【完】ちゃーちゃんの牛乳

唯月漣

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4.自分の仕事

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 ユイちゃんは4年生になりました。

 ユイちゃんが学校から帰ると、珍しく牛舎の入口で三毛猫のマーちゃんが待っていました。
 マーちゃんの足元にはまるまる太ったネズミが一匹、瀕死の重症で横たわっています。


「わっ、すごいねマーちゃん! マーちゃんは本当にねずみ捕りが上手だね」


 マーちゃんはペットではなく、牛舎の中で飼われている番猫です。

 牛舎には牛の餌である穀物や豆類の交ぜられた飼料、ニワトリ用のトウモロコシ飼料などがあって、それらを狙うネズミが頻繁に出ました。

 マーちゃんはそんな牛舎を駆け回ってネズミ達を牽制するのがお仕事でしたが、稀にこうして獲物を捕ってくることもありました。
 大きな獲物が捕れた時には、マーちゃんは家族のみんなに褒めて欲しく、てこうして牛舎の玄関先でドヤ顔で家族が通るのを待つのです。

 畑の前に繋がれている番犬のチャーミィは、畑に作物を狙うアナグマやタヌキ、イノシシが出ると、吠えて追い払ってくれました。
 それが牧場での、チャーミィの仕事です。
 
 さすがにチャーミィは、猫のマーちゃんのようにそれらを仕留めて持って来るということはありませんでしたけれど。

 その日ユイちゃんは、じいちゃんにキャベツ畑での青虫取りをお願いされていました。

 収穫間近の農薬がかけられないキャベツについた青虫を、割り箸で丁寧につまみ取って、カップラーメンの空容器に入れていくのです。
 これは家族の中で足腰が丈夫で目がよく、手先の器用なユイちゃんにしかできないことでした。

 カップラーメンの容器に大量に捕獲した青虫を、ユイちゃんは鶏たちに与えます。その日特別に大きな卵を産んだコッコには、少し多めに青虫を与えました。
 
 檻の中から出られない鶏たちにとって、青虫はごちそうです。

 ユイちゃんのお家では、年寄りも大人や子供も、牛や鶏、犬も猫も。
 みんな、当たり前のように『自分の仕事』を持っています。



 ユイちゃんは5年生になりました。


 その日ユイちゃんは先生達の大きな会議があって、いつもより早めに学校が終わりました。
 
 猫のマーちゃんと犬のチャーミィにご飯をあげてから、ユイちゃんはいつものように牛舎に入ります。
 ちょうど牛舎の入り口に、佐々木さんのトラックが停まっていました。

 
「こんにちは、佐々木さん」
「えっ、ユイちゃん? 今日は学校早いんだね」
「うん。今日は5時間目がなかったから」


 ユイちゃんの顔を見た佐々木さんは、その日なぜだかよそよそしい気がしました。


「ごめんユイちゃん。おじちゃん今日は次の約束があるから、もう行くね。おじいちゃんに後で電話するって伝えておいて」
「え? は、はい」


 いつもおしゃべりが大好きな佐々木さんは、その日は何故かあっという間にトラックごと去ってしまいました。
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