【完】ちゃーちゃんの牛乳

唯月漣

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1.ユイちゃんの家族

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 ユイちゃんは6歳の女の子です。
 とある田舎町の酪農家の家に生まれた、小学校1年生のユイちゃん。
 ユイちゃんの一日は、みんなの朝ご飯の支度から始まります。

 
「おはよう、ユイちゃん。悪いんだけど朝の牛乳が足りないの。ちょっと牛舎に行って、貰ってきてくれないかしら?」


 ユイちゃんにそう声をかけたのは、台所でお味噌汁を作っていた大ばぁばでした。大ばぁばは膝が悪く、家から一人で出る事が出来なかったのです。


「分かった!」

 
 ユイちゃんはシンクの下から小さなミルクパンを取り出して、サンダルをつっかけて外に飛び出します。

 行先は、徒歩5分の距離にある、おじいちゃんとおばあちゃんが働いている牛舎でした。


「じぃちゃーん! 大ばぁばがね、ちゃーちゃんから牛乳貰って来いって」
「おぉ、そうか。ちゃんとちゃーちゃんに声をかけてから絞るんだよ」
「はぁーい」


 ユイちゃんは牛舎の奥で乳しぼりをしていたおじいちゃんに大きな声でお返事を返して、牛舎の一番手前にいた若いジャージー牛に声をかけました。


「ちゃーちゃん、おはよ。牛乳、もらうよ」
「ンモー……」


 声をかけられた若い牛、ちゃーちゃんは、慣れた表情で振り返り、干し草を食みながら小さく返事をします。

 ちゃーちゃんは、ユイちゃんが保育園の時、ユイちゃんのお家で生まれた子牛です。

 とても賢く人懐っこいちゃーちゃんは、小学校に上がったばかりのユイちゃんが下手くそな手つきで乳を搾っても決して怒らず、黙って絞りやすい体勢になって、牛乳をくれる優しい牛でした。
 
 去年子牛を産んで乳をとれるようになったちゃーちゃんですが、年齢はまだ二歳。
 
 まだまだ甘えたい盛りのちゃーちゃんは、ユイちゃんの可愛い妹分です。

 ちゃーちゃんのお乳を絞り終えたユイちゃんは、持ってきていたビニール袋をあけ、りんごの皮を取り出してちゃーちゃんにあげました。
 
 それは昨日の夜家族でりんごを食べた時、ちゃーちゃんにあげるためにユイちゃんがこっそり取っておいたものでした。


「へへへ。おじいちゃんには内緒だよ。ちゃーちゃん、いつも美味しい牛乳をありがとね」


 ちゃーちゃんは大喜びでりんごの皮を食べると、甘えるようにユイちゃんの手を手をぺろぺろと舐めました。


「また学校が終わったら来るからね」

 
 ユイちゃんはそう声をかけて、絞った牛乳を持ってお家に帰ります。
 その牛乳を沸かして食卓に並べ、しばらくすると朝ご飯の時間です。

 会社で働いているお父さん。
 普段はパートだけど、今は仕事をお休みして幼い弟の世話をしているお母さん。
 牛やにわとりの世話をして暮らす、おじいちゃんとおばあちゃん。
 みんなのご飯を作る、専業主婦の大ばぁば。
 小学一年生のユイちゃんと、まだ赤ちゃんの弟。


 ちゃーちゃんをはじめとする、牛が十数頭。
 にわとりが6羽。
 
 牛や鶏の飼料をネズミから守る番猫のマーちゃんと、畑にイノシシやアナグマが来ないように守るための番犬チャーミィ。


 これがユイちゃんの家族の全てでした。
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