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66.贈り物を買おう
しおりを挟む二日目も同じ様に過ごした。
何度も体を重ね、エーミールの差し入れを楽しみ、湯浴みで笑い合う。ふざけ合って、じゃれ合って、少しも離れずに、ずっとどこかしらに触れていた。
湯浴みのあと、オリヴァの長い髪を櫛で梳き三つ編みをして遊ぶ。
「オリヴァは髪を伸ばしてるの?」
「自分で切るのが面倒で伸びた」
「床屋さんは行かないの?」
「怖がられるから床屋は行かない」
「そっか。だからガタガタなのか。切る時ってどれくらいまで切るの?」
「短いとローブから出るから、出ないようにこれくらい」
背中の半分くらいを指差す。長くて細くて綺麗な指だなぁ。指を撫でた。
「結ばないの?」
「面倒だ」
「結ぼうか?今みたいに。朝、来たら結べるよ」
「・・・良いのか?・・結んで欲しい」
「ふふっ、良いよ。私の髪はオリヴァが結んでよ。三つ編みできる?」
「教えてくれ」
オリヴァの長い髪で三つ編み講習会を開き、結び紐がないのでリボンを買うことにした。どこで売ってるか不明なのでエーミールに聞くことにする。困ったときのエーミールYo!
オリヴァが聞きに行って、面白くなさそうな顔で帰って来た。
「・・明日、ヘルブラオが店に同行する。店の場所が分からないだろうから一緒に行くと」
「あー、そっか。お店の場所がね。分からないよね」
「ああ」
「エーミールに悪いことしたね。付き合わせちゃって」
「あいつが行くと言いだしたんだ。店だけ教えればいいものを」
「場所、分かり辛いのかもよ?」
ムスッとした顔で黙るオリヴァのローブに潜り込むと、腕が回される。この人は裸にローブ引っ掛けるだけなんだもん。一歩間違えば変態さんだよ。拗ねる可愛い変態さん。
ローブから顔を出してオリヴァを見る。オリヴァを見るといつでも笑ってしまう。嬉しくて楽しくて。
「オリヴァのリボン、私が贈るね。楽しみ」
「・・・私へ?贈り物を?」
「そうだよ。可愛い夫への贈り物だよ」
「・・・・・嬉しい」
すごく照れ臭そうに、はにかんで、抱きしめる腕に力が入った。
あーあ、可愛いなぁ。最強。楽しみだな、買い物。明日はみんなの贈り物を買おう。
次の日、オリヴァと笑いながら服を着せ合って、出掛ける準備をする。今こそ指輪を売ったお金の出番ですよ!
エーミールの部屋へ飛ぶ前に、長い長いお出掛けのキスをしてしまい、うっかりその気になって収まるまでちょっとかかった。
オリヴァに抱きしめられながら、エーミールの部屋に着いて、ウキウキで挨拶をした。エーミールの驚き顔が可笑しくて、笑う。
「どうしたの、口からハトが飛び出しそうな顔して。今日は買い物に付き合ってくれてありがとう!あ、ご飯の差し入れもありがとう。美味しかった」
「あ、ああ、美味しかったなら、良かった。・・・どうしたんだ?」
「え、何?買い物したかったんだー。楽しみ!」
「・・・そうか。・・ユウナギのローブも用意したから着てくれ」
ローブと手袋を渡されて着る。魔法使いコスプレだよね。私は黒の魔法使いさ。
「何から何まで、ありがとうエーミール」
「大したことじゃない」
「こーゆー細やかな気遣いが難しいんだよ。エーミールのお陰で買い物に行けるし」
「グラウは面白くなさそうだがな」
「ふふふっ、オリヴァ、ローブお揃いだね。似合う?魔法使いっぽい?」
「似合う。ふっ、色付きじゃないから、変な魔法使いだ」
「あははは、そうだね、色付きが条件だった。忘れてた」
エーミールの部屋から神殿の外に飛ぶ。ここからは歩きだ。人通りのあるところに飛ぶと事故が起こりやすいので、外は基本歩きらしい。
手袋をしたまま、オリヴァと手を繋いで歩く。時々、顔を見合わせて笑う。王都は凄く人が多くて、色んな店があった。いちいち聞いては感心する。お肉屋さんには肉がぶら下がり鳥の鳴き声がした。靴屋では靴の木型が並んで、金細工の店にはいろんな細工物が飾ってあった。
「ここだ。以前、仕立て屋を呼んだだろう?この店だ。布地屋と一緒になっている」
「わー、大きいお店」
中に入ると、エーミールはお得意様らしく店員さんに挨拶をされていた。リボンを見せて貰う。
種類少なっ。白、黒、青、赤。幅広のリボンは帽子に使われるので良い素材も色々あるけど、細いのはそんなにない。まあ、絹とか高いからね。麻の薄い織のリボンにする。
「何色が欲しい?」
「黒。ユウの髪の色」
「そ、そっか、黒ね。私はじゃあオリヴァの白にしようかな」
「ユウの物は私が贈る」
「ふふふ、ありがとう」
可愛すぎて動揺した。やべえ。
オリヴァはそそくさと白いリボンの会計を店員に依頼している。
他はどうしよう。エーミールだったら絹がいいけど、ただリボンあげてもなぁ。別なものが良いかな。色々見ながら悩んでいるとエーミールが隣に来た。
「随分と仲良さげだな」
「エーミールは何が良い?贈り物したいんだけど」
「・・・・・私にもか?」
「そうだよ。贈り物させて」
そう言って笑い掛けると、面食らって目をパチパチするのが可笑しくて笑った。
「・・考えておく」
「うん。ふふっ、面白い顔して」
「ユウ、・・・楽しいか?」
「楽しいよ。あっ糸も売ってるかな?」
双子には手ぬぐいを作ることにして布を何種類かと糸を選び、オリヴァのリボンと、ついでにエーミール用に絹のリボンを買った。そのあとは木工用の道具を置いている店に連れて行って貰い、彫刻刀みたいな小さいナイフが丁度あったので買う。これはミカちゃん用。金1枚で大分お釣りがきた。改めて考えると、金2枚をポンと払えたエーミールって金持ちだわ。びっくり。
屋台で買い食いしてみたくて、なんか焼いたの買った。むかごっぽい?小さいのがいくつか葉っぱを丸めた入れ物に入ってる。魔法使いファッションなので怯えられた。悲しい。小銀貨で買ったら銅貨でお釣りを貰った。小銭でお財布パンパンだよ。
オリヴァが早く帰りたがったので直ぐ帰る。私が先に飛ばされたらオリヴァの部屋だった。ローブ返すのに。ローブと手袋を脱いでちょっと待ったらオリヴァが戻ってきた。
「エーミールにローブ返すよ。お礼も言うから送って」
「・・・明日で良い」
「すぐ終わるよ」
オリヴァにむかごっぽいのを食べさせて美味しいか聞くと頷いた。
「お礼を言ってすぐ部屋に戻ろう?」
オリヴァはしぶしぶ私を抱きしめて、エーミールの部屋に飛んだ。驚いてるエーミールにお礼を言ってローブを返す。むかご(仮) を一つ、エーミールに渡す。
「今日のお礼。楽しかった。ありがとうね」
笑いながら手を振ると、オリヴァがすぐ抱きついてきて飛ぶ。部屋に戻るとむかご(仮) を取り上げテーブルに置いた。自分のローブも服も乱暴に脱ぎ捨て、私の服も剥ぎ取りベッドに押し込まれた。ぎゅうぎゅうに抱き付いて足を絡ませる。
「私の時間なのに。二人の時間が減った」
「ごめん、買い物長かったね。ごめんね」
「買い物は良い。あいつが邪魔だった」
「オリヴァ・・・ね、体洗おうか」
オリヴァに口付けしながら囁くと、頷いた。
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