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第二章 精霊産みといろいろ
105.エピローグ ※
しおりを挟む服を脱がされて浴室に入ると、リーリエもやってきて髪を洗ってくれた。至れり尽くせり。
新しい家の浴槽は神殿と違って精霊石が付いていない。
「精霊石がついてないものあるんだね」
「精霊石はとても高価だ。神殿だからふんだんに使えるが、そうでなければ難しい。貴族だって大して持っていない」
「そうなんだ」
「警備の指輪も限定的にしか支給されない。ヨアヒムが水を出してゲルトが温めてくれたが、属性持ちがいなければ汲んだ水を火で温めることになる」
「そうです。浴槽もありません。私の実家は小さな村でしたから、タライで体を洗っていました。浴槽は神殿で初めて見ましたよ。サヤカは異世界で貴族だったのですか?」
「ううん、庶民。魔法がないから道具が発達してるの。水道は一軒一軒ついてたし」
「便利ですね」
「うん」
体が温まって気持ちがいい。久しぶりにさっぱりした。
お返しにリーリエの頭を洗ったら、自分で洗ってしまったヴェルナーが羨ましそうにするので、今度と約束をした。
食卓に顔を出してお休みを言い、またもヴェルナーに抱かれてベッドまで運ばれる。大きなベッドだけど、6人は無理かな。
私をベッドに寝かせたヴェルナーが優しく布団をかけてくれた。押し倒されると思ってたから拍子抜けする。軽いキスをし髪を梳くヴェルナーを見上げると、優しく微笑まれた。
「添い寝が必要か?」
「ううん。なんか落ち着いた?」
そう尋ねたら甘く笑って頬を撫でられる。
「サヤカが振り向いてくれたから、いくらだって待てる。疲れたのならゆっくり眠るといい。意外か?」
「うん」
「そうだな。……無理をさせてすまなかった。私を見てほしかったんだ」
目を伏せて静かに話す声にストンと納得する。
ヴェルナーは私だ。そうだった。記憶がクルリと反転する。振り向いてほしい、愛してほしい、優しくしてほしい。そうして必死に縋った。貢いで捨てられたって言ったって、買ってあげるから捨てないでと、なんでもするから優しくしてと差し出したのは私だった。
柔らかな紫色の瞳はいつになく綺麗に見える。
振り向いて愛してもらうことだけ望んでいた自分とヴェルナーが重なり、スルスルと何かが解けていった。
同族嫌悪だったのかな? 母みたいと思ったのは、自分に似たものを嗅ぎ取ったからかもしれない。
でも、落ち着いたヴェルナーは全然違う。私よりずっと穏やかで大人みたい。年も1つしか違わないのに。
いつかの望みは今叶ったらしい。愛してくれる人をみつけた。愛を乞うその人に愛を返したいと自然に思える。
魂からと、精霊王に聞かなかったらずっと胡散臭く思ってたかも。ラルフの言っていた、精霊王が付いているから安心だという気持ちがしみじみわかる。不安だったけど、もう大丈夫。精霊王のお墨付きだし。
だからきっと。
「愛してる」
ヴェルナーの手を握って口にしたら、紫の瞳がみるみる見開かれた。
今はまだそんなでもなくても、いつかきっとそうなる。そんな気がする。だってもう離れたくないから。一人も漏れなく愛するよ。どんな形でも。
震える手が頬を撫でて、キラキラする目から涙がこぼれた。
「……ぁ、サヤ」
私の胸に顔を埋めたヴェルナーの頭を撫でた。
この家が居場所になる。もう必死に自分が入る隙間を探さなくてもいい。あなたの腕の中にいよう。
「もう一度……」
「愛してる、ヴィー」
「私も、私も愛している。愛して、……サヤカ」
唇がふれて熱い吐息が吹き込まれる。荒々しい舌が口の中をくまなく探った。迎えにいけばもどかし気に絡みつく。大きな手は輪郭を確かめるみたいに頬や耳やおでこを撫でてくすぐる。
「……待てなくなった。こんな、……待てるわけない」
「うん。私も待てない」
「サヤカ……」
ヴェルナーが勢いよくパジャマを脱ぎ捨てるので、私も自分で脱いだ。
裸で抱き合って体温を感じる。肌が重なり温かさが馴染む。キスは何度しても嬉しくてもっとしてほしくなる。
ヴェルナーの手に乳房を揉まれ、先端が焦れた。あなたの指を舌を待って体が疼く。足を擦りつけてねだったら、すぐに指先で押し込まれて声が出た。弱く優しく、強く、キュッと摘ままれて腰が揺れる。
私の手はあなたの背骨の窪みを撫で、筋肉の線を辿り骨盤の骨をくすぐった。足の付け根から内腿を通って陰嚢まで手を伸ばし優しく揉む。硬く立ち上がった根元から張り出したカリまでそっと撫でた。
唇を離して見つめ合う。潤んだ目をしたヴェルナーを愛しく想って微笑んだ。
「きてほしい」
「……ああ、もう、入れたくておかしくなりそうだ」
先端を合わせたらヌルリと入り、奥まで埋め尽くされた。足りなかった部分が満ちた喜びに肌が粟立つ。そのまま抱き合って充足の吐息を聞いた。
ゆっくり抜いてゆっくり入る、もどかしい動きが欲望を昂らせ、もっと飲み込みたいとヒクついて疼いた。入り口から擦り上げられ、最奥へ到達する刺激が背骨を通って頭まで貫くたび背中が仰け反り叫びが出る。
ずっと味わっていたい気持ち良さに、体の中で喜びの泡がパチパチ弾けた。
「ぁっあ……、ヴィー、もっと、ずっと、こうして。……っあぁーーーー」
「っふ、う、サヤカ、……もうっ、ああっくっぅう、――――ぅううっ」
ヴェルナーが腰を押し付けてブルブル震えた。心臓の音が心配になるほど早くて、荒い呼吸を繰り返してる。
「……我慢できなかった、すまない」
「気持ち良い?」
「ああ。気持ち良くて幸せでたまらない」
「私も」
抱き合ったヴェルナーの背中を撫でてたらまた腰が動き出した。
「これが好きか?」
「これも好き、……ぁあ、ヴィー」
ゾクゾクする快感が背中を仰け反らせる。どこにもいけない悶えが堪らなくて顔を覆った。
ヴェルナーが私の手を掴み、頭の上で両手首を交差させて押さえた。
「隠さないで」
「あぁ、でも、……ヴィー、お願い、もっと」
「サヤカ、私ももっと欲しい」
熱い吐息とともに言葉を吐き出し腰の動きが早くなる。お腹がわを突き上げられて、快感が湧き上がる。下腹から腰が甘く痺れてたまらない。
「あっああぁ、っあアア、ヴィー、……、んっぁああ」
「っサヤカ、はっ、……ぅ、っつ」
もっともっとと焦れて吸い付くのに、擦れるたびに離れるのがもどかしい。
「っぁ、もっと、やだ、離れないで、ああっ」
「あぁ、そんなに、……うっ、は、ぁ、……こうか?」
押し付けて小刻みに揺れる。振動が快感を引き絞り、収縮する一点で弾けた。
「ん――、ああぁっああっアアーーーーー」
「っくぅううっ、―――――っ、く」
硬直するのに腰がとろけて訳が分からないほど気持ち良い。頭が真っ白のまま叫び声を上げた。ビクつく体にグリグリと円を描くように押し付けられ、また軽く達した。
「…………ぁ、ヴィー、――愛してる」
「サヤカ、あぁ、愛している」
優しく微笑み、力強い腕で私を抱きしめた。私は安心して目を閉じる。
静かな呼吸と温かさに満たされた部屋のドアが開き、リーリエがベッドにきた。
「巫女、サヤカ、私も一緒に寝ます」
ヴェルナーと私のあいだに腕を差し込んで私にくっつく。前は遠慮してばっかりだったのに、いつのまにそんな逞しくなったんだ。いや、前から鉄面皮なとこあったから本領発揮なのかな。
「オレも寝る」
「俺も」
「お前はもうどけろ」
ラルフとヨアヒムもやってきてヴェルナーを押し退け、私を抱きしめる。ヴェルナーは仕方なさそうに譲った。大人になったなぁ。
「同居の初夜だからな、楽しもうぜ」
「明日はゲルトの家に挨拶に行くから早く寝たほうがいいんじゃないの?」
「夕食ですし、昼に起きれば大丈夫ですよ」
ゲルトはラルフに賛成らしいうえに、すでに足の指を舐めっている。なんという早業。
「ケツも使えばイイだろ」
「うん、俺がほぐしてあげるね」
ヨアヒム、お前もラルフの味方か。というか気に入ったのか、後ろ。
「俺は明日でいいからな。一回ずつにしとけよ」
「サミーはいいの?」
「6人は大変だろ。昼と夜でわけるんでもねぇのに」
一人だけ遠慮されたらなんか悪い気もする。でも、大変だし余力が残ってたらにしよう。
「優しいね」
サミーの顔に両手を伸ばし、引き寄せてキスをした。離して見つめると照れ笑いをしてる。
「サヤカ、私も」
頬ずりしてねだるリーリエにもキスをした。
可愛くて我儘なみんなを愛しく想う。
「あのねぇ、みんなのこと好きだな。ありがとう」
「私も好きです、巫女、私のサヤカ」
「オレも好き」
「俺も大好き」
「私も。好きです。大事にします」
「……あー、俺も惚れてる」
「愛している」
ヴェルナーが甘ったるい声で言った。
「私もです、私も愛してま」
ヴェルナーに負けじとリーリエがひっついてくる。みんな口々に対抗しだすので、おかしくて笑った。
可愛い6人の夫を抱きしめて幸せを味わう。大変だと思うけど大丈夫。これは、精霊王が結んでくれた、私たちが幸せになる縁だから。
めでたしめでたし
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明日から実家まわり、イチャイチャ新婚番外編、月水金土の更新です!
応援ありがとうございます!
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