6人の夫と巫女になった私が精霊作りにはげむ1年間の話【R18】

象の居る

文字の大きさ
63 / 119
第二章 精霊産みといろいろ

63.笑ったら笑う Side ヨアヒム

しおりを挟む
 
 Side ヨアヒム

 今日はサヤカと一緒にビスケットを作ってる。ナッツやドライフルーツなんかを混ぜてどれが合うかいろいろ試した。

「こっちの木の実が合う。この果物はいまいちかな~。ヨアヒムはどれが好き?」
「俺もこれと、あとこっち」
「これも美味しいよね」

 ビスケットはみんなが食べたがるから、一階の食卓テーブルに置いて好きにつまめるようにしてる。このあともパンを焼く俺を置いて産屋棟へ戻るサヤカを見送り、ため息をついた。

 精霊王産みは失敗する。俺のせいで。わかってるけど考えないようにしてたのに、なんで全員でサヤカと……。俺だけじゃないって知ってるけど、でも嫌だ。サヤカの中から俺が消えそうで怖い。俺といるよりずっと楽しそうだったら、嬉しそうだったら、気持ちよさそうだったら……。嫌だ嫌だ嫌だ。胸が苦しい。

 俺を見てほしい。属性の夫じゃない、ただの俺を。

 パンを焼き終わって夕食までの短い時間、散歩に誘った。日が長くなってほんの少し黄みがかった空を見ながらゆっくり歩く。サヤカが小さいから俺は下を向いて、サヤカは上を向いて話す。

「俺、夕方が好きなんだ。光が弱くなって優しくなるから」
「夕方の優しさって落ち着くよね」
「うん。夕飯にパンを買って帰る人を見ると嬉しいし、子供の頃は家族が家に帰ってくるのも待ち遠しかった」
「仲が良いんだね」
「苛められてる俺を兄さんたちが助けてくれてたんだ」
「いいお兄さん達だね」

 俺の手の中にすっぽり入るサヤカの小さい手を握って歩く。属性の夫じゃない俺を知ってほしくて小さい頃の話、仕事の話をした。サヤカは静かに笑って俺の話に付き合ってくれる。
 夕食を運んできた神官と行き会って産屋棟へ戻った。


 夜、ランプの灯りを消した暗い部屋でサヤカと向き合う。黒髪から暗闇の中に消えてしまいそうで抱きしめて髪を撫でた。サヤカが俺のことを心配そうにする。心配かけて悪いと思うけど平気なフリもできない。不安で胸がつぶれそうだから。
 サヤカの気持ち良いところを探して、触って舐めて吸ってみる。サヤカの柔らかい体を抱きしめてあちこち確かめた。

「……、どうしたの?」
「気持ち良いところ知りたいんだ」
「……ヨアヒムも一緒に気持ち良くならないと見つからないよ」
「でも、ほかの……、……サヤカを喜ばせたい」
「いつものヨアヒムで喜んでるけど。わからなかった?」
「あ、えと、嬉しそう、に見えた」
「当たり。嬉しい。嬉しいから休みの日にもヨアヒムのとこ遊びに行ったのに」
「……うん、あの、嬉しかった」
「やっと笑った」

 サヤカが嬉しそうに笑った。
 俺が嬉しいと嬉しいの? 俺が笑うと笑うの? 
 ……俺も同じだ。そう思ったら急にすごく嬉しくなった。サヤカを抱きしめて頬ずりをたくさんしたら、サヤカが声を立てて笑った。2人で笑って抱き合う。

 ねぇ、俺、サヤカのこと好きなんだ。すごく。なんでかわかんないけど。今すごく好きだってわかった。

「俺のこと忘れないで」
「忘れない。忘れないよ」
「サヤカ」
「ヨアヒム」

 抱きしめて口付けをする。今はドキドキする気持ちでいっぱいだ。今度はサヤカと一緒に気持ち良くなる。だって同じだから。俺が気持ち良いとサヤカも嬉しいってわかったから。2人の気持ち良いことを探して2人で喜ぶんだ。


しおりを挟む
感想 101

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
 ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。  それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。  14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。 皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。 この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。 ※Hシーンは終盤しかありません。 ※この話は4部作で予定しています。 【私が欲しいのはこの皇子】 【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】 【放浪の花嫁】 本編は99話迄です。 番外編1話アリ。 ※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

処理中です...