誰がための香り【R18】

象の居る

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27.春の花 ※

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 家に荷物を置いてから屋台通りに行った。こっちは人間が少ないから、やっぱりジロジロ見られる。鬱陶しいと思ってたら、リディが繋いでる手を引っ張って俺を見上げた。不安そうな顔に胸が痛くなったのを隠して笑う。

「あの、平気?」
「俺はいいけど、リディは平気か?」
「え、ええと、少し気になるくらい? かな」
「抱き上げるか? 顔隠れるぞ」

 腕をリディのほうに伸ばすと、驚いて体を離した。

「無理っ。そんなのっ」
「ハハハ、すげぇ顔して」

 焦った顔が可笑しくて笑ったら、リディも笑った。

「いちいち面倒くせぇから、好きにやることにしたんだ。知らねぇヤツなんかどうでもいいだろ」
「……そうですね。私もそうする」

 冬用のコートを脱いだら気分まで軽くなった。まだ少し背中がもぞもぞするけど、そのうち慣れるだろ。なんたって、俺はリディをずっと守るんだから。
 結婚の承諾を思い出して、今度は尻尾の付け根がもぞもぞした。

 揚げパンの屋台にいったらクマの店主が嬉しそうに話しかけてきた。

「久しぶりだね。薬ありがとう。それをずっと言いたくて」
「いいえ、私は少しだけお手伝いでした」
「それでも嬉しいよ。私は軽いほうだったけど、体が思うように動かないのはしんどかったから。今日のお代は結構だ。ささやかだけどお礼を受け取ってもらえるかな?」
「……ありがたく受け取ります。ずっと食べたいって思ってたんです」

 リディの涙目を拭ってやる。

「よかったな」
「はい」

 すごく嬉しそうに笑ったリディは春みたいで、そこだけチカチカ眩しく見えた。

 明日の朝メシを買って、家に帰ったら抱こうと思ってたのにリディはすぐに掃除を始めた。俺もリディに指示された通りゴミ捨てや洗い物をする。さっさと終わらせて声をかけた。

「なぁ、もういいだろ」
「そうですね、残りは明日」
「久しぶりなのに、なんで掃除なんかすんだよ」
「臭いから。なんで平気なの?」
「慣れてっから? 兵団も男ばっかで似たようなもんだ」
「えぇぇ」

 変な顔で変な声出して。面白れぇなぁ。ホントはこんななんだ。初めて見るリディが嬉しくて、抱き上げてベッドに連れ込む。

「かわいいな」
「……いきなり」

 また赤くなった。いちいち可愛いってなんなんだ? 煽ってんのか?

「式はどうする?」
「え、あ、わかりません。こっちの式ってどんなふう?」
「家にお互いの家族と親戚と知り合い呼んで飲み食いするくらいか。リディんとこは?」
「大体同じ。女は嫁入り道具を準備して、男は布団とか生活道具を準備します。小さい村だから、結婚式には村人全員で踊るんです」
「へぇ。俺たちは花嫁を迎えに行って、抱えて家まで戻ってくんだよ」
「それは大変」
「力自慢できるから、わざわざ遠回りして喜んでるぜ。リディは小せぇから楽だな」
「力自慢にならなくても、大丈夫?」

 また困った顔をした。

「片手で抱けば十分だろ。めったにいないぜ片手で抱けるヤツ。それよか、リディの家族は?」
「……いないってことにしてください」
「思い出したくねぇってことか?」
「はい」
「ふーん、わかった。話したくなったら話せよな。無理にとは言わねぇ。リディ以外はどうでもいいけど、リディのことは知っておこうと」

 あ、ちょっとまずいかもと、目を見開いたリディの顔を見て思った。

「あ、いや、どうでもいいって言ったのは、えーと」

 リディを売ったヤツらなんてどうでもいいんだけど、なんかそうじゃない言い方、……思いつかねぇ。
 焦ってたらリディが笑い出した。体を丸めて声を上げて笑うリディにあっけにとられる。どうしたらいいか分からずにいたら、笑いながら涙を拭いて俺を見た。

「実は私もどうでもいいの。もう関わり合いになりたくないから」
「そうか」
「はい。だから、家族は死んだってことにします」

 ずいぶんとサッパリした笑顔で言い切るリディに気圧されて頷いた。
 本人がそれでいいなら、何も言うことねぇな。まずいこと言っちまったと焦ったけど助かった。
 でもそうなるとリディは家族がいないことになる。小さいリディが一人なのは少し寂しい気がした。少しでも知り合いを作ってこの国にいるリディが心細くないようにしたい。

「よし、式は挙げる。俺の実家で挙げる。親父が手を貸すって言ってたんなら借りようぜ。細けぇこと知らねぇし」
「お金かかるし、私は特にしなくても」
「金のことは気にすんな。爺さんの残した金使うから」
「それこそ嫌がるんじゃ」
「さんざん振り回されてんだから、いんだって。あー、でも親戚はちょっと人間があれかもなぁ。俺は言われてもいいけど」
「うーん、でもこれからもあると思うし、どんなものか知っておくのもいいかな」
「……強いな」
「そうかな。ジェイクと一緒だと頑張れるみたい」

 薄っすら頬を染めて笑うリディに心臓を掴まれる。たまんない気持ちで覆い被さった。

 口の中に舌を突っ込んでムチャクチャに舐めまわす。俺に応えようとする短い舌に絡みついて吸い上げた。

 焦ってボタンを外してると、リディも手伝ってくれた。求めてるのが俺だけじゃないってわかんの、すげぇ興奮する。深く口を合わせて舌を絡め合いながら、2人でその先を求めてる。リディの下着を脱がせるときだけ口を離し、すぐにまた口付けた。少しも離れたくない。

 胸を揉みながらチンポの先でクリトリスを擦る。2人分のヌルつきが広がって、それだけで気持ち良い。リディの喉から溢れる声を舌に絡めて飲み込み、揺れる腰が逃げないようにのしかかった体で押さえつけた。

 リディの小さい手が俺の首の毛を掻きまわす。欲しがるような指先にゾクゾクと毛が逆立った。硬くなった乳首を軽く押し込めると体が跳ね、摘まむと背中を仰け反らせた。
 リディの小さな反応一つ一つが嬉しい。可愛い俺のリディ。白くて細い首筋を舐めたら、仰け反らせて掠れた喘ぎを漏らした。

「気持ちいいか?」
「ん、気持ちいい……、っぁ」

 手の中で立ち上がってる乳首を舌で擦る。ベロベロと何度も擦りあげるたび、リディは体を捩って腰を揺らした。ヌルヌルする割れ目に指を這わせると、ヒクついて飲み込もうとする。一本入れたら簡単に飲み込んで締め付けてきた。指の腹で軽く押すと俺に腰を押し付けてくる。
 もっと乱れる声を聞きたくて乳房を口に咥え、空いた手でクリトリスも一緒に揉んだら、俺の指に食いついて体を硬直させた。

「っあ、あっ、やっ、……んんっぁ――――っ」

 柔らかい皮の肌は花びらみたいにほんのり色付いてる。俺の手で咲かせたんだと思うとたまらない欲情が湧き上がった。
 両ひざを押し上げて、赤く充血したソコを上向きに晒す。目の前でヒクヒクと蜜を溢れさせ、その香りで俺を誘う。

「ぁ、いや」
「なんでだ?」
「恥ずかしい」

 潤んだ目が俺を見てる。それにまた煽られた。

「俺が興奮すんだよ」

 舌で蜜を掬って舐める。リディは体を跳ねさせて高い声を上げた。もっと鳴けよ、リディ。
 耳の毛を震わせる声が頭の中で響く。何度も掬って舐め、舌先で窪みをほじると咥え込もうと吸い付いてきた。

「なぁ、欲しいか?」
「あ、……はい」

 手で顔を隠してか細い声で返事をした。なぁ、欲しいって言えよ、俺を。俺と同じくらい欲しいって。

 リディの小さな穴に押し入る。俺を咥え込んで広がる穴は、背中をゾクゾクさせる。根元まで押し込んでグリグリ擦り付けると、シーツを必死に掴んだリディが鳴いて締め付ける。ギュウギュウ抱き付いて搾り取ろうとする。
 リディの手をシーツから外して俺の首に回させた。もっと近づいて触ってほしい。

「俺に掴まれよ、リディ。リディ、俺のかわいいリディ」
「っぁ、……ジェイク、ジェイク、好き」

 小さい鼻をグスグス言わせてポロリと涙をこぼし、俺にしがみつく。

「ぁあ、リディ、どこにも行くな」
「うん、……うん、ジェイク」

 なんでこんなに可愛いんだ? どこもかしこも可愛くて愛しくてたまらない。
 このままずっと抱いてたくてゆるく動く。それなのに気持ち良くて、全身でしがみつくリディが可愛くて、手に入れたくて仕方ない。

「リディ、っは、でそう」
「うん、ジェイク」

 俺の毛を掴む小さい手に力が入る。

「気持ち良すぎるっ」
「……っん、ぁあっ、……ぁアアあっ」

 奥に突っ込んで引っ掛かりに擦り付けるとリディの体に力が入った。
 締め付けてうねるリディに持っていかれる。唸り声が抑えられない。出し切るまで、リディの柔いケツを鷲掴んで腰をグリグリ押し付けた。

 目をつむって荒い息を繰り返すリディを見下ろす。

 リディの中に出して俺のモンにしたい。でもそんなことしたって俺のモンにならない。どこいっても真っ直ぐに頑張ってるリディは、リディだ。
 俺は一緒にいてくれって祈って、抱きしめるだけ。好きだって言ってくれるリディとずっといられるように力をつくすだけ。

 一息ついてリディの口を舐めたら、トロンとした気の抜けた顔で笑って俺の首に抱き付いた。

「かわいいな」
「っ……ふふ」

 嬉しそうに頬ずりするリディの頭を撫でた。


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