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ぞうさんの水やり
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まるで洞窟の中のように光が届かない、部屋の奥で、じょうろと植木鉢が並んでいました。
「みどりさん、みどりさん。お元気ですか?」
ぞうさんじょうろは聞きました。
「元気ではないわ。わたしには、水が必要だもの。」
植木鉢の植物、みどりさんは心も体も、しおれています。続けてこう言いました。
「ぞうさん、あなたは何もなくても生きていけるんですもの。いいわね。」
トゲトゲしい言い方です。
「うん、そうだね。ぼくは恵まれているよ。何もなくたって、一人でも、生きていけるんだもの。」
ぞうさんは存在は消えません。だって、ものなのですから。
でも、みどりさんはもうすぐ消えてしまいます。
「あの、ぼく水をとってくるよ。そしたら、みどりさんは生きられるんだよね?ぼくはじょうろだもの。水をとってくるのが、ぼくの役割なんだから」
ぞうさんは胸をはって答えました。
「じゃあ、お願いしていいかしら?」
今まで枯れた声だったみどりさんが、はずんだ声で頼んできました。
ぞうさんは元気よく返事をしました。
「うん!」
数分後、ぞうさんははりきって部屋をでたものの、どこに向かえばいいのだろう、と悩んでいました。
水を運んでいたのは数年前で、いったいどこで水を手に入れればいいのかわかりません。
心の中に、さみしい風がひゅうひゅう吹いています。
でも、みどりさんの姿を思い出して、気合いを入れ直します。
そして、とにかく前に進みます。
廊下をとん、とん、と一歩ずつ進んで……。廊下の突き当たりの部屋までたどりつきま
した。
入ってみると、そこはキッチンでした。
「水だ!」
ぞうさんは喜びながら、キッチンの流しにジャンプして、レバーを上げて、水を自分の体の中にたぷたぷと入れました。
そうして、来た道を急いで帰り、みどりさんの所に帰ってきました。
「ただいま、水をもってきたよ!」
それから台の上にひょいっと上り、そっとジョウロの先、ぞうさんの鼻をかたむけます。
じゅわーっと、まるで何かを焼いた音のように、水が一気に土に染み込んでいきます。
「まあ!」
みどりさんは透明で美しいその水を、うっとりと眺めています。
「ありがとう」
みどりさんは微笑んでお礼を言いました。
それから毎日のようにぞうさんは水を運びました。
時には光もとってきました、
外でジャンプを繰り返し、光をとってくる案は失敗して、とても落ちこみました。
ですが、次の日にはしゃきっと起きました。
「ようし、引越しだ!」
ぞうさんは自分の体を植木鉢に思いっきりぶつけて、たくさんの擦り傷を作って、日の当たるリビングに運びました。
心配するみどりさんに、ぞうさんは笑いました。
「ぼくがみどりさんを光のある場所へ連れていくから、そして、きれいな花を咲かそうよ。ぼくが毎日水やりをやるから!」
それから時が経って、みどりさんの花はとてもとても綺麗に咲きました。
そのおかげで、今では世話をしてくれる人間がいます。
「さようなら。」
ぞうさんは自分の役目は終わったと思い、去ろうと背を向けました。
「待って、ぞうさん。行かないで。ぞうさんが必要なの。もっと側にいて。」
みどりさんが声をかけました。
「で、でも。みどりさんは水と光を持っているのに?」
「そうよ。わたしは生きることができるものを持っている。けれど、こんなにも美しい花を咲かすには、生き生きと咲くには、ぞうさんが必要なの」
まるでぞうさんの心の中に一気に花が咲いたような心地がしました。
「うん!」
ぞうさんは元気よく返事をしました。
それからもぞうさんとみどりさんは仲良くすごしました。
「みどりさん、みどりさん。お元気ですか?」
ぞうさんじょうろは聞きました。
「元気ではないわ。わたしには、水が必要だもの。」
植木鉢の植物、みどりさんは心も体も、しおれています。続けてこう言いました。
「ぞうさん、あなたは何もなくても生きていけるんですもの。いいわね。」
トゲトゲしい言い方です。
「うん、そうだね。ぼくは恵まれているよ。何もなくたって、一人でも、生きていけるんだもの。」
ぞうさんは存在は消えません。だって、ものなのですから。
でも、みどりさんはもうすぐ消えてしまいます。
「あの、ぼく水をとってくるよ。そしたら、みどりさんは生きられるんだよね?ぼくはじょうろだもの。水をとってくるのが、ぼくの役割なんだから」
ぞうさんは胸をはって答えました。
「じゃあ、お願いしていいかしら?」
今まで枯れた声だったみどりさんが、はずんだ声で頼んできました。
ぞうさんは元気よく返事をしました。
「うん!」
数分後、ぞうさんははりきって部屋をでたものの、どこに向かえばいいのだろう、と悩んでいました。
水を運んでいたのは数年前で、いったいどこで水を手に入れればいいのかわかりません。
心の中に、さみしい風がひゅうひゅう吹いています。
でも、みどりさんの姿を思い出して、気合いを入れ直します。
そして、とにかく前に進みます。
廊下をとん、とん、と一歩ずつ進んで……。廊下の突き当たりの部屋までたどりつきま
した。
入ってみると、そこはキッチンでした。
「水だ!」
ぞうさんは喜びながら、キッチンの流しにジャンプして、レバーを上げて、水を自分の体の中にたぷたぷと入れました。
そうして、来た道を急いで帰り、みどりさんの所に帰ってきました。
「ただいま、水をもってきたよ!」
それから台の上にひょいっと上り、そっとジョウロの先、ぞうさんの鼻をかたむけます。
じゅわーっと、まるで何かを焼いた音のように、水が一気に土に染み込んでいきます。
「まあ!」
みどりさんは透明で美しいその水を、うっとりと眺めています。
「ありがとう」
みどりさんは微笑んでお礼を言いました。
それから毎日のようにぞうさんは水を運びました。
時には光もとってきました、
外でジャンプを繰り返し、光をとってくる案は失敗して、とても落ちこみました。
ですが、次の日にはしゃきっと起きました。
「ようし、引越しだ!」
ぞうさんは自分の体を植木鉢に思いっきりぶつけて、たくさんの擦り傷を作って、日の当たるリビングに運びました。
心配するみどりさんに、ぞうさんは笑いました。
「ぼくがみどりさんを光のある場所へ連れていくから、そして、きれいな花を咲かそうよ。ぼくが毎日水やりをやるから!」
それから時が経って、みどりさんの花はとてもとても綺麗に咲きました。
そのおかげで、今では世話をしてくれる人間がいます。
「さようなら。」
ぞうさんは自分の役目は終わったと思い、去ろうと背を向けました。
「待って、ぞうさん。行かないで。ぞうさんが必要なの。もっと側にいて。」
みどりさんが声をかけました。
「で、でも。みどりさんは水と光を持っているのに?」
「そうよ。わたしは生きることができるものを持っている。けれど、こんなにも美しい花を咲かすには、生き生きと咲くには、ぞうさんが必要なの」
まるでぞうさんの心の中に一気に花が咲いたような心地がしました。
「うん!」
ぞうさんは元気よく返事をしました。
それからもぞうさんとみどりさんは仲良くすごしました。
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