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第一章 巫女ってなんなんですか
20.リーリエとの憂鬱な時間
しおりを挟む目が覚めたらサミーはいなくて、なんとなくホッとした。ことが終わったあとも一緒にいて落ち着くようになるのは、まだまだ先になりそう。貢いでフラれた仲間なので親近感はあるけど、慣れるかどうかは話が別だし。
ベッドでゴロゴロしてたら、リーリエが起こしに来た。
「お早うございます、巫女。湯浴みはしますか?」
「うん」
「ではお湯を張りますね。背中を流しますよ」
「いらないってば」
「私は夫ですから、遠慮しないでください」
「ホントにいらないの」
リーリエはニコニコしながら押し付けがましいので、結構イラつく。しかもしつこい。うんざりして、早くも対応がぞんざいになってしまった。それでも、お湯を張ってくれたり掃除してくれるのは大変ありがたいので、お礼は言う。
お風呂から上がったあと、まだ部屋にいたリーリエに髪を乾かしてもらった。申し出を全部拒否するのも申し訳ない気がした結果の妥協。
今日はリーリエの日で、図書室のヒソヒソ話を思い出して憂鬱になった。面と向かって嫌がりはしないけど、リーリエも妖精族だから思うところはあるんだろうな。そう考えるとどんどん落ち込んでしまう。
「今日はリーリエの日だけど、夜になったら来るの? 無理しなくていいんだよ?」
「大事なお勤めですから大丈夫です。名誉なことですから精一杯頑張ります」
繰り返す同じ様な問答にため息が出る。
私が気にし過ぎなのかもしれない。私個人とお勤めは切り離して考えた方がいいのかも。たぶんお勤めの相手は関係なくてお勤めが大事なだけだから。でも、そんな割り切って寝れるものかな。やっぱり相手のこと多少は考えちゃうよね。もっとましなのが良かったとかさ。
「リーリエはしたいことある? なかったら図書室に行ってもいい?」
「巫女のやりたいことを優先していただいてかまいません。鍵を持ってきますね」
「ありがとう」
一緒にいなくてすんだことにホッとした。
一日中、図書室で精霊に関係する本を読んだけど、異世界の巫女の話は見つからなかった。がっかりして夕食を食べ、眠る準備をした。なるべく時間を短くしたくて、リーリエには眠る時間になってからと言ってある。それでもやっぱり憂鬱だ。
ノックのあと、少し緊張したリーリエが入ってきた。ベッドに腰掛けて、もう一度確かめる。
「大丈夫?」
「大丈夫です。初めてなので緊張していますが潤滑油は準備してますし、やり方も聞いてきました」
何を聞いても『大丈夫』しか言わなそうなリーリエは、手に持った小瓶を見せてくれた。
「すぐ済むようにしようか。リーリエは自分で準備できる? 途中まで自分でしてくれれば、あとは私がするから。潤滑油貸して」
「でも巫女、それでは」
「妖精族はそのほうが良いでしょ?」
「……はい」
お互いに背を向けた状態で、ゴソゴソ下着だけ脱ぐ。これは仕事だからと自分に言い聞かせながら潤滑油をぬりつけて準備をした。
「できました」
「じゃあ、ズボンから出して仰向けに寝て」
静かに寝転んだリーリエのペニスが勃起してることに安心する。手に残った潤滑油をペニスに塗りつけてから、ゆっくり挿入した。
リーリエを見たら、胸の前で手を組んで目をつむり歯を食いしばってる。苦しい目に遭って助けてくれってお祈りしてるみたいに見えた。
惨めな気分を片隅におしやって何も考えないように体を動かした。少しも気持ち良くない、ただ擦るだけの運動をしばらくすると、リーリエが短く叫んで体を強張らせた。
それほど時間はかからなかったのに、やけに疲れてる。リーリエの蠕動が収まってから体を離し、ペニスを拭いたら驚いたのか、慌ててズボンにしまって体を丸めた。
さわられるのが嫌だったのかもしれないとさらに落ち込みながら風呂場で下半身を洗い、リーリエに背を向けて離れた場所に寝転んだ。
「お疲れ様。お休みなさい」
「お休みなさい、巫女」
何も考えないように深呼吸を繰り返して眠りに落ちた。
どんな惨めなセックスでも精霊は産まれるらしい。明け方に白い光の精霊がポツポツと天窓に消えていった。リーリエはとても嬉しそうな顔で精霊を見送って私にお礼を言った。
私はすごくすごく疲れて、もう起きたくないなと思いながらまた眠った。
それでもやっぱり目は覚める。
今日はヨアヒム・リヒターの日で、お昼は外で食べると約束した。気を取り直してヨアヒム・リヒターのことを考えよう。
2メートルくらいの大きい体の上にラスプーチンみたいな胡散臭い顔乗っけてるのに、すごい緊張してキョドってるとこを思い出して笑った。ギャップがあってなんか可愛いよね。リーリエは仕方ないとしても他の人たちとは上手くやりたいから頑張ろうと思う。
できることから。頑張れ私。
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