上 下
9 / 29

9)初めてのキス。

しおりを挟む
 俺は将貴の体を抱きしめて、もう一度体を密着させる。将貴の頬に自分の頬をスリスリとすり合せて、その頬に唇をつけた。

 肩を掴んで少々強引に壁際に追い詰め、将貴の足の間に片膝を滑り込ませる。

 将貴を捕らえるように足の間の片膝と両腕を壁に付いて、その間に将貴を閉じ込めた。


「俺も、将貴が好きだよ」


 そう言って、赤面している将貴の顔に自分の顔を近づけた。


「嫌なら、避けて」


 そう言って、俺はゆっくり唇を将貴のそれに近づける。
 将貴の長いまつげや濡れた瞳が近い。
 もう、呼吸の温かささえわかってしまうほどの距離。
 俺の唇にかかる、将貴の吐息……。

 将貴は、目を閉じてすんなり俺の口付けを受け入れてくれた。将貴の乾いた唇が俺のそれに柔らかさを伝え、じわりと薄い皮膚から体温が伝わる。

 将貴は両手で俺の顔に触れ、離れかける俺の唇に、もう一度自分から唇を押し当ててくれた。

 俺はそれがとても嬉しくて。
 俺はそのまま角度を変えて、何度も何度も将貴の唇を貪った。
 ちらりと覗く舌を己の舌で絡めとり、そのまま口腔内を舌で犯す。


「っ!?」


 こういう深いキスは初めてなのか、困惑したように逃げかける将貴の顎。それを捉え、少々強引に歯列を開かせた。
 歯列の隙間から差し込んだ舌で相手のそれを絡めとり、軽く吸って上顎を舌先で舐める。
 後頭部を壁に押し付け、逃げられないように顎を押さえて、口腔内に溜まった唾液が混じり合うほど、俺は将貴の口腔内を深く舌で犯した。

 唇を解放すると、将貴の口の端に零れた唾液を舐めとって、そのまま頬を舐める。瞼に口付けて、そのまま外耳をパクリと甘噛みした。薄い皮膚に覆われた、外耳特有のひんやりとした軟骨の感触が唇に伝わってくる。

 やばいな。酒も入ってるし、止まらなくなりそうだ。

 獣のように荒い呼吸。
 それが自分のものであることを自覚しながら、俺は将貴の耳の周りからくぼみをなぞるように丁寧に舐めて、そのまま耳の穴を舌先で犯す。
 反対の耳を指先でなぞり、くすぐるように耳穴に指を滑り込ませた。


「うわ……っ、っ……ん……」


 さすがの将貴も、告白直後にここまでされると思っていなかったのだろう。一瞬体が強張ったが、すぐに甘い声を漏らした。舌で耳の中をなぞるように舐め、濡れた耳にふぅっと熱い息を吹きかけてやる。

 将貴がそれにビクリと反応するのを見ると、ついついイジめてしまいたくなってしまう。


「将貴、耳、弱っわ……」


 笑いながら俺が耳のすぐ近くでそう囁くと、再びビクンと将貴の体が反応する。膝の間にある将貴の分身もまた、俺同様に熱が集まっていた。

 耳からうなじへ唇を移動させ、今度は首筋を舐める。鎖骨に軽く歯を立てて、わずかに膨らんだ喉仏を食むように唇で弄んだ。

 将貴は段々と力が抜け、俺の膝に寄りかかるように抱きついてきた。そんな将貴を抱きしめると、間近から顔を覗き込んで聞いた。


「寝室に行く?」


 少し離れたソファで弟たちが寝ている。さすがにこれ以上はここでは出来ないだろう。

 けれど、将貴は真っ赤な顔をしてふるふると首を横に振った。


「っあ、明日、バイト。だから……」


「……そっか。じゃー、シャワー浴びて今日は寝るか」


 正直この状態で放り出されるのはきつい。
 けれど、告白された勢いで欲望に任せて無理強いするほど、俺も子供ではない。

 両想いになったのが嬉しくて、つい暴走してしまった。

 将貴にタオルとパジャマを貸してやり、バスルームに見送る。

 なにやらふわふわした気持ちだった。
 色々な事があまりに唐突に起きて、現実なのか夢なのか、俺にもよく分からない。単に酒に酔ってエロい夢を見ただけんじゃないか。起きたらそう、半信半疑になりそうだけれど。


 俺は一人寝室に戻って、とりあえずはベッドで自身の熱を処理する。
 ほとばしったものを処理し、脱力感から俺はベッドに寝転んで、天井をぼんやりと見上げた。

 あー、いかん。可愛すぎる将貴のあれやこれやを思い出すと、それだけで頬が弛んでしまう。


 あの将貴と、両思いになれた。

 よく考えたら、今日は人生最高の誕生日、確定だ。





 風呂から上がってきた将貴は、糸が切れたように爆睡してしまった。


 酒が入っていた俺も、その後すんなり眠りに落ちる。





 翌日、起きると昼前だった。


「うっ、寝坊した……」


 久しぶりの、明け方に寝て昼前に起きる生活リズム。二日酔いはなかったが、まだ頭がぼんやりしている。

 のそのそと起きてリビングに行くと、ラップのかかった朝食と『一旦帰ります。ご飯は冷蔵庫にあるので、チンして食べてね』という三人からと思われる置き手紙を発見する。


 作り置きしてもらった食事を温めながら、俺はしぱらくニヤニヤが止まらなかった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

攻略対象5の俺が攻略対象1の婚約者になってました

BL / 完結 24h.ポイント:1,221pt お気に入り:2,625

異世界迷宮のスナイパー《転生弓士》アルファ版

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:113pt お気に入り:584

俺を裏切り大切な人を奪った勇者達に復讐するため、俺は魔王の力を取り戻す

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:5,212pt お気に入り:91

能力1のテイマー、加護を三つも授かっていました。

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:10,587pt お気に入り:2,217

天界へ行ったら天使とお仕事する事になりました

BL / 完結 24h.ポイント:2,974pt お気に入り:106

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,172pt お気に入り:33

処理中です...