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2章 魔法使いのウィザード様

嗚呼、私のウィザードさま 「魔法使いのウィザード様」

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中央公園

噴水のヘリに座り マリアが手作り弁当を前に溜息を吐いて言う
「はぁ~…」

隣に座っている マキが手作り弁当を前に言う
「それじゃ 一応 誤解は解けた …んだよねぇ?」

マリアが表情を落として言う
「うん… その筈なんだけど でも…」

マキが視線を正面へ向けて言う
「その時から 連絡が無いって?」

マリアが言う
「連絡と言うか… ウィザード様は 携帯とか持ってないだろうし… 私も番号教えてなかったから…」

マキが言う
「何で教えなかったの?今までずっと?」

マリアが言う
「うん… だって ウィザード様と奉者って そう言うの教え合うような 間柄じゃないような気がしてて… それで そのまま…」

マキが言う
「そりゃぁ 奉者はウィザード様に 常に仕える者だから そうかもしれないけどぉ… 私は一応 番号教えておいたよ?って言っても 向こうが魔法使いだった時にだけどね!えへへ~」

マリアが一瞬呆気に取られた後 苦笑して言う
「それじゃ 私とマキの2人で 魔法使いの養成所を見に行った あの時からの 仲だったのね?」

マキが言う
「うん!あの後 アタシ 実は毎日 行ってたんだ~ 向こうは 全然 相手にしてくれてなかったけど 私は ずっと見ていたくて!そしたら ウィザードの認定試験の前日に もしかしたら もう会えなくなるかもしれないからって 彼が声を掛けてくれたの」

マリアが微笑して言う
「向こうもずっと マキの事 気にしてたんだね?」

マキが言う
「そうなのかなぁ?えへへっ」

マリアが苦笑した後 視線を落とす マキが言う
「マリア… きっと大丈夫だよ?会いに来てくれるよ」

マリアが言う
「うん… でも あの人だったら… ”私のウィザード様”だったら それこそ退社時にも… 喜んで会いに来てくれると 思ってたんだけど…」

マリアが思う
(来てくれなかった… 私の独り善がりだったのかな…?あのお部屋で会っていた時みたいに 私がドアを開けたら マリアー って… 抱き付いて来てくれると 思ったのに…)

マリアが視線を落として 溜息を吐いてから ハッとして慌てて言う
「…え?あっ!ち、違うのっ!今のはっ その 私が ”そうして欲しい”んじゃなくてっ!あのウィザード様なら きっと そうするだろうって事でっ!私はっ そんな事っ!」

マキが呆気にとられて言う
「マ、マリア…?」


会社

マリアが電話をしていて言う
「はい それでは 明日の9時に… はい …はい お待ちしております 失礼致します」

マリアが電話を置き 手帳に書き込みながら言う
「9時か~ ちょっと早くなっちゃったなぁ 出来れば10時が良かったんだけど… お呼び立てするんだから しょうがないよね?」

マリアが記入を終え時計を見上げてから言う
「よし… 明日は早いし 今日はもう帰ろう」

マリアが手帳を閉じ立ち上がる


会社 出入り口

マリアが出入り口を出て来て言う
「マキとは お昼に会える様になったけど… やっぱり寂しいな… リナは居ないし」

マリアが思う
(ウィザード様にも 会えないし…)

マリアが出入り口を出て 視線を落とし溜息を吐いて言う
「はぁ… 会いたいなぁ…」

マリアの耳にレイの声が聞こえる
「マリアー!」

マリアが一瞬驚き顔を上げると言う
「…え?ウィザードさ… まっ!?」

レイがマリアに抱き付いて言う
「マリアー!会いたかったよー!」

マリアが驚いた状態から 微笑して言い掛ける
「わ、私も… って!?はっ!?」

マリアがハッとして周囲を見渡し 慌ててレイを引き剥がしながら言う
「ウィ、ウィザード様っ!ひっ 人前ですよっ!恥ずかしいじゃないですかっ!?」

レイが笑顔で言う
「ああ ごめんな マリア!俺はもう ウィザードじゃ ないもんだから 何処ででも あの部屋の中に居る時みたいに 気が緩んじゃってさ!」

マリアが困りつつ言う
「そ、それは 分かりますがっ ここは 外なんですからっ!」

マリアが思う
(しかも 会社の目の前で…っ!)

マリアが言う
「例え ウィザードじゃなくともっ 相応にっ!」

レイが言う
「ああ!例え ウィザードであっても 俺は 構わないんだけどさ!?」

マリアが慌てて言う
「か、構って下さいっ!」

レイが言う
「うん!マリアがそうしろって言うなら 俺はそうするよ!でも やっぱ めんどくさいからサ?」

レイがマリアを包む マリアが杖に気付いて言う
「えっ!?あ…っ」

レイとマリアが浮かび上がり 風に消える


自宅前

レイとマリアが現れる レイが言う
「はい 到着!」

マリアが言う
「え?こ、ここ…っ 私の家!?どうして ウィザード様が 私の家を ご存知なんですかっ!?」

レイが言う
「ああ!前に 清掃員になった時に」

マリアが衝撃を受け 清掃員姿を思い出して言う
「あ、あの時にっ!?」

レイが言う
「ついでにマリアを ストーキングして 確認しておいたんだよ!」

マリアが衝撃を受け 慌てて言う
「ストーキングなんて しないで下さいっ!しかも よりによって 神聖なウィザードの時にっ!」

レイが言う
「大丈夫だって 俺は その日1日は 清掃員だったし」

マリアが思う
(まぁ 確かに… 何処の世界に 神様と人との間だって言われるほど 崇拝される人が 清掃員の姿で うろついているなんて思わないだろうけど…)

レイが言う
「清掃員もストーキングも その日一日の限定だよ だって俺は 今は 魔法使いだけど」

マリアがホッとして思う
(そうよね あの時は 名実共に ウィザード様だったんだから)

レイが言う
「あの時も今も変わらず ”マリアのウィザード様”だからな!」

マリアが一瞬呆気に取られた後微笑する レイが微笑して言う
「だからマリアの為なら 俺は何時だって 清掃員にもストーカーにもなるぞ!」

マリアが衝撃を受けて言う
「どちらにも ならないで下さいっ!」

マリアが溜息を吐いて思う
(もう… 相変わらずこの人は…)

マリアが不満そうに言う
「そんな事する位でしたら 今度はちゃんと 私の前に現れて下されば… 大体 昨日だって 私…っ」

マリアがハッとして口を押さえて思う
(や、やだっ!私っ 今 何を言おうと…っ!?)

レイが苦笑して言う
「そうそう 昨日もさ マリアが会社を出る頃に 俺もマリアの前に 現れるつもりだったんだけどさ?」

マリアが一瞬反応して レイを見て言う
「けど?」

レイが言う
「その昨日の昼 マリアと会った時に 昼休みが終わるからって マリアを会社へ送っただろ?」

レイが杖を軽く動かしてみせる マリアが杖を見ながら言う
「え、ええ… あ、お陰さまで…」

マリアが思う
(そう言えば 今日は枝じゃなくて 杖を持ってる …ちゃんと買ったのかなぁ?…まさか 他の魔法使いから取ったとか…)

レイが言う
「あの後 俺1人で あのまま枝で飛んだらさ?やっぱ 途中で 枝が折れちゃって」

マリアが疑問して思う
(え?枝が折れるって…?杖の代わりに使った 枝が折れたらどうなるんだろう…?)

レイが言う
「そのまま壁に激突して 翌日の朝まで 気絶してたんだ!」

マリアが衝撃を受ける レイが苦笑して言う
「もうすぐ冬だって言うのに 目が覚めたら 外で寝ててビックリしたよ!あんなの何年振りかな?あははっ!」

マリアが思う
(前にもあったんですねっ!!)

マリアが怒って言う
「そ、そんなっ 笑い事じゃないですよっ!?そのまま 凍死しちゃったらどうするですかっ!大体 あんな枝なんかで飛ぶからっ!その一歩前までは 私だって 居たんですよっ!?」

レイが言う
「大丈夫だって!マリアが居る時は ちゃんと結界張ってるから どっかに激突したって 怪我はさせないよ!」

マリアが言う
「そ、そう言う問題ではなくてっ!」

レイが言う
「それに 今度は 杖を買ったからさ もう大丈夫!これからは ちゃんと…」

マリアがホッと苦笑して思う
(あ、買ったみたい 良かった… それに これからは ちゃんと… 杖で)

レイが微笑して言う
「マリアに会いに行けるからな!」

マリアが衝撃を受け慌てて言う
「そ、そうじゃなくて…」

マリアが思う
(ちゃんと杖でってっ …ま、いっか …ウィザード様が会いに来てくれないって マキに愚痴を言っていたのは… 私だったし)

マリアが一度微笑してから レイへ言う
「もう… …今度は気を付けて下さいね?」

レイが言う
「うん!ありがとな マリア!」

レイがマリアに抱き付く マリアが衝撃を受け周囲を見つつ苦笑して思う
(ま… まぁ いっか… この辺なら そんなに人通り多くないし… 殆ど壁で見えないし…)

玄関前の壁の無い付近を人が通り マリアたちを見て一瞬驚いた後失笑を隠しながら歩き去る マリアが衝撃を受け思う
(…で、でもっ やっぱり この玄関前以外で お願いしたいのですが…っ)

マリアが困っていると レイが言う
「じゃ 俺 帰るな!お仕事お疲れ様 マリア」

マリアが呆気にとられて言う
「え?あ、はい お疲れ様… あ、送って下さって 有難う御座いましたっ」

レイが言う
「礼には及ばないよ!それじゃ お休み!」

マリアが言う
「あ…っ」

マリアが呆気に取られていると レイが浮き上がり風に消える マリアが一瞬驚いた後 肩の力を抜いて言う
「まだ 何も話てなかったのに…」

マリアが周囲を見渡してから軽く息を吐き 玄関の鍵を開けながら思う
(現れたと思ったら すぐに消えちゃって…)

マリアが玄関ドアを開け 一度振り返ってから言う
「まぁ 良いよね…?今度は 何処か外で 気絶しているなんて事は 無いだろうから…」

マリアが苦笑してドアを閉める


中央公園

マキが言う
「そっか マリアのウィザード様 会いに来てくれたんだ?良かったね マリア!」

マリアが苦笑して言う
「うん… 心配してくれて ありがとう マキ」

マキが言う
「それに 今朝も迎えに来てくれたなんて 優しいね?早起きが苦手なマリアにとっては 大助かりじゃない?」

マリアが衝撃を受け苦笑して言う
「う、うん… 本当に助かっちゃった 今日は朝一番に商談予定が入ってて その前に 資料の見直しするつもりが うっかり会社に忘れて来ちゃって」


回想



マリアが慌てて家から出て来て言う
『あ~っ 資料、会社に忘れてきちゃったっ!』

マリアが思う
《ウィザード様が会いに来てくれないって その事ばっかり考えていたせいで…っ!》

マリアが玄関の鍵を慌しく閉めながら言う
『通勤の合間に 目を通すつもりだったのに…っ』

マリアが振り返って言う
『もう 間に合わないわっ』

レイの声が届く
『マリアー!』

マリアが驚いて言う
『え?』

マリアが振り向くと同時にレイが抱き付いてきて言う
『お早うー!マリアー!今日は寒いな!昨日の朝もこの気温だったら 俺ヤバかったかも!?』

マリアが衝撃を受けて言う
『ウィ、ウィザード様っ!昨夜はちゃんと 飛んだんですねっ!?良かったです!でも 今は 私っ ちょっと急いでて!』

レイが言う
『分かってるって マリア!』

レイがマリアを包む マリアが呆気に取られると レイとマリアが風に消える

会社 前

レイが言う
『はい 到着!マリア いってらっしゃーい!』

マリアが呆気に取られて周囲を見た後苦笑して言う
『えっ!?あ、有難う御座いますっ ウィザード様 助かりました!行って来ます!』

マリアが走って会社へ向かう 


回想終了

マリアが言う
「元はと言えば ウィザード様が会いに来てくれないって その事に気を散らせて 資料を忘れちゃったんだけど …でも やっぱり 会社で確認した方が 他の持ち出し出来ない 資料とかも見られたし …良かったかも?」

マリアが苦笑する マキが言う
「うーん… でもさ?そんな朝早くに 会いに来てくれるなら それこそ マリアが心配してた 再会のあの日の夜にも 会いに来てくれれば 一番良かったのにね?」

マリアが衝撃を受ける マキが苦笑して言う
「だってさ?そう思わない?お昼に誤解が解けたんだから その夜にしっかり再会してさ?マリアを安心させてくれたら 良かったのに」

マリアが思う
(い… 言えない… 本当はそのつもりだったのに 壁に激突して 翌朝まで気絶していたなんて…っ)

マリアが顔を逸らして小声で言う
「…それに よく考えたら あの日 杖を失ったのだって 私との約束の灯魔儀式をやってくれて それで杖が壊れちゃって …ついでに 代わりの枝で飛んだのだって 元はと言えば 私を急いで会社に送り届ける為で… それで…」

マリアが表情を困らせて思う
(なんだかんだ言っても やっぱり あの人は ”私のウィザード様”で 私の為にって… それなのに私は 相変わらずで…)

マリアが溜息を吐こうとする
「は…」

マキが溜息を吐く
「はぁ…」

マリアが一瞬呆気に取られてから マキを見て言う
「…マキ?」

マキがハッとして苦笑して言う
「あ、ごめんごめん!溜息は マリアの専売特許だったのに 先に使っちゃった~!えへへ~」

マリアが困惑して思う
(い、いえ… そんな 溜息の専売特許なんて 私 取りたくないけど… いや、そうじゃなくてっ)

マリアが言う
「そ、そんなの いつでも使っちゃって良いけど そうじゃなくて マキが溜息吐くなんて 珍しいね?どうかしたの?マキこそ 愛しの”マキのウィザード様”と ラブラブなんでしょ?」

マリアが微笑して思う
(ふふっ 今度は 私が マキを冷やかしちゃうんだからっ)

マリアが笑う マキが苦笑して言う
「うん まぁ それはそうなんだけど」

マリアが衝撃を受けて思う
(こ、肯定したっ!?)

マリアが言う
「さ… 流石 マキ…」

マリアが思う
(何処までも自分に素直な… って そうじゃなくてっ!ここは 奉者の先輩として 一言っ!)

マリアが気を取り直して言う
「う、うんっ!マキ?駄目なんだよ?ウィザード様は 神聖なる修行をしている 最中なんだからっ そ、そんな…」

マリアが思う
(み、みだらな事 は…っ て、それは流石に言えないっ)

マキが苦笑して言う
「うん… そうだよね?駄目だよね?奉者の方が 心配したりなんてしたら」

マリアが衝撃を受けて思う
(えっ!?し、心配ってっ!?一体何をっ!?)

マリアが言う
「な… 何を…?」

マキが言う
「うん 今日ね これから 初めて  灯魔儀式に行くんだ」

マリアが言う
「え?」

マキが言う
「だから 彼も少し緊張しているみたいで 私も… なんか 緊張しちゃって …でも マリアの言う通り 駄目だよね?奉者は 自分のウィザード様の力を 信じないと!」

マリアが思う
(…うっ 私… 信じたっけ?初めての… 最初の灯魔儀式は 確か…)

マリアが顔を逸らし小声で言う
「私… あの人が 本当にウィザードなのか?…と言う事を 疑っていたような…」

マリアが思う
(う… 言えない…)

マリアが小声で言う
「…むしろ ウィザード様の方が 自分で自信を持っていたような…」

マリアが困ってボソッと言う
「…言えない」

マキが言う
「ねぇ マリア 聞いて良い?」

マリアがハッとして言う
「え!?な、何っ!?」

マキが言う
「あのさ?最初の灯魔儀式の時って どんな感じだった?…やっぱり 結構大変なの?」

マリアが疑問して言う
「え?…えーとぉ~」

マリアが思い出しながら言う
「う~ん… そんな事無かったと思う 私は… あ、そうだ 私も 凄い緊張してたかも?でも ウィザード様は 凄く落ち着いてて… 怖いくらい なんて言うか 威圧感があって」

マリアが思う
(う、うん そうだ… あの時は ウィザード様も もしかしたら 少しは 緊張してたのかも?あの後はいつも 部屋を出るまでは マリアーって 感じだったし)

マリアが苦笑して言う
「…そうだね?もしかしたら ”私のウィザード様”も 少し緊張してたのかも?でもね?全然 大変なんて言うのは無かったよ?やってみたら 全然余裕だったって?」

マリアが思う
(うん そうだった 実力の5割も出さなかったって言ってたし …それに 私それで あの人がウィザード様だって 信じ… あれ?)

マリアが考えながら言う
「あ… そう言えば 全然余裕で ウィザードじゃなくても出来るとか言うから… 余計に分からなくなっちゃって…」

マリアが思う
(実際 この中央公園の灯魔作業は ウィザード様がウィザードじゃなくて 魔法使いになってからやっていたし… やっぱり)

マリアが微笑して言う
「大丈夫だよ!マキ!心配しないで!」

マキがマリアを見て言う
「マリア…」

マリアが言う
「いつものマキで行きなよ!元気の無いマキじゃ ”マキのウィザード様”も 心配するよ!?」

マリアが思う
(うんっ ウィザード様は いつも 私の事 心配してくれてたから …きっと マキのウィザード様だって 同じだよね?)

マキが微笑して言う
「うん!分かった!流っ石 マリア大先輩!マリアはいつも 灯魔儀式を心配するような様子は 全然無かったもんね!見習いまーす!にゃははっ!」

マリアが衝撃を受けて思う
(え?灯魔儀式を心配?あーよく考えたら 私 それを心配した事は 一度も無かったかも… だってあの人)

マキが立ち上がって言う
「それじゃ 私 行くね!応援してくれて ありがとう マリア!」

マリアが言う
「うん!頑張ってね!いってらっしゃい!」

マキが走って行く マリアが立ち上がって思う
(私のウィザード様は 最強のウィザード様だったから!)

マリアが苦笑して言う
「今は魔法使いだけどね?」

マリアが顔を上げ立ち去る


退社時

マリアが会社を出て来て言う
「ふぅ… 今日もやっと終わった…」

マリアが思う
(それで もしかして…)

レイが言う
「マリアー!」

マリアが苦笑して思う
(…やっぱり)

マリアがひょいと避ける レイがマリアを通過し壁に激突して言う
「ぎゃっ!?」

マリアが向いて言う
「ウィザード様?ここでは 抱き付かないで下さいって 昨日 言ったじゃないですか?」

レイが言う
「俺はそんなの どうでも良いと思うんだけどな?けど、マリアが そう言うなら しょうがない」

マリアが苦笑する レイがマリアの近くへ行って言う
「それじゃ 家に帰るか?マリア?」

マリアが微笑して言う
「はい」

レイが嬉しそうに言う
「よし 帰ろう!」

レイとマリアが風に消える


マリアの家

レイとマリアが現れると レイがそのままマリアに抱き付いて言う
「ここなら良いだろ?マリアー?」

マリアが表情を困らせて言う
「ここならと言いますか… そもそも 外で抱き付いて欲しくないのですが…」

マリアが思う
(と、言っても 家に入りましょうなんて言ったら 何だか 私から 誘っているみたいだし…)

マリアがはっと気付いて思う
(…あ、そう言えばっ)

マリアがレイへ言う
「あ、あの… ウィザード様?」

レイが言う
「なんだ?マリア?」

マリアが言う
「ウィザード様は 今どちらに いらっしゃるのですか?」

マリアが思う
(あのお部屋には 今はマキのウィザード様が住んでいるんだから… それじゃ今 ”私ウィザード様”は 何処に…っ?)

マリアがレイを見る レイがマリアに甘えて言う
「俺は 今~ マリアの隣~!」

マリアが衝撃を受けて思う
(何てベタな返しを!!)

マリアがハッとして思う
(って そうじゃ無くてっ!)

マリアがレイを剥がしながら言う
「そうでは無くてですねっ!?私は真剣にっ!」

マリアがハッとすると 玄関前の壁の無い場所から通行人がチラッと見て失笑している マリアが羞恥に頬を染めて困り怒って言う
「ウィザード様が ちゃ、ちゃんと お部屋に住んでいるのかっ 私はそれを 心配してっ!」

マリアが思う
(だって 私のせいで…っ ウィザード様は あの部屋を 追い出されてしまったのだから)

マリアが表情を落とすと レイが嬉しそうに言う
「相変わらず マリアは優しいな!俺は大丈夫だよ!ちゃんと お部屋に住んでるよ!」

マリアが一瞬呆気に取られた後 ホッとして言う
「…それなら 良かったです」

レイが言う
「うん!」

マリアがふと思う
(…で、何処に住んでいるんだろう?)

マリアが言う
「で、ウィザード様?」

レイが言う
「じゃ、俺 帰るな!」

マリアが呆気にとられて言う
「え?」

レイが離れて浮き上がって言う
「お仕事お疲れ様!マリア!良く休むんだぞ!」

マリアが言う
「あ、は、はいっ お疲れ様で… あっ 今日も送って下さって 有難う御座いました」

レイが言う
「礼には及ばないよ!お休み!マリア!」

レイが風に消える マリアが慌てて言う
「あー…っ」

マリアが呆気に取られて言う
「なんだ… ちょっと お話でもしようと思ったのに…」

マリアが肩の力を抜いて言う
「ふぅ…」

マリアが玄関へ向かい鍵を開けながら言う
「でも、まぁ 良いよね…?ちゃんと お部屋に住んでるって言うし… …当然だろうけど」

マリアが玄関ドアを開け 振り返って思う
(今日もまた 現れたと思ったら 消えちゃった ホントに…)

マリアがドアを閉めながら言う
「風みたいな人…」

ドアの外に北風がひと吹きする


翌朝
 
マリアが玄関を開け出て来て言う
「う~ 寒い…」

マリアが玄関ドアに鍵を掛けながら思う
(まだ冬の前だって言うのに… 朝はすっかり寒くなって来たみたい…)

マリアが鍵を掛け終えて振り向いて歩き始めて言う
「電車は良いけど ここから駅までが 寒いんだよね…」

レイの声が聞こえる
「マリアー!」

マリアが呆気にとられて言う
「え?…あっ!」

レイがマリアに抱き付いて言う
「おはよう マリア!朝はすっかり寒くなったなー!」

マリアが言う
「あ、は、はい… お早う御座います そうですね 寒いですね…」

マリアが思う
(でも 相変わらず ウィザード様は いつもお元気そうで…)

マリアが苦笑して言う
「流石 北風さん…」

レイが疑問して言う
「ん?キタカゼサン?」

マリアがハッとして慌てて言う
「あっ い、いえっ!」

レイが言う
「マリア 今日は ゆっくりだな?忙しくはないのか?」

マリアが言う
「ゆっくりと言いますか… そうですね 朝一番の商談とかは入っていないで この時間に出るのなら」

レイが言う
「そうか!それなら」

マリアがハッとして思う
(って 言っても まさか朝から お茶に付き合っている時間なんてっ 無いですからっ!)

マリアが顔を上げ気合を入れて思う
(そうよねっ!?ここは ハッキリしとかなきゃっ!)

マリアが言う
「あのっ!ウィザード様っ!」

レイが言う
「うん!急いで行く必要は 無いかもしれないけど!やっぱ この寒い中を マリアに歩かせたくは ないからな!」

マリアが呆気にとられて言う
「えっ?」

レイがマリアを包む マリアが一瞬驚くと レイとマリアが浮き上がり風に消える


会社 前

レイとマリアが現れ レイが言う
「はい 到着!これなら 寒くないだろ?」

マリアが呆気にとられて言う
「あ、はい…」

レイが離れて言う
「それじゃ 今日も お仕事頑張ってな!マリア!いってらっしゃーい!」

レイが浮き上がる マリアがレイへ向いて言う
「えっ!?あ、有難う御座いましたっ!」

レイが風に消える マリアがポカーンとして言う
「ま、また 消えて行っちゃった…」

マリアが苦笑して思う
(もぅ… 本当に北風さん なんだから…)

北風が吹きマリアが寒さに一度身を震わせてから言う
「わっ さ、寒い… 早く中に入ろうっ」

マリアが社内へ向かいながら苦笑して思う
(でも ウィザード様と一緒に居る間は 寒く はないから… ”北風さん”では 無いのかもしれない?それじゃ…)

自動ドアが開き マリアが入る間に風に吹かれて1枚の落ち葉が舞い込む マリアが気付いて顔を向けて言う
「そっか 風の魔法…」

マリアが苦笑し 入り込んだ落ち葉を拾い 自動ドアを開け吹いた風に外へ落ち葉を逃がしながら思う
(私のウィザード様は 今は 風の魔法使いさん なんだ…)

マリアが風に吹かれ 飛んで行く落ち葉を見送ると 苦笑してから立ち去る


中央公園

マリアが歩いて来て 噴水のふちに腰掛けているマキに気付き 微笑して呼びながら向かう
「マキー!お疲れ様ー!」

マキがマリアの声に顔を向け苦笑して言う
「お、お疲れ様 マリア… 何か マリア 元気だね?」

マリアが一瞬驚いた後苦笑して言う
「え?あ、そ、そうかな?」

マリアがマキの隣に座りながら言う
「あれ…?マキこそ… ちょっと 元気ない?どうかしたの?」

マキが苦笑しながら言う
「そ、そうかな?あ~ そうかもね?あは…」

マリアが呆気に取られた後 気を取り直して言う
「あ… そうだっ!昨日!初めての灯魔儀式だったんでしょ!?どうだった?」

マキが反応する マリアが弁当を用意しながら言う
「初めて見ると やっぱり びっくりしちゃうよね?私もそうだった!何回か見ている内に慣れたけど 初めての時は ウィザード様の魔法の迫力に圧倒されちゃって!」

マキが視線を落として言う
「私は… 見ていられなかった…」

マリアが一瞬疑問した後 苦笑して言う
「え…?あっ!私はっ!あ、あれかもしれないっ あの… 14年前に 大灯魔台の灯魔儀式が失敗して 灯魔魔力が暴走して 凄い怖い思いをした事があったから… それに比べたら 普通の灯魔台の灯魔儀式は…っ」

マキが言う
「ううん… 魔法が… 灯魔魔力が怖くて とか言うんじゃなくて… 彼が 凄い… 苦しそうで…」

マリアが驚いて言う
「え…?」

マリアが思う
(”苦しそうで”…?)

マキが表情を悲しめて言う
「心の中で 何度も ”もう止めようよっ!”って…」

マリアが呆気に取られる マキが言う
「”巡礼者の人たちに 見られてても良い… 今日はもう 止めよう!”って… 何度も思った… でも…」

マリアが言う
「”でも”?」

マキが苦笑して言う
「彼は最後まで 諦めなくて… 最後の最後に やっと…」

マリアが呆気に取られていると マキが涙ぐんで言う
「奉者って 苦しいね… マリア… それに 私… ”何度も止めよう” だなんて… 彼の力を 信じ切れてないよね… 駄目だよね?私 もっと強くならなきゃ…」

マリアが言う
「マキ…」

マリアが驚く マキの手に涙が落ちる マキが言う
「…ごめん 言ってるそばから…」

マリアが言う
「良いよ?私だって マキやリナに 一杯助けてもらったよっ?だから 今度は私が マキに力を貸すからっ!」

マキが言う
「ありがとう マリア …やっぱり マリアは 私の大先輩だよっ」

マリアがマキの肩を抱いて慰める


会社

マリアがモニターを前に考えている マリアの脳裏に記憶が蘇る

マキが言う
『ううん… 魔法が… 灯魔魔力が怖くて とか言うんじゃなくて… 彼が 凄い… 苦しそうで…』

マキが言う
『”巡礼者の人たちに 見られてても良い 今日はもう 止めよう!”って… 何度も思った… でも…』

マキが苦笑して言う
『彼は最後まで 諦めなくて 最後の最後に やっと…』


マリアが思う
(あの話… マキの様子からして… ”マキのウィザード様”は 凄い苦労をして 灯魔儀式を成功させたみたい… 灯魔台の灯魔儀式って そんなに大変な事だったっけ?)

マリアが思い出す


マキが涙ぐんで言う
『奉者って 苦しいね… マリア…』


マリアが思う
(奉者が苦しい?…そう言えば お母さんも 同じような事を言ってた …奉者は ウィザード様の努力と苦しみを同じくして あの場所へ… 大灯魔台の灯魔儀式までを 一緒に行くんだって…)

マリアが気付いて言う
「…そっか 私のウィザード様は」

課長が後ろに居て 咳払いをして言う
「うんっ!マリア君っ」

マリアが衝撃を受け慌てて言う
「は、はいっ!課長っ!?」

課長が言う
「昨日の 商談結果に付いての報告書が まだ出ていないようだが…?」

マリアが慌てて言う
「あっ はい!それでしたら たった今 作成を…っ はっ!?」

マリアが自分の前の真っ白なモニターを見て衝撃を受ける 課長が言う
「マリア君… お陰で私も 君が別の事へ気を向けている事に 気付くようになったよ… まぁ 仕事さえしてくれれば 文句は言わないがっ?」

マリアが言う
「す、すみません…っ」

課長が立ち去る

マリアが息を吐いてから 気を取り直して思う
(い、今はもう 私は 奉者じゃないんだし ウィザード様もウィザードじゃないんだからっ 私は この仕事を頑張らなきゃっ)

マリアがふと手を止めて思う
(…て そう言えば?)

マリアが言う
「ウィザード様って 今 何をやっているのかな…?」

マリアが考える 課長が衝撃を受けて叫ぶ
「マリア君っ!!」

マリアが衝撃を受けて言う
「は、はいっ!すみませんっ!課長っ!」


退社時

マリアが会社を出て来て言う
「ふぅ… 課長の目が光っていたお影で 明日の分まで書類を上げちゃった」

マリアが思う
(って 事は つまり 絶対休暇禁止の 月曜日の忙しさって こうやって前日の日曜日に 書類を上げちゃえば良かったんだ)

マリアが言う
「なんだ… それなら あの日も リナに無理をお願いしなくたって こうすれば良かったんだ…」

マリアが苦笑して言う
「それに」

マリアが思う
(マキにも お願いしちゃったんだよね… マキ… 大丈夫かな…?)

マリアが言う
「よし こう言う時は」

レイが言う
「マリアー!」

マリアが思う
(ウィザード様に聞いてみようっ!だって マキの”ウィザード様”についての 事だから)

マリアが身構える レイがマリアの前で顔を覗き込んで疑問して言う
「…マリア?」

マリアがハッとしてレイへ向いて言う
「わっ!?ウィ、ウィザード様!?」

マリアが思う
(え?何で今日は…?)

レイが言う
「何かあったのか?」

マリアが言う
「い、いえ…」

マリアが思う
(何で 今日は… 抱き付いて来なかったんだろう…?…ってっ!?)

マリアが言う
「あっ!いやっ!違うんですよっ!?私は 別に!――ハッ!?」

マリアが思う
(いけないっ!墓穴を…っ)

マリアがレイを見る レイが呆気に取られてから微笑して言う
「大丈夫だよ!マリア!マリアは何も気にしなくて良い!」

マリアが言う
「え?」

レイが言う
「マリアは 気にしてるんだろう?明日の大灯魔台の 灯魔儀式の事!」

マリアが呆気にとられて思う
(あっ そうだった…!明日は…)

マリアが視線を落として言う
「…本当だったら」

レイが言う
「俺たちが行くつもりだったもんな?でも 良かっただろう?毎週月曜日に 休暇を取るなんてやってたら マリア この会社の上司に 怒られちゃうもんな?俺やっぱ それは嫌だからさ?次からは 俺1人で行くつもりだったんだぜ?」

マリアが驚いて言う
「えっ!?そんなっ!?」

レイが言う
「大丈夫だって!俺は強いし!マリアが居なくても 頑張れるよ?マリアがこっちの会社に居ても きっと俺の事を 応援してくれてるって 分かってるからさ!」

マリアが呆気にとられて思う
(応援してくれてるって 分かってるから…?)

マリアが微笑して言う
「そっか… そう言う事なんですね?」

レイが言う
「ん?」

マリアが微笑して言う
「ウィザード様、大灯魔台の灯魔儀式の時… 奉者も一緒に控え出口まで同行するって 私、それがどう言う意味か 分からなかったんですけど …ウィザード様は 言ったじゃないですか?”奉者の力も大切だからな”って それは 応援が必要だ って事だったんですね?」

レイが言う
「ああ!特に 大灯魔台では 最初の起動だけでも 5回はやらなきゃいけないからさ!もし本番が1発で灯るとしても 連続で6回も灯魔作業をやるって言うのは 俺であっても 一応キツイからな!」

マリアが苦笑して言う
「そうだったんですね… 知らなかったとは言え 私 ずっと応援していましたよ?」

レイが言う
「うん!分かってるよ マリア!それに マリアが傍にいて 見ていてくれれば それだけで 十分だよ!」

マリアがハッとして思う
(それじゃ やっぱり…)

マリアが思い出す


マキが視線を落として言う
『私は… 見ていられなかった…』

マキが苦笑して言う
『彼は最後まで 諦めなくて 最後の最後に やっと…』


マリアが思う
(マキは そう言っていたけど ”マキのウィザード様”は マキが居て 見て居てくれたからこそ 最後には灯魔を成功させられたんだ)

マリアが思い出す


マキが涙ぐんで言う
『奉者って 苦しいね… マリア… それに 私… ”何度も止めよう” だなんて… 彼の力を 信じ切れてないよね… 駄目だよね?私 もっと強くならなきゃ…』


マリアが思う
(そっか… 駄目なんかじゃない マキは十分 分かってるだ だからこそ もっと強くなろうって…)

マリアが苦笑して言う
「マキは 凄いなぁ…」

レイが言う
「ん?どうしたんだ?マリア?」

マリアが言う
「あっ いえっ」

北風が吹き抜ける マリアが思わず服を押さえて言う
「わっ 寒い…」

レイが言う
「じゃ、とりあえず マリアの家まで飛ぼうか?」

マリアが言う
「え?あ、は はいっ」

マリアが返事をするまでも無く レイがマリアを包んで 二人が浮き上がると風に消える


自宅 前

レイとマリアが到着すると レイがマリアに抱き付いて言う
「マリアー?」

マリアが言う
「あ、有難う御座います… あっ お、送ってくれた事に対してですよっ!?」

マリアが慌てる レイが疑問しつつ微笑して言う
「うん!どう致しまして!」

マリアが言う
「…あ、それから」

レイが言う
「ん?なんだ?マリア?」

マリアが言う
「私… その… 結果として 間違いで あんな事になってしまいましたが …もし 大灯魔台の灯魔儀式を 続けていたら 私っ 絶対に ウィザード様に同行してましたよっ?1人で向かわせたりなんて しませんでしたからっ!」

レイが呆気に取られる マリアがハッとして思う
(あっ で、でもそれはっ 別に 変な意味ではなくてっ!奉者としての仕事としてっ!?いや でもっ …それだけでもなくてっ!?えーとっ?えーとっ!?)

マリアが慌てていると レイが喜んでマリアをぎゅーと抱き締めて言う
「わーいっ!嬉しいなー マリアー!」

マリアが慌てて思う
(いえっ ですから そうじゃ無くてっ!?)

マリアが言う
「あ、で、ですからっ 奉者として しっかりと 応援もしますしっ!?一緒に行く事も… お、お仕事ですからっ!?」

レイが言う
「分かってるって!マリア!マリアは仕事熱心だから 何とかして 両方の仕事をこなす って意味だろう!?」

マリアが衝撃を受けて慌てて言う
「え?あ!…そ、そうですっ!その通りです!今日丁度 その方法として 前日の今日の内に 書類を上げると言う方法を 編み出した所でっ!」

マリアが思う
(う…っ い、言えない …その方法を編み出したのは ウィザード様の事を考えていて …それで 課長に目を光らされていて 仕事が はかどったお陰 …だなんて)

レイが言う
「そうだったのか!流石マリアだな!」

マリアが思う
(い、言えない…)

レイが言う
「それじゃ… もしかして 明日の午後 少しでも 時間は取られそうか?そんな方法を見つけるなんてさ?マリア やっぱ 気になってるんだろう?それなら 大灯魔台の灯魔儀式を 一緒に見に行くか?」

マリアが言う
「えっ!?い、行けるんですかっ!?ウィザード様っ!?」

レイが言う
「当たり前だろう?マリアは休職中とは言え 奉者だし 俺は魔法使いなんだから 大灯魔台の見学スペースには 自由に入れるよ!」

マリアが呆気に取られた後 ハッとして思う
(で、でも… ウィザード様にとっては 嫌な思い出の場所なんじゃ…)

マリアが言い辛そうに言う
「で、でも…」

レイが言う
「それに マリアのお母さんも また行くんだから マリア 心配なんだろう?」

マリアがハッとして思う
(そ、そうだった…っ!お母さんも あのウィザードさまも…っ)

レイが言う
「俺も先輩には 前回の借りがあるからさ ちょっと見て置きたいんだよな?」

マリアが言う
「先輩…?もしかして ”お母さんのウィザード様”?」

レイが言う
「そうそう!だって 前回の大灯魔台の灯魔だって あの大先輩が居なかったら 俺1人じゃ 無理だったから」

マリアが言う
「え?でも…?」

マリアが思う
(あのウィザードさまは 7人の内で 1人だけ… 本来なら ウィザード様ではなくて あのウィザードさまが 不認定にされる所だったのに…?)

レイが言う
「最後の灯魔は 殆ど俺と先輩の2人でやったようなもんだよ あの先輩 俺とは違って 風魔法のエキスパートじゃないのに やってくれるよな?流石 ウィザードの大先輩にして マリアの”お母さんのウィザード様”だよ!」

マリアが驚いて言う
「それは…っ どう言う事ですか?”2人でやったようなもの” って!?」

レイが離れて浮き上がって言う
「それに そう言う事が分からない 巡礼者の奴らに 不認定票を入れられるって 分かっててもさ?何も言わないのな?あそこまでカッコ良い事されちゃうと 俺だってこのまま黙っては いられないね!」

マリアが呆気にとられて言う
「え?ウィザード様?」

レイが言う
「それじゃ また明日な!迎えに行くよ マリア!お疲れ様!お休み!」

レイが風に消える マリアが言う
「あっ!」

マリアが思う
(ウィザード様が ”お母さんのウィザード様”に借りがあるって?最後の灯魔は2人でやったって どう言う事?)

マリアがレイの消えた場所を見て苦笑して言う
「まぁ… 明日もまた会えるみたいだし… 一緒に 大灯魔台の灯魔儀式を 見に行くんだ… あっ!そ、それじゃっ!?」

マリアが焦って思う
(明日は その為に頑張ってっ 早く仕事を 終わらせなきゃっ!?)

マリアが言う
「た、大変~!」

マリアが玄関の鍵を開けながら言う
「とりあえず 今日は早く寝て 明日は出来るだけ早く起きて 会社に行こう!…うん!」

マリアが玄関ドアを開け後ろを振り返って思う
(明日も 朝 迎えに来てくれるかな…?)

マリアが苦笑して言う
「相変わらず あの風さんは どう吹くのか 分からないから…」

マリアがドアを閉める 北風が過ぎ去る


翌朝

マリアが玄関を出て鍵を閉め 振り返ってキッと正面を向くと レイの声が聞こえる
「マリアー!」

マリアが思う
(来たっ!!)

レイがマリアに抱き付いて言う
「マリアー!お早うー!本当に 早いなー!流石 マリアだ!」

マリアが言う
「はいっ!ウィザード様っ!私 今日は気合を入れて 頑張りますからっ!」

マリアが気合を入れて言う
「どうか宜しくお願いしますっ!」

レイが言う
「うん!それなら 俺も頑張るよ!マリア!」

レイとマリアが風に消える


大灯魔台神館 館内

アナウンスが言う
『これより 大灯魔台 灯魔儀式を…』


控え出口

アナウンスの続きが聞こえる
『それでは ウィザード様方 灯魔儀式を お願い致します』

ウィザードが大灯魔台へ向き歩き出す ソニアが何も言わずに見つめている


会社

マリアがテキパキと真剣に書類を作成している 課長が呆気にとられて言う
「お… おお…っ さ、流石マリア君だ… まるで以前の… いや、それ以上と言うべきか…?」


大灯魔台 灯魔口

ウィザードが灯魔口を見る ウィザード2がやってきて言う
「…どうする?やっぱり 全ての属性を灯してみるか?」

ウィザード3がやってきて言う
「でもな?あのエキスパートが居ないんだぜ?俺たちの総魔力じゃ 全て灯した所で 本番で試せるのは1属性ぐらいじゃないか?」

ウィザード4が来て言う
「本番で1属性が灯らなかった程度じゃ 儀式の中止を申請する事は出来ないぞ?」

ウィザード5が言う
「火と水なら 2つ位出来るんじゃないか?」

ウィザード6が言う
「それなら 悪いが 2つ目の時は… また先輩に頼っても良いか?」

ウィザードたちがウィザードを見る 新参のウィザード7がやって来て言う
「おい なに話なんかしてるんだ?さっさと始めないと 俺まで おかしな目で見られるじゃないか」

ウィザードが言う
「…基本魔法の 火で行こう」

ウィザード2が言う
「え?」

ウィザード3が言う
「そうだよな やっぱり 火に賭けるか」

ウィザードがウィザードたちを見て言う
「火の一属性で行うならば このメンバーであっても7回は行けるだろう この大灯魔台の属性が火であれば それに越した事は無いが 他であったら7灯目を行って中止だ」

ウィザード2~6が軽く息を吐く ウィザード7が言う
「何言ってるんだよ?その先輩とやらも 過去の失敗の時だって8回まで成功させたんだ だったら8灯目まではやらないと 全員にマイナス付くぜ?」

ウィザード6が言う
「火の一属性であっても 7回もやれば お前 立って居られないだろうな?」

ウィザード5が苦笑して言う
「だよな?何にも知らない奴ほど 言うんだよ 口だけ」

ウィザード4が言う
「新入りの7番なんだから もっと謙虚にしろよな?お前こそ まずは お前の先輩である 俺たちを見習えって言うの」

ウィザード2と3が笑う ウィザード7が不満そうに言う
「ケ…ッ 偉そうに 俺は今回は7番だけど 魔力の強さで言えば もっと上だ 灯魔儀式の遅れだけなんだから 甘く見るなよ」

ウィザード7が立ち去る ウィザード3が言う
「先輩 甘く見られてますよ?結界魔法解除して ホンキ見せてやったらどうです?」

ウィザード4が言う
「それか とりあえず もう少し明るい色で来るとか?」

ウィザード2が言う
「分かってねぇな?前回の事が 理解出来ねぇ連中の為に 世間体ってやつだよ?」

ウィザード苦笑して言う
「…歳だからだよ」

ウィザードたちが苦笑してから 各自灯魔場所へ向かう


会社

マリアがキーボードのエンターを押して言う
「よしっ!」

マリアが課長の前に書類の山を置いて言う
「課長っ!」

課長が衝撃を受け言う
「は、はいっ!?」

マリアが言う
「この後 お昼休憩を頂きますっ!」

課長が言う
「…う、うむっ 行って来たまえ!」

マリアが言う
「はいっ!」


大灯魔台

ウィザードが杖を振るう 続いて ウィザードたちが杖を振るうと 火の魔法が灯魔口に叩き込まれる

補助灯魔台に4つ目の火が灯る

ウィザードが杖を構える ウィザード2~6が構える ウィザード7が言う
「クッ…」

ウィザード7が杖を構える ウィザードが魔力を終結し炎を集める ソニアが見つめている


会社 外

マリアが出入り口の自動ドアを出て 顔を向けると気付き 走って向かいながら言う
「ウィザード様っ!お待たせしましたっ!」

レイが言う
「うん!待ってたよ!マリア!」

マリアが言う
「有難う御座います!」

レイが言う
「礼には及ばない!」

レイがマリアを包むと共に2人が風に消える


大灯魔台

ウィザードが杖を構える 続いてウィザード2~6が構える ウィザード7が息を切らせつつ構えて言う
「クソ…っ なんたって… 急ぎ過ぎなんだよっ!」

ウィザードが目を細め周囲に魔力を終結させる


大灯魔台神館 外

レイとマリアが現れ レイが言う
「さあ 到着!急いで行こう マリア!きっと フルスピードで進めている筈だ!」

マリアが灯魔台神館を見てから ぐっと息を飲んで言う
「…は、はいっ!」

レイがマリアの手を引いて走る マリアが一瞬驚いた後 手を引かれるままに走る


大灯魔台

補助灯魔台に5つの火が灯っている ウィザードが杖を振るう 続いて ウィザードたちが杖を振るうと 火の魔法が灯魔口に叩き込まれる 灯魔口に変化は無い

ウィザードが思う
(灯らないか… 後一回 ともすれば もし あの大灯魔台の属性が 火に近い物であれば 8回の灯魔であっても 灯る筈だが…)

ウィザードが周囲のウィザードを見る 皆が息を切らしている

ウィザードが軽く息を吐いて思う
(やはり ウィザードの質は落ちた… 14年前の私を含めた6人であれば 8回の灯魔は可能だったが… 1人増やした所で)

ウィザードがウィザード7を見て目を細める

ウィザードの視線の先 ウィザード7が杖で身を支えて息を切らしている ウィザードが杖を構える ウィザード2~6が杖を構える ウィザード7が顔を向ける

ウィザードが思う
(ここまでなら 私を含めた前回の6人であっも 十分だったな…?)

ウィザードが苦笑し 魔力を集めようとしてハッとする ウィザード2~6が続いて気付き 顔を向ける

マリアが衝撃を受けて言う
「えっ!?あ…」

マリアが横を見る マリアの横にレイが居る マリアが驚いて一度ウィザードたちを見てから 再びレイを見て思う

(あの時と同じだわ…?この場所に来たと言うだけで ウィザード様たちの視線が 同時に ”私のウィザード様”へ向く… でも、今回は どう言う事?あのウィザード様だけは 視線を向けなかった…)

マリアがウィザード7を見る ウィザード7が杖を構える ウィザードが気を取り直し魔力を集める 他のウィザードたちも同じくする

マリアが言う
「もしかして…」

マリアがレイを見て思う
(魔力って 人それぞれの個性があるのかな?それで 以前お会いした あのウィザード様たちは それに気付いて ウィザード様を見たのかも?)

マリアがウィザードたちへ視線を戻す レイが大灯魔台を見つめている

ウィザードが杖を振るい 続いて ウィザードたちが杖を振るう 火の魔法が灯魔口に叩き込まれる 灯魔口に変化は無い ウィザードが構えを解除してウィザードたちを見る

ウィザード7が荒い息をしながら思う
(こ、これで終わりか… 助かった …クソッ 俺の精神力が低いと分かって わざと作業を急がせたのかっ ムカツク大先輩だぜ… けど)

ウィザード7が ウィザードを見て 悪笑んで思う
(過去の灯魔儀式の失敗に続き 前回でも無様な姿を見せた あのウィザードの評価は最低だ ここでマイナスが付くなら 次に会う事は無いかもな?)

ウィザード7が密かに笑う
「クックック…」


マリアが疑問して言う
「どうしたんでしょう?…休憩かな?」

マリアが思う
(折角来た所なのに… まぁ しょうがないよね?時間… 間に合うかな…?)

マリアが軽く溜息を付く
「はぁ…」

レイが言う
「マリア」

マリアが一瞬驚いた後レイへ向く レイが微笑して言う
「ちょっとゴメン 一人にさせちゃうけど 待っててな?」

マリアが呆気にとられて言う
「え?あ、はい」

レイが風に消える マリアが呆気に取られた後疑問して言う
「ウィザード様… 何処へ行ったんだろう?」

マリアが思う
(あのウィザード様が 一緒に居る私を置いて行くなんて… 何だか変な感じ?)


レイが控え出口のソニアの後方に現れ ソニアを見る ソニアはウィザードを見つめている レイがソニアの後姿を見た後 控え出口の番号を確認し微笑してから 視線をウィザードの背へ向け その先へ移す

レイの視線の先 ウィザード7が閃いて思う
(…そうだっ!ここで俺が杖を構えれば?俺は続けるつもりだったのに 先輩たちが先に ドロップアウトしたって事で… 俺にはプラス評価になるんじゃないか?)

ウィザード7が密かに口角を上げ杖を構える ウィザードに続きウィザードたちが気付いて横目に見る

ウィザード7が思う
(さぁ どうする?先輩方?)

ウィザード7が密かに笑う
「クックッ…」

ウィザード7が一瞬表情を顰めて思う
(…っ やっぱ 構えているだけでもキツイな… 早く… 終わりに…)

ウィザード7が杖を見ると 杖が強く光る

ウィザード7が驚いて思う
(…え?)

ウィザードたちが一瞬驚いた後苦笑して

ウィザード3が言う
「威勢だけは 一丁前だな?」

ウィザード2が言う
「まったくだぜ?」

ウィザードが言う
「…いや 違う あれは…っ」

ウィザードの記憶に 14年前の 自分の杖が同じ様子で光っている光景が思い出される ウィザードたちが疑問してウィザードを見る ウィザードが一度マリアの横を見てから 苦笑して言う

「よし 8灯目を行おう」

ウィザード2が言う
「え?本気かよ?」

ウィザードが杖を構える ウィザードたちが驚き 視線で互いに問い合いつつ 杖を構える ウィザードが魔力を集める ウィザードたちが困惑しながらも同じくする ウィザード7が 自分の杖の周囲に集まる魔力に 呆気に取られて言う

「な… なんだ?どうなってる?俺の杖が勝手に!?」

ウィザードの周囲に火の魔力が集まる ウィザード7の杖に炎が集まる ウィザード7が怯えて後づ去る ウィザードたちが表情を険しくしながらも火の魔力を集める

大灯魔台の上部に火の魔力が集まり やがて7つに分かれてウィザードたちに襲い掛かって来る ウィザード2~6が気合を入れて抑えるが 抑えた威力の低さに呆気にとられつつも杖を振り上げ 自身の灯魔作業を終える

ウィザードが強い火の魔法を受け止めている ウィザード3が言う
「まさか!対極の水魔法をっ!?」

ウィザード2が言う
「1人で押さえるつもりか!?いくら火でも それは無理だ!」

ウィザード2がハッとしてウィザード7へ向く ウィザード7の杖が火の魔力を抑えている ウィザード6が言う
「こちらも威力が強い… 2つに分かれた?前回の様に!?」

ウィザードが杖を振り上げ 炎が灯魔口へ叩き込まれる 火の粉が飛び散り ウィザードたちが咄嗟に火の粉から身を守る

ウィザードがウィザード7を見る ウィザード7の杖が火の魔力を抑えているが ウィザード7は呆気に取られている ウィザードが目を細めるとウィザードの後ろから一筋の風が吹き込み ウィザード7の杖を弾く

ウィザードが驚くと ウィザード7の杖に弾かれた炎がウィザードへ向かって来る ウィザードが一瞬驚いた後 ハッとして自分の後ろに居る ソニアに気付き杖を構える

火の魔力がウィザードの杖に抑えられ 杖を振り上げると灯魔口へ叩き込まれる

一瞬の静寂の後 灯魔口に炎が灯る ウィザードたちが驚く


マリアが呆気にとられて言う
「と、灯った… 成功だわっ!」

ソニアがホッと肩の力を抜く 会場に居た巡礼者たちが力を抜いてから 気を取り直し祈りを捧げる

ウィザード2が苦笑して言う
「流石 先輩…」

ウィザード3が言う
「なんだよ 結界魔法なんて 最初から使わないで ヤバイ時は 自分で守れって事じゃないか?」

ウィザード2が言う
「本人も 今、それを知っただろうな?」

ウィザードが灯魔口を見上げ一度目を閉じて息を吐いてから振り返る

ウィザードの視線の先 ソニアがホッとして微笑する ウィザードがソニアを見てから その後ろを見る ソニアがそれに気付き 疑問して振り返りると 驚いて言う

「あ、貴方はっ!」

レイがウィザードへ向けていた視線をソニアへ向けると 人差し指を顔の前に立て言う
「しー…」

ソニアが呆気に取られた後ハッとして言う
「まさかっ!?」

レイが僅かに微笑してから杖を一振りして風に消える

ソニアが驚いていると ウィザードが戻って来る ソニアがウィザードへ向く ウィザードがレイの消えた先を見てから苦笑する


レイがマリアの横に現れる

マリアがハッとしてレイを見て喜んで言う
「ウィザード様っ!灯魔儀式が!成功しましたよっ!!」

レイが言う
「うん!流石 マリアの ”お母さんのウィザード様”だな!向かって来た火の魔力が マリアのお母さんに当らないようにってさ?やっと ホンキを出したみたいだぜ?」

マリアが驚いてから苦笑して言う
「え?あ… そうだったんですか?それじゃ、もしかしたら 前回 お母さんが あのウィザードさまを庇いに行ったのも お母さんが ウィザードさまの その本気と言うのを知っていたから… だったのかも…?」

マリアが思う
(やっぱり お母さんは ”お母さんのウィザード様”を 本当に信じているんだ… 自分の身を呈しても 大丈夫だって…)

マリアが微笑した後 ふと気付いて言う
「…って ウィザード様?一体 何処に行っていたんですか?一番大切な時に… もし 灯魔儀式が失敗して 魔力が暴走してしまったら 私っ!」

マリアがハッと気付いて思う
(あ… でも ”あの約束”は ウィザード様がウィザードであった時の… って 事になっちゃうのかな?それじゃ… もう…)

レイが言う
「大丈夫だって!マリア!灯魔儀式は失敗しないよ!」

マリアが一瞬疑問した後 気を取り直して言う
「し、しかし それはっ!?あくまで ウィザード様が儀式に 参加している時の話でっ!今回みたいに…」

アナウンスが入る
『大灯魔台 灯魔儀式は 無事成功致しました 続いて この度の灯魔儀式を用いまして ウィザード様の不認定投票を行います』

マリアがハッとして大灯魔台へ視線を向ける アナウンスが続いて流れる
『それでは 投票に先立ちまして 各ウィザード様へお仕えする 奉者様のお名前を発表させて頂きます 大灯魔台へ向かい 右手前より レミィ・クレシア奉者様 その後方 アリル・レイン奉者様…』

マリアが顔を向ける

奉者2と奉者3が控え出口の外に立ち 名を呼ばれると礼をする

アナウンスが言う
『その後方 ソニア・ノーチス奉者様』

ソニアがキリッと人々へ向いてから静かに礼をする マリアが見つめていると 顔を上げたソニアが 会場内を見て マリアに気付き視線を合わせる マリアがハッとすると ソニアがレイを見てから再びマリアへ視線を戻し静かに頷く

マリアがレイを見て言う
「え…?ウィザード様…?」

マリアがハッとして言う
「も、もしかして!?あの最後の灯魔!…よく考えたら あの灯魔は 前回の時と同じ感じでした!しかも その瞬間に ウィザード様が ここに居なかったってっ!?」

レイが反応し苦笑して言う
「あれ?バレちゃったか?何だ先輩みたいに カッコ良くキメるつもりだったのに… やっぱ魔力で勝っても 年の功には 敵わないのかなぁ?」

マリアが衝撃を受け慌てて言う
「なっ 何言ってるんですかっ!?そんな事よりっ!」

レイが言う
「ああ!そんな事より!」

マリアが呆気に取られて言う
「…え?」

レイが言う
「そろそろ戻んないと マリア 怒られちゃうか?」

マリアが衝撃を受けて言う
「あっ!そっ そうでしたっ!!」

レイがマリアの手を掴んで言う
「よし!行こう!マリア!」

マリアが慌てて言う
「はいっ!」

レイとマリアが走って行く ソニアがそれを見て苦笑して控え出口へ戻って行く

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