DRAGOON LEGEND

レオパッド

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〜〜リュウの少年とヒトの少女〜〜

狩人vs戦士 part3

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 精鋭と幹部。この両者の力量差は、一括りで表せるほど単純なものではない。
 精鋭でも力量は同一という訳ではなく、幹部も同じだ。
 精鋭が必ず勝つ保証はない。
 その逆も同じで、幹部が精鋭を確実に討てるという保証はない。
 ようするに地位だけで勝敗の有無は付けらないのだ。











 フリング西側区画 貯蔵倉庫

「フゥゥッ、ハァァッ!!」

 深く息を吸う。限界ギリギリまで吸い込んだ息は、ただの酸素では無い。
 そもそも、この世界に酸素は存在しないが。
 ユグジス粒子が生み出す特殊なエネルギー、エナジスが大気を形成しており、当然その中には大気の素となっているユグジス粒子がある。
 キュランが深く吸い込んだ理由は大気中の粒子を多く確保する為だ。
 ラグロギアスの大気を構成するユグジス粒子は、アスガルとミドガ。
 アスガルは気体。ミドガは液体。
 この両者が結びつくことで大気を形成しているが、結びついている二つの粒子を離した場合どうなるのか。
 答えは至って簡単。結び付く前に戻るのだ。

気水弾エアル・ウォータス!!」

 弾丸状に凝縮された気体と液体。それが殺傷級の威力を秘めて、敵対者であるカミフへと向けられるが……。

「面白い!」

 愉しいとばかりに嗤い、チザメを横へ水平に倒す。そして半円を描くように薙ぐ。
 すると空間の揺らぎのような厚い壁が生じ、気と水の弾丸の雨を胡散させる。

「芸達者なことで!」

「お主もな。では、返礼をいたそう」

 その言葉の意味を考える暇も、問い返すだけの時間さえなかった。
 カミフへ向けて放った自らの攻撃がそっくりそのまま一直線にキュランの下へ戻っていくのだ。
 殺傷級の威力を誇るのは間違いない。なら、それをあろうことか自分が喰らえば、どうなるのか?
 火を見るよりも明らかだ。

「やっば!」

「させるかよ!」

 三日月状の刃型アーティス『ケルキ』

 背中にある触腕の先端につけられたソレを、音速に匹敵する速度で振るう。
 同等レベルの速度で迫って来る液体と気体の死神を見事、捌き切って見せた。

「ハッハッハッハッ!イイ!中々の腕前!最近は雑魚ばかり狩ってたので丁度いい!」

「よく言うぜ。全力出さずに俺とルガをボコした癖に」

 研究施設での戦闘の際、ルガとスキューは本気を出してカミフと戦ったものの、終始不利に追い詰められ、敗北。
 ベアヌスからの通信が無ければ気紛れを起こすこともなく、惨殺せしめていただろう。

「全力を出さないからと言って本気でない、と言うことにはならんぞ精鋭の若人。最初から全力を出し切っては、いざという大事の時に何もできなくなる。あるいは……滑稽で詰まらない末路を辿るかもな」

 チザメを自身の顔に近づけ、構える。今にも斬りかかって来そうな危険な空気を出しつつ、カミフは話を続ける。

「そんなものは御免被る。大事の時に全力を出し切り、華々しく散って散って、これでもかという程に散りまくる。その様こそ己の望む最期。だから俺はお前たちイージスと戦うのだよ!」

 狂言としか言いようがない。
 それ以外でどう表せばいいのか。
 
「ふざけるのも大概にしろ!」

 スキューが声を張り上げ、叫ぶ。

「そんな理由でお前らに殺されたのか!俺らの仲間が……お前の、そんな下らない理由の為に!!」

「そうだ、としか言いようがないな」

 簡潔に、何の感慨もなく言い捨てるカミフは両脚の瞬発力を利用して地面を蹴り、真っ直ぐに跳ぶ。
 狙うはスキューとキュラン双方の身体の中央。コアごと彼等兄弟を二つに分断しようという腹積りだ。

「そのコア、貰うぞ!」

 振われるのは、チザメの上部刃の部位から幕のように広がる紅いエネルギーの斬撃。

「くっ!」

 振われ、繰り出されるまでの速度はスキューとキュランの反応速度を数段超えていた。
 回避はできない。
 が、防ぐことなら可能だった。
 
水牢の陣ポルキュース!!」

 キュランが最も使用する水の牢獄は、何も相手を捕らえ、水圧で圧縮させるだけではない。入った者を守護する城壁としても使え、ありとあらゆる攻撃的手段に対し受け流せる。

「チノギリ・イチ型!」

 しかし、それは本命ではなく囮。
 技銘ネムワを叫び、発動させたものこそが真の斬撃だ。
 最初の攻撃は何とか防いた。だが、続いての攻撃は粒果式ラーニメント
 その威力は、最初のソレとは比較にならない。

「が、あぁッ!!」

「ぐっ……はぁッ!!」

 次に繰り出されたのは、一の字の横薙ぎ。
 ほぼ狂いなく水平に垂直に横一閃の斬撃は水の牢獄を容易く打ち破り、中にいた兄弟の上半身と下半身を分断。
 更にそれだけに留まらず、2人の背中の触腕を輪切り状に切り刻んだ。

「ハッハッハッハッ!兄か弟を残す予定だったが……いかんなぁ。我ながら斬りたいという衝動には困ったものだ」

 床に散乱した水の上に落ちるように倒れ込んだ兄弟を尻目に、カミフは少し皮肉げに自嘲する。
 チザメをクルクルと回す様は、完全に余裕の表れだろう。
 しかし、非情にも勝者なのは違いない

 そして敗者をどうするか…それは勝者が持つ権利。カミフの手に兄弟の命運は握られていたが、未来は残酷なまでに一つしかない。

「あぁ……クソ……視界、が」

「ス、スキュー」

 兄弟のコアは分断された。体と同じように上と下に

 それは間違いなく致命傷であり、仮死状態へ陥るカウントダウンは始まった。
 もって1、2分が限界だろう。
 無駄だと分かっても、キュランは隣に倒れた弟へ手を伸ばす。
 それに答えようとスキューも手を伸ばす。

「ほぉぉう。イイものだな」

 懸命に、必死に伸ばすキュランの手の甲に紅い刃が落ちる。
 金属質の頑丈な甲殻に覆われていることを、意にも介さないとばかりに。まるで紙のように容易く貫通させてしまう。

「ッッッーーーー!!!!!!」

 言葉にならない苦悶の声。それがキュランの口から漏れる。それは紛れもなくチザメ。
 その主であるカミフは、やはり狡猾さを孕んだような嗤いに満ちた顔を絶やさず、キュランとスキューを見下す。

「惜しかったな。あらゆる攻撃を受け流す水の城壁、と言ったところか?しかしお前は囮の一撃に気を取られた。敗因はそこだ」

 実のところ、キュランの水牢の陣ポルキュースには弱点がある。
 それは"集中力の乱れ"。
 水牢の陣ポルキュースは発動して終わりではなく、その維持の為にかなりの集中力を必要とする。
 これに関してはどの粒果式ラーニメントでも同じである。
 より洗練、熟練された精神を持ちさえすれば、どんな状況でも余程の事が起こらない限り集中力が切れたり、乱れるような事は決してない。
 キュランは粒果式ラーニメントにおける才能はかなりのもので、非常に優秀と言っていい。
 だが、それに見合うだけの経験がまだ十全に足り得ていなかった。
 その為にも彼はより多くの場数を踏むべきだった。どれほど才覚に恵まれていても、それを実戦で使えるよう落とし込まなければ意味がない。
 コレに関しては弟にも言えることだ。
 彼等兄弟の敗因は、経験と場数が相手よりも下だった。ただそれだけの事に過ぎない。
 その点で言えばカミフは生まれ持っての闘争本能を主義として己の価値観に据え置き、数え切れないほど多くの殺戮をして来た狂者。
 相手が自分と同じ主義のハーフメルだろうと関係ない。ただ目の前に命があるからソレを刈り取る。
 アレスに加わってからはイージスの戦士達をその手で、容赦無く殺めて来た。
 標的が無作為から敵であるイージスへと変わっただけで彼の在り方は何も変わらなかった。
 年齢も性別も問わず、時には同属のアレスの
兵士を殺すことも暫しあったが。
 とにかくその中でカミフは学んだ。
 ハーフメルという生命体を効率よく、より苦痛を与え、確実に殺す術を。
 差が出るのは当然。
 戦闘の経験で言えばその蓄積量はカミフに軍配が上がってしまう。

「とは言っても栓なきこと。お前たちに次へ活かすチャンスは訪れない」

 チザメを引き抜く。その際、やはりキュランの口から苦悶が漏れる。
 手を貫通レベルで刺されているのだから、当然だ。

「さらばだ、精鋭の若人」
 
 










 そして、無常にも紅い刃が落ちた。











「ハァ、ハァ、ハァ!!」

 荒い動作で息を大きく、吸って吐いてたりと。ただそれを繰り返し、眼前の敵であるベアヌスを睨む。
 しかし地に片膝をつけ、左肩に生じた傷口を押さえる姿では、単なる痩せ我慢の見栄にしか見えない。
 そんな彼女を見て、ベアヌスは嗤う。

「どうした?たかだがのこと。驚くことじゃないだろ?」

(くそっ……一体何が……何が起きたんだ?)

 ベアヌスの言葉に構う事なく、突発的な事態に対する焦燥の感情を即座に鎮静化させる。
 そして、考える。
 あの瞬間、自分が召喚した死者たちによる集中的な一斉攻撃。
 それを放った直後に異変が起きた。
 放たれた炎の矢。それがどういう訳か"いきなり方向を変え、ベアヌスではなく死者たちを貫いた。
 更に運悪くその内の一本がフレイアの左肩に命中。
 結果、今の現状を作り出した。

(単に向きが変わった?……いや違う。そうじゃない!そんな簡単なものではない!)

 フレイアが抱いた"ある違和感"。
 それはこちらの攻撃が跳ね返ったような、所謂"反射"という物理的な感覚がしなかった点だ。
 状況だけで見れば攻撃が跳ね返ったように見えるだろう。ならば受けた攻撃をそっくりそのまま跳ね返すカウンター的性能を持った粒果式ラーニメントだと考えるだろう。
 実際そういったものは有るにはある。
 だが……フレイアの目にはアレがそんな単純なものには見えなかった。
 そして、分かるのだ。
 観てもそうだが、受けてしまったからこそ、フレイアは容易に分かった。
 攻撃の威力が上がっていたのだ。
 死者たちが持っていたアーティスにそんな機能は無い。なら、原因は一つしか考えられない。

万物よ、移り変わり、反転せよハング・ドゥ・マーン。言ってしまえばこの世界のあらゆる事象に干渉し"反転"させることができる粒果式ラーニメントだ」

 ゆっくりと。フレイアの下へ歩み寄っていく。

「効果は半径100m以内のあらゆる事象・現象を反転させ、操作する。物体の移動における指向性を変えるなど容易いんだよ」

 歩みも、言葉も止まらない。

「死者どもを召喚する権利も反転させ無意味になった。これでもう、お前は死者どもを喚ぶことはできない」

「はは……ベラベラとよく囀るな。もう勝った気でいるのか?」

 ゼロ距離。手を伸ばせばすぐ届く距離まで迫った瞬間、フレイアはブリジンガルを横に構え、鋭く速い刺突で敵のコアを討とうとする。
 だが、容易に躱され、代わりに自身の頭部へ回し蹴りが打ち込まれる。

「がはっ!」

 まるで稲妻のように頭の中を駆け回る激痛。それだけでも厄介だが、上乗せとばかりに衝撃が襲って来た。
 堪らず息が吐き出され、衝撃のベクトルがそのまま地面へと向かう。
 当然、受け身もへったくれもない。
 二度目の痛みと衝撃が彼女の頭中神経に響き
、かなりのダメージを与えた。

「くっ……ガァァッ!」

 その結果。見事頭を地面にキスされ、更には起きがれないよう蹴り入れた足で押さつけられてしまった。
 おまけに頭部へのダメージのせいで上手く体が動かさせず、どうやら一時的な身体麻痺を起こしたらしい。

「抵抗するな。大人しく死んでおけ」

 ベアヌスが冷たい視線と言葉を投げつける。

「……一つ、聞いていいか?」

「生憎そんなもんは聞かない主義だ。さっさと死ね」

 カミフやオオウルなら、気紛れで末期の遺言を聞くことも吝かではなかったかもしれない。
 しかしベアヌスは合理的に相手の命を奪う。
 勿論二人と同じように殺戮行為自体は楽しむ。
 が、失敗に繋がるような隙を作り出さないのが彼女だ。
 何かをする為の時間稼ぎと切って捨てて、ベアヌスはもう片方の空いた手を振り上げる。
 そこから手を握り締めて拳にすると、ユグジス粒子が収束され、その硬度を通常の数倍に高めた。
 ベアヌスは体質的に身体の硬度が少しばかり高い数値にある。その為、ユグジス粒子を用いての身体強化を行えば、硬度が跳ね上がりそれを振るう腕力も飛躍的に上昇する。
 そういったバフが付けられ、強化された拳ならハーフメルの胴体を貫通させるなど造作もない。
 しかし今回の場合、殴打で貫通させるのではなく、収束させた粒子をエネルギーの塊にして
飛ばすだけ。
 立ったままの状態では、拳は地に伏している
フレイアには届かないからだ。
 間髪入れず、それこそ慈悲も後悔も躊躇さえ
一欠片もなく。鋼鉄のように硬く、温情も何もない冷たい拳が青白い光を放出していき、1分と経たず拳は光に包まれた。
 それはすなわち、臨界を表している。
 十分に殺傷力を秘めた粒子の拳撃をいつでも出せるという意味の、だ。

「!!ッ」

 拳撃が解き放たれる寸前。
 その拳を一旦止め、自身の頭より少し斜め上の方角へ突き出した。
 自身に向かって来たを迎え撃つ為に。
 だが、どんな動きであれ、一時的な急停止からの方向変換というのはタイムラグが生じてしまうものだ。
 ベアヌスも例外では無い。
 だからこそ、遅かった。
 勢いよく飛来したは、ベアヌスの放った拳撃とぶつかり相殺されることなく、直線から意図的に紙一重の差で逸れたことで拳との激突を免れた

 それだけなら別にどうと言うことはない。
 しかし運悪く剣の射線上にフレイアを押さえつけていたベアヌスの足があった

 
「!!」

 それは飛来したにアームの腕を切断されるという、最悪の結果だった。

「があぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!」

 苦悶の悲鳴。いや、絶叫か。
 それを聞くと同時に踏みつけていた足の力が弱まったのを感じた。
 というより、全くない。
 何故なら太腿から先が綺麗に断切され
、自身を押さえ込んでいた足が無くなっているのだから、特別不思議なことではない。
 片足を失ったベアヌスはそのまま仰向けに倒れる。相当の激痛なのは言わずもがな。
 歯を食いしばって目を血走らせている様を見れば、察するには十分過ぎるだろう。

(クソォォッ! アレが、私の足をぉぉ
…!!)

 突然の激痛に苛まれたせいで最初こそ上手く頭が回らなかったものの、煮詰まりかけた怒り思考を多少は落ち着かせる

 そうして、地面に刺さったあるものへと視線を投げ入れように睨む。
 それは『一本の剣』。
 別に何ら特別といった特徴は何もなく
、強いて言うなら、まるで幻のように半透明。
 単純にそういう物質で出来ているものじゃなく、物質ではない非実体の存在なのだ。

「疑問に思ってた」

 フレイアは一旦手放したブリジンガルをもう一度手で掴み取り、それを杖代わりになんとか立ち上がる。
 その最中、自身がベアヌスの能力に関して感じた疑問を提唱し出す。

「お前は、自らの粒果式の特性を反転にあると言ったな。実際向けられた攻撃の方向性を変えたことと、死者の召喚権利を無くした二つの点を考えれば嘘ではないのだろう」

"だが"
そう一つ間を置いて紡がれたものは、どこか確信の宿った言葉だった。

「なら何故、?反転させるなら元の世界へと強制送還できた筈だ。だが、お前はそれを必要ないと判断した。反転させることができる対象の数に限度があるからだ」

「……」

「ブリジンガルを破壊する、あるいは私を殺せば戻れると踏んだお前は#自身へ向かって来るあらゆる攻撃の方向__・__
#とを反転させた。有を無に、指向を真逆に。それだけすれば私を仕留めるのに事足りた」

「……」

 続いていくフレイアの言葉は、どれも否定できない程に的を射抜いていく。
 もはや何も言わないが、それでも。
 眉間といった顔の各箇所に皺を寄せるところを見る限り、内心は屈辱と敗北感。どうしようもない怒りの激情が嵐のように荒れ吹いている。
 
「それを絶対の解だと思ったお前の負けだ。死者召喚は無理でも、生前愛用していた武器を召喚することはできる」

 この世界の武器…アーティスは、地球の武器の概念と同じく命を持たない単なる無機物。
 壊れたとしてもそれは『死』とは定義できない。
 あの剣のアーティスは、あくまでこの世界の法則が死者の記録として保存した情報を元に再現しているに過ぎない。
 だからこそ、反転から免れた。

「まっ…ぐぎィィ!」

「待つ訳ないだろ」

 待て。そう口にする前にブリジンガルの穂先を顔面へと突き刺す。そこから業火が生まれ、瞬く間にベアヌスの身体を覆い尽くした。
 それはまるで、獲物へと喰らいに掛かる獣とでも言うべきか。
 しかも火力は腕の時と比べて更に上昇しており、なんと一万度。
 人間なら外側だけでなく中身さえすぐに消し炭になるレベルの異常温度。
 当然ハーフメルも例外ではない。
 いくら人間より頑丈とは言え、超高温の熱に耐え切れるほど基礎的な身体能力は普通なのだ。
 耐熱性の効果を齎す粒果式や技術で身を守っていれば話は別だが、生憎ベアヌスにそういった類のモノは一切ない。
 万物よ、移り変わり、反転せよハング・ドゥ・マーンの使用は不可能

 フレイアの予想通り、ベアヌスの粒果式は強力で相手取る敵からすれば脅威ではあるが、それだけに欠点が無いわけではない。
 反転させる対象そのものに決まった条件は存在しない。それが例え物質的実態を伴わないエネルギーでも。あるいは概念であっても。
 すべからずする。
 だがその使用には数が決められている。
 一日に二度。翌日と時間が経てば再び行使できるが、それまでは長い時間を要することになる。
 今回フレイアとの戦いで二度使用したことで今日という一日の中で使用することはできない。
 不意打ちと有利性を封じれば後は容易いと判断したベアヌスの選択は、それほど間違ったものではない。
 不意打ちとは分かり切ったものでは意味がない。だからこそ予想外が過ぎれば過ぎるほど、
不意打ちという戦法は効果的に発揮される。
 反転を利用したカウンターは、文字通り成果を残した。
 フレイアに重傷を与え、更には死者召喚を封じたことで数による不利を覆した。
 だからこそ、油断してしまった。
 『勝った』と。
 確かに状況だけ見ればベアヌスの方へ勝機が傾いた。しかし前提として、忘れてはいけないことがある。
 勝つまでは決して油断しない。
 これは地球でも適応される戦争の鉄則だ。
 戦争では不意打ちなど当たり前。それを目的にした奇襲は基本的な戦法になっているし、不意をついた事で勝利を収めた戦いはいくつもある。
 今回の場合はあくまで軍ではなく個による戦闘だが、ベアヌスは肝心なソレを忘れてしまっていた。
 内心焦燥に駆られていたのもある。
 それに加え、絶対に仕留められるという慢心が隙を作ってしまった。
 だからこそ手元が狂い、紙一重ながらも拳を当て損ねた。

「これで終わりだな」

 ふぅぅと少しばかり長めの溜息を吐くフレイア。
 戦いの結末はフレイアの勝利。
 ベアヌスは断末魔の悲鳴を上げる暇もなく、
人型の煤の固まりとなって死んだ。

「? これは……」

 ほぼ煤になったせいか、ベアヌスの身体は胸部から腹部が崩れ、その中から機械の端末らしきモノを見つける。

「……のようだな」

 一万度の業火に焼かれたソレは、ドロリと溶けて固まったチーズのようになっていた。
 かろうじてそれが何かしらの端末である事は理解できたが、機械系統の分野に疎いのでその端末がどういったものなのか。
 それを理解するまでには及べなかった


「とりあえず回収するとして、戻るとしよう」

 ここで思考に費やしても答えなど得られないと早急に判断し、ブリジンガルを天へ掲げる。
 そしてあの時と同じように、彼女の身体を炎が包み込んだ。






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感想 2

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みんなの感想(2件)

スパークノークス

おもしろい!
お気に入りに登録しました~

解除
2021.08.24 ユーザー名の登録がありません

退会済ユーザのコメントです

2021.08.26 レオパッド

ありがとうございます!
ご期待に添えるよう、尽力します!!

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