実妹と恋愛するのは間違っているだろうか!?

明日録

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第二章 ゆれるこころ

4話 別れ

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 由衣が帰ったのを確認した後、俺たちは準備室に移動をした。
 俺と先輩が向かい合って席に着き、弟くんは先輩の隣に座っている。

「まったく……由衣ちゃんには驚かされるわね」
「……そうですね」
「随分と好かれてるじゃない? お兄ちゃん冥利に尽きるでしょ?」
「好かれ過ぎも問題なんですよ……」

 由衣の好意は兄妹の範疇を超えている。
 それは兄の俺ではなく、他の誰かに向けられるべきものだ。
 
「……ほんとメンドくせぇ奴らだな。好きなら付き合っちまえば良いだけだろうが。それで全部解決だ」

 弟くんはいつも通りの面白く無さそうな顔でそう言った。
 こいつは近親恋愛については全肯定の立場らしい。
 まあ実際に姉弟で恋愛をしているわけだし、そう思うのも当然と言えば当然なのだろうが、同じ立場の先輩は俺に協力してくれている。こいつと先輩の違いってのはなんなんだろうな……

「優人には優人の考え方があるんだから、そんな風に言ったら駄目よ」
「……ふんっ」

 先輩に優しくたしなめられ、弟くんは子供っぽくそっぽを向いた。
 大好きな姉さんには強く出れないらしい。

「ま、ともあれ、これで私たちは無事に別れることになるわけだけど、問題ないわね?」
「はい」

 無事に別れる……ってのも妙な言い方だが、こういう展開になった以上、そうするしかないだろう。

「私が優人を振ったことにするけど大丈夫?」
「はい。大丈夫です」

 しかし、クラスの連中からはまた色々言われるんだろうな……
 数日で振られたとあっては、からかわれること間違いなしだ。
 馬鹿にされるのか哀れみを向けられるのかは分からないが、鬱陶しい事この上ない。
 少し、憂鬱だ。

「あと、あの動画は消しておいたから、さっき撮った由衣ちゃんのもね。安心して頂戴」
「……ありがとうございます」

 さっき撮ったやつ……が、どんなものなのかは分からない。
 聞こえてきた雑音からは、なんとなく想像がついてはいるのだが……いや、こんなこと考えている様じゃ駄目だ。俺は由衣の兄貴なんだ、うん。
 
「それと、私みたいな美人に振られるんだから、ちゃんと悲しみなさいよ?」
「分かってますって」

 もちろん本気で悲しめと言っているのではなく、そういう演技をしろと言う事だろう。
 先輩は学校一の美人と有名なので、そんな人に振られたとあっては、相当なショックを受けるに違いないという話だ。

「よし、本日はこんなもんかな。あとなんかある?」
「特にありません」
「それじゃあ解散! お疲れ!」

 こうして、先輩との偽の関係に一区切りがついた。
 いつまでも先輩に頼ってはいられなくなる。
 気を引き締めていかなければならないだろう。


 家に帰ってからは自室にこもり、由衣からの接触も無く、そのまま時間が過ぎていった。

 そして夕食時、家族で食卓を囲む。

 いつも通りの皆で会話をしながらの食事だが、一つ違うところがあるとすれば由衣が俺に話しかけてこない事だろうか。
 そのせいで微妙に家族間の会話が回ってない気がする。
 そんな空気を父さんも感じたのか、一つ大きな咳ばらいをすると、話題を変えるように俺に話しかけてきた。

「あー、ところで優人。例の彼女はどうなった? いつ家に連れてくるんだ?」
「そうよ! 楽しみにしてるんだから!」

 その言葉に母さんも乗っかってくる。
 出来る事なら他の話題を振って欲しいのだが……
 しかし避けて通ることはできないだろう。
 ここはしっかりと真実というやつを話さなければならない。

「えっと…………その…………別れた」
「は? なんだって?」
「……別れた」
「なんで?」
「…………振られたから」
「振られたって……お前……」

 父さんは信じられないといった表情で俺を見つめてくる。
 母さんはポカンと口を開けて何とも間抜けな顔だ。

「いったい何やったら数日で振られんだよ」
「さあ……わからない……」
「ったく、ようやく彼女が出来たと思ったらこれだ。どうしようもねえ奴だなあ、おい。どうせ無理やりエロい事でもしようとしたんだろ? 今までモテなかったからっていきなりガッついたらおしめぇよ」

 父さんは勝手に振られた原因を特定しつつ、ダメ出しをしてきた。

「ちゃんと避妊しないと駄目よ?」

 母さんは母さんでピントのずれた忠告をしてくる。
 それは確かに大事だけどね? 今はそういう事を言っているのではなくてね?

「まあ今回のを教訓にするんだな。次、頑張れや」

 父さんは俺の肩をポンと叩き、憐れむような表情を向け、そう言った。
 なんか完全に俺が悪いみたいな言われようなのが気に食わないが、何か言い返したところで、俺が数日で振られたという事実は変わならい訳だし、黙っているのが良いだろう。
 その後も父さんは男女関係のイロハを上から目線で語り続け、俺はそれに雑な相槌を打っていた。
 
 そして夕食を終え、食器を片付けていると、母さんが隣にやって来て小声で聞いてくる。

「喧嘩してるの?」

 当然、由衣との事をいっているのだろう。
 一言も喋っていなかったわけだし、気づいても不思議はない。
 
 俺はその問いに沈黙で返すと、母さんはやれやれといった感じで溜息をついた。

「早く仲直りしなさいよ」

 そう告げると母さんは俺から離れていった。
 
 喧嘩だったのなら、良かったんだけどな……
 
 もとに戻れるのなら、戻りたいさ。


――


 その日の夜。
 
 また由衣が部屋にやって来るのではないかと警戒していたが杞憂に終わった。
 俺と先輩を別れさせることに成功し、安心してくれたのだろうか?
 出来る事なら不安定な由衣の姿はもう見たくない。
 このまま何事も起きることなく、平穏な毎日が戻ってきてくれと、そう願いながら眠りに落ちた。
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