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2.牛のお世話
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ユイちゃんの家は山と川のそばにあって、小学校からは一時間に一本しかないローカル線に乗り、更に駅から家までは子供のユイちゃんの足で30分ほどかかります。
ユイちゃんの家は牧場でしたので、田舎町の中でもかなりはずれの方でした。
二年生になったユイちゃんは、集団下校から、一人で下校が出来るようになりました。
田んぼの中を縫うように通る、細い歩道。
その道すがら、ユイちゃんは沢山のアカツメクサを摘んで帰ります。
アカツメクサの花には甘い蜜が沢山入っていて、ちゃーちゃんの大好物だからです。
少しだけ寄り道をして、大ばぁばの大好きなタラの芽や、お母さんの好きなわらびを摘んで帰るのも忘れません。
途中茶色の蛇が日向ぼっこをしていたり、大きな蜂が蜜集めをしていたりしましたが、ユイちゃんはそれらが危険のない生き物であることをよく知っていました。
散々寄り道をして家に帰りつく頃には、ユイちゃんの小さなレッスンバックは、野草でいっぱいになっていました。
ユイちゃんのお洋服にも、草の種が沢山ついています。
「またこんなに汚して。誰が洗濯すると思ってるの」
お母さんはいつもユイちゃんをそう叱りましたが、ユイちゃんはタラの芽やわらびを採って帰ると家族が喜んでくれることを知っていたので、全く気にしませんでした。
家にランドセルを置くと、ユイちゃんは今日も大好きなちゃーちゃんの所へ向かいます。
畑の傍にあったアカツメクサを追加で集め、沢山のそれをかかえて牛舎に入ると、牛たちは競うように鳴き、ユイちゃんにアカツメクサをねだります。
牛舎に繋がれたままの牛たちにとって、生のアカツメクサはご馳走でした。
「ダメだよ。これはちゃーちゃんにあげるの」
ユイちゃんは仲良しのちゃーちゃんに、早速アカツメクサをあげました。出掛けに家から持ってきた、とうもろこしの芯も一緒です。
ちゃーちゃんは嬉しそうにユイちゃんに顔を擦り寄せて、ユイちゃんに撫でてくれとねだります。
ちゃーちゃんも、いつもこっそりおやつをくれるユイちゃんのことが大好きでした。
「ユイ。明日から二ヶ月、ちゃーちゃんからお乳を搾ってはいけないよ」
牛舎の奥にいたおじいちゃんが、ユイちゃんに突然そう言いました。
「どうして?」
「ちゃーちゃんは二ヶ月間休んで、また赤ちゃんを産む準備をするんだよ。そうしないと牛乳が出なくなるからね。子牛が産まれたら、また夕方の乳やりをお願いできるか?」
「分かった」
ユイちゃんのお家で生まれた子牛に夕方の粉ミルクをあげるのは、小学校に上がった頃からユイちゃんのお仕事でした。
生まれた子牛がメスならばユイちゃんの家族に。
オスだったら、ある程度の大きさになったら佐々木のおじちゃんのお家に売るのです。
「ちゃーちゃんの子供、メスだといいなぁ。そしたら一緒に暮らせるのに。ね、ちゃーちゃん」
ユイちゃんはアカツメクサを食べ終えたちゃーちゃんをブラッシングしてあげながら、そう言いました。
ユイちゃんの家は牧場でしたので、田舎町の中でもかなりはずれの方でした。
二年生になったユイちゃんは、集団下校から、一人で下校が出来るようになりました。
田んぼの中を縫うように通る、細い歩道。
その道すがら、ユイちゃんは沢山のアカツメクサを摘んで帰ります。
アカツメクサの花には甘い蜜が沢山入っていて、ちゃーちゃんの大好物だからです。
少しだけ寄り道をして、大ばぁばの大好きなタラの芽や、お母さんの好きなわらびを摘んで帰るのも忘れません。
途中茶色の蛇が日向ぼっこをしていたり、大きな蜂が蜜集めをしていたりしましたが、ユイちゃんはそれらが危険のない生き物であることをよく知っていました。
散々寄り道をして家に帰りつく頃には、ユイちゃんの小さなレッスンバックは、野草でいっぱいになっていました。
ユイちゃんのお洋服にも、草の種が沢山ついています。
「またこんなに汚して。誰が洗濯すると思ってるの」
お母さんはいつもユイちゃんをそう叱りましたが、ユイちゃんはタラの芽やわらびを採って帰ると家族が喜んでくれることを知っていたので、全く気にしませんでした。
家にランドセルを置くと、ユイちゃんは今日も大好きなちゃーちゃんの所へ向かいます。
畑の傍にあったアカツメクサを追加で集め、沢山のそれをかかえて牛舎に入ると、牛たちは競うように鳴き、ユイちゃんにアカツメクサをねだります。
牛舎に繋がれたままの牛たちにとって、生のアカツメクサはご馳走でした。
「ダメだよ。これはちゃーちゃんにあげるの」
ユイちゃんは仲良しのちゃーちゃんに、早速アカツメクサをあげました。出掛けに家から持ってきた、とうもろこしの芯も一緒です。
ちゃーちゃんは嬉しそうにユイちゃんに顔を擦り寄せて、ユイちゃんに撫でてくれとねだります。
ちゃーちゃんも、いつもこっそりおやつをくれるユイちゃんのことが大好きでした。
「ユイ。明日から二ヶ月、ちゃーちゃんからお乳を搾ってはいけないよ」
牛舎の奥にいたおじいちゃんが、ユイちゃんに突然そう言いました。
「どうして?」
「ちゃーちゃんは二ヶ月間休んで、また赤ちゃんを産む準備をするんだよ。そうしないと牛乳が出なくなるからね。子牛が産まれたら、また夕方の乳やりをお願いできるか?」
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生まれた子牛がメスならばユイちゃんの家族に。
オスだったら、ある程度の大きさになったら佐々木のおじちゃんのお家に売るのです。
「ちゃーちゃんの子供、メスだといいなぁ。そしたら一緒に暮らせるのに。ね、ちゃーちゃん」
ユイちゃんはアカツメクサを食べ終えたちゃーちゃんをブラッシングしてあげながら、そう言いました。
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