がする方を振り返ると真琴が悠に向かって裸足で歩いてきていた。
 真琴の目から、口から、耳から蛆がポトリ…ポトリ…と溢れ出している。
 そんな真琴を見て、悠は、

「あ… 真琴… 来るな… 来るな…」

 ガタガタと震えながら、一歩、また一歩と後退りながら穴に近づいて行った。

「ゆうくん…ゆうくんもいなかったの…ゆうくん……ゆうくん!」

 真琴はガクガクと不自然な関節の動きをさせながら一気に駆け出し、悠に抱きつく様に飛びかかり、そのまま穴に落ちていった。

(今だ!)

 住職はお経を唱え、愛良を鎮めようとした。しかし、一向に静まる様子がない。

 空がどんどん暗闇に染まる。

「お前が恨んでいるものは、穴に落ちた!好きにしろ!だから、怒りを鎮めてくれ!」

 そう叫んだ住職に向かって、穴から黒い触手が伸びてきた。そのまま住職の体に絡みつき、有無を言わさず穴に引きずり込んだ。

 穴から湧き上がる大量の蛆。穴に落ちた3人は、そのまま穴から出てくる事はなかった。



 ◆◆◆



 真っ白い小さな花が咲き乱れた草原。

 その草原で、真っ白いワンピースを着た女が倒れていた。ピクリとも動かない。

 その女に背を向ける様に、一人の少女が立っていた。

「復讐はすんだかね?」

 少女に向けて真っ白な髪、真っ白な髭、真っ白な服を着た老人が声をかけた。

「えぇ。とりあえずは済みました」

 老人は、この地球を管轄する神。そして、倒れて動かなくなっているのは、日本を管轄している女神だ。

「すまなかった。ワシがもっと早く気づいておれば…。悪戯に人の運命を操作するなど、思っておらなんだ」

 死んだ愛良は、この神様によって、女神の事を知った。
 そして、神様の手により自分が死ぬように操作してくれたが、幸運値を最低まで下げられた愛良には、生埋めという苦しむ死に方しかさせられなかった。

 恨みの念の強い愛良。そんな愛良の復讐を果たす事を、この神は見逃してくれていたのだ。

 愛良の復讐相手は、女神と、悠達グループと、自分を見捨て、非難し、弄んだSNSをしているメンバー。自分達家族を蔑み見捨てた日本人全員だった。

 奇病と災害を齎し、悠達を殺し、女神を殺した。

「さて、これからどうするか決めてもらわねばならん。このまま霊体として残るなら、お主達の言葉で言う『悪霊』という型で残る事になる。それが嫌なら、魂の消滅じゃ」

 神は、申し訳ない気持ちを込めながら、

「すまんな。元は女神が原因とはいえ、ここまでの事をしてしまっては、輪廻転生からは外れる。生まれ変わる事は無理なんじゃ」

「かまいません。消滅させて下さい」

 愛良は遠くを見つめながら言った。

「もう、疲れました。消滅させて下さい」

「…わかった。せめて、安らかな眠りを…」

 神が手を一振り、愛良は少しずつ消えていった。

 神に弄ばれた少女は、静かに消えていった。



 ◆◆◆


 愛良が消滅した後も、日本はしばらく奇病に悩まされた。その間に経済は大打撃を受け、死亡者もたくさん出た。

 それが、愛良の復讐だとは、誰も気づく事はなかった。
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