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抱かれたまま眠ってしまって、起きたら昼食がテーブルに用意されていた。いつの間にか増えた椅子に向かい合って座り、すすめられるまま食べて、食後はまた抱かれた。終わってから下着をつけてシャツを羽織り、ベッドに戻って寝転がる。こんなふうにゴロゴロするの、大人になって初めてかもしれない。隣で寝てる毛皮に包まれた人はいつだって自分の縄張りみたいにゆったりしてて、この人はどういう人なんだろうと思った。
「聞いてもいいですか?」
「その喋り方やめんならいい」
「……はい。グィルゲンガも旅を?」
「いや、向こうのほうに生息してる魔獣の採取だ」
「え!?」
「角だけな」
驚いた私を見て目で笑った。ちょっと恥ずかしい。カバンに魔獣入れてるわけないよね。
商人の店でも角とか牙とか皮とか扱っていた。そういうものはハンターが色んなところから獲ってくるのだと知っている。
「ハンターなんです、……ハンターなの?」
「ああ」
横向きになってこちらを向いたオオカミが、腕を伸ばして私を胸に抱きかかえた。頭に鼻先をつけ、シャツの裾から手を入れて背中を撫でてる。
優しい触れ合いは落ち着かない。どうしていいかわからなくて。
「なんで、触るの……抱くだけって」
「アンタは抱き心地がいい」
不意の言葉に喉がつまった。
だって、背が高いからみっともないって。だって、体も貧相で魅力に乏しいって。気にすることないって言われたけど、それは言葉だけで。
ドキドキして緊張してしまうのに、肌に触れる毛皮は気持ち良い。
「慣れねぇなァ。怖ぇか?」
「…………少し」
「可愛がってんのに」
頬に添えられた大きな手で上を向かされ、唇を舐められた。柔らかい舌で閉じた唇の合わせ目を撫でられ、体がぐねるようなむず痒さに口が開く。平べったい長い舌が隙間から入り込んで、上顎をくすぐった。
「ん、……っふ、…………ん」
歯の付け根をチロチロなぞられて、どうにもできない切なさに足がシーツをかく。どんどん出てくるヨダレが、止めようもなく口の端から零れた。
グィルゲンガの舌に絡めとられ、自分でも夢中になって動かした。息と水音が頭の中をいっぱいにする。口付けがこんなにいやらしいなんて知らなかった。
離れていく口を追いかけたら、グィルゲンガと目が合った。
「いいツラしてんじゃねぇか」
ニヤリと笑ったからかいにカッとする。呆けてた自分が恥ずかしく、逃げるために無理矢理起きた。
「ご飯食べに行く」
「はァ?」
「食堂に行ってきます」
ベッドから降りようとしたら、グィルゲンガに抱き止められた。
「ダメに決まってんだろ。メシは俺が取ってくるから部屋から出るな」
「なんで?」
からかいの恥ずかしさが尾を引いて、決めつける言いかたにムッとなる。
「女一人でいかせるわけねぇだろ」
「猫背なら胸だってわからない」
「喉が違う。鼻がいいヤツなら血の匂いもわかる。ダメだ」
強く掴まれた腕が痛い。
「なんで」
「俺は護衛でアンタを守んのが仕事だ。それとも絡まれてぇのか?」
「……嫌」
鼻の上に皺を寄せた怖い顔で見据えられ、しぶしぶ否定した。
「なら大人しく部屋にいろ」
グィルゲンガはズボンをはきながら、そう言いおいて振り返らずに部屋を出た。
モヤモヤする。
絡まれたいわけない。背の高いことをからかわれた記憶がよみがえる。許嫁より少しだけ高い私へ向けられた、通りすがりのジロジロした目。商人の部屋から出た後に従業員たちから向けられる見下した目線。
そうじゃない。グィルゲンガがからかうから。ぼんやりしてまぬけな顔だろうけど、そんなふうに言うことないじゃない。色気なんかないってわかってる。けど、言われたくない。グィルゲンガは強くて格好いいから、だから、わからないんだ。からかったのは自分なのに、なんで怒るの?
ギュッと目をつぶって涙をこらえ、ノロノロ起き上がってズボンをはいた。
スープとパンを持ってグィルゲンガが戻り、お礼を言って席に着いた。何も喋らずに重苦しい食事をし、食べ終わったらすぐにグィルゲンガが食器を片付けに行った。
それも嫌味に思えてむしゃくしゃする。
帰ってきたら、椅子に座ったままの私を素通りしてベッドに座った。それだけのことなのに、なぜか気に障る。
べつに、用事なんかないし。
ジッと座ってたら背中から声がかかった。
「イルザ」
モヤモヤが喉につまって声が出ない。返事もしないなんて子供みたいで恥ずかしいと思ってるのに。
後ろも向けない。怖い。怒ってる?
商人が怒ってもウンザリするだけだったのに、なんでこんなに気になるの。なんで。
「イルザ、こっちにこい」
静かな声。もう怒ってない? 逆に呆れてるかも。こんな態度、ただ拗ねてるだけだ。
グィルゲンガが私のところまできて、腕を掴んだ。引っ張られたから立ち上がって、そのままついていく。
ベッドに座ったグィルゲンガがまだ腕を引くから、隣に座ろうとしたら腰を抱かれて膝の上に乗せられた。
……なにこれ。なに。なにこれ。
降りようと体を捩っても両腕が巻き付いてどうにもできない。私が離れようとしてるのに、グィルゲンガは頬ずりしてくるし、なんなの。
「な、に、なんで」
「落ち着け」
静かに言われたら、私だけが焦ってて恥ずかしくなる。悔しいけど動きを止めて、悔しいからそっぽを向いた。バカみたいだと自分でも思う。可愛くないうえ、嫌な奴になってる。
太ももの上で握り締めた両手に大きな硬い手が乗せられ、耳たぶを舐められた。肩が跳ねてしまったのも悔しい。
「なァに拗ねてんだ?」
拗ねてない、とは言えない。私はなんで怒ってるのか自分でもよくわかっていない。
「言えよ」
握った親指で手の甲を優しく撫でる。宥めるように。ううん、宥めてる。なんで私だけがワガママみたいになってるの?
今度は耳の縁をネロリと舐められ、また体がピクリとした。囁く息が吹きかけられる。
「イルザ、言え」
なんで怒ったの?
「…………閉じ込められてるみたい」
本当に言いたいこととは違うものを口にする。わかってる、仕事の邪魔をしたのは私だ。
「閉じ込めてんだよ」
「……え?」
へ? 閉じ込めてる? え!?
「なんで!?」
「男しかいねぇとこに女がいたら、いらねぇ注目されんだろ」
「出ちゃダメなの?」
「マント着てんならまだしも、このカッコじゃダメだ」
「マント着たら?」
「宿の中でマント着てるヤツなんかいねぇ。逆に目立つ」
腰に回された腕に力が入って、ギュッと抱きしめられた。
「それだけか?」
甘い声にドキドキしてしまう。ズルい。そんな、なんか、優しいみたいな声出して。そんな、甘やかすみたいにして。そんなの、だって嬉しくなるのに。
「……なんで、怒ったの」
「怒ってねぇ」
嘘だ。俯いたままでいたら、グィルゲンガがため息をついた。
「イラついただけだ」
「……邪魔したから?」
「無防備だからだよ。自分が女だってわかれ」
「見えないって、いつも……。そんなふうに見えるわけない」
「そんなふうってどんなだよ? アンタは女だ。ここも」
大きな手の平が私の喉を包み、ゆっくり移動して肩を掴む。
「ここも」
脇を通って胸の膨らみを横から柔らかく揉み上げる。
「ここだってそうだろ」
反応したくないのに、硬くなった乳首をシャツの上から摘ままれて息が零れた。なし崩しになりそうなのが悔しくて、気持ちが反発する。
自分だって気づかなかったくせに。なんでこんなこと言うの?
「……会ったとき、気づかなかった」
「マントとマスクで隠れてたろ。その上、ひでぇ臭いさせて」
胸からゆっくり滑り降りた手がズボンの紐を解いて、中に入る。下着に潜り込んだ指で下生えを掻き分け、敏感な粒を刺激しながら、耳たぶに牙を立てて囁いた。
「でも今は女の匂いだ。ほら」
指が割れ目に侵入して、ヌルヌルとヒダを撫でる。手の平が当たる粒から甘い痺れがこみ上げ、すぐそばの指を飲み込みたいと穴がヒクついた。ズルいと思うのに反応する体を止められない。
だって、嫌だ、ただの契約なのに、なんで、こんなことして、嬉しくなること言って。
「ぁ、……んっ」
抵抗なく入り込んだ指に浅いところをクルクル撫でられ、腰が震えた。熱に浮かされる内側が蠢いて、もっと奥へ誘い込もうとする。
「わかんだろ? いい加減自覚しろよ、アンタは女だ。ココだって上等だぜ?」
「んぅ、ちが、ぅ……ぁ」
「こんなイイ匂いさせてんのに?」
そんなことない。ないけど、嬉しい。だって、グィルゲンガがそう言ってる。
首をペロペロ舐める舌に、背中の痺れがおさまらない。増えた指が奥へ進んで中を掻きまわし、いやらしい水音をわざと立ててる。
気持ち良さに流されて、考えられなくなっていく。
「メチャクチャに犯したくなる匂いだ。だから閉じ込めてる。俺がいつでも犯せるように」
言葉とは裏腹の優しい指がトントン叩いて波を起こす。背中を仰け反らせるような疼きに耐えられず、グィルゲンガの首にしがみついた。もどかしさがどうしようもなくて、頬に触れる柔らかい毛に顔を擦り付ける。
「あっ、あ、ぁ、……ぁあ、あ」
「イケよ、イルザ。イったら突っ込んで、アンタん中にぶちまけるから」
グィルゲンガの声でお腹の奥が熱くなる。優しくない言葉なのに嬉しくてゾクゾクした。腰に回されてた手が胸に伸びて乳首を摘まむ。鋭い快感と早くなった指の動きに押し上げられ、快感が収縮してグィルゲンガの指に吸い付いた。
「あ、や、ぁ、ぁ、っぁ――――――ぁ、……っふぁ」
グィルゲンガの肩の毛に掴まって飛んだ。ギュウギュウと動く中にある太い指の存在が、たまらなく胸を締めつける。
固まった体が緩んだら、グィルゲンガは指を抜いてそれを自分の口に咥えた。モゴモゴと口を動かしてから指を出して、ニヤリと笑う。
「毛皮、気に入ったか?」
言われて気づき、頬ずりしてた顔を慌てて離したら両手で抱き止められた。
「掴まっててぇんだもんなァ、ククッ」
からかう言葉なのに、声音に不穏さが漂う。飛びかかる隙を狙ってるような。それは私の背中をゾクッとさせて逃げ道を塞いでしまう。
大きな手がシャツを脱す。私の腕を掴んで自分の首に回させ、頬ずりをしてきた。背中と膝に腕を入れて持ち上げたグィルゲンガが体を回して、私をベッドに降ろした。手は優しいのに、火に炙られてるみたいな目をしてる。
湿った鼻が私の鼻先に、口元の短い毛が唇に触れる。柔らかい舌が唇の合わせ目を撫でて催促する。薄い柔らかな舌のフチを唇で咥えたら、角度を替えた口を大きく開けて奥まで押し込まれた。
蹂躙という言葉がピッタリの口付け。でも嫌じゃない。むしろ嬉しい。こんなふうに求められてみたかった。
首に回した手に力が入る。グィルゲンガの頭の毛を掻きまわし、フカフカな耳を指で撫でた。
触りたい。あなたに触りたくて、あなたに触ってほしい。絡みつく舌に吸い付いて、ヨダレを飲み込んだ。
グィルゲンガの片手が私のズボンにかかって、脱がされる。ひざ下に下げられたズボンと、ブーツは自分の足で脱いだ。腰をベッドから出すために体をずらすと、グィルゲンガが口付けしながらついてくる。いつのまにかズボンを脱いでたグィルゲンガは、私の足のあいだに体を割り込ませて下着を剥がした。
性急に押し込まれ、呻き声が出る。突き上げられて揺れる私の肩を、大きな両手が押さえた。
「メチャクチャにしてぇって言ったろ、なァ」
「あっ、…………んっ、ぅ、あ、……ふ……ん」
「アンタは、女だ」
熱い息が吹きかけられる。目を開けたら、牙を剥きだして笑うオオカミがいた。バチュバチュ音を立てて打ち付け、呼吸荒く笑ってる。怖いのに、待ち遠しい。
「俺は、アンタに、突っ込んで、っは、ァあ……塞いで種付けしてぇんだよ」
腰の動きが変わり、広がった感覚でもう少しだと思う。抉って掻きまわし、出すためだけの動作が嬉しくて痺れが走る。それがほしいと下腹の奥が疼いた。ほしい。グィルゲンガが。
「あっ、イルザ、っァ」
色っぽい声で私を呼んだ。
気持ちいいの。グィルゲンガも気持ちいい?
両手で腰を強く押さえつけられ、奥をえぐるように突き上げられた。出される悦びに、中が強く収縮する。
「あっぐ、ぅっくっ――――――」
「んんんっーーーーーーーー」
急に昇り詰めた体が大きく蠕動してる。グィルゲンガの手は緩まない。大きく長い息を吐いたあと、私のほうへ体を倒した。
私の小さい胸に頬ずりして乳首を舐めてる。イったばかりで敏感な体は、それだけで反応した。
「っん、ぁ……ん、ぅ」
「わかったか?」
「な、に?」
「自分が女だって」
「う、……はい」
返事をしたら満足そうに笑った。
「イイ女だ」
「……どこが?」
「体がイイ。匂いもイイ。わかりやすいツラしてんのもイイ。自分からクソまみれになんのも面白れぇ」
いいツラってそういう意味? なんなの。わけわかんない。
途中から恥ずかしくなって両手で顔を隠した。言われたことのない褒め言葉で、おかしくなりそう。
抵抗したのに無理矢理外された手を頭の脇で押さえられ、ニヤニヤしてるグィルゲンガに覗き込まれた。なんかムカつく。
「明日も泊まるからな」
「え? なんで? 明日も雨なの?」
「晴れても泊まる。こんだけ雨降ったら、道が悪くなってるからな。これがどういうことかわかるか?」
「歩くときは気をつける?」
「いいや。アンタは明日も俺に抱かれるってことだよ」
なんだか楽しそうなグィルゲンガに抱きしめられ、私は緩みそうな口を引き締めて顔を背けた。
「聞いてもいいですか?」
「その喋り方やめんならいい」
「……はい。グィルゲンガも旅を?」
「いや、向こうのほうに生息してる魔獣の採取だ」
「え!?」
「角だけな」
驚いた私を見て目で笑った。ちょっと恥ずかしい。カバンに魔獣入れてるわけないよね。
商人の店でも角とか牙とか皮とか扱っていた。そういうものはハンターが色んなところから獲ってくるのだと知っている。
「ハンターなんです、……ハンターなの?」
「ああ」
横向きになってこちらを向いたオオカミが、腕を伸ばして私を胸に抱きかかえた。頭に鼻先をつけ、シャツの裾から手を入れて背中を撫でてる。
優しい触れ合いは落ち着かない。どうしていいかわからなくて。
「なんで、触るの……抱くだけって」
「アンタは抱き心地がいい」
不意の言葉に喉がつまった。
だって、背が高いからみっともないって。だって、体も貧相で魅力に乏しいって。気にすることないって言われたけど、それは言葉だけで。
ドキドキして緊張してしまうのに、肌に触れる毛皮は気持ち良い。
「慣れねぇなァ。怖ぇか?」
「…………少し」
「可愛がってんのに」
頬に添えられた大きな手で上を向かされ、唇を舐められた。柔らかい舌で閉じた唇の合わせ目を撫でられ、体がぐねるようなむず痒さに口が開く。平べったい長い舌が隙間から入り込んで、上顎をくすぐった。
「ん、……っふ、…………ん」
歯の付け根をチロチロなぞられて、どうにもできない切なさに足がシーツをかく。どんどん出てくるヨダレが、止めようもなく口の端から零れた。
グィルゲンガの舌に絡めとられ、自分でも夢中になって動かした。息と水音が頭の中をいっぱいにする。口付けがこんなにいやらしいなんて知らなかった。
離れていく口を追いかけたら、グィルゲンガと目が合った。
「いいツラしてんじゃねぇか」
ニヤリと笑ったからかいにカッとする。呆けてた自分が恥ずかしく、逃げるために無理矢理起きた。
「ご飯食べに行く」
「はァ?」
「食堂に行ってきます」
ベッドから降りようとしたら、グィルゲンガに抱き止められた。
「ダメに決まってんだろ。メシは俺が取ってくるから部屋から出るな」
「なんで?」
からかいの恥ずかしさが尾を引いて、決めつける言いかたにムッとなる。
「女一人でいかせるわけねぇだろ」
「猫背なら胸だってわからない」
「喉が違う。鼻がいいヤツなら血の匂いもわかる。ダメだ」
強く掴まれた腕が痛い。
「なんで」
「俺は護衛でアンタを守んのが仕事だ。それとも絡まれてぇのか?」
「……嫌」
鼻の上に皺を寄せた怖い顔で見据えられ、しぶしぶ否定した。
「なら大人しく部屋にいろ」
グィルゲンガはズボンをはきながら、そう言いおいて振り返らずに部屋を出た。
モヤモヤする。
絡まれたいわけない。背の高いことをからかわれた記憶がよみがえる。許嫁より少しだけ高い私へ向けられた、通りすがりのジロジロした目。商人の部屋から出た後に従業員たちから向けられる見下した目線。
そうじゃない。グィルゲンガがからかうから。ぼんやりしてまぬけな顔だろうけど、そんなふうに言うことないじゃない。色気なんかないってわかってる。けど、言われたくない。グィルゲンガは強くて格好いいから、だから、わからないんだ。からかったのは自分なのに、なんで怒るの?
ギュッと目をつぶって涙をこらえ、ノロノロ起き上がってズボンをはいた。
スープとパンを持ってグィルゲンガが戻り、お礼を言って席に着いた。何も喋らずに重苦しい食事をし、食べ終わったらすぐにグィルゲンガが食器を片付けに行った。
それも嫌味に思えてむしゃくしゃする。
帰ってきたら、椅子に座ったままの私を素通りしてベッドに座った。それだけのことなのに、なぜか気に障る。
べつに、用事なんかないし。
ジッと座ってたら背中から声がかかった。
「イルザ」
モヤモヤが喉につまって声が出ない。返事もしないなんて子供みたいで恥ずかしいと思ってるのに。
後ろも向けない。怖い。怒ってる?
商人が怒ってもウンザリするだけだったのに、なんでこんなに気になるの。なんで。
「イルザ、こっちにこい」
静かな声。もう怒ってない? 逆に呆れてるかも。こんな態度、ただ拗ねてるだけだ。
グィルゲンガが私のところまできて、腕を掴んだ。引っ張られたから立ち上がって、そのままついていく。
ベッドに座ったグィルゲンガがまだ腕を引くから、隣に座ろうとしたら腰を抱かれて膝の上に乗せられた。
……なにこれ。なに。なにこれ。
降りようと体を捩っても両腕が巻き付いてどうにもできない。私が離れようとしてるのに、グィルゲンガは頬ずりしてくるし、なんなの。
「な、に、なんで」
「落ち着け」
静かに言われたら、私だけが焦ってて恥ずかしくなる。悔しいけど動きを止めて、悔しいからそっぽを向いた。バカみたいだと自分でも思う。可愛くないうえ、嫌な奴になってる。
太ももの上で握り締めた両手に大きな硬い手が乗せられ、耳たぶを舐められた。肩が跳ねてしまったのも悔しい。
「なァに拗ねてんだ?」
拗ねてない、とは言えない。私はなんで怒ってるのか自分でもよくわかっていない。
「言えよ」
握った親指で手の甲を優しく撫でる。宥めるように。ううん、宥めてる。なんで私だけがワガママみたいになってるの?
今度は耳の縁をネロリと舐められ、また体がピクリとした。囁く息が吹きかけられる。
「イルザ、言え」
なんで怒ったの?
「…………閉じ込められてるみたい」
本当に言いたいこととは違うものを口にする。わかってる、仕事の邪魔をしたのは私だ。
「閉じ込めてんだよ」
「……え?」
へ? 閉じ込めてる? え!?
「なんで!?」
「男しかいねぇとこに女がいたら、いらねぇ注目されんだろ」
「出ちゃダメなの?」
「マント着てんならまだしも、このカッコじゃダメだ」
「マント着たら?」
「宿の中でマント着てるヤツなんかいねぇ。逆に目立つ」
腰に回された腕に力が入って、ギュッと抱きしめられた。
「それだけか?」
甘い声にドキドキしてしまう。ズルい。そんな、なんか、優しいみたいな声出して。そんな、甘やかすみたいにして。そんなの、だって嬉しくなるのに。
「……なんで、怒ったの」
「怒ってねぇ」
嘘だ。俯いたままでいたら、グィルゲンガがため息をついた。
「イラついただけだ」
「……邪魔したから?」
「無防備だからだよ。自分が女だってわかれ」
「見えないって、いつも……。そんなふうに見えるわけない」
「そんなふうってどんなだよ? アンタは女だ。ここも」
大きな手の平が私の喉を包み、ゆっくり移動して肩を掴む。
「ここも」
脇を通って胸の膨らみを横から柔らかく揉み上げる。
「ここだってそうだろ」
反応したくないのに、硬くなった乳首をシャツの上から摘ままれて息が零れた。なし崩しになりそうなのが悔しくて、気持ちが反発する。
自分だって気づかなかったくせに。なんでこんなこと言うの?
「……会ったとき、気づかなかった」
「マントとマスクで隠れてたろ。その上、ひでぇ臭いさせて」
胸からゆっくり滑り降りた手がズボンの紐を解いて、中に入る。下着に潜り込んだ指で下生えを掻き分け、敏感な粒を刺激しながら、耳たぶに牙を立てて囁いた。
「でも今は女の匂いだ。ほら」
指が割れ目に侵入して、ヌルヌルとヒダを撫でる。手の平が当たる粒から甘い痺れがこみ上げ、すぐそばの指を飲み込みたいと穴がヒクついた。ズルいと思うのに反応する体を止められない。
だって、嫌だ、ただの契約なのに、なんで、こんなことして、嬉しくなること言って。
「ぁ、……んっ」
抵抗なく入り込んだ指に浅いところをクルクル撫でられ、腰が震えた。熱に浮かされる内側が蠢いて、もっと奥へ誘い込もうとする。
「わかんだろ? いい加減自覚しろよ、アンタは女だ。ココだって上等だぜ?」
「んぅ、ちが、ぅ……ぁ」
「こんなイイ匂いさせてんのに?」
そんなことない。ないけど、嬉しい。だって、グィルゲンガがそう言ってる。
首をペロペロ舐める舌に、背中の痺れがおさまらない。増えた指が奥へ進んで中を掻きまわし、いやらしい水音をわざと立ててる。
気持ち良さに流されて、考えられなくなっていく。
「メチャクチャに犯したくなる匂いだ。だから閉じ込めてる。俺がいつでも犯せるように」
言葉とは裏腹の優しい指がトントン叩いて波を起こす。背中を仰け反らせるような疼きに耐えられず、グィルゲンガの首にしがみついた。もどかしさがどうしようもなくて、頬に触れる柔らかい毛に顔を擦り付ける。
「あっ、あ、ぁ、……ぁあ、あ」
「イケよ、イルザ。イったら突っ込んで、アンタん中にぶちまけるから」
グィルゲンガの声でお腹の奥が熱くなる。優しくない言葉なのに嬉しくてゾクゾクした。腰に回されてた手が胸に伸びて乳首を摘まむ。鋭い快感と早くなった指の動きに押し上げられ、快感が収縮してグィルゲンガの指に吸い付いた。
「あ、や、ぁ、ぁ、っぁ――――――ぁ、……っふぁ」
グィルゲンガの肩の毛に掴まって飛んだ。ギュウギュウと動く中にある太い指の存在が、たまらなく胸を締めつける。
固まった体が緩んだら、グィルゲンガは指を抜いてそれを自分の口に咥えた。モゴモゴと口を動かしてから指を出して、ニヤリと笑う。
「毛皮、気に入ったか?」
言われて気づき、頬ずりしてた顔を慌てて離したら両手で抱き止められた。
「掴まっててぇんだもんなァ、ククッ」
からかう言葉なのに、声音に不穏さが漂う。飛びかかる隙を狙ってるような。それは私の背中をゾクッとさせて逃げ道を塞いでしまう。
大きな手がシャツを脱す。私の腕を掴んで自分の首に回させ、頬ずりをしてきた。背中と膝に腕を入れて持ち上げたグィルゲンガが体を回して、私をベッドに降ろした。手は優しいのに、火に炙られてるみたいな目をしてる。
湿った鼻が私の鼻先に、口元の短い毛が唇に触れる。柔らかい舌が唇の合わせ目を撫でて催促する。薄い柔らかな舌のフチを唇で咥えたら、角度を替えた口を大きく開けて奥まで押し込まれた。
蹂躙という言葉がピッタリの口付け。でも嫌じゃない。むしろ嬉しい。こんなふうに求められてみたかった。
首に回した手に力が入る。グィルゲンガの頭の毛を掻きまわし、フカフカな耳を指で撫でた。
触りたい。あなたに触りたくて、あなたに触ってほしい。絡みつく舌に吸い付いて、ヨダレを飲み込んだ。
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性急に押し込まれ、呻き声が出る。突き上げられて揺れる私の肩を、大きな両手が押さえた。
「メチャクチャにしてぇって言ったろ、なァ」
「あっ、…………んっ、ぅ、あ、……ふ……ん」
「アンタは、女だ」
熱い息が吹きかけられる。目を開けたら、牙を剥きだして笑うオオカミがいた。バチュバチュ音を立てて打ち付け、呼吸荒く笑ってる。怖いのに、待ち遠しい。
「俺は、アンタに、突っ込んで、っは、ァあ……塞いで種付けしてぇんだよ」
腰の動きが変わり、広がった感覚でもう少しだと思う。抉って掻きまわし、出すためだけの動作が嬉しくて痺れが走る。それがほしいと下腹の奥が疼いた。ほしい。グィルゲンガが。
「あっ、イルザ、っァ」
色っぽい声で私を呼んだ。
気持ちいいの。グィルゲンガも気持ちいい?
両手で腰を強く押さえつけられ、奥をえぐるように突き上げられた。出される悦びに、中が強く収縮する。
「あっぐ、ぅっくっ――――――」
「んんんっーーーーーーーー」
急に昇り詰めた体が大きく蠕動してる。グィルゲンガの手は緩まない。大きく長い息を吐いたあと、私のほうへ体を倒した。
私の小さい胸に頬ずりして乳首を舐めてる。イったばかりで敏感な体は、それだけで反応した。
「っん、ぁ……ん、ぅ」
「わかったか?」
「な、に?」
「自分が女だって」
「う、……はい」
返事をしたら満足そうに笑った。
「イイ女だ」
「……どこが?」
「体がイイ。匂いもイイ。わかりやすいツラしてんのもイイ。自分からクソまみれになんのも面白れぇ」
いいツラってそういう意味? なんなの。わけわかんない。
途中から恥ずかしくなって両手で顔を隠した。言われたことのない褒め言葉で、おかしくなりそう。
抵抗したのに無理矢理外された手を頭の脇で押さえられ、ニヤニヤしてるグィルゲンガに覗き込まれた。なんかムカつく。
「明日も泊まるからな」
「え? なんで? 明日も雨なの?」
「晴れても泊まる。こんだけ雨降ったら、道が悪くなってるからな。これがどういうことかわかるか?」
「歩くときは気をつける?」
「いいや。アンタは明日も俺に抱かれるってことだよ」
なんだか楽しそうなグィルゲンガに抱きしめられ、私は緩みそうな口を引き締めて顔を背けた。
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他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
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