6人の夫と巫女になった私が精霊作りにはげむ1年間の話【R18】

象の居る

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第二章 精霊産みといろいろ

91.サミーのプロポーズ Side サミー

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 Side サミー

 俺たちと結婚して一緒にいようと、ヴェルナー、ヨアヒム、ゲルトと俺の4人で求婚したら、まつげを伏せて笑い『ありがとう、ごめんね』と言った。
 そんなのねぇよ。そんなの。なんで謝んだよ。同情じゃねぇって散々言っても頷くだけ。迷惑かけるからって、年に一回のそんな大したことでもねぇもん謝って。

 なんだよこれ。結局、ラルフの言った『脅し』そのままみてぇじゃねぇか。

 考えが足りなかった。サヤカは少なくとも、結婚断るけど魔力はくれって言えるほうじゃねぇ。自分で選べる状態でも迷ってたのに、もう言い出せっこねぇよな。
 それなら好都合だって卑怯な考えがチラッと浮かんで頭を振った。違う。そんなんじゃずっとスッキリしねぇままだ。断ったってちゃんと協力するって言わねぇと。
 なんで断られる前提で考えてんだろ。ウジウジしてるって思われんだろうなぁ。そんなん嫌だけど実際これが俺だし、しょうがねぇ。

 2人になったとき覚悟を決めて切り出した。

「なぁ、あの話」
「どの話?」
「結婚してくれって」
「うん」
「断っても協力する。魔力は渡すから心配しなくてもいいからな。だから、サヤカの思った通りにしてくれ」
「うん、ありがとう。それで、やっぱり止めたってこと?」
「え? あ、いや、考えて欲しいけど、魔力と引き換えってわけじゃねぇって言いたかった」
「優しいね」
「そうか? ……惚れた女には優しくするだろ」
「どこが好きなの? よく知らないのに」
「もう一年近く一緒にいるのになぁ。まあ、たしかに俺たちに遠慮してるもんな。我儘の一つくらい言ってみたらどうだ?」
「一つじゃなくて沢山言う」
「はははっ、そりゃいいな。叶うかどうかわかんねぇけど」
「そこは『俺が叶えてやる』って言うとこじゃないの?」
「俺が叶えられることならいいけどなぁ」

 こうしてふざけて話してんのにやっぱり遠慮してんだよな。今までもそうだったんだろ。俺が気付いてねぇだけだ。

「俺はなぁ、鈍いんだよ。言われねぇとわかんねぇんだ。……だから、嫌なら」
「嫌いじゃないよ」
「でも、遠慮してるだろ。言いたいこと言ってねぇ」
「うん。でも特にない。消えるって思ってたから、あまり考えないようにしてたんだよね」
「じゃあ考えてくれんのか?」

 昼間は困ったように笑ってそのままになったから、もう一度言った。
 少しの頷きでも期待しちまう。惚れられてねぇって分かってるけど、言わずにいれなかった。目を覚まさねぇあいだ生きた心地がしなかった。消えちまうかもって知った時も、体がバラけてどっかいっちまったみてぇだった。離れたくねぇって、それだけしか頭になかった。

「私なんか役に立たないよ」
「役に立つから惚れるわけじゃねぇだろ。食わせるし、浮気しねぇし、俺とも結婚してほしい。帰らないでくれよ」

 サヤカの手を握って勢いよく話し出したのに、男としてどう思われてるか不安になって最後は口の中に消えた。俯いたままでいたら、そっと抱きしめられる。
 こんな優しくするから俺が期待しちまうのに。

「好きだから?」
「そうだよ。話すのも寝るのも気に入ってんだ。そんなふうに見られてねぇって知ってっから、今のままでいいんだ。たまにでいい、こうしていられたらそれでいい」

 サヤカに抱き付いて懇願する。
 一緒にいれんなら、ひざまずくのなんかワケねぇ。いくらだってできる。ひざまずこうが何しようが、いっつもフラれちまうから意味ねぇけど。
 ヴェルナーみてぇなイイ男に敵うわけねぇって分かってる。中身はちょっと問題あるけど、そこ以外は完璧だ。でも、サヤカ、おまけでいいから俺もそこに入れてほしい。ホントにたまにでいいんだ。こうして抱きしめてほしい。なぁ、本気なんだ。

「『うん』て、言ってくれよ。サヤカ、お願いだ」
「泣かせないでよ。そんなこと言って」
「故郷を離れんのは寂しいと思う。でも、それでも俺といてほしい」
「先のこと考えたことなかったから」

 そんな悲しそうに笑うのは、なんでだよ?
 こっちにきたとき、自分がいなくなっても悲しむ人はいないって言ってたけど、今は違うって分かってんのか?

「俺は悲しむからな。サヤカが消えたら俺は泣く」

 言ってる今だって泣きそうだ。考えただけで泣きそうなんて、バカみてぇだけど。

「泣くの?」
「泣く。惚れてるって言ったろ?」

 小さく笑って俺の頬を撫でるサヤカの手を握った。いくら見つめても、悲しそうなことしかわかんねぇ。俺に女の気持ちがわかるなんてこと、一生ねぇんだろうな。何もしてやれない自分の不甲斐なさに気分が沈む。
 そのまま見つめてたら、サヤカの唇が柔らかく頬にふれた。優しく何度も俺の顔に口付けをくれる。なんか慰められてるみてぇだ。

「慰め? 期待すんなってこと?」
「好きになってくれて、ありがとうってこと」
「期待していい?」
「考えとく」

 今度は悪戯っぽく笑ってドキッとさせる。俺ってホント

「単純だからよ、からかいを本気にしちまうんだよな」
「ん、ふふ、可愛いね」
「ほら、そうやって」

 サヤカの唇に口付ける。俺が欲しかったもの。笑いながら口付け合うなんて、こんなくすぐってぇことするなんて。俺がどんなに嬉しいかなんて知らねぇんだろ。嬉しくって泣きそうなんだよ。

「……たぶん、残るよ」
「本当か!?」
「うん。帰っても仕方ないし、ヴェルナーが離してくれなさそうだし」
「あ、ああ」
「サミーが泣くの可哀想だし」
「はは、なんだよ」

 じゃあ、俺とも結婚してくれるってことか?
 同情する程度には想ってくれてるって受け取っていいんだな。

「大事にする」
「うん」

 おっかなびっくり口に出した言葉に返事が返ってきた。なんかこみ上げて泣きそうになる。やっとだ。やっと。
 抱きしめたらホッとして、ため息がでた。

「なぁ、俺、フラれなかったの初めてだ」
「そうなの? おめでとう」
「ありがとな」
「ふふっ、変なの」
「ははは」

 今度は本当に嬉しくて笑う。
 サヤカに口付けて抱きしめた。
 俺の大事な女。泣きそうなほど愛しい女。ガラじゃねぇけど、会わせてくれたことを精霊王に感謝した。これからも大事にするって、俺の精霊と精霊王に誓う。





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※更新変更のお知らせ 
エピローグまで毎日更新します。その後の番外編は月水金土に更新です。 
番外編も含め、年末完結の予定です。よろしくお願いします。
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