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1章 出会い
デート準備 その2
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「……ハジメ君、この動画どこから拾ってきたの?」
ファナエルはスマホに映る奇妙な動画をマジマジと見た後、そのスマホの持ち主である始にそんな質問を投げかけていた。
「お、ファナエルさん心霊系とか結構興味あるんだ」
「数年前、まだ私がアメリカに住んでた時に学校の皆で心霊スポットに行く遊びが流行ってたんだ。だからゴースト……日本では幽霊とか怪異の方がメジャーな呼び方だね、そう言うものにちょっと興味があるの」
「お~、それならこの鳥の怪異の噂は絶対面白いぜ!!秋良も良く聞いとけよ!!」
「お、おう」
始は何故かホットしたような息を突き、その鳥頭の怪異についての話を話始める。
なんでも、ここ2、3週間前……ちょうどファナエルが転校してきたのと同じ時期からここら周辺で鳥頭の怪異を見かけるようになったという噂がSNS上に上がり始めたらしい。
鳥頭の怪異は特に人間に危害を加えることは無く、『ハネナシ、ドコダ。ハネナシ、ドコダ!!』と呟きながら町を徘徊しているんだそうだ。
人の前に現れるのは決まって空がオレンジ色に染まる夕暮時。
その鳥頭に関する地域の伝承などは一切ないらしい。
誰もその正体を知ることが出来ない怪異であり、それゆえに今この地域で一番ホットな話題なんだそうだ。
ファナエルは始の話をひとしきり聞いた後、黒いガムを口に放り込み、何かをじっと考えるそぶりを見せる。
「……できれば合ってみたいな、その鳥の怪異」
「お、そう言うと思って!!いい情報仕入れてるぜ、なんとその鳥の怪異は男女二人ペアの前には出現率が異様に高いんだとさ!!」
待ってましたと言わんばかりのテンションで高らかに声を張る始。
そんな彼を見ながら俺は少し呆れ気味な溜息をつきながら声をかける。
「いやいや、さすがにそれは設定盛りすぎなんじゃ……」
そこまで言いかけたその瞬間、俺の脳みそに電流のようなものが流れる。
『フフフ、僕がそこを対策してないとでも思った?ちゃ~んと秋にぃがデートに誘いやすくなる下地を作ってあげるから安心して明日学校行きなよ』
昨日斬琉が俺に言い放ったその言葉……それに夏の肝試しって吊り橋効果がどうこうって話聞いたことあるし……おまけに男女二人で居ると会える確率が上がるとかいうおあつらえ向けの言い伝え。
もしかしてと思い始の顔をバッと見やると、あいつはニヤリとした顔で俺の事を見つめ返し、ファナエルにばれない様にゴーサインを俺に送った。
ファナエルもこの鳥の怪異の事気になってるみたいだし、この会話の流れで言うなら何もおかしくないはず。
彼女に拒否されることを考えるとどうしても怖いけど、俺が変わるなら今しかない!!
「な、なぁファナエル!!もしその鳥頭の事に興味があるなら週末俺と一緒に探しに行かないか?」
そう言った俺の声は自分でもとうに分かるほど震えていた。
それでもあの告白の時とは違う……ちゃんと日和らずにファナエルに伝えたいことを言えた。
後はどんな返事が返ってくるか待つだけだ。
「いいよ」
少しの静寂の後、少し嬉しそうな声色を乗せたその言葉が俺の耳に響く。
ハッとして顔を上げると、ファナエルは俺の事をじっと見つめてほほ笑んでいた。
「どうせなら朝集合して幽霊退治の道具とか探さない?それに朝ごはんぐらいなら作ってあげるよ」
「ファナエルが作ってくれる朝ごはん、うん食べる!!それじゃあ朝集合にしよう。場所はどこにする?」
そうして俺は一時間目が始まるまでの短い時間で週末の予定について彼女と話し合いをするのだった。
◇
「それでは~秋にぃがファナエルさんをデートに誘った記念に乾杯!!」
「乾杯!!!」
「乾杯じゃねーよ!!何お前ら人の部屋でパーティーしてんだ!!」
数日後の土曜日、いよいよファナエルとのデートが明日に迫ったその日に俺の部屋はパーティー会場として占拠されていた。
目の前ではとんがり帽子をかぶった斬琉と始が楽しそうにコーラを飲み明かしている。
「いいじゃん、秋にぃが明日デートできるのは僕達のサポートあっての事なんだよ」
「まぁそのことは感謝してるけど、この床に散らばった紙とかゴミはちゃんとかたずけろよ」
「そこはほら……サポート代ってことで全部秋にぃに任せられないかな~って」
体をかがめ、ウルウルと上目遣いしながら懇願する我が妹。
まぁ色々助けてもらったし、今日ぐらいはいいかと思った俺は「しょうがないな」と彼女に言い放った。
「にしても、始も協力してくれてたとはな」
「おうよ、友達の恋路は全力で応援しないとな!!それに斬琉ちゃんが手伝ってくれたらご褒美くれるって言ってくれたしよ!!」
「ご褒美?」
あまりいい予感はしないなと思いながら初めにそう聞き返すと、「そりゃあもうビックなご褒美だよ」と言いながら斬琉が俺達の間に割り込んでくる。
「今から僕が投げるこのサイコロが偶数の目を出せば、始っちは僕とデートする権利が与えられま~す」
「うおぉぉぉ!!頼むぜ、神様仏様!!」
「……何となくそんな気がしてた」
俺は軽くそう言い放ってやかましい二人から距離を取る。
部屋の窓を開け、すっかり暗くなった夏の夜空を一人見上げる。
この空が黒から青色に染まった明日の朝、俺はファナエルとデートしてるんだよな。
ちょっと緊張するし、まだ実感もないけど……それ以上にすっごく楽しみだ。
ファナエルはスマホに映る奇妙な動画をマジマジと見た後、そのスマホの持ち主である始にそんな質問を投げかけていた。
「お、ファナエルさん心霊系とか結構興味あるんだ」
「数年前、まだ私がアメリカに住んでた時に学校の皆で心霊スポットに行く遊びが流行ってたんだ。だからゴースト……日本では幽霊とか怪異の方がメジャーな呼び方だね、そう言うものにちょっと興味があるの」
「お~、それならこの鳥の怪異の噂は絶対面白いぜ!!秋良も良く聞いとけよ!!」
「お、おう」
始は何故かホットしたような息を突き、その鳥頭の怪異についての話を話始める。
なんでも、ここ2、3週間前……ちょうどファナエルが転校してきたのと同じ時期からここら周辺で鳥頭の怪異を見かけるようになったという噂がSNS上に上がり始めたらしい。
鳥頭の怪異は特に人間に危害を加えることは無く、『ハネナシ、ドコダ。ハネナシ、ドコダ!!』と呟きながら町を徘徊しているんだそうだ。
人の前に現れるのは決まって空がオレンジ色に染まる夕暮時。
その鳥頭に関する地域の伝承などは一切ないらしい。
誰もその正体を知ることが出来ない怪異であり、それゆえに今この地域で一番ホットな話題なんだそうだ。
ファナエルは始の話をひとしきり聞いた後、黒いガムを口に放り込み、何かをじっと考えるそぶりを見せる。
「……できれば合ってみたいな、その鳥の怪異」
「お、そう言うと思って!!いい情報仕入れてるぜ、なんとその鳥の怪異は男女二人ペアの前には出現率が異様に高いんだとさ!!」
待ってましたと言わんばかりのテンションで高らかに声を張る始。
そんな彼を見ながら俺は少し呆れ気味な溜息をつきながら声をかける。
「いやいや、さすがにそれは設定盛りすぎなんじゃ……」
そこまで言いかけたその瞬間、俺の脳みそに電流のようなものが流れる。
『フフフ、僕がそこを対策してないとでも思った?ちゃ~んと秋にぃがデートに誘いやすくなる下地を作ってあげるから安心して明日学校行きなよ』
昨日斬琉が俺に言い放ったその言葉……それに夏の肝試しって吊り橋効果がどうこうって話聞いたことあるし……おまけに男女二人で居ると会える確率が上がるとかいうおあつらえ向けの言い伝え。
もしかしてと思い始の顔をバッと見やると、あいつはニヤリとした顔で俺の事を見つめ返し、ファナエルにばれない様にゴーサインを俺に送った。
ファナエルもこの鳥の怪異の事気になってるみたいだし、この会話の流れで言うなら何もおかしくないはず。
彼女に拒否されることを考えるとどうしても怖いけど、俺が変わるなら今しかない!!
「な、なぁファナエル!!もしその鳥頭の事に興味があるなら週末俺と一緒に探しに行かないか?」
そう言った俺の声は自分でもとうに分かるほど震えていた。
それでもあの告白の時とは違う……ちゃんと日和らずにファナエルに伝えたいことを言えた。
後はどんな返事が返ってくるか待つだけだ。
「いいよ」
少しの静寂の後、少し嬉しそうな声色を乗せたその言葉が俺の耳に響く。
ハッとして顔を上げると、ファナエルは俺の事をじっと見つめてほほ笑んでいた。
「どうせなら朝集合して幽霊退治の道具とか探さない?それに朝ごはんぐらいなら作ってあげるよ」
「ファナエルが作ってくれる朝ごはん、うん食べる!!それじゃあ朝集合にしよう。場所はどこにする?」
そうして俺は一時間目が始まるまでの短い時間で週末の予定について彼女と話し合いをするのだった。
◇
「それでは~秋にぃがファナエルさんをデートに誘った記念に乾杯!!」
「乾杯!!!」
「乾杯じゃねーよ!!何お前ら人の部屋でパーティーしてんだ!!」
数日後の土曜日、いよいよファナエルとのデートが明日に迫ったその日に俺の部屋はパーティー会場として占拠されていた。
目の前ではとんがり帽子をかぶった斬琉と始が楽しそうにコーラを飲み明かしている。
「いいじゃん、秋にぃが明日デートできるのは僕達のサポートあっての事なんだよ」
「まぁそのことは感謝してるけど、この床に散らばった紙とかゴミはちゃんとかたずけろよ」
「そこはほら……サポート代ってことで全部秋にぃに任せられないかな~って」
体をかがめ、ウルウルと上目遣いしながら懇願する我が妹。
まぁ色々助けてもらったし、今日ぐらいはいいかと思った俺は「しょうがないな」と彼女に言い放った。
「にしても、始も協力してくれてたとはな」
「おうよ、友達の恋路は全力で応援しないとな!!それに斬琉ちゃんが手伝ってくれたらご褒美くれるって言ってくれたしよ!!」
「ご褒美?」
あまりいい予感はしないなと思いながら初めにそう聞き返すと、「そりゃあもうビックなご褒美だよ」と言いながら斬琉が俺達の間に割り込んでくる。
「今から僕が投げるこのサイコロが偶数の目を出せば、始っちは僕とデートする権利が与えられま~す」
「うおぉぉぉ!!頼むぜ、神様仏様!!」
「……何となくそんな気がしてた」
俺は軽くそう言い放ってやかましい二人から距離を取る。
部屋の窓を開け、すっかり暗くなった夏の夜空を一人見上げる。
この空が黒から青色に染まった明日の朝、俺はファナエルとデートしてるんだよな。
ちょっと緊張するし、まだ実感もないけど……それ以上にすっごく楽しみだ。
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