ポンコツな私と面倒な夫達 【R18】

象の居る

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43.変化するもの Side エーミール

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3話投稿 1/3
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Side エーミール

私の事などどうでもいいと思っている。体だけだ。体だって、ただの義務だ。妻として夫に応えているだけ。
それなのに『一緒に』と言う。私と一緒に快感を味わいたいと可愛いことを言う。果てる私を追いかけて一緒に昇る。切ない声で私の名を呼ぶ。

ユウナギに名を呼ばれると、体中の魔力がゾワリとした。

ベッドでは甘えるのに、終わると素っ気ない。あれほど乱れて、余韻も残らない。私の影響など何一つ受けていない。駆け引きでもない。興味がないだけだ。

私を一顧だにせず森の夫達だけを見ているのが、癪に障った。
もう少し二人の時間を持てば、私にも目を向けるかもしれない。森の夫達のように、少しは気に掛けるようになるかもしれない。

しがらみのない楽な相手だと思っていたのに、振り向いて欲しいと思い始めてしまった。
義務感で私と寝る相手なんて初めてだったから。甘えておいて余韻も残さない相手なんて初めてだったから。

小指の婚約者が気に掛かった。白い中に虹色の輝きが浮かぶ不思議な石の指輪だった。随分と良い品物に思える。裕福なのか?地位が高いのか?あの指輪もまたユウナギの国の物だろうか?ユウナギの国に婚約者を残してきた?それとも、まだ決まっていない?
決まっていないなら、私の邪魔にならない相手を探さなければ。

地位の高い相手なら、私と会う時間が減るかもしれない。森の夫達のようにユウナギが気に掛ける相手なら、私を見ないままかもしれない。
薄ら寒い心地がした。

ユウナギの為に仕立て屋を呼んだ。理由はあるけれど、贈り物をしたかった。そう、妻に贈り物をしない夫なぞ居ない。
ユウナギは喜ばない。必要だから受け取るだけだ。私からの贈り物は私の部屋に留まり、ユウナギと共には居られない。クリームや香油は持っていってもらえた。必要だから、それだけだ。
神話の語りは喜んだのに。私の腕の中で楽しそうに笑って聞いていた。

抱きしめると身を固くした。贈り物のことで私を不愉快にしたと思ったのかもしれない。少し残念に思っただけなのに。怯えられる方がよほど悲しかった。昨夜の楽しい語らいの間、私の腕の中にあった暖かな柔らかさは消えてしまった。

時間が足りないのだろう。きっと。

気を遣ったのか、夜は私の為に装ってくれた。ユウナギの国は楽しみに貪欲なようだ。商売について話していたが、ユウナギを外に出したくなかった。会わせるのも嫌だ。男娼なんて以ての外だ。ユウナギが気に掛けるものを増やしたくない。
頼りない夜着で体を隠すのは、そそられるものがあった。隠しているようで隙間から誘うのだ。ユウナギの気遣いも嬉しかった。

喜ぶ声を聞きたかった。ユウナギの声を。私が与える快楽に喜ぶ声を。

ユウナギはベッドでなら甘える。嬉しかったのに、森の夫を引き合いに出してしまった。私には地位も金も経験もあるけれど、20代より体力が落ちたのは確かだった。ユウナギの言う『一緒に』は私を少し不安にした。

関係ない、と言った。他は関係ないと。
二人だけの時間だから他は関係無い。ユウナギは私の部屋で森の夫達の話をしたことがない。そうだった。私といる時は私だけを見ているのだ。
ここは私のベッドで、今は私だけの物。私だけの時間だ。

ユウナギに入り込んでしっかり抱き合う。今は私だけを見ていることが嬉しくて堪らなく、このまま離れたくなかった。
この時間を長く味わいたくて、ゆっくりと動かしゆっくりと口付けた。ユウナギは温かく、柔らかに私を受け止め包み込む。肌を重ねる喜びで高まっていく私と呼応するように、ユウナギの中が吸い付き出す。私の名を呼ぶ切ない声に、胸が痛み快感が募った。ユウナギの硬直に襲われて弾ける。

何度となく昇った頂なのに、なぜだか途方に暮れた。ユウナギに抱かれて漂う。寄り添われているのに、迷子のように一人きりだった。


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