【完】ちゃーちゃんの牛乳

唯月漣

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3.ちゃーちゃんとオスの子牛

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 ユイちゃんは3年生になりました。
 
 ちゃーちゃんはあれから毎年子牛を産みました。
 最初の一頭はメスでしたが、その後は全てオスでした。

 今年ちゃーちゃんが産んだのも、オスの子牛です。


「佐々木のおじちゃん、土田先生。こんにちは!」


 学校が終わりユイちゃんがお手伝いのために牛舎に行くと、今日は佐々木のおじちゃんと獣医の土田先生がおじいちゃんと話をしていました。

 きっと先週産まれたオスの子牛のことだろう。
 ユイちゃんはピンときました。


 この間ちゃーちゃんの産んだオスの子牛は、生まれた時から後ろ足が片方真っ直ぐに伸ばせない子でした。
 
 けれども彼はちゃーちゃんに似てとても人懐こく、賢いいい子牛だったので、ユイちゃんはとても可愛がっていました。

 そんな子牛の足を獣医の土田先生が治して、その後彼が大きくなったら佐々木のおじちゃんが買ってくれるんだろう。
 今日はきっと、その段取りの相談か何かかな。

 小さなユイちゃんは、何となくそう思ったのです。

 いつも通り牛たちに餌をやって、ちゃーちゃんの子牛にもミルクをあげようとした、そのときです。


「ユイ。その子牛にはもうミルクをあげなくていい。今日も、水だけやれ」
「えっ、なんで?」


 子牛は明らかにお腹を空かせていて、ミルクを早くくれと言うように、ユイちゃんの持っている牛用の哺乳瓶に舌を伸ばして鳴いています。


「明日、その子を佐々木さんが引取りに来るんだよ。佐々木さんの車で運んでいる時に荷台でフンをしたら、佐々木さん、困るべ?」
「ふーん、分かったぁ」


 仕方が無いので、ユイちゃんは作ってしまった粉ミルクを排水溝に流します。
 
 佐々木のおじちゃん、いつももう牛が少し大きくなってから引取りに来るのに、今回は早いんだなぁ。

 少し不思議に思いましたが、なんせ今回は足の不自由な子牛でしたので、今回は佐々木さんのお家で早めに引き取って、牛が小さいうちに佐々木さんの所で治療を受けさせるのかなぁ。
 ユイちゃんはのんきな性格だったので、そんなふうに思っていました。


 次の日ユイちゃんが学校から帰ると、既にその子牛は牛舎からいなくなっていました。


 賢いちゃーちゃんは、牛舎に我が子がいなくなったのが分かるのでしょう。

 ちゃーちゃんはその日声が枯れるまで子供を呼んで鳴き、干し草を一切食べませんでした。
 
 心配したユイちゃんが差し入れた大好きなアカツメクサやりんごの皮にすら目もくれず、ちゃーちゃんは三日三晩、寂しそうに鳴き続けました。

  
 それでも牛は、一日でも乳を絞らないと乳房炎になってしまいます。

 以来すっかり食が細くなってしまったちゃーちゃんは、あまり食べていないのに乳ばかりを絞られ、みるみる痩せていきました。
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