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2章 ファナエル=???

【氷雨SIDE】 シンガンVSファナエル・ユピテル

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 視界が赤い閃光に包まれてゆく。
 るるちゃんの魔眼に飲まれた人形達は拳を振り上げたままという不格好な姿で立ち止まっていた。

 私は改めてハンマーを強く握りしめ、右足を勢いよく前に踏み出した。
 耳元でビュンと言う音が響き、視界が一瞬にして切り替わる。

 「あなたが抱くお兄さんへの依存心、私達が叩き直して差し上げるのです」

 こんな心臓に悪い能力を平然と使いこなしていた雄二ゆうじの顔を思い浮かべながら私はハンマーを振りかざす。

 人体を攻撃したかのような柔らかい感触が手に伝わってくる。
 そんな感触とは裏腹に人形達はのカタンと木材のような音を立てて地面に激突していった。

 「へぇ……夢の中なら仲間の能力は使い放題なんだ?」

 数体の人形が砕ける音に混じって緊張感の抜けるような声が響く。
 私の攻撃など取るに足らないと考えているのか、堕天使ファナエル・ユピテルは静かに座ってこちらを見つめていた。

 人形を破壊して、次の人形が居る場所に瞬間移動してまた人形を破壊する。
 この作業の繰り返しに対した時間は掛からない上、るるちゃんの魔眼で人形達の動きを止めているので彼女が動かない限りこの作業を妨害されることは無い。

 そもそも今までの経験上、夢の世界を攻撃されれば必ず拒絶反応が起こるはずなのだ。
 野放しにしておくと危険な感情を矯正するためとはいえ、私のしていることは人間性そのものを歪めかねない危険な行為なのだから。

 だというのに彼女は顔色一つ歪めない。
 牛草秋良人形が壊れる様子を見ても心の琴線に触れていない……むしろ私の行動一つ一つを興味深く見ているような気がする。

 気がかりなことは沢山あるけれど……ここで彼女の雰囲気に飲まれたら駄目だ。
 私はキュッと歯を食いしばってハンマーを横に振る。

 気づけば大量にいた牛草秋良人形はもう両手で数えられるほどしか残っていなかった。

 「その通りなのです。私は一人で戦っているのではないのですから」
 「その言い方だと私が独りぼっちみたいじゃない?」

 彼女は自らの銀髪を両手で触りながら頬を赤らめる。
 
 「今の私にはアキラが居るのにさ」

 彼女が愛する人間の名前を言った瞬間、また夢の世界が大きく揺れ始めた。
 地面から、空から、建物から、何もない空間から、大小さまざまな牛草秋良人形が現れ始めた。
 それもさっきの比になるレベルじゃない……この夢の世界を覆いつくさんとするほどの人形の大群が私の小さな体を囲んでいた。

 「……これじゃぁ瞬間移動で着地する場所がないのです」
 「物量で押されるのは厄介だよね。私もそれで苦しめられたことが合ってさ」

 彼女は近くの人形に抱きつきながら煽るように私に問いかけた。

 「夢の世界にさえ入れたら私とアキラの恋心を切り裂けると思ったの?」
 「できなくてもやるまでなのです……人間が何か別の物に成り代わってしまうのは本当に恐ろしい事なのです。私は誰にもあんな思いはしてほしくないのです!!」

 そう叫んだ私は何も持っていない左手に琴音ことねちゃんが持っていた緑色の小さな箱を作りだした。

 『夢の中で扱うのはあくまで再現された悪魔ねぇ……それでも多少精神に負荷は掛かると思うがそれでも大丈夫かい?』

 珍しく心配そうな顔をしていた彼女の言葉が脳裏をよぎる。
 前に一度夢の世界でこれを使った時は頭が焼き切れそうなほどの負担がかかったのを覚えている。

 それでも、目の前の堕天使を止めるためにはもうこれしか私に残されていない。

 「私はあなたに恨まれても構わない。お兄さんに……牛草秋良に恨まれても構わない。偽善だと言われて避難されても構わないのです」

 手のひらに浮ぶ緑色の箱が花びらのように展開する。
 その中心から鎖が飛び出し、天へ天へと昇ってゆく。

 「超能力者は超能力者のまま、普通の人間は普通の人間のままである状態が一番自然で健全な状態である事を私は身をもって知っているのです」
 「…………」

 天へ伸びきった緑色の鎖は上空から悪魔を引きずり下ろし始めていた。
 分厚い金属製の首輪がつけられた巨大な体躯の悪魔が地面に近づくにつれ、私の動悸も激しくなっていく。

 「だから私は戦うのです。それが他人の恋心を、幸せな今を壊すことになってとしても」

 ズシンと音を立てて地面へ降り立った悪魔は乱暴に腕を振り払う。
 バラバラと壊れてゆく牛草秋良人形の破片に包まれたファナエル・ユピテルの顔どこか虚しさを孕んでいた。

 「私と君達がもっと早くに出会っていれば……その言葉に共感してたんだろうね」
 
 静かにそう言った彼女はスッと右手を前に突き出した。
 突き出された右手からはあのノイズ交じりの白い光が勢いよく飛び出して……先ほど現れたばかりの悪魔の首を跳ね飛ばした。

 「でも、今の私を救ってくれるのはそんな綺麗ごとじゃないんだよ」
 「な、なんで……夢の世界では」
 「『私以外能力が使えないはずなのに』って言いたいんでしょ?」
 
 私の心なんてお見通しなのか、私が疑問を言葉にする前に彼女が口を開いてゆく。
 
 「私のこの力は天使の基本的な機能みたいなものなんだ。人間が目で景色を見て耳で音を聴くのと同じレベルの物。だから君達の使う超能力とはそもそもカテゴリーが違うんだよ」

 そこまで言い切ったその時には彼女の光りがの周囲にあふれていた。
 まずい、このままじゃ私の思考にノイズが掛かってしま#######################################################################################################################

 「君を見てると昔の私を思いだすよ。だから出来るだけ痛みが残らない様にしてあげる」

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 「君の考えていることも、私に対して抱いている思いも、この状況を悔やんでいる気持ちも思いだせないまま、この光に溺れて夢から覚
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