元・愛玩奴隷は愛されとろけて甘く鳴き~二代目ご主人様は三兄弟~

唯月漣

文字の大きさ
46 / 108

46)気持ちいい時は

しおりを挟む
「萎えるかどうか、聞いてみなきゃ分かんないじゃない。鳴いてみてよ、日和」
「…………」


 そこまで言って頂けるのならば……。
 そうは思うけれど、自分が声を出した途端、場の雰囲気がスッとしらけるあの感覚が脳裏につい蘇ると、下半身に与えられる気持ちよさとは裏腹につい臆病になって気持ちが萎んでしまう。
 
 それは皮肉にも、詩月様の手の中で膨らみかけていた私の分身にも如実に現れてしまった。それに気がついたらしい詩月様の表情に、私は情けなくなって僅かに俯く。

 
「あらら……。まぁ、いいや。すぐにとは言わないから、そこは少しずつ慣れていこっか」
「はい……努力致します」
 

 また、主人に気を遣わせてしまった……。
 この家の皆さんは律火様も詩月様も本当にお優しくて、それなのにご期待に添えない自分が情けなかった。

 そんな私の心情を察したのだろう。詩月様は私の髪に優しく口付けて、華奢なその体で私を抱きしめてくださった。


「もー、すぐそうやって深刻にとる。日和はすぐ反省し過ぎるんだから。せっかくの夜なんだし、もっと二人で楽しもう。ね?」
「――! はい」


 いたずらっ子のように笑いかけて下さった詩月様につられて、私も少しだけ気持ちが楽になった。


「ところで日和。僕が面接の時に出した条件、まだ覚えてる?」
「はい、勿論です」


 詩月様に初めて会ったあの日。詩月様は面接の最後に私にこう仰った。


『兄さん達の命令に反しない限り、僕の命令には絶対に逆らわないこと』


 そんなことは、私にとっては当たり前だ。あの時も、二つ返事で条件を了承したことを覚えている。そのことを詩月様に告げると、詩月様は満足気に微笑まれた。

 
「ちゃんと覚えてくれてて良かったよ。じゃあさ、鳴けない日和のために、今夜は一つ、ゲームをしよう」
「ゲーム、ですか?」
「そう」


 詩月様は人差し指を私の唇におあてになると、秘め事でも持ち掛けるように悪戯に片目を瞑られる。


「日和ってさ、見てるといつも『申し訳ございません』ばっかり言ってるよね。謝らなくていい時も。だから今夜はそれ、禁止」
「え……?」


 自分の口癖を指摘されるほど詩月様が私を見てくださっていたことにも驚いたけれど、何より夜伽をゲーム方式で、という提案に驚いた。

 
「今夜は日和が僕に謝罪をしたら、僕は君には小さな罰を与える」
「えっ」
「その代わり日和が一晩謝らずにいられたら、何でもひとつお願いを聞いてあげる。……嫌だなんて言わないよね?」

 
 意味深に目を細められた詩月様は、そう言って妖艶に微笑まれた。
  
 詩月様は謝られるのがお嫌いなのだろうか? ゲームの意図は良く分からなかったけれど、立場的に私には従う以外の選択肢は無い。

 
「はい、承知しました」
「それと、これはお願い。今夜は、気持ちいい時は『気持ちいい』『もっと』って答えてほしいな」
「はい。努力致します」
「いい返事。努力してみてどうしても無理だったら、一回だけギブアップを許してあげる。そしたらその時は別のことで埋め合わせして貰うけどね」
 

 このゲームに、ギブアップ……? それは一体、どういう状況なのだろう。ますますよく分からなかったけれど、私は素直に頷いた。
 

「OK。じゃあ日和。ちょっと準備をしてくるから、準備が終わったら始めようか。寒いかもだから、布団の中で待ってて」


 詩月様はそう言い残して、お風呂場へと消えた。
 詩月様は夕食後にシャワーは既に浴び終えていたようだったけれど、歯でも磨かれるのだろうか?
 
 洗面所から僅かに響く水音に耳を傾けつつ、私は詩月様のお言葉に甘えて、布団を胸元あたりまで手繰り寄せ、静かに待つ。
 
 詩月様は程なくして、手に洗面器を持ってお戻りになった。洗面器をベッドサイドのテーブルに置いた詩月様は、服を着たまま私の隣に腰を下ろされる。


「これは……?」
「なんだと思う?」


 そう返されて洗面器の中を覗き込む。
 中には透明な液体が張られており、室内の間接照明を受けてほのかに艷めいている。
 中心には白く薄い布が静かに浮かんでいた。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

COCO
BL
「ミミルがいないの……?」 涙目でそうつぶやいた僕を見て、 騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。 前世は政治家の家に生まれたけど、 愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。 最後はストーカーの担任に殺された。 でも今世では…… 「ルカは、僕らの宝物だよ」 目を覚ました僕は、 最強の父と美しい母に全力で愛されていた。 全員190cm超えの“男しかいない世界”で、 小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。 魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは── 「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」 これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。

陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。

陽七 葵
BL
 主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。  しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。  蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。  だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。  そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。  そこから物語は始まるのだが——。  実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。  素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中  二日に一度を目安に更新しております

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...