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1章 最強のウィザード様

嗚呼、私のウィザードさま 「魔法使いとウィザード様」

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ポリニ村灯魔台神館

案内が言う
「えっ!?灯魔の変更… ですか?」
マリアが言う
「はい、この村の周囲の灯魔儀式を行った所 この村に灯した灯魔は 別の属性の方が良いと言う事が分かったので …それに、その方が 自然界の摂理を戻す事に繋がるんです」
案内が表情を困らせて言う
「しかし… 灯魔さえされていれば 結界は維持されますので 折角行った灯魔を わざわざ やり直すと言うのは…」
マリアが言う
「し、しかしっ その方が…」
マリアが視線を向ける 視線の先レイが外を見ている 外では田んぼが干ばつしている マリアが気付いて言う
「あのっ!最近村に 雨は降っていますか?」
案内が言う
「え?雨… ですか?」
マリアが言う
「この灯魔台に灯すのは 水の灯魔になります!そうすれば この村の雨不足も 解消に向かいますよ!?」
案内が驚いて言う
「…そうなのですか?確かに ここ数年降水量が減って 村の田畑が被害を受けているのです …その対策になると言うのでしたら」
マリアが言う
「はいっ!必ず なりますから!」
案内が苦笑して言う
「分かりました では」
レイが先に向かう マリアが一瞬驚く 案内が微笑して言う
「どうか 宜しくお願いします」
マリアが微笑して言う
「はい!」
マリアがレイを追う

火の灯魔がされている灯魔台の前で レイが魔力を収集する マリアが見つめる先 レイの前に杖が浮き上がり 会場内に水の魔力が集まり始める マリアが思う
(火の灯魔を水の灯魔へ変える… 言ってはみたけど 実際の所 どうやってやるのかな?)
マリアが意識をレイへ戻す

周囲の装置から立ち上る火がやがて消え 水が流れ始める マリアが呆気に取られ周囲を見渡してから レイを見る レイは無表情に居る 周囲に水が渦巻き灯魔台の上部に大量に結集する マリアが気付いて思う
(いつもより威力が大きい…っ さっきと同じ位?…それで ここまではいつもと同じだけど どうやって 灯魔を切り替えるの?)
マリアがレイを見る

マリアの一歩後ろで 案内が怯えて後退る 水の塊が一気にレイへ向かって来る 案内が息を飲む 水の塊が杖に激突すると 案内が思わず小さく悲鳴を上げ 閉じていた目を開くと 水の塊が全てレイの杖の前で押し止められている 案内が言葉を失ってマリアを見る

マリアが真っ直ぐ見つめていて思う
(もしかして…)
レイが杖を掴み一振りする 水の塊が上部に弾かれ灯魔台に叩き込まれる 火の灯魔がかき消され 辺りが静まった中で 灯魔台から静かに水が流れ始める

マリアが微笑して軽く息を吐く 案内が言葉を失いつつマリアを見てからレイを見る レイが静かに構えを戻し 来た道を戻る マリアが案内へ向き直って言う
「灯魔の切り替えが無事終了しました ご協力を有難う御座います」
案内がホッと胸をなでおろし微笑して言う
「こちらこそ… 有難う御座いました マリア奉者様」
マリアが微笑する レイが立ち去る マリアが追う

マンション レイの部屋

レイとマリアが現れる マリアが微笑して言う
「お疲れ様でした!ウィザード様!」
レイが言う
「うん そうだな?今日は少し疲れたよ?無駄に魔力も使ったし」
マリアが苦笑して言う
「ウィザード様 もしかして ライズ村の灯魔儀式をやる時には もう ポリニ村の灯魔を切り替える事を 考えていたんですか?」
レイが言う
「え?鋭いな マリア 何で分かったんだ?」
マリアが言う
「最初は分からなかったですが ポリニ村で灯魔の切り替えをしているのを見て気付きました その前のライズ村では いつもより わざと威力を上げていたんですね?」
レイが言う
「うん ライズ村の灯魔台が雷だって分かった時に 今の俺で ポリニ村の灯魔切り替えが出来るのか ちょっと魔力を試していたんだ」
マリアが苦笑して言う
「ウィザード様 やっぱり 私に あんな事言っておきながら 本当は…」
レイが言う
「そんな事より マリア!」
レイがマリアを抱き締める マリアが衝撃を受けて思う
(ま、まさかっ!またっ!?)
レイが言う
「俺 マリアに」
マリアが気を取り直して言う
「も、もうっ!また お茶ですか!?それならそうと 普通にっ!」
レイが言う
「いや、お茶より もっと大切な話なんだけど」
マリアが驚いて思う
(えっ!?大切な…?)
レイがマリアに真剣に言う
「俺 改めてマリアに」
マリアが息を飲んで思う
(”改めて” だなんて ウィザード様… まさかっ 本当にっ!?)
レイが真剣に言う
「お米の焚き方を 教わりたいと思って」
マリアが怒って言う
「ですよねっ!!」

会社

マリアが溜息を吐いて言う
「はぁあ~ まったく もうっ」
リナとマキが言う
「”まったく” まで付いた」
「”もうっ” も付いた」
マリアが不満そうに思う
(どうして 灯魔儀式の魔力の調整は出来るのに お米の水加減が出来ないのかな?あんなの魔力と違って 目に見えるんだから 何も難しくないのに?)
マリアがブツブツ言う
「ただ メモリに合わせる だけなのに…」
リナが言う
「マリア?」
マキが言う
「喧嘩~?」
リナとマキが笑う マリアが苦笑して言う
「違いますっ」
リナが微笑して言う
「な~んだ ちょっと 興味あったのに?」
マキが言う
「だよね!だよね~!」
マリアが言う
「もう… 2人ともっ」
マキが言う
「それはそうと マリア うちのお爺ちゃんがね?今度収穫する お米を お世話になったウィザード様に 奉納したいんだって言うんだけど」
マリアとリナが衝撃を受けて言う
「ほ、奉納って…!?」
「随分また 大げさね?…まぁ お爺ちゃん お婆ちゃんの世代からすると そんな風になっちゃうのかしら?」
マリアが苦笑する マキが言う
「あ、でもさ?ウィザード様って 元々 そう言う人なんでしょ?」
マリアが驚いて言う
「え?」
マキが言う
「お爺ちゃんから聞いたんだけど 元々 ウィザード様は 森羅万象の異変を収める為に 神様に力を与えて貰った人だったんだって?」
マリアが呆気に取られる リナが言う
「そうだったの?」
マキが言う
「だから 自然界の力を使いこなす事が出来て 雨を降らせる事も 逆に止める事も出来る 神様の次に偉い人なんだって?」
マリアが苦笑して言う
「確かに 昔の書物では そうだけど 今は機械的に 魔鉱石の魔力を人体に投射した人の事で… でも 出来る事は同じだから 昔ながらの言い伝えを信じる事は 悪くないかもしれないね?」
マキが苦笑して言う
「な~んだ やっぱり そういうのが現実なんだ?私もさー?流石に神様に力を貰うー なんて言うのはないかなー って思ってたんだけど?」
リナが言う
「でも マキのお爺ちゃんの気持ちは 素敵じゃない?マリア こういうのは それこそ気持ちの問題だし 実際 ”マリアのウィザード様”は マキのお爺ちゃんの田畑に 雨を降らせてくれたんだから お米を奉納させてあげたら?」
マリアが微笑して言う
「うん それは私も 良いと思う 丁度 焚ける様になったし」
リナとマキが疑問して言う
「「タケルようになった?」」
マリアが衝撃を受け慌てて言う
「あっ ううんっ!?何でもないっ!」
マキが微笑して言う
「それじゃ お爺ちゃんに伝えとくね!ありがと!マリア!」
マリアが微笑して言う
「こちらこそ!」

昼休み

リナが携帯で電話をしている マリアとマキが席に座っていて マキが言う
「リナってば 時間さえあれば 愛しの彼と電話してるんだよ~?」
マリアが苦笑して言う
「先に食べ始めちゃおうか?待ってたら きっとキリがないよ?」
マキが手作り弁当を取り出しながら言う
「賛成賛成!」
マリアが微笑して手作り弁当を出しながら言う
「うん!」
マリアが言う
「あ、そうだ マキ 昨日は本当に有難う 大丈夫だった?」
マキが言う
「うん 何とかね~ 一応 渡されてた資料の通り 商談は成立させておいたよ でも それ以上は何も」
マリアが微笑して言う
「それだけ やっておいて貰えれば十分だよ 本当に助かったから …あ、お礼のケーキはいつにする?今日でも良いよ?明日でも!」
マキが言う
「ねー マリア?ケーキよりもさぁ?本当に 他のウィザード様とか~?」
マリアが苦笑して言う
「だから 女の子とお付き合い出来る ウィザード様なんて 居ないったら」
マキが言う
「それじゃさ?ウィザード様は 本当に?まったく マリアの事 女の子として 見てくれてないの?」
マリアが呆気にとられて言う
「え…?」
マキが言う
「だって 普通に考えたらさぁ?マリアほど可愛い子が 自分にご奉仕してくれたら 喜ばない男の人なんて 居ないと思う~」
マリアが視線を泳がせて言う
「わ、私は そんな… 大体 可愛くなんて…」
マキが言う
「十分 可愛いです~!」
マリアが苦笑して言う
「あ、ありがとう…」
マキが言う
「ねぇ マリア?ウィザード様って 元々何処に居るの?どうしたら会えるの?」
マリアが言う
「え?えっと… 各町に配属されたウィザード様は その町に用意されたお部屋に 住まわれるけど 元々は…」
マリアがふと思い出して言う
「…あ、そう言えば ウィザードになる事が出来る 学校が…」
マキが呆気に取られて言う
「学校?」
マリアが苦笑して言う
「詳しくは聞いていないけど 学校みたいな所があるんだって ウィザード様はそこでウィザードになったって言ってた 確か サウスサイドストリートにあるんだって」
マキが喜んで言う
「それじゃ!そこに行ったら 他のウィザード様にも 会えるじゃん!?」
マリアが言う
「そ、それは そうかもしれないけど…」
マキが言う
「ねぇねぇ マリア!行ってみようよ!?」
マリアが驚いて言う
「えぇえっ!?」
リナがやって来て言う
「ちょっと どうしたの?そんなに驚いて?」
リナが席に座り手作り弁当を取り出す マキが言う
「リナ!知ってた!?サウスサイドストリートに ウィザード様の学校があるんだって!」
マリアが慌てて言う
「ま、待ってっ!?学校かどうかは 分からないよ!?ウィザードになれる所だって事しか!」
リナが言う
「ウィザード様の学校なのか なれる所なのかは分からないけど サウスサイドストリートには 魔法使いの養成所があるって話なら知ってるけど 同じ事?」
マリアが言う
「え?」
リナが言う
「前に エリナが言ってたじゃない?この町に居るのは 魔法使いの見習いだけで 魔法使いになった人は 村に行って修行するって」
マキが言う
「それじゃ その修行が終わったら また 町に戻って来て 今度はウィザード様になるって事?」
リナが言う
「そうかもしれないわね?どうなの?マリア?」
リナとマキがマリアを見る マリアが衝撃を受け慌てて言う
「え?あ… 私、その辺りの話は…」
マキが言う
「それじゃ どっちにしても サウスサイドストリートに行けば ウィザード様に会えるかもしれないじゃん!?ちょっと行ってみようよ?マリア?」
マリアが衝撃を受けて言う
「え?わ、私っ!?私は良いよ!もう1人居るからっ!」
マリアが思う
(あの人が 増えたりなんてしたら 大変っ!)
マリアがハッと呆気に取られて思う
(―って 私 何考えて…?)
マキが言う
「だから!マリアが居れば ウィザード様とお話が出来るんでしょ!?私を学校に居るウィザード様に紹介してよ!ね?お願い!奉者様っ!」
マリアが苦笑して言う
「あ~ そっか そう言う事?」
マキが言う
「そう言う事!だって ウィザード様とお話が許されるのは 奉者様だけだもん!ケーキの代わりに お願い!マリア!」
マリアが苦笑して言う
「もう… 会えるかどうかも分からないのに」
マキが言う
「会えなくっても 付き合ってくれたって事で 商談の借りはチャラにするからさ?ね?ね?」
マリアが軽く息を吐いて言う
「分かった 付き合う」
マキが言う
「やったぁ~!」
マリアとリナが軽く笑う

サウスサイドストリート

マリアとマキが歩いていて マキが言う
「あれから調べたらね?魔法使いの養成所は この通りの216だって!」
マリアが言う
「こらこら~ 後輩~?就業中に私的な調べ事は 禁止ですよ~?」
マキが言う
「えへへ~ ごめんなさーい センパーイ」
マリアとマキが笑い合い 到着してマリアが言う
「216はここだね?確かに 学校っぽい佇まいだけど」
マキが言う
「さっそく建物の周りを 見てみようよ!マリア!」
マリアが苦笑して言う
「はいはい」
マリアとマキが建物の周囲へ行く 裏庭へ辿り着くと 魔法使いたちが魔法の練習をしている マリアとマキが驚いて言う
「あ 魔法だわ」
「あれが魔法?」
マリアとマキが練習風景を見ながら マキが言う
「すごーい!私 魔法を見たの初めて!」
マリアが疑問して言う
「え?だって 以前 田畑に雨を降らせた時 マキも見ていたでしょ?」
マキが苦笑して言う
「あれはもう 魔法って思える粋を越えてて 何って言うか… うん、あの時 お爺ちゃんが言ってた通り ”神の力”って感じ?」
マリアが言う
「神の力か… 言われて見れば そうかも?」
マリアが魔法使いの魔法を見て言う
「灯魔儀式の時は もうちょっと 魔法っぽく見えるけど それでも ウィザード様が魔法を使う時は あんな感じじゃないのよね?もっと こう…」
マリアが考えてから言う
「自然の力を… 呼んでいるみたいな?」
マリアたちに近い位置に居た 魔法使い(セイ)が反応して横目にマリアを見る マキが言う
「自然の力を呼ぶ?」
マリアが魔法使いたちを見て言う
「うん だから あの人たちみたいに 無理に力が入っている感じは 全く無いの 静かに澄ましてて… なんていうのかな?それで 呼び集められる魔法は 物凄く凄いんだけど それがそうなるのは 当たり前な感じで…」
マリアが意識を記憶に集中させて言う
「…むしろ 魔法の方が 力を貸したがっているのかな?杖だって そんなに動かさないし ただ合図として 振るっているだけって感じで もっと軽く使うのよ?」
セイが言う
「おい アンタ」
マリアとマキが驚く セイがマリアへ向いて言う
「さっきっから うるさいんだよ 魔法を使った事も無い奴が 偉そうな事言うんじゃねぇよ」
マリアが慌てて言う
「あ、ごめんなさいっ 聞こえちゃうと思わなくて…」
セイがやって来て言う
「聞こえなければ 良いってもんじゃないだろっ?ただ見て来ただけの事を ここで知った風に言われたんじゃ 俺らを馬鹿にしているようなもんだ」
マリアが言う
「ほ、本当に ごめんなさい…っ」
マキが言う
「あの、すみません 彼女は奉者なので そう言う風に見えちゃうみたいですけど その話を聞いても 普通の私なんかは 十分皆さんも凄いと思って 見てますから!」
マリアがマキを見る セイがマキを見てから少し肩の力を抜いて言う
「…別に 凄いと思われたいって訳じゃないけど アンタ奉者なのか?」
マリアが慌てて言う
「は、はい…」
セイが言う
「そっか… なら 仕方が無いか 本物のウィザードと比べられちゃ 今の俺たちなんか 唯の魔法使いにしか 見えないんだな」
マキが言う
「”本物の”ウィザード?」
セイが言う
「ここに居る連中は ウィザードの認定試験を目前にした連中なんだよ 他の奴らだって 皆気が立ってるから あんまり余計な事言うと 危ない目に会うぜ?」
マリアが困って言う
「あ、危ない目に…?」
セイが言う
「怪我するって事だ 見物するんなら アンタは黙ってた方が良いぞ?」
セイが立ち去る マリアが間を置いて息を吐く マキが言う
「試験の前で 気が立ってるって言うだけだから しょうがないよ マリア」
マリアが苦笑して言う
「うん… 慰めてくれて ありがと マキ 魔法使いさんたちの迷惑にならないように 気を付けるようにするね?」
マキが頷くと マリアとマキが魔法使いたちを見る


続く
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