【完結】俺の彼女はセイジョウです

アカアオ

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2章 ファナエル=???

【ファナエルSIDE】 疑問とトラウマ

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 「寝ちゃったか……大丈夫だよ、今日は何の夢も見ないと思うから」

 私はアキラの口から黒いガムを取り出しながら声をかけた。
 手に付いた彼の唾液とガムをティッシュで拭き取って部屋の端においてあるゴミ箱に放り込む。

 それにしても……なんて安らかな寝顔だろう。
 さっきまでの苦しい寝顔とは大違いだ。

 「あんなに苦しい顔してたのは私のせいじゃない。私の調合は完璧だったはずだから」

 私は知っている、アキラの夢の中に他の誰かが入っていたことを。
 彼の心の声からはシンガン、氷雨、超能力組織なんて突拍子の無い言葉も聞こえてきていた。

 アキラが寝ながら苦しそうにしていたのもその言葉が聞えたタイミングと一緒だった。
 だから、今回アキラが苦しんでるのは私のせいじゃない。

 『秋にぃ……今頭が痛いって寝込んでるんですよね。な~んかいつも鈍感なのに今日はやたら鋭くって、頭良くなる薬でも飲んだのかな~なんて』

 少し嫌な予感がしてアキラに電話をかけた時、代わりに出たキルちゃんから聞かされた言葉。
 スマホの下画面越しに見せてくれた苦しそうなアキラの顔を見ていられなくて私はこの家まで走ってきたのだ。

 「昨日までは順調だったし大きな異変も見られなかったのにどうして……」

 ちょっとした頭痛ぐらいは起こる想定だった。
 でも寝込むほどの痛みは感じないはずなのに……私がクッキーに仕込んだ薬はジワリジワリと痛みを感じないままにアキラの身体を変質させるはずなのに。

 「……確認しておかなきゃ。ここまで私を受け入れてくれたのはアキラだけなの、変に傷ついてほしくない」

 今日持ってきたカバンにアレを入れてきてるはず。
 私はアキラが起きないよう、物音に注意を払ってバッグの中に手を入れる。
 取り出したのは、『大魔女キルケーの日誌』と書かれた古臭い本だ。

 私はパラパラと目的のページが出るまでめくる。
 
 「体を豚に変える毒の話じゃない、キュケオーンを作った日の話でもなくて、筆跡が急に変わったあの日のページはー」

 呼吸が収まらない、心臓が静まらない、息が出来ない。
 震える手で乱暴にめくった日誌はようやく目的のページを表した。

 『いや~いつ見ても綺麗な体だねぇ。あ、そういやもう私の身体なんだった。んっんん!!さて、日記らしい事を書こう!今まで作っていた毒を改良してすっごい薬を開発したよ。生物が種のことわりを簡単に逸脱出来る薬さ!!』

 「作り方は以下の成分に血を混ぜるだけ。豚の血を混ぜれば豚になれる薬に、人間の血を混ぜれば人間になる薬に、悪魔の血を混ぜれば悪魔になれる薬に……食べさせる際は小麦を使った料理に混ぜると良し、人間に近い生命体の場合その後体毛を食わせるとなお良し……作り方は間違ってない」

 ……それじゃあ、アキラの身体にかかってる負担が想定より大きいのはどうして?




 考えられる理由は一つ……今アキラに接触してる超能力者の影響。
 今のアキラの身体は私の力の一部を受け取っている状態のはず……出来て精々他人の心を読む程度。

 ……超能力者と言うイレギュラーに会ったからアキラの負担は加速してるんだ。

 「……どうしよう、またアキラの夢の中に入られたら私じゃ対処できない。このガムを食べさせれば一定時間は力を抑えられるけどそれだけじゃ……」

 いっその事、アキラに全部話してしまった方が良いいのかもしれない。
 愛の誓いの時も、鳥頭の時も、アキラは私を否定せずに寄り添ってくれたんだし……きっと大丈夫。

 『ファナエル……きっと今の君は狂ってしまったんだ。大丈夫、父さん達も皆も君の味方だ……だからその物騒な刃物禁斧チェレクスをしまっておくれ』
 『ああ、なんてこと。誰か早くこの子を助けて!!』

 本当に大丈夫なの?

 あれだけ私を愛してくれていたお父さんやお母さんでも本音を打ち明けたとたんあの反応だったじゃない。
 
 もしアキラに否定されたら、拒絶されたら、捨てられたら……この世界に私を受け入れてくれる存在はもういないんじゃないの?

 なんの準備も整ってない、私を完全に受け入れてくれる計画も途中なこの状況で全部話すなんて……


 そんなことが出来る勇気なんて私の中には無かった。
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