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2章 ファナエル=???
【ファナエルSIDE】 愛するあなたの腕の中で
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「超能力者は超能力者のまま、普通の人間は普通の人間のままである状態が一番自然で健全な状態……かぁ」
一人ぼっちになった夢の世界に私の言葉が響き渡る。
アキラの姿を模した人形達が形作る私の理想郷はドロドロした液体になって崩壊した。
夢の世界がここまで荒れているのは私が夢から覚める前兆なのか、それともー
「君が自分の罪を再認識しただけなんじゃない?」
心臓を突き刺すような言葉が背後から聞こえる。
振り返った先に居たのは見たくもないあの鳥頭の怪異。
『……』
思わず身構えてしまう。
それでもあの鳥頭から心の声が聞こえることは無かった。
きっと夢の世界がこいつの事を勝手に再現したのだろう。
「アキラ人形も見えなくなったし、楽しかった夢が悪夢に変わっちゃったのかな?」
「おかしな事を言うね。君が見る夢の殆どは悪夢だろう?」
ぐしゃりと眼前の景色が歪む。
体の輪郭も自分の思考さえも曖昧になっていく中で、目の前に立つ鳥頭は言葉を緩めなかった。
「天使としての役割を失ったあの日の君はまだ他者を思いやる事が出来る存在だったのに。体の仕組みが変わってしまうことの恐ろしさを君は誰よりも理解できているはずなのに。だというのに今の君は人間の体を堕天使に変えることに必死になっているときた……君は悲劇のヒロインなんかじゃない、自己中心的なただの犯罪者だ」
体の自由が無くなっていく。
私の全てが否定されていく。
そんなものじゃない。
私はただ、私はただ……暖かな日々を手に入れるためにもがいていただけなのに。
「私は……私は!!!」
必死に声を荒らげたその瞬間、今まで居た世界がまるで嘘だったとでも言うような眩しい光が私の視界を覆った。
◇
「あれ?」
視界に飛び込んできた草木。
どっと疲れが押し寄せてくる感覚。
あの恐ろしい悪夢が覚めてたのだろうと私は瞬時に理解する。
それを理解できたのに「あれ?」という言葉が飛び出て来たのは私の体が感じ取った不可解な浮遊感と何故か心が落ち着くような不思議な香りが漂っていたせいだ。
「大丈夫か?すごい苦しそうな寝顔だったけど」
声が聞こえた方向に顔を動かす。
そこには心配そうな様子で私を見つめているアキラの顔があった。
「うん、大丈夫。それよりこの状況は?」
「あ、ああ!!えっとな、ファナエルをあの廃墟で寝かせておくわけにはいかないと思って」
いつもの様に少し照れながら、慌てた口調でアキラは答える。
彼の服は赤とピンクと白が混じった私の血で染まっていて、おまけに私の肩と足元には誰かの手で支えられている感覚があった。
『瞬間移動の能力を使って撤退した氷雨達がいつあの廃墟に戻って来るか分からないし急がないとって気持ちで動いたけど……やっぱりいきなりお姫様抱っこされるなんて嫌だったか?もしかしてデリカシー的に良くない行動だったりするかこれ?』
耳を済ましてアキラの心の声を聴く。
超能力者組織『シンガン』は一度私達から手を引いてくれたみたいだ。
夢の世界で戦った修道服の女の子の事を考えればあれ以上に無茶は出来ないだろうし、私に勝てる可能性は万が一にも無いと判断して撤退したのだろう。
だけど、そんな事実より私の心を引いたのはアキラの心情についてだった。
彼は『シンガン』の面々との交流を通して私がアキラにやろうとしていた事‥‥‥人間であるアキラを私と同じ堕天使にしようとしていた事を知ってしまったはずだ。
それにアキラは人とは違う私の姿も堕天使の名前にふさわしい禍々しいあの力も全部目の当たりにして、挙げ句の果に光輪から流れ続ける私の血液を大量に浴びている。
だというのに、アキラの心には私を疎ましく思う気持ちが一つも無い。
そこにはただ私を心配してくれるあなたの優しい気持ちが、好きな人の前になると声が上ずってしまうあなたの初心な恋心があった。
「えっと……下ろしたほうがいい?」
そんなアキラの気持ちに私の心がどれだけ救われているか、きっと彼は知りもしないだろう。
ほんの一部しか堕天使化していないアキラでは私の心を全て聴くことは出来ないだろうから。
「ううん。このままが良い」
「え?!」
「私の家に着くまで、ずっとこのままが良い」
「本当に良いのか……持ち方変じゃないか?体とか痛くないか?」
「うん、大丈夫。今はちょっと、大好きな人の腕の中に居たい気分だから」
だからちゃんと言葉にして伝えよう。
藻掻いて、堕ちて、走り回って、ようやく見つけた愛しいあなたに向けて。
一人ぼっちになった夢の世界に私の言葉が響き渡る。
アキラの姿を模した人形達が形作る私の理想郷はドロドロした液体になって崩壊した。
夢の世界がここまで荒れているのは私が夢から覚める前兆なのか、それともー
「君が自分の罪を再認識しただけなんじゃない?」
心臓を突き刺すような言葉が背後から聞こえる。
振り返った先に居たのは見たくもないあの鳥頭の怪異。
『……』
思わず身構えてしまう。
それでもあの鳥頭から心の声が聞こえることは無かった。
きっと夢の世界がこいつの事を勝手に再現したのだろう。
「アキラ人形も見えなくなったし、楽しかった夢が悪夢に変わっちゃったのかな?」
「おかしな事を言うね。君が見る夢の殆どは悪夢だろう?」
ぐしゃりと眼前の景色が歪む。
体の輪郭も自分の思考さえも曖昧になっていく中で、目の前に立つ鳥頭は言葉を緩めなかった。
「天使としての役割を失ったあの日の君はまだ他者を思いやる事が出来る存在だったのに。体の仕組みが変わってしまうことの恐ろしさを君は誰よりも理解できているはずなのに。だというのに今の君は人間の体を堕天使に変えることに必死になっているときた……君は悲劇のヒロインなんかじゃない、自己中心的なただの犯罪者だ」
体の自由が無くなっていく。
私の全てが否定されていく。
そんなものじゃない。
私はただ、私はただ……暖かな日々を手に入れるためにもがいていただけなのに。
「私は……私は!!!」
必死に声を荒らげたその瞬間、今まで居た世界がまるで嘘だったとでも言うような眩しい光が私の視界を覆った。
◇
「あれ?」
視界に飛び込んできた草木。
どっと疲れが押し寄せてくる感覚。
あの恐ろしい悪夢が覚めてたのだろうと私は瞬時に理解する。
それを理解できたのに「あれ?」という言葉が飛び出て来たのは私の体が感じ取った不可解な浮遊感と何故か心が落ち着くような不思議な香りが漂っていたせいだ。
「大丈夫か?すごい苦しそうな寝顔だったけど」
声が聞こえた方向に顔を動かす。
そこには心配そうな様子で私を見つめているアキラの顔があった。
「うん、大丈夫。それよりこの状況は?」
「あ、ああ!!えっとな、ファナエルをあの廃墟で寝かせておくわけにはいかないと思って」
いつもの様に少し照れながら、慌てた口調でアキラは答える。
彼の服は赤とピンクと白が混じった私の血で染まっていて、おまけに私の肩と足元には誰かの手で支えられている感覚があった。
『瞬間移動の能力を使って撤退した氷雨達がいつあの廃墟に戻って来るか分からないし急がないとって気持ちで動いたけど……やっぱりいきなりお姫様抱っこされるなんて嫌だったか?もしかしてデリカシー的に良くない行動だったりするかこれ?』
耳を済ましてアキラの心の声を聴く。
超能力者組織『シンガン』は一度私達から手を引いてくれたみたいだ。
夢の世界で戦った修道服の女の子の事を考えればあれ以上に無茶は出来ないだろうし、私に勝てる可能性は万が一にも無いと判断して撤退したのだろう。
だけど、そんな事実より私の心を引いたのはアキラの心情についてだった。
彼は『シンガン』の面々との交流を通して私がアキラにやろうとしていた事‥‥‥人間であるアキラを私と同じ堕天使にしようとしていた事を知ってしまったはずだ。
それにアキラは人とは違う私の姿も堕天使の名前にふさわしい禍々しいあの力も全部目の当たりにして、挙げ句の果に光輪から流れ続ける私の血液を大量に浴びている。
だというのに、アキラの心には私を疎ましく思う気持ちが一つも無い。
そこにはただ私を心配してくれるあなたの優しい気持ちが、好きな人の前になると声が上ずってしまうあなたの初心な恋心があった。
「えっと……下ろしたほうがいい?」
そんなアキラの気持ちに私の心がどれだけ救われているか、きっと彼は知りもしないだろう。
ほんの一部しか堕天使化していないアキラでは私の心を全て聴くことは出来ないだろうから。
「ううん。このままが良い」
「え?!」
「私の家に着くまで、ずっとこのままが良い」
「本当に良いのか……持ち方変じゃないか?体とか痛くないか?」
「うん、大丈夫。今はちょっと、大好きな人の腕の中に居たい気分だから」
だからちゃんと言葉にして伝えよう。
藻掻いて、堕ちて、走り回って、ようやく見つけた愛しいあなたに向けて。
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