私の恋は、手のひらの上

R鈿

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やり直し

41.お化け屋敷

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 お化け屋敷の前に立つと、私は無意識に陽翔くんの袖を握っていた。

「ほんとに、ここ……入るの……?」

「うん。だって、美緒ちゃんが“脅かす系は苦手”って言ってたから。」

 陽翔くんはどこか楽しそうに微笑んでいる。けれど、声のトーンはいつもより少し落ち着いていて、からかうような感じではなかった。

「え、でも……本当に、苦手で……」

 言いかけたところで、陽翔くんの手がそっと私の手に重なる。

「大丈夫。ちゃんと隣にいるから。」

 その一言に、私は小さくうなずいて、少しだけ強く陽翔くんの手を握り返した。

 中は思っていたよりも暗くて、ひんやりとした空気が肌にまとわりつく。おどろおどろしい演出自体はそこまで怖くないけれど……あちこちから音がして、何が出てくるのか分からないのが余計に怖い。

「……は、陽翔くん……」

「うん、ちゃんといるよ。」

 静かに返ってくる声に、少しだけ心が落ち着いた……はずだった。

 けれど、廊下の角を曲がったとたん、壁から何かが飛び出してきて──

「わっ!!」

「きゃっ……!」

 思わず小さな声を上げてしがみつくと、陽翔くんがすぐに肩を抱いてくれた。どうやら仕掛けの幽霊の人形が飛び出してきたらしい。

「……びっくりした?」

 耳元で、少し笑いを含んだ声が囁かれる。

「い、今のって……わざと?」

「え? 俺も驚いただけ……って誤魔化されてくれないか」

 軽く笑いながら、陽翔くんは肩をすくめた。

「仕掛け見えたから、声出すタイミング合わせたかも。」

「……いじわる……」

 ぼそっと呟くと、陽翔くんはくすっと笑って、そっと私の髪に触れた。

「ごめん。でも、怖がってる美緒ちゃん、やっぱり可愛いよ。」

 私は顔が熱くなるのを感じて、うつむいたまま黙り込んだ。

 ──ほんとに、いじわるなんだから。

 でも、離れない手の温度に、どこかほっとしてしまう。嬉しそうな陽翔くんの横顔を見て、まぁいっか、なんて私はきっと、またすぐに甘やかしてしまうのだろう。
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