ポンコツな私と面倒な夫達 【R18】

象の居る

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59.閑話 いつかの月夜

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2話投稿 1/2

時系列が少し前の話です。

_______________


「ミカちゃん、お月見しようよ。お月様を見るんだよ」
「おつきみ?おつきさま?」
「月だよ。家の前に出よう。家の前なら夜でも大丈夫でしょ?」
「うん」

お茶を入れたコップを持って外に出て、月が良く見える場所に座った。

「ここの月は大きくて青いね。私の国はね、もっと遠くで小さくて、白とか白っぽい灰色とか、そういう色だった」
「へーどれくらい小さいの?」
「うーん、これくらい」

指で輪を作り、月にかざした。随分と大きさが違うな。

「すごく小さい月だね」
「私の国に『かぐや姫』ってお話があるの。月から来て月に帰ったお姫様の話。この国にも月のお話ある?」
「んー、俺は知らない。親から聞いた話は森の話と、あと、忘れた、かな?じいさんからも聞いたことない」

おおっと。本じゃないよね、口伝だよねぇ。ミカちゃん、親の話はしても平気かな。

森の話を聞くと、夜に眠らないと森の魔物がやってきて遊ぼうと誘う、それに付いて行ったら二度と森から帰れない、森の魔物に攫われる、という子供を脅す系の話だった。

「早く寝ないと森から魔物が来るって言われて、楽しみにしてたんだけど、俺、寝ちゃうんだよね。ユウのかぐや姫ってどんな話?」

脅しが効果ないタイプの子供だった。しかも寝つきが良い。すくすく育っちゃうな。

かぐや姫の話をする。

「ユウの国は求婚の指輪じゃなくて、すごい宝物がいるんだね。俺、良かった、ユウがそんなこと言わなくて。どこに探しに行ったらいいかわかんないよ。ユウは指輪いらないって、俺だけで良いって、言ってくれて凄く嬉しかった。ふふっ。それに、かぐや姫の月の国は強い魔法使いがいるんだね。月から飛ぶ魔法を使えるし、凄い魔法使いだよ」

うーん、現実に合わせて解釈された。そうか。月の使者は魔法使いか。確かに、っぽいぽい。しかも、宝物の場所知ってたら探しに行くんかい。指輪いらないとは言ったけど、ミカちゃんだけで良い、とか漢らしいこと言ったっけ~?言ったかな~?断言されちゃうと、わかんなくなるな。まあ、ミカちゃんだけでいいから、良いんだけど。

私のちゃちな感傷は現実に粉砕されてしまった。ミカちゃん、めっちゃ現実的。まあ、実録グリム童話を生き抜くには、現実に即したドライな感性が必要よね。自分で魔法使いのばあさんを竈に押し込むぐらいじゃないと。

そうか、ミカちゃんは竈に押し込んだ側か。マジかよ、逞しい。可愛い態度とっておいて、いざという時は躊躇しないのか。そうよね。人権とマナーとルールに守られた私とは違うんですよ。室町キレキレ住民ぐらいの認識しておかないと。私、生きて行くの難しいわ。鎌倉蛮族よりはましなのか?厳し過ぎない?
でも、ミカちゃんは優しい。あ、身内絶対守る系か。そうか。じゃあ、もう、甘えてやろう。

「ミカちゃん、ミカちゃん、家に入ろう」
「うん。どうしたの?」
「ミカちゃん好きだなぁと思って」
「俺も、俺もユウが好きだよ。ユウが森に来てくれて、嬉しい。凄く。ユウにはわからないくらい。俺、離れないよ、ユウから」
「ミカちゃんは森の魔物だったのか」
「そう!だからユウは森から出れないんだ」

笑ってるのに目がひどく真っ直ぐで、胸を抉られたような気持になった。

「まあ、それも良いかもね。魔物さんが可愛がってくれて、グミもあるしね」
「俺、可愛がるよ。ユウユウユウ、離さない。俺のユウ」

そのままミカちゃんに押し倒されて、震える唇でキスをされた。それだけで、背中からおかしくなりそうだった。
泣きそうなため息と一緒にキスをした。私達は濡れた目で見つめ合い、お互いが欲しかった。頬に手を添えて唇を近付ける。吐息が合わさり、ミカちゃんから初めて強引なキスをされた。私は声を漏らしながら、ミカちゃんに応えて、自分からも求めた。

無茶苦茶に、体中でミカちゃんに縋り付いた。ミカちゃんも私を強く強く抱きしめて、体中を弄った。私達は絡み合って、求め合って、擦りつけ合って、一緒に登り詰めた。
服を脱ぎ捨てて抱き合った。溶け合いたかった。皮膚の境界など邪魔だった。泣きながら求めて愛を交わした。私は私で、ミカちゃんはミカちゃんで、それが悲しかった。もっと脳が溶けて頭がおかしくなったらいいのに。
私達は別々の肉体で、別々の快感を一緒に味わった。喜びで悲しみで胸が締め付けられた。

いつのまに眠ったのか、温かさの中で目が覚めた

「ユウ、おはよう」
「おはよう」

キスの雨が降る。顔中に首に胸元に。そして抱きしめられる。

「ユウ、俺、嬉しい。ユウが俺にあんなにくっついて、俺を呼ぶんだ。ユウ」

うん、盛り上がった。なんかすごい盛り上がった。夜の痴態を話題にされる辱めよ。は、恥ずかしいだろうぅぅぅ。なになになに、盛り上がり継続中?そうなの?私、また流されそうなんだけど。

「俺、欲しいって言われたの初めて。甘えても良くて、甘えられるのも。俺、嬉しいんだ」

そうか、ミカちゃん。そうだね、ミカちゃん。森の魔物、もう子供攫わなくてもいいよ。

「森の魔物が閉じ込めるんじゃないよ、逆だよ、ミカちゃん」
「逆って?」
「森の魔物が捕まっちゃうの。魔物を気に入った子供に捕まって離してもらえないの」
「俺が離してもらえないの?」
「そうだよ。それで、捕まった魔物は、夜な夜な子供に色々されるわけ」
「それ、良いね。ふふっ、離してもらえなくていいよ。ずっと。色々されるのも良い。俺もするし」

ミカちゃんの手が不穏な動きで私の背中を撫でる。ミカちゃんてば成長著しいな。

ミカちゃんは私の奥に触れる。私の心のどこか、助けを待ち望んで、助けを拒否するどこか。気持ちを試したいどこか。
触れられた感触を留めておくことは出来ないけど、触れられたことは覚えていよう。


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