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29)大人にして頂く、ということ
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29)大人にして頂く、ということ
苦笑いを浮かべた私に、律火様はニッコリと微笑まれた。
「日和さんはそうやって、もっと笑っている方が可愛いと思うよ」
律火様は車に乗る直前、私を振り向いてそうおっしゃられて、子供のような無邪気な顔で私へウインクをされた。
その律火様のお顔が本当にお優しくて、私は温かな気持ちで見惚れてしまった。
***
「ねぇ日和。紡君はどうして今日、元気がないの?」
……それは彼が十三歳の誕生日を迎えた昨日、旦那様に初めて男として抱かれたから。
そんな言葉を飲み込んだ私は、慌てて表情を取り繕った。
「紡君、どこか痛いの? 目が真っ赤だよ。旦那サマにムチで叩かれたのー?」
紡と呼ばれた少年は「なんでもないよ」と力なく笑って、問いかけてきた幼い少年の頭を撫でた。
無理に笑う彼の痛々しさに、私は助け船を出す。
「紡君は昨夜、旦那様に『大人にして頂いた』んだよ。今日は疲れているから、休ませてあげたいんだ。私達で紡君の掃除の当番を代わってあげよう?」
「うん、いいよ。じゃあ日和、晴れているうちに窓拭きからやろう!」
「そうだね。この様子だと、午後は雨かもしれないもんね」
そう答えて嵌め殺しの窓の外を見上げれば、空は不穏な曇天で。
私は紡君を愛玩奴隷用の寝室へ残し、幼い彼らを連れて部屋を出た。
夜半に泣きながら部屋に戻ってきた彼。
執拗なスパンキングに腫れ上がった尻とその狭間は、赤く裂けて粘膜が無惨にめくれ、血に濡れていた。
そんな状態の秘部を、シャワーで洗って軟膏を付けてあげたのは私だった。
十三の誕生日に、旦那様に大人にして頂く。
これはあの屋敷では、当たり前に行われていた行為。
いわば愛玩奴隷であった私達にとって、成人の儀式のようなものだった。
彼は初めてだったのだから、仕方のないこと。
数回……数十回と抱かれるうちに、穴は旦那様のモノに慣れて、やがて出血しなくなる。
そうは分かっていても、本来異物を入れる為に作られていないその器官に、ある日突然旦那様のモノを受け入れるのだ。
痛いのは当然だ。
彼もまた、旦那様の前では気丈に感じているさまを演じてきたのだろう。
そうしなければ旦那様の機嫌を損ねてしまうことは、この年になれば分かる。
「紡君、いいなぁ。僕も早く、旦那サマに大人にして頂きたい。そうして旦那サマのお気に入りになれれば、今よりもっと好きなものを買って頂けたり、美味しいものを食べさせて貰えたりするんでしょう?」
窓拭き用の洗剤を片手に持った幼い少年が、無邪気にそう言いながらニコニコと私に笑いかけた。
「ねーねー、日和のときはどうだったの? やっぱり最初はちょっと、痛かった……?」
「私のときは………………」
――――私はあのとき、彼になんと答えたのだっただろうか?
私は十三歳の誕生日を迎えたあの日。旦那様に大人にして頂けなかったのだと、正直に答えたのだったか……?
唐突に小さな彼の顔が歪み、景色が白む。
ああ…………目が覚める。
ピピピピピピ…………。
無機質な機械音が、マットレスに沈む私の意識を呼び戻す。
ベッドから起き上がって、私は慌ててあたりを見渡した。大きな窓に引かれたカーテンの隙間からは、太陽の光が生まれたてのような新鮮さで差し込んでいる。
枕元のスマートフォンに触れると画面には午前九時の表示が出ており、その下にはメールの受信を知らせる白いバーが出ていた。
『日和さん、おはよう。昨日は楽しかったよ。よく眠れたかな? 眠れたのなら、今夜。二十一時に僕の寝室にきて』
「…………あっ」
それは律火様からのお誘いのメールであった。
昨日は一日私の用事に付き合ってくださり、お祝いだと言ってケーキをご馳走してくださった律火様。
私を"可愛い"と言って下さったあの方ならば、とうが立った私の望みを叶えてくださるような気がする。
「律火様……」
私はいよいよ待ち望んだ来るべきときが来たことを感じ、静かに心臓が高鳴っていくのを自覚した。
苦笑いを浮かべた私に、律火様はニッコリと微笑まれた。
「日和さんはそうやって、もっと笑っている方が可愛いと思うよ」
律火様は車に乗る直前、私を振り向いてそうおっしゃられて、子供のような無邪気な顔で私へウインクをされた。
その律火様のお顔が本当にお優しくて、私は温かな気持ちで見惚れてしまった。
***
「ねぇ日和。紡君はどうして今日、元気がないの?」
……それは彼が十三歳の誕生日を迎えた昨日、旦那様に初めて男として抱かれたから。
そんな言葉を飲み込んだ私は、慌てて表情を取り繕った。
「紡君、どこか痛いの? 目が真っ赤だよ。旦那サマにムチで叩かれたのー?」
紡と呼ばれた少年は「なんでもないよ」と力なく笑って、問いかけてきた幼い少年の頭を撫でた。
無理に笑う彼の痛々しさに、私は助け船を出す。
「紡君は昨夜、旦那様に『大人にして頂いた』んだよ。今日は疲れているから、休ませてあげたいんだ。私達で紡君の掃除の当番を代わってあげよう?」
「うん、いいよ。じゃあ日和、晴れているうちに窓拭きからやろう!」
「そうだね。この様子だと、午後は雨かもしれないもんね」
そう答えて嵌め殺しの窓の外を見上げれば、空は不穏な曇天で。
私は紡君を愛玩奴隷用の寝室へ残し、幼い彼らを連れて部屋を出た。
夜半に泣きながら部屋に戻ってきた彼。
執拗なスパンキングに腫れ上がった尻とその狭間は、赤く裂けて粘膜が無惨にめくれ、血に濡れていた。
そんな状態の秘部を、シャワーで洗って軟膏を付けてあげたのは私だった。
十三の誕生日に、旦那様に大人にして頂く。
これはあの屋敷では、当たり前に行われていた行為。
いわば愛玩奴隷であった私達にとって、成人の儀式のようなものだった。
彼は初めてだったのだから、仕方のないこと。
数回……数十回と抱かれるうちに、穴は旦那様のモノに慣れて、やがて出血しなくなる。
そうは分かっていても、本来異物を入れる為に作られていないその器官に、ある日突然旦那様のモノを受け入れるのだ。
痛いのは当然だ。
彼もまた、旦那様の前では気丈に感じているさまを演じてきたのだろう。
そうしなければ旦那様の機嫌を損ねてしまうことは、この年になれば分かる。
「紡君、いいなぁ。僕も早く、旦那サマに大人にして頂きたい。そうして旦那サマのお気に入りになれれば、今よりもっと好きなものを買って頂けたり、美味しいものを食べさせて貰えたりするんでしょう?」
窓拭き用の洗剤を片手に持った幼い少年が、無邪気にそう言いながらニコニコと私に笑いかけた。
「ねーねー、日和のときはどうだったの? やっぱり最初はちょっと、痛かった……?」
「私のときは………………」
――――私はあのとき、彼になんと答えたのだっただろうか?
私は十三歳の誕生日を迎えたあの日。旦那様に大人にして頂けなかったのだと、正直に答えたのだったか……?
唐突に小さな彼の顔が歪み、景色が白む。
ああ…………目が覚める。
ピピピピピピ…………。
無機質な機械音が、マットレスに沈む私の意識を呼び戻す。
ベッドから起き上がって、私は慌ててあたりを見渡した。大きな窓に引かれたカーテンの隙間からは、太陽の光が生まれたてのような新鮮さで差し込んでいる。
枕元のスマートフォンに触れると画面には午前九時の表示が出ており、その下にはメールの受信を知らせる白いバーが出ていた。
『日和さん、おはよう。昨日は楽しかったよ。よく眠れたかな? 眠れたのなら、今夜。二十一時に僕の寝室にきて』
「…………あっ」
それは律火様からのお誘いのメールであった。
昨日は一日私の用事に付き合ってくださり、お祝いだと言ってケーキをご馳走してくださった律火様。
私を"可愛い"と言って下さったあの方ならば、とうが立った私の望みを叶えてくださるような気がする。
「律火様……」
私はいよいよ待ち望んだ来るべきときが来たことを感じ、静かに心臓が高鳴っていくのを自覚した。
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