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1章 最強のウィザード様

嗚呼、私のウィザードさま 「魔法の杖とウィザード様」

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救急車のサイレンが鳴る

マリアが救急車内で呆気に取られている 救急隊員がテキパキと作業をしながら言う
「意識レベル低下 脈拍低下っ 強心剤投与しますっ!」
マリアが怯えつつ思う
(何で…!?どうして…!?…どうしようっ!?ウィザード様が…っ!?)
マリアが視線を向ける レイの意識は戻らない

病院

処置室の前 マリアが通路の椅子に座って呆然としていると携帯が鳴る マリアがハッとして携帯を見てから 慌てて着信させつつ通話場所へ移動する 携帯から女性の声がする
『こちらは ライズ村 灯魔台神館 管理人の リステムと申しますが マリア奉者様のお電話で 間違いないでしょうか?』
マリアが慌てて言う
「は、はいっ!すみませんっ 連絡もしないで…」
携帯からリステムの声がする
『あ… はい 既に 灯魔儀式のお時間が 過ぎているようですが 何か ご都合が…?』
マリアが言う
「はい… すみません 今日の灯魔儀式は 出来なくなってしまって… 連絡… するようにと 言われていたんですが… 私が…っ」
マリアがしゃがみ込む 携帯からリステムの声がする
『…は、はい それでは… 本日は中止と言う事でしょうか?』
マリアが流れる涙を拭いながら言う
「はい… ごめんなさい…」
携帯からリステムの声がする
『畏まりました… では 後日と言う事で そちらの日程の方は…?』
マリアが言う
「日時は 改めて連絡します… 最優先にします… でも 何時になるか…」
マリアが処置室を見て マリアが携帯を切り言う
「…出来るのかも … 分からない…っ」
マリアが思わず携帯を手放し その手で顔を覆う

病室

レイが呼吸器を付けられた状態で寝ている 医者が容態を見て点滴の調整をした後 マリアへ言う
「お命の心配は もうありません」
マリアがハッとしてから微笑して言う
「良かった…っ」
マリアが肩の力を抜く 医者が微笑して言う
「貴方は こちらのウィザード様の 奉者様で?」
マリアが言う
「は、はい…っ」
医者が苦笑して言う
「では もう少し 体調管理を徹底なさって下さい ウィザード様の修行とは言え 程々にしなければ 本当に御命を落としかねません」
マリアが言う
「ウィザード様の修行?」
医者が言う
「酷い栄養失調です それに この2、3日 まったく食事をされていませんね?」
マリアが言う
「え…?」
医者が言う
「私は ウィザード様の修行内容に関しましては素人ですが 強い魔力を得るには可能な限りの食事制限が有効だとか?しかし、如何に魔力やその他が優れていようとも 身体を動かしたり 体温保持をするにも そして、心臓はもちろん 内臓を動かすには やはり食事によって得られるエネルギーが必要です 共に ビタミン、カルシウム… その他 必要な栄養素は しっかり取るようになさいませんと また 倒れてしまいますよ?」
マリアが言う
「…えっと?では?今回の…?」
医者が言う
「はっきり言ってしまえば 餓死寸前でした」
マリアが驚いて言う
「がっ 餓死っ!?」
マリアが視線を泳がせて思う
(それは… どうして!?あのウィザード様が そんなに厳しい修行を!?それとも …まさか あの 失恋の… せい?)
医者が言う
「それから 奉者様」
マリアが言う
「は、はいっ!?」
医者が言う
「搬送に向かいました 救急隊員たちの知識不足では有りましたが ウィザード様の杖を…」
マリアが言う
「杖?」
医者が言う
「ウィザード様の杖は ウィザード様の取り入れられた 魔力を保持するのに 必要な力です 従って可能な限りお傍に置く方が 安心でしょう」
マリアがハッとして思う
(そう言えばあの時…)
マリアの脳裏に レイが倒れた時 杖の倒れた音がした事が思い出される マリアが言う
「あ、はいっ 部屋にあると思います!持ってきます!」
医者が言う
「では そちらをお願いします また 意識が戻られましたら 診察を致しますので」
マリアが言う
「はい 有難う御座いました」
マリアが頭を下げる 医者が言う
「お大事に」
医者が立ち去る マリアがホッとした後 レイを見て言う
「ウィザード様…」
マリアがレイの近くへ行ってから微笑して言う
「今 杖を持って来ますからね?」
マリアが立ち去る

マンション 最上階

マリアがやって来ると ドアの前でインターフォンを押そうとして ハッとして苦笑して言う
「今は 押す必要は ない よね…?」
マリアがドアを開け 中へ入りながら言う
「鍵も掛けずに行っちゃったんだ… 灯魔台神館への連絡もしなかったし… 私 奉者失格かも…」
マリアが部屋の中を見て 杖に気付き近付いて言う
「自分の仕える ウィザード様を 倒れさせちゃったんだから 今更… でも 修行の為の食事制限… 食事を食べていなかったって言うのは… それも 私のせいなのかな?やっぱり 私が…?」
マリアが考えてから 気を取り直して言う
「ううん?今は 駄目!私はまだ ウィザード様の奉者なんだから しっかりしなきゃ!」
マリアが杖に手を伸ばし触れようとすると 杖に風が纏わり一瞬浮き上がる マリアが驚き慌てて手を引いて悲鳴を上げる
「キャアッ!?」
マリアが手を引くと 風が消え 音を立てて杖が落ちる マリアが驚いて言う
「な、何?今の…っ!?杖が勝手に…っ …もしかして 魔法?」
マリアが杖を見つめて思う
(気のせいなんかじゃなかった 実際 触れてもいないのに 杖が床に落ちて 音が…っ)
マリアが言う
「まるで 風の魔法みたいに… あっ」
マリアが気付いて言う
「風の魔法… ウィザード様の…」
マリアが恐る恐る杖に手を近付ける 杖の周囲に風が吹く マリアが驚いて思う
(や、やっぱり…っ!)
マリアが手を引いて思う
(どうしよう?触れられない?…でも 杖を持っていかないと …折角ウィザード様が 修行をして取り入れた魔力が 失われてしまう…っ)
マリアが杖を見る 杖は何事もない様子でそこに在る マリアが思う
(いつも ウィザード様はこの杖を使って 灯魔作業をしていて… ペリテ村で野生動物を退治した時も… この杖は ウィザード様に力を貸してくれていた… それに いつもの帰りの魔法の時も… なのに 今はどうして?持ち主の ウィザード様が居ないから?それじゃ…)
マリアがふと気付いて言う
「あ、それなら?」
マリアが杖を見て 改めて言う
「あ、あの… ウィザード様の杖さん?私、いつも貴方とウィザード様にお世話になってる 奉者のマリアです… えっと… 今 貴方の持ち主である ウィザード様が ここではなくて 病院に居るんです それで… 私が、貴方を ウィザード様の所へ お届けしますから… だから 魔法は使わないで下さい?安心して 大人しくしていて欲しいんです …ね?」
マリアが思う
(…って 事で どうかな?…魔法が使える杖なら 人の言葉を理解する事だって?で、出来そうな気がするっ!だって… よく 物にも魂があるって言うしっ!?)
マリアが意を決して杖を掴む マリアが思わず閉じていた目を開いて 呆気に取られて言う
「あ… 持てた…?」
マリアが杖を見てからホッとして言う
「凄い!言葉が分かるだなんて!まるで魔法の杖みたいね?」
マリアが呆気に取られて言う
「ああ… 魔法の杖 なんだった…」
マリアが苦笑すると 床に落ちていたウィザードの帽子が風に吹かれる

マリアが部屋を出て言う
「今度はちゃんと 鍵を閉めないと…」
マリアが鍵を取り出そうとするが 片手に杖 片手に帽子を持っているので困って言う
「えっと… しょうがない ちょっと 失礼して」
マリアがウィザードの帽子を頭に乗せ バックを漁って鍵を取り出すと ドアに鍵を掛ける マリアが微笑して言う
「今度こそ 鍵は OK!」
マリアが鍵をバックにしまいながら言う
「次は 早くウィザード様に この杖をお届けしないと!」
マリアがエレベータへ向かう

マンション外

マリアが待たせていたタクシーの運転手に言う
「お待たせしました 中央病院へ戻って下さい」
運転手が一瞬マリアの姿に 驚いてから軽く笑って言う
「あっははっ …はい!分かりました」
マリアが疑問する マリアが乗り込むと 運転手が言う
「もしかして お客さん 奉者様ですか?」
マリアが一瞬驚いてから 気付いて杖を見て言う
「え?あ、はい そうなんです」
運転手が微笑して言う
「お似合いですよ?そのお帽子も?」
マリアがハッとして 赤面しながら慌てて帽子を外して言う
「ああっ!こ、これはっ さっき 両手がふさがっていたものでっ!」
タクシーのドアが閉まり 運転手が発車させながら言う
「いや 女性のウィザード様って言うのも 良いかもしれませんね?」
マリアが一瞬呆気に取られた後苦笑して言う
「もう…っ ウィザード様になるには 大変なんですよ!?」
運転手が楽しそうに笑っている マリアが微笑する

病院 レイの病室

マリアが病室の前に到着する ドアに向き直ってドアを開けようとしてから 思い出したように言う
「個室だし 一応 ノックするものよね?」
マリアがノックしようとして 再び両手がふさがっている事に気付き 軽く息を吐いて言う
「それじゃ もう一回だけ… 今度は忘れずに 入る前に外せば良いんだから?」
マリアが苦笑し 帽子を頭に乗せてノックをしてドアを開けつつ言う
「失礼します ウィザード様… …あっ!?」
マリアがドアを開けると レイが顔を向ける マリアがハッとして慌てて駆け寄って言う
「ウィザード様っ!良かった~…」
マリアがホッとしてレイを見る レイが呆気に取られた後微笑して言う
「マリア?あははっ マリア ウィザード様みたいだ!」
マリアがハッとして慌てて帽子を手に取って言う
「…あっ ま、また やっちゃったっ!こ、これは そのっ!そこで 両手がふさがっていて…っ!」
マリアが気を取り直し 困り怒って言う
「そ、それよりっ!?ウィザード様っ!?どう言う事ですかっ!?ご飯食べてなかったんですかっ!?駄目じゃないですかっ!?」
レイが言う
「うん だって」
マリアが困り怒って言う
「い、いくら その…っ し、失恋… いえ!?き、気持ちが!?落ち込んでいてもですねっ!?ウィザード様として 生きる為に ご飯を食べる事も 大切な お仕事ですよ!?」
レイが言う
「ごめん マリア」
マリアが言う
「私だってっ 怒りますっ!」
レイが言う
「うん でも 食べ物が」
マリアが言う
「喉を通らないって言うのは 分かりますが…」
レイが言う
「無くって」
マリアが呆気に取られて言う
「…へ?」
レイが言う
「それに俺 どうしたら 食べ物が手に入るのか 知らないし?それで マリアに」
マリアが衝撃を受け言う
「…なっ!?…そ、それじゃっ!?」
マリアが思う
(―まさかっ!?)
レイが言う
「マリアに もう限界だから 早く行って 何でも良いから 食べ物を 探して来て欲しいって?」
マリアが挫折して思う

(食べ物だった…!!)


続く
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