【完結】俺の彼女はセイジョウです

アカアオ

文字の大きさ
27 / 114
2章 ファナエル=???

グラサン+ピアス=刺客

しおりを挟む
「体育館裏に行くなんて何気に初めてだよな」

 俺は一人そんな言葉をこぼしながら夢の中で伝えられた待ち合わせ場所に来ていた。
 あの教室の雰囲気から逃れたい思いとファナエルのためにも一刻も早く事態を収めたいという気持ちから、朝にもらった黒いガムを噛みながら全力疾走してしまったのでしんどくてたまらない。

 誰かに告白されるでもなく、不良にカツアゲされるわけでもなく、超能力組織の人間に呼び出されて体育館裏に来る男子高校生なんて俺ぐらいなもんだろ。

 そんな文句を頭の中に浮かべながら周囲を見渡す。
 すると見覚えのある服装をした一人の少女がコンクリートの上で熟睡している姿を発見した。

 「シスター服‥‥‥じゃなくて修道服って言ってたな。夢の中に出てた氷雨って人はこいつで間違い無いはずなんだけど」
 「間違うよな~その服の名前。日本じゃ修道服を見るのはガキの頃見るアニメの中ぐらいだもんな」

 ぬるりとした低い男の声が背後から囁いてくる。
 嫌な悪寒を覚えた俺は、思わずその場から離れてバッと振り向いた。

 「あ~年取ってもアニメが好きで見てるタイプか?気ぃ悪くしたならすまねぇな、別にお前の趣味を否定しようと思ってる訳じゃないんだ」

 そこに立っている男は俺より体格も一回り大きく、筋肉質なやつだった。
 髪色こそ何も染めていない黒色だったが、彼が身につけている茶色いサングラスとギラギラ輝く耳のピアスは俺に僅かな恐怖心と近づきたくないという気持ちを与えるには十分すぎるものだった。

 そいつはニヤリと口角を上げたまま、クシャクシャと自分の頭を撫でながら軽い口調で話しかけてくる。

 「まぁそんなに警戒すんな。俺は『お前の事を助けたい』って言う友達の手伝いをしてるだけだからよ」
 「それじゃあアンタも」
 「多分お前が考えてるので合ってる。シンガンって組織の一員だよ」

 これが証拠だと言わんばかりに彼が取り出したスマートフォンの画面には、修道服に身を包む氷雨と彼がツーショットで写っている海の写真が表示されていた。
 
 「修道服の人には何度も言ったけど、何があろうとファナエルと別れるつもりはないからな」
 「氷雨から聞いてたとおり頑固なやつだな。自覚してんだろ、そのファナエルって女と付き合ってから体に異常が起こってること」
 「そんな話はもうとっくの前に終わってる。それでも俺は彼女と一緒に居たいって言ってるんだ」
 「たいそう聞き分けの悪いガキだ。お前が頑なにそう言うなら‥‥‥その自慢の彼女、寝取ってやっても良いんだぜ」

 カチャリとサングラスを外す。
 表れた奴の目には嫌なぐらいの自信が詰め込まれてあった。

 俺なんかよりも女の人をよく知ってそうな顔をしたそいつの顔を見て俺は自然と右手に握りこぶしを作ってしまった。

 「お前ー」
 「なんて事言ってるのですか!!」

 俺が握り拳をその男にぶちかまそうとしたその瞬間、俺たちの間に割って入った黒く小さな影が男の顔に特大の飛び蹴りを食らわせていた。

 男はその蹴りを食らって後ろに吹き飛び痛々しい音を鳴らしながら地面に激突する。

 「雄二ゆうじ、初対面の相手にそんな事言っちゃいけないって何度も言っているのです!!一体いつになったら礼儀や作法を覚えるのですか?!」
 「起きたのか氷雨。アレは違うんだ、言葉のあやっていうか冗談っていうか」
 「冗談で取引先の相手を怒らせましたなんて言い訳、社会では通じないのですよ!!」

 雄二ゆうじと呼ばれたサングラス男を絶え間なく説教しているのは夢の中で散々合って話した修道服の少女、氷雨だった。

 氷雨は雄二ゆうじの顔を5,6発ボコスカ殴った後、俺の方に振り返ってペコリと頭を下げる。

 「私の部下が飛んだご無礼を掛けたのです。話し合いで発生する料金は全部このバカに払わせますので何卒私の話を聞いていただけないでしょうか」
 「あ、あの~大丈夫なんで頭下げるの今すぐやめて。話なら聞きますから」

 目の前で小学2年生ぐらいの女の子が社会人顔負けの謝罪を述べながら頭を下げている。
 今に至るまでにどんなやり取りがあったにせよ、この絵面はまずいなんてものじゃないので俺は慌てて彼女に顔をあげるようにお願いをした。

 「ありがとうございますなのです。それじゃあここで話をするのもアレなので、オシャレなカフェにでも行きましょうなのです」

 氷雨はそう言いながら顔をあげると、左手で俺の腕を掴む。
 
 「それじゃあ雄二ゆうじ、お願いするのですよ」
 「はいはい分かったよ。秋良君だっけ、初めての移動方法だと思うからせいぜい酔わないように気をつけろよ」

 割と悲惨な事になっている顔でそういった彼は氷雨の肩にポンっと手を置く。
 その瞬間、ビュンというテクノチックな音と共に浮遊感に似た変な感覚が俺の体に襲いかかった。

 「ま、目的地に着くのは一瞬だけどな」
 
 気がつけば体育館裏に居たはずの俺たちの体は、街中にあるオシャレなカフェの玄関に移動していた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お嬢様と執事は、その箱に夢を見る。

雪桜
恋愛
✨ 第6回comicoお題チャレンジ『空』受賞作 阿須加家のお嬢様である結月は、親に虐げられていた。裕福でありながら自由はなく、まるで人形のように生きる日々… だが、そんな結月の元に、新しく執事がやってくる。背が高く整った顔立ちをした彼は、まさに非の打ち所のない完璧な執事。 だが、その執事の正体は、なんと結月の『恋人』だった。レオが執事になって戻ってきたのは、結月を救うため。だけど、そんなレオの記憶を、結月は全て失っていた。 これは、記憶をなくしたお嬢様と、恋人に忘れられてしまった執事が、二度目の恋を始める話。 「お嬢様、私を愛してください」 「……え?」 好きだとバレたら即刻解雇の屋敷の中、レオの愛は、再び、結月に届くのか? 一度結ばれたはずの二人が、今度は立場を変えて恋をする。溺愛執事×箱入りお嬢様の甘く切ない純愛ストーリー。 ✣✣✣ カクヨムにて完結済みです。 この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。 ※第6回comicoお題チャレンジ『空』の受賞作ですが、著作などの権利は全て戻ってきております。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。 そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。 大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。 しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。 フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。 しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。 「あのときからずっと……お慕いしています」 かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。 ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。 「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、 シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」 あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編6が完結しました!(2025.11.25)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!

satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。 働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。 早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。 そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。 大丈夫なのかなぁ?

処理中です...