【完】ちゃーちゃんの牛乳

唯月漣

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6.真実を知るとき

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「可哀想だけど、ここにいる子達はペットじゃなく経済動物なんだよ。『お仕事』が出来なくなったら、サヨナラする決まりなんだ。そうじゃなくても酪農は儲からない。乳の出なくなった牛を残していたら、じいちゃんとばあちゃんが餌代で破産して、いずれは首を括らなければならなくなるよ。だから私達は牛に対して感謝の気持ちを持ってお世話をする。けれど、働けなくなった動物をここに残すことは出来ないんだ」

 
 そう話すおばあちゃんも、ユイちゃんが牛に対して沢山の愛情を持ってお世話していたのを知っていたので、とても申し訳なさそうにしています。
 
 真実を知ったユイちゃんは三日三晩泣いて、しばらくの間牛舎に入れなくなりました。

 その間、おじいちゃんもおばあちゃんも、牛舎の仕事を手伝えとは一度も言いませんでした。
 ユイちゃんは『お仕事』をしなかったのに、誰に怒られることもありませんでした。

 おじいちゃんがちゃーちゃんから絞った最後の牛乳は、誰にも飲まれることなく、いつの間にか冷蔵庫の中で悪くなって、お母さんに捨てられてしまいました。
 



 ユイちゃんは6年生になりました。
 
 あれから図書館で調べたり、先生に聞いたり、酪農をやっているクラスメートに聞いて、ユイちゃんが知ったこと。
 
 お乳を出せなくなったちゃーちゃんは、殺されて牛肉になってしまったけれど、それは酪農の世界では普通のことだってこと。
 
 ちゃーちゃんが産んだオスの子牛達は、佐々木のおじちゃんに貰われていったのではなく、殺してお肉にされるために『屠殺場とさつじょう』されていたってんだってこと。
 
 佐々木のおじちゃんは牛を運ぶお仕事をしているけれど、お家には一頭も牛を飼っていなかったこと。

 獣医の土田先生は、本当は獣医ではなく、人工授精師という牛の種付けを専門にやっている人だったということ。
 
 ちゃーちゃんのように、もう種をつけても乳が出なそうな牛を殺してお肉にする判断をしていたのは、土田先生だったってこと。

 先生はもう去年のうちに、ちゃーちゃんはもう次で廃牛にするようおじいちゃんにアドバイスしていたこと。
 

 ユイちゃんはそれを知って以来、何年も佐々木のおじちゃんと土田先生とは一度も口をききませんでした。
 
 それが子供のユイちゃんに出来る、精一杯の反抗だったのです。
 
 中学校に上がって放課後の部活動が始まったのを言い訳に、ユイちゃんは牛舎のお手伝いも止めました。




   
 その後狂牛病という怖い病気が流行って、ユイちゃんのおじいちゃんとおばあちゃんは酪農を辞めました。

 牛を全て手放し、ユイちゃんの家の牛舎には全ての牛がいなくなりました。

 ユイちゃんが牛のお世話をすることは、もう二度とありません。

 実の孫のようにユイちゃんを可愛がってくれていた佐々木さんや土田先生とも、もう会うことはなくなりました。 
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