4 / 9
4.自分の仕事
しおりを挟む
ユイちゃんは4年生になりました。
ユイちゃんが学校から帰ると、珍しく牛舎の入口で三毛猫のマーちゃんが待っていました。
マーちゃんの足元にはまるまる太ったネズミが一匹、瀕死の重症で横たわっています。
「わっ、すごいねマーちゃん! マーちゃんは本当にねずみ捕りが上手だね」
マーちゃんはペットではなく、牛舎の中で飼われている番猫です。
牛舎には牛の餌である穀物や豆類の交ぜられた飼料、ニワトリ用のトウモロコシ飼料などがあって、それらを狙うネズミが頻繁に出ました。
マーちゃんはそんな牛舎を駆け回ってネズミ達を牽制するのがお仕事でしたが、稀にこうして獲物を捕ってくることもありました。
大きな獲物が捕れた時には、マーちゃんは家族のみんなに褒めて欲しく、てこうして牛舎の玄関先でドヤ顔で家族が通るのを待つのです。
畑の前に繋がれている番犬のチャーミィは、畑に作物を狙うアナグマやタヌキ、イノシシが出ると、吠えて追い払ってくれました。
それが牧場での、チャーミィの仕事です。
さすがにチャーミィは、猫のマーちゃんのようにそれらを仕留めて持って来るということはありませんでしたけれど。
その日ユイちゃんは、じいちゃんにキャベツ畑での青虫取りをお願いされていました。
収穫間近の農薬がかけられないキャベツについた青虫を、割り箸で丁寧につまみ取って、カップラーメンの空容器に入れていくのです。
これは家族の中で足腰が丈夫で目がよく、手先の器用なユイちゃんにしかできないことでした。
カップラーメンの容器に大量に捕獲した青虫を、ユイちゃんは鶏たちに与えます。その日特別に大きな卵を産んだコッコには、少し多めに青虫を与えました。
檻の中から出られない鶏たちにとって、青虫はごちそうです。
ユイちゃんのお家では、年寄りも大人や子供も、牛や鶏、犬も猫も。
みんな、当たり前のように『自分の仕事』を持っています。
ユイちゃんは5年生になりました。
その日ユイちゃんは先生達の大きな会議があって、いつもより早めに学校が終わりました。
猫のマーちゃんと犬のチャーミィにご飯をあげてから、ユイちゃんはいつものように牛舎に入ります。
ちょうど牛舎の入り口に、佐々木さんのトラックが停まっていました。
「こんにちは、佐々木さん」
「えっ、ユイちゃん? 今日は学校早いんだね」
「うん。今日は5時間目がなかったから」
ユイちゃんの顔を見た佐々木さんは、その日なぜだかよそよそしい気がしました。
「ごめんユイちゃん。おじちゃん今日は次の約束があるから、もう行くね。おじいちゃんに後で電話するって伝えておいて」
「え? は、はい」
いつもおしゃべりが大好きな佐々木さんは、その日は何故かあっという間にトラックごと去ってしまいました。
ユイちゃんが学校から帰ると、珍しく牛舎の入口で三毛猫のマーちゃんが待っていました。
マーちゃんの足元にはまるまる太ったネズミが一匹、瀕死の重症で横たわっています。
「わっ、すごいねマーちゃん! マーちゃんは本当にねずみ捕りが上手だね」
マーちゃんはペットではなく、牛舎の中で飼われている番猫です。
牛舎には牛の餌である穀物や豆類の交ぜられた飼料、ニワトリ用のトウモロコシ飼料などがあって、それらを狙うネズミが頻繁に出ました。
マーちゃんはそんな牛舎を駆け回ってネズミ達を牽制するのがお仕事でしたが、稀にこうして獲物を捕ってくることもありました。
大きな獲物が捕れた時には、マーちゃんは家族のみんなに褒めて欲しく、てこうして牛舎の玄関先でドヤ顔で家族が通るのを待つのです。
畑の前に繋がれている番犬のチャーミィは、畑に作物を狙うアナグマやタヌキ、イノシシが出ると、吠えて追い払ってくれました。
それが牧場での、チャーミィの仕事です。
さすがにチャーミィは、猫のマーちゃんのようにそれらを仕留めて持って来るということはありませんでしたけれど。
その日ユイちゃんは、じいちゃんにキャベツ畑での青虫取りをお願いされていました。
収穫間近の農薬がかけられないキャベツについた青虫を、割り箸で丁寧につまみ取って、カップラーメンの空容器に入れていくのです。
これは家族の中で足腰が丈夫で目がよく、手先の器用なユイちゃんにしかできないことでした。
カップラーメンの容器に大量に捕獲した青虫を、ユイちゃんは鶏たちに与えます。その日特別に大きな卵を産んだコッコには、少し多めに青虫を与えました。
檻の中から出られない鶏たちにとって、青虫はごちそうです。
ユイちゃんのお家では、年寄りも大人や子供も、牛や鶏、犬も猫も。
みんな、当たり前のように『自分の仕事』を持っています。
ユイちゃんは5年生になりました。
その日ユイちゃんは先生達の大きな会議があって、いつもより早めに学校が終わりました。
猫のマーちゃんと犬のチャーミィにご飯をあげてから、ユイちゃんはいつものように牛舎に入ります。
ちょうど牛舎の入り口に、佐々木さんのトラックが停まっていました。
「こんにちは、佐々木さん」
「えっ、ユイちゃん? 今日は学校早いんだね」
「うん。今日は5時間目がなかったから」
ユイちゃんの顔を見た佐々木さんは、その日なぜだかよそよそしい気がしました。
「ごめんユイちゃん。おじちゃん今日は次の約束があるから、もう行くね。おじいちゃんに後で電話するって伝えておいて」
「え? は、はい」
いつもおしゃべりが大好きな佐々木さんは、その日は何故かあっという間にトラックごと去ってしまいました。
10
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
✿ 私は夫のことが好きなのに、彼は私なんかよりずっと若くてきれいでスタイルの良い女が好きらしい
設楽理沙
ライト文芸
累計ポイント110万ポイント超えました。皆さま、ありがとうございます。❀
結婚後、2か月足らずで夫の心変わりを知ることに。
結婚前から他の女性と付き合っていたんだって。
それならそうと、ちゃんと話してくれていれば、結婚なんて
しなかった。
呆れた私はすぐに家を出て自立の道を探すことにした。
それなのに、私と別れたくないなんて信じられない
世迷言を言ってくる夫。
だめだめ、信用できないからね~。
さようなら。
*******.✿..✿.*******
◇|日比野滉星《ひびのこうせい》32才 会社員
◇ 日比野ひまり 32才
◇ 石田唯 29才 滉星の同僚
◇新堂冬也 25才 ひまりの転職先の先輩(鉄道会社)
2025.4.11 完結 25649字
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる