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3章

嗚呼、私のウィザードさま 「叶わない約束」

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翌朝 

マリアが着替えを済ませ ネックレスに触れて微笑してから言う
「さて、お弁当を…」

マリアが部屋を出て歩きながら思う
(今日は 昨日のご馳走の残りがあるから あれを詰めちゃえば良いだけだから 少しは ゆっくり朝食が食べられるかな?)

マリアが言う
「ニュースも 気になるし…」

マリアがキッチンに入る

ソニアが言う
「お早う マリア」

マリアが驚いて言う
「あれ?お母さん?」

ソニアが微笑して言う
「今日はお母さん ゆっくり行こうと思って?それに たまには 朝食を一緒に食べない?用意しておいたの 後 お弁当もね?」

マリアが驚いて言う
「え!?お弁当も!?」

ソニアが言う
「ええ、マリアのお弁当を 作るのなんて もう 何年振りかしら?何だか懐かしかったわ?」

マリアが苦笑して言う
「それはそうだよ 保育園以来だもん?」

ソニアが言う
「うふふっ そうね?」

マリアが笑う ソニアが言う
「さぁ 座って?マリア」

マリアが言う
「はーい」

マリアとソニアが微笑む TVにニュースが映っている

マリアがそれを見て言う
「そう言えば お母さん 昨日の事件って…?」

ソニアが言う
「ええ 本当に怖かったわ… 朝 いつもの様に ハイヤーに乗って居たら 突然 車の前に人が飛び出して… ハイヤーの運転手さんが 確認をしに車を降りた途端に あの犯人たちが乗り込んで来たの」

マリアが言う
「そうだったんだ それじゃ その飛び出してきた人も 犯人の仲間だったのね?」

ソニアが言う
「ええ、そうみたい 警察にも話したけど その時 お母さん 目隠しをされて それで 言われたの ”お前をさらえば あのウィザードが来るのか!?”って…」

マリアが言う
「え?それじゃっ!?」

マリアが思う
(犯人たちの狙いは 最初から ”お母さんのウィザード様”!?)

マリアが言う
「でも どうしてっ!?何かの為に 魔法を使わせたい… とかなら あの時 ウィザードさまを 殺そうだなんて…?」

ソニアが言う
「ううん 違うのよ お母さん その時 すぐに分かったの この人たちは あの ミッシェルリンク社の人だって」

マリアが驚いて言う
「えっ!?」

マリアが思う
(どう言う事っ!?それに 何で 会社勤めでもない お母さんが 元受会社である ミッシェルリンク社の社名を!?)

ソニアが言う
「マリアは もしかして 知ってるかしら?ミッシェルリンク社って 会社の事」

マリアが言う
「し、知ってるよ!?それより どうして お母さんの方が 知ってるのっ!?」

ソニアが言う
「そう、マリアも 知っているのなら 話は 早いわ そのミッシェルリンク社 最近 いくつもの工場なんかで 事故があったでしょう?それに 地元住民からの 再稼動反対運動がされているって…」

マリアが言う
「う、うん 知ってるよ!でも どうして それを お母さんが…っ!?」

ソニアが言う
「あれはね?元々”お母さんのウィザード様”が 原因なのよ」

マリアが思う
(え!?それってっ!?)

マリアが驚いて言う
「まさかっ!その事故の原因!機械の故障って!?」

ソニアが苦笑して言う
「ええ、”お母さんのウィザード様”がね?魔法で壊してしまったの」

マリアが衝撃を受けて言う
「なんで そんな事をっ!?」

マリアがハッとして思う
(あ…っ でも…っ その工場なんかは 全部…っ!?)

ソニアが言う
「自然の悲鳴が 聞こえるんですって… それらの工場なんかのせいで 水や風… 土が汚染されて やがて 人々へ危害を加える… その怒りが募っているのを 感じるんですって だから それを 止めたいって」

マリアが驚いて言う
「そ、それって…」

マリアが思う
(もしかして そう言う事!?それこそが ウィザード様が言っていた ”本物のウィザード” って言うのじゃ…!?)

ソニアが苦笑して言う
「でも、分からないでしょう?私たちには そんな 自然の悲鳴なんて聞こえないのだし 怒りが募っているというのも 分からない… でもね?あの人は ずっと昔から それを感じていて でも どうする事も出来ないって… ウィザードになっても 結局 何も出来ないって 思っていたそうなの その矢先に あのポルト村のダムの決壊があって…」

マリアが言う
「”お母さんのウィザード様”が 村を守ってくれた…」

ソニアが言う
「ええ、あれが 始まりだったわね?その翌日に ポルト村へ行ったら あのダムの管理者 ミッシェルリンク社の人が居て ダムの決壊に怯える 村民の反対を押し切って ダムを修理しようとしていたの でも あの人が ”ダムを修理したら 今度こそ 村は水の怒りに 晒される”って ”次は助からない”って 村の人たちに言ったの そうしたら 村の人たちは慌てて ダムの修理に猛反対」

マリアが衝撃を受けて言う
「そ、それはそうね…っ」

ソニアが言う
「同時に ミッシェルリンク社の人は とっても怒ったの …でも それを逆撫でするかの様に あの人 その人たちの目の前で 魔法を使ってダムを 完全に壊してしまって…」

マリアが衝撃を受けて言う
「あの ”お母さんのウィザード様”が!?」

マリアが思う
(あれ…?あのウィザードさまって そんな人だったの…?)

ソニアが苦笑して言う
「それからは もう そう言った 自然に仇名す工場には 容赦が無いのよ… お母さん いつか こんな事になるんじゃないかって… 思ってたわ?」

マリアが言う
「そ、それは そうだよ…っ 増して 相手は 土地の買収に 酷い手を使う人たちで… しかも」

マリアがニュースを見る

ニュースで言う
『この暴力団グループは 先日まで事故が多発していた ミッシェルリンク社との繋がりが指摘されており 今回の事件以前においても 強引な土地の売買に 手を貸していた疑いが…』

マリアが思う
(暴力団グループと繋がりが…)

マリアが溜息を吐いてから言う
「はぁ… お母さん いくら ”お母さんのウィザード様”が 守ってくれるって言っても 私 心配だよ?」

マリアが思う
(いくら それが ”本物のウィザード”の お仕事だとしても それに お母さんが巻き込まれるなんて やっぱり 私は… あぁ こんな時 お父さんが居てくれれば きっと お母さんを止めてくれるんじゃ?)

マリアがソニアを見て言う
「お母さん…」

マリアがハッとして言葉を飲む

ソニアが言う
「そうよね… 心配を掛けてしまって ごめんなさい マリア それに 一歩間違えば マリアにだって…」

マリアが驚いたまま言う
「お母さん… 指輪は?」

ソニアが疑問して言う
「え?」

マリアが言う
「お父さんとの 結婚指輪…っ」

ソニアが苦笑して言う
「ああ、そうね?外してみたの… ちょっと 考えてみようかと 思って…」

マリアがソニアを見て思う
(考えるって…っ!?)

ソニアが言う
「お父さんが亡くなってからも ずっと 籍を入れたままにしていたけれど… そうね?もし 本当に お別れをするとなれば マリアにも関係するものね?マリアは… どちらを選んでも構わないわ?だって マリアは女の子だから 結婚をすれば 姓は変わるから それまでの間 今のまま お父さんの ノーチスの姓のままで 居ても良いし」

マリアが慌てて言う
「ど、どうして 急にっ!?」

ソニアが言う
「お父さんの事は 今も大好きだけど… いつまでも お父さんに頼っていてはいけないのかなって思って お母さん ずっと お父さんが亡くなった後も 本当は いつも 頼っていたの… 指輪に触れれば 天国から お父さんが守ってくれているような気がして 安心出来た でも」

マリアが言う
「でも…?」

ソニアが苦笑してから 気を切り替えて言う
「マリア?そろそろ 行かないと?」

マリアが呆気に撮られて言う
「え…?」

ソニアが言う
「いくら 風の魔法使いさんに 会社まで 送ってもらえても 時計の針は 魔法でも 戻せないわ?」

マリアがハッとして時計を見てから 慌てて言う
「あっ ああっ!ホントっ!会議があるのにっ その前に…っ!」

ソニアが苦笑して言う
「ほら 急いで?いってらっしゃい マリア」

マリアが言う
「は、はいっ 行って来ます お母さん!」

マリアが小走りに向かう ソニアが見送り 苦笑する


自宅 前

マリアが慌てて玄関を出ると驚いて言う
「え?」

マリアの視線の先にレイが居て 微笑して言う
「お早う マリア!」

マリアが呆気に取られつつ言う
「お、お早う御座います ウィザード様…?」

マリアが思う
(あれ?今日は…?)

レイが言う
「今日は ゆっくりなのか?マリア?」

マリアがハッとして言う
「い、いえっ その…っ!実は 今朝はお母さんが居たものでっ 昨日の事とか 聞いていたら 遅くなってしまってっ!」

レイが苦笑して言う
「ああ そう言う事か!そうだな?確かに マリアのお母さんが 家に居るもんな?」

マリアが言う
「はい それでっ 本当は こんなに ゆっくりしていては いけなかったんですが つい…っ」

レイが言う
「なら すぐに 連れてってやるぞ!マリア!」

マリアが言う
「有難う御座います 申し訳ないですが 宜しくお願いします」

レイが言う
「ああ!任せとけ!」

レイがマリアを包み 風に消える


会社

マリアが言う
「お早う御座いますっ!」

課長が言う
「ああ、お早う マリア君」

マリアが苦笑して言う
「すみません 今日は 遅くなってしまって」

課長が苦笑して言う
「遅いと言っても 始業前じゃないか?遅刻癖のあった あのマリア君から考えれば 早い位だろう?はっはっはっ」

マリアが衝撃を受けてから苦笑して言う
「は、はい それはそうですが 今は 何と言っても 社運にも掛かわる プロジェクト企画会議が 行われている時ですから」

課長が言う
「ああ、その事なんだが マリア君… 折角 今期から企画へも参加を頼んで 張り切ってもらっていた所なんだが 今期のプロジェクトは 中止される事になったよ」

マリアが驚いて言う
「えっ!?」

課長が言う
「今期は最初から あのミッシェルリンク社への介入に 総力を上げていたからな?それを 急に切り替えようとしても やはり 何処の部署でも 切り替えが間に合わない そのような状態で無理を押して 下手に動いても 良い結果は得られないだろうと 中止が決定されたんだ」

マリアが言う
「そうでしたか… 分かりました」

課長が微笑して言う
「初参加で 張り切ってもらっていた所 残念ではあるが 次の時も マリア君には 参加してもらうつもりだから そちらへ向け また頑張ってくれたまえ」

マリアが微笑して言う
「はい!有難う御座います!課長!」

課長が言う
「うむ では 今日からは 以前の通り 通常業務を頼むよ?」

マリアが言う
「はい!」

マリアが立ち去る


昼休憩

マリアが一息吐いて思う
(久し振りの通常業務だけど 何だか少し 以前とは違う感じ やっぱり…)

マリアが後輩たちを見てから苦笑して思う
(マキもリナも居ないもんね?2人とは 同じ仕事をしていた訳じゃ なかったけど… 何と言うか… 気持ちの 問題かな?)

マリアが溜息を吐いて言う
「でも、しょうがないよね?」

マリアが荷物を取って思う
(いくら 楽しかった時があっても 時間は戻らないんだから)

マリアがふと ソニアの事を思い出し 苦笑して思う
(だから お母さんも…)

マリアが定期券入れの写真を見てから 携帯を確認して気付いて言う
「あ… リナから…」

マリアが荷物を持って立ち上がる


中央公園

マリアが気付き 呼びながら走る
「マキー!リナー!」

マリアが走って向かう マキとリナがマリアへ向いて微笑して マリアが到着すると リナが言う
「お疲れ様 マリア」

マキが言う
「おっ疲れ様ー!マリア大先輩~!」

マリアが苦笑してから喜んで言う
「お疲れ様!2人共!」

マリアが2人の横に腰を下ろす

――…

マリアが言う
「そうなんだ… リナ 彼と話したのね?」

リナが言う
「うん、それに エリナからも聞いたわ マリアに相談したんだって?」

マリアが言う
「あ… ご、ごめんね?リナ?」

リナが苦笑して言う
「マリアが謝る事無いじゃない?それに お陰で 彼から話を聞けたのだから?」

マキが言う
「探求者… かぁ…」

リナが言う
「もちろん 聞いた時は驚いて 何より どうしてそんな危険な事を?って 思ったわ… でも 彼の性格はよく分かっているし それに 彼の想いも…」

マリアが言う
「リナや リナと自分の子供や 保育園の子供たちの為にって… 必死なんだよね?」

リナが苦笑して言う
「うん… そうみたい…」

マキが困って言う
「それで… リナは どうしたの?彼に その…」

リナが言う
「止められるものなら 止めたいけど 私が何を言っても きっと 彼は辞めないと思うの その程度の想いで 命を懸ける探求者の職なんて 選べないと思うし」

マキが怒って言う
「でもさっ!?だからってっ!?それで ホントにっ!?もしもの事があったらさっ!?だって リナのお腹には 子供まで居るんだよっ!?それなのにっ!?」

リナが言う
「うん マキの言う通りだと思う 探求者の仕事は 個人企業みたいなものだし 彼の身に もしもの事があっても 私やお腹の子を守ってくれるものは 何も残らない」

マキが言う
「そんなの 勝手過ぎるよ!リナ!?」

リナが言う
「でもね?彼が言ったの だからこそ自分は私と子供のもとに 何があっても帰らなきゃいけないと思えるんだって …必ず生きて帰って来るから 信じて待っていて欲しい って」

マキが言う
「け、けどさ…?」

リナが苦笑して言う
「もちろん 言葉で言ったとしても それは きっと とても大変だと思う それに保育士さんだと思って安心していたのに いきなり 安心とは程遠い そんな危険な職業に 勝手に変えちゃって… 私に誤解だったとは言え 心配もさせて…」

マリアが言う
「そうだよね?そのせいで リナ体調崩しちゃったし…」

リナが言う
「うん… でもね?それがあったから 今度は耐えられるんじゃないかって思うの… 今は何も聞かされていなかった あの時より ずっと 楽だもの… 彼が ちゃんと 私と子供の事を 愛してくれているって… 分かったから」

マキとリナが言葉を失う リナが言う
「だから私、彼の勝手を認める事にしたの それで 今度は 必ず私のもとに帰って来るって それだけを信じて待とうって」

マリアが言う
「リナ… 本気なんだね?」

リナが言う
「うん、その代わり 毎回ちゃんと戻って来るって その証拠に… これっ」

リナが指輪を見せる マリアとマキが驚いてマキが言う
「もしかしてっ!?」

リナが微笑して言う
「結婚したの …式は 子供が生まれてからする予定だから その時は2人とも よろしくね?」

マリアが言う
「おめでとう!リナ!」

マキが言う
「おめでとー リナー!」

リナが微笑して言う
「ありがとう 2人共」


会社

マリアが思う
(リナは結局 彼の仕事を認めたんだ… 私やエリナは絶対反対だと思ってたのに すごいなぁ… やっぱり 彼の事愛してるからなのかな?だから 信じられるって… 必ず 帰って来てくれるって… 私だったら?私自身だったらどうかな?いくら信じるって言っても… 探求者は アウターに行くんだから そうしたら…)

マリアの脳裏に過去の記憶が戻る

ペリテ村

人々が悲鳴を上げて逃げ惑う中 空から鳥たちが襲い地上では野生動物たちが吠え立てる その中にレイが舞い降りる

人々がレイを見て期待を込めて言う
『ウィザード様っ!?』 『ウィザード様だっ!』

マリアが周囲の様子と人々の声に驚き言葉を失って居る中 レイが言う
『マリア』

マリアがハッとしてレイを見上げる レイが言う
『後ろへ』

マリアが慌てて言う
『は、はいっ』

レイの周囲に風が渦巻き 鳥や野生動物たちが周囲の風魔法に吹き飛ばされる マリアが驚き呆気に取られている


マリアが思う
(あんな野生動物が一杯居る所に行くなんて… 本当に心配で 私だったら やっぱり 耐えられないと思う だって 本当に… 万が一 好きな人が 居なくなってしまったら?)

マリアの脳裏にレイの姿が一瞬映り マリアがハッとして思う
(あ…っ そ、そうじゃなくてっ!…大体 ウィザード様なら あの野生動物の群れを 退治出来るんだし…っ 居なくなるなんて…)


レイが苦笑して言う
『マリア 今まで勝手な事言って ごめん それから』

マリアがハッとしてレイを見る

レイが微笑して言う
『ありがとう』

レイが立ち去る


マリアがハッとして慌てて思う
(あっ あれはっ!その…っ あれは 私の間違えで… でも 結果として 今は ちゃんと ”私のウィザード様”は 私の傍に居るんだからっ!)

マリアが気付いて思う
(…でも そうよ?あの時の数日の間だって 私は… 私は 寂しくて とても耐えられなくて… それなのに 万が一 もう二度と… 一生会えないなんて… なったら?)

マリアが定期券入れの写真の事を思い出して言う
「私の お父さん みたいに…」

課長が叫ぶ
「マリア君!!」

マリアが衝撃を受けて言う
「はっ はいっ!すみませんっ 課長っ!」

課長が不満そうに言う
「…まったく 久し振りに 通常業務へ戻った途端…っ」

マリアが苦笑して思う
(そうだった いけない… 通常業務に戻ったから 気が緩んじゃったのかな?)

マリアが後輩たちを見る 後輩たちは真剣に仕事をしている

マリアが苦笑して思う
(そうよね?私も しっかりしなきゃ…っ 彼女たちに負けちゃうわっ!?)

マリアが仕事に戻る


会社 前

マリアが会社を出て 苦笑して思う
(お昼休みに リナとマキに会って 仕事中は課長に目を光らされて… ふふっ 今日はまるで ちょっと前の日常に戻った感じで 懐かしかったな?)

マリアが気を取り直して言う
「でも ここからは…」

マリアが思う
(その”ちょっと前”とは違って 私がウィザード様の お部屋へ向かうんじゃなくて …その ウィザード様が 私を迎えに 飛んで来てくれるから!)

マリアが顔を上げる

他方からレイの声が聞こえる
「マリア!お仕事 お疲れ様!」

マリアが一瞬驚き 声の方へ顔を向ける 会社の外で待っていたレイが歩いて来る

マリアが呆気に取られつつ言う
「え?あ… はい?お疲れ様です ウィザード様…?」

マリアが思う
(あれ?いつもなら 私が会社を出た時に マリアー!って 飛んで来るのに?今日は…)

マリアが言う
「ウィザード様?もしかして…?私が会社から出て来るまで ずっとそこで 待っていてくれたんですか?」

レイが苦笑して言う
「うん… あ?いや?ずっと って程じゃないけど… 15分位かな?」

マリアが思う
(15分位?…確かに 長いと言うほどではないけど… そう言えば 今朝も…?)

レイが言う
「マリア あのさ?俺 ずっと マリアに話そうと思ってた事… なんて言ったら良いのか 色々考えてたんだけど …けど、そうすると 修行とか 燭魔台の灯魔作業とか 上手く行かなくてさ?だから 待ってたんだ」

マリアがハッとして思う
(そ、それって…っ やっぱりっ!?)

マリアが言う
「そ、そうでしたか…っ」

レイが言う
「うん、だから もう 言っちゃおうと思って?あ、でも マリア 今日は この後 何かあるのか?それならそうで もちろん連れてってやるし その間は 俺 待ってるから」

マリアが慌てて言う
「い、いえっ!今日は何もっ …この後は 家に帰るだけですっ!」

レイが言う
「そっか?なら 家に帰ろう 話は そっちで… ここじゃ 落ち着かないからな?」

マリアが意を決して言う
「は、はいっ では お願いしますっ!」

レイが言う
「うん」

レイがマリアを包み 2人が風に消える


自宅 前

レイとマリアが現れる

マリアが思う
(ウィザード様のお話って… やっぱり そう言うお話?それに もし 違ったとしても?)

マリアが言う
「あ、あの それでは… お話は 中で…?」

マリアが思う
(ウィザード様は 人前でも 抱き付いちゃう人だし そう言う事を気にしないから だから ここだと もしかしたら 通行人に聞かれちゃうかも知れないから)

マリアが玄関へ向かおうとする

レイが言う
「いや、ここで良いよ」

マリアが立ち止まり言う
「え?しかし…っ」

マリアが思う
(ど、どうしよう?どんなお話にしても ウィザード様が そんなに真剣になる お話なら家の中の方が?あ、でも もしかして?もう 家には お母さんが居るのかな?だから中には入れないって?)

レイが言う
「マリア」

マリアがハッとしてレイに向き直って言う
「は、はいっ!?」

マリアが思う
(もうっ 覚悟を決めるしかないわっ!?だって…っ 私からの答えは もう 決まってる!ウィザード様が そう言ってくれるのならっ 私はっ!私も ウィザード様の事が…っ!)

マリアがレイを見る

レイがマリアを見て言う
「マリア 俺…」

マリアがレイを見つめる

レイが言う
「マリアのお父さんを 止めなかった ごめん」

マリアが呆気に取られて言う
「…えっ?」

マリアが思う
(”マリアのお父さんを”?…私の お父さんを 止めなかった…?それは?)

マリアが言う
「…どう言う?」

レイが言う
「俺は 知ってたんだ マリアのお父さんが 向かおうとしている先が 危険だって事… でも 止められなかった… だから ごめんな?」

マリアが思う
(ど、どう言う事…?なんで そんな事…?だって ウィザード様は 私のお父さんの事なんて…?)

マリアがハッとして 定期券入れの写真を思い出して思う
(あ…っ そっか?あの写真…っ!?)

レイが言う
「もし あの時 俺が止めていたら… マリアの お父さん 死ななかったかもな?だから ごめん… ごめんな マリア?」

マリアが呆気に取られたまま思う
(そうだ… 今思い出せば ウィザード様が 話があるって言ってたのは あの写真を見せた その夜から…!?確かそうだったっ!?それじゃ…っ)

レイが言う
「あの写真を見て 驚いたよ」

マリアがハッとしてレイを見る

レイが言う
「それから ずっと マリアに なんて謝ったら良いのかって… 考えてたんだ けど 思い付かなくて… それに 何を言っても …どんな魔法を使ったって あの瞬間には戻れないからさ?…だったら 唯 伝えて 謝るしかないと思って… だから… ごめんな マリア…」

マリアが間を置いて 苦笑して言う
「そんなに 何度も謝らないで下さい ウィザード様」

レイが視線を上げマリアを見る

マリアが微笑して言う
「それに 元気の無い ウィザード様は… らしくないですよ?いつもみたいに 元気 出して下さいっ!」

レイが言う
「けど…」

マリアが言う
「過ぎてしまった事は もう しょうがないですから… ですから これからは」

マリアが微笑して言う
「ウィザード様の その魔法で …たくさんの人を守って下さい!」

レイが驚く マリアが言う
「14年前の大灯魔台の事故の時 ”お母さんのウィザード様”と一緒に 皆を守ってくれたみたいに!…そうすれば 亡くなった 私のお父さんも きっと喜んでくれる筈です!」

レイが呆気に取られて言う
「マリア…」

マリアが微笑する

レイが苦笑して言う
「やっぱり マリアはマリアだな?」

マリアが疑問して言う
「え?」

レイが言う
「助けられなかった マリアのお父さんの代わりに 今度は 自分を守れとは 言わないんだよな?」

マリアが呆気に取られる レイが言う
「けどさ?俺は 必ず マリアを守るからな?安心しろよ?守れなかった マリアのお父さんの分も マリアの事は 絶対 俺が守る!」

マリアが驚く レイが言う
「それに マリアが 他の奴も守れって言うなら 俺はそうするよ!俺は… ”マリアのウィザード様”だからな?」

マリアが微笑して言う
「はい!ウィザード様 宜しくお願いします!」

レイが微笑して言う
「ああ!任せとけ!俺は 魔法使いでも ウィザード級の魔法使いだから!まぁ 先輩にはちょっと苦戦するかもしれないけど 他のウィザードになんかに負けないよ!」

マリアが衝撃を受けて言う
「他のウィザードの方々と 戦う訳じゃないんですからっ!そうじゃなくてっ …大灯魔台の灯魔儀式の時みたいに 力を合わせて下さいね?」

レイが言う
「うん!マリアがそう言うなら 俺はそうするよ!」

マリアが微笑して思う
(ふふっ やっぱり ウィザード様には こんな風に 元気で居てもらえる方が… 私は 嬉しい)

レイが言う
「あ、それじゃ 俺 そろそろ 帰るな?マリアのお陰で 久し振りに 食堂の不味い飯も 美味しく食べられそうだよ!ありがとな マリア!」

マリアが衝撃を受けて思う
(不味いんだ… 食堂のご飯…)

マリアが苦笑して言う
「い、いえ… こちらこそ」

レイが言う
「また明日な!お休み!マリア!」

マリアが言う
「はい お休みなさい ウィザード様」

レイが風に消える マリアが苦笑した後玄関へ向かう

マリアが玄関を入って言う
「ただいまー」

マリアが家に上がり疑問して思う
(あれ?お母さん 居ないのかな?)

マリアがリビングを見て言う
「やっぱり まだ帰って居ないみたい」

マリアが思う
(それじゃ ウィザード様が 家に入らなかったのは…?)

マリアがふと周囲を見てから苦笑して言う
「もしかしたら この家が 私とお母さんと…」

マリアが思う
(お父さんの 3人の家だから… だったのかな?)

マリアが苦笑して言う
「ウィザード様って」

マリアが思う
(意外と 繊細だったりして?)

マリアが苦笑してから ふと棚を見て気付いて言う
「あれ?」

マリアが棚に置かれた書類を見て思う
(書類…?一体何の?)

マリアが言う
「お母さんが 置いたんだろうけど…?」

マリアが1枚の書類を手に取って言葉を失う


マリアの部屋

マリアが考え事をしている

マリアが思う
(あの書類 離婚届だった それに)

マリアが言う
「…控えしかなかった って 事は…」

マリアが思う
(お母さん… お父さんと…)

マリアが一度視線を落としてから 気を取り直して言う
「で、でもっ!?私とお母さんが 親子である事は 変わらないんだからっ!」

マリアが思う
(だからっ お母さんだって…っ)

玄関から ソニアの声がする
「ただいまー」

マリアが顔を上げて言う
「お母さんっ!」

マリアが部屋を飛び出す


リビング

マリアがリビングへ入って言う
「お母さんっ その…っ」

ソニアが書類を見て苦笑して言う
「離婚は結婚より 大変なのね?書類もたくさんあって… お母さん分からない事だらけで 今日は1日大変だったわ?」

マリアが言う
「離婚… したんだ?」

ソニアが言う
「ええ」

マリアが言う
「あ… それで 私は…?」

ソニアが言う
「お母さんだけ ノーチスの姓から 以前の姓へ戻った形よ」

マリアが思う
(それじゃ… 私とお母さんは?)

ソニアが言う
「それで マリア?お父さんの遺産なんだけど」

マリアが言う
「え?遺産って…?」

ソニアが言う
「お父さんの遺産は このお家だけよ?それで お母さん マリアに 譲ろうと思うの このお家を」

マリアが言う
「え…?」

ソニアが言う
「このお家の所有者は お父さんのままになっているから お父さんの娘である マリアへ譲渡するなら 手続きも簡単みたいなのよ …お母さんへ変えようとすると それこそ 難しくって」

マリアが言う
「で、でも…」

ソニアが言う
「それに もし マリアが結婚して この家に住むにしても 売却するにしても その方が 手続きは簡単なの」

マリアが言う
「そう… なんだ?」

ソニアが言う
「だから それで良いかしら?」

マリアが思う
(この家の所有者は お父さんのままだったんだ… それが 今度は私になるって それだけの事… それだけ… だよね?)

マリアが言う
「そうしたとしても お母さんは この家に住むんだよね?私の… お母さんだもん 姓が違っても…っ」

ソニアが言う
「そうね?マリアが良いって言うなら 二世帯で住むって事に なるのかしらね?」

マリアが苦笑して言う
「もちろん 良いに決まってるよ?そんなの…」

マリアが思う
(姓が違うだけで 何も変わらない…)

マリアが言う
「何も変わらないよね?お母さんと私が 親子だって事で… お父さんだって…」

マリアがハッとする ソニアが苦笑して言う
「お父さんとは お母さん お別れしてしまった事になるから… これからは お父さんは ”マリアのお父さん”って 事ね?」

マリアが思う
(そっか… だから お母さんが この家に住むのに 私に 良いか?って 聞くのね…)

ソニアが苦笑して言う
「お母さん 一人になっちゃったわ お母さんの両親は もう亡くなっているし 兄弟とも 疎遠になってしまっているから やっぱり ちょっと 寂しいわね?」

マリアが言う
「わ、私が居るから!これからも ずっと このお家で…っ!」

ソニアが微笑して言う
「そうね ありがとう マリア…」

ソニアが書類を整理する マリアが沈黙する ソニアが言う
「それじゃ 明日にでも 書類を揃えて お役所に持って行くから そうしたら マリアがこのお家の所有者ね?今のマリアなら お父さんも 安心してくれるわ」

マリアが苦笑して言う
「…表札作らなきゃね?お母さんの分も」

ソニアが言う
「ええ そうね?」

マリアが思い出して言う
「あ…」

マリアが思う
(そう言えば ウィザード様に聞いた事… お母さんにも 知らせるべきかな?ウィザード様… なんて言ってたっけ?)


レイがマリアを見て言う
『マリア 俺 マリアのお父さんを 止められなかった ごめん 俺は 知ってたんだ マリアのお父さんが 向かおうとしている先が 危険だって事 でも 止めなかった… ごめんな』


マリアが思う
(…そう ”マリアのお父さん”を止められなかったって ”マリアのお父さん”が 向かおうとしている先が 危険だって事を 知ってたって… それは つまり)

マリアが顔を上げて言う
「あ、あのね!?お母さん …お父さんの 事なんだけど」

ソニアが言う
「うん どうしたの?マリア」

マリアが言う
「お父さん… 交通事故で亡くなったんだよね?それでね?今日… その…」

マリアが思う
(つまり ウィザード様が言っていたのは きっと そう言う事 お父さんが 何らかの形で 向かって行った先に …車が?あれ?でも 私…)

マリアが言う
「その前に お父さんは どう言う事故だったの?」

マリアが思う
(と言っても?どちらにしても ウィザード様が その時 お父さんを呼び止めれば 事故にはならなくて 助かったって事なのよね?だとしたら…?)

マリアが言う
「あ、でも どっちにしてもね?お母さん… あの…」

ソニアが言う
「マリア ごめんなさい」

マリアが言う
「え?」

ソニアが言う
「そう言えば ずっと言って無かったわね?お母さん マリアが大人になってから ちゃんと伝えようと思っていたのに… マリアはとっくに お母さんよりも 立派な大人に なっていたのにね?」

マリアが言う
「そ、そんなっ!?お母さんより 立派なんて事 無いよ?それで えっと…?」

マリアが思う
(ちゃんと伝えようって… 何を?)

マリアがソニアを見る ソニアが言う
「お父さんね?交通事故で亡くなったんじゃないのよ」

マリアが言う
「え?」

ソニアが言う
「幼いマリアに 言っても分からないと思って… そうと言って居たのだけど そうね 丁度良いわね マリア、お父さんはね?マリアのお父さんは…」

マリアがソニアを見る ソニアが言う
「探求者 だったの」

マリアが驚いて息を飲む ソニアが苦笑して言う
「って 言っても 分からないわよね?探求者って言うのはね?マリア」

マリアが言う
「知ってる」

ソニアが疑問して言う
「え?」

マリアが言う
「お父さん 探求者だったの?どうして!?お母さん お父さんの事 止めなかったの!?探求者なんて… そんな 危険な仕事っ!どうしてっ!?」

マリアがソニアに詰め寄る ソニアが一瞬驚いた後 表情を落として言う
「お父さんは… ”必ず帰って来る” って言ってくれたの」

マリアが驚く ソニアがマリアを見て微笑して言う
「”君とマリアの居る この家に 必ず生きて 帰って来る だから 信じて待っていてくれ”って… それで お母さん 言われた通り お父さんを 信じて待っていたのよ… でも ある時… あの人は 生きては 帰って来なかった…」

マリアが驚き言葉を失う マリアの脳裏に記憶が戻る


リナが言う
『でもね 彼が言ったの だからこそ自分は私と子供のもとに 何があっても帰らなきゃいけないと思えるんだって …必ず生きて帰って来るから 信じて待っていて欲しい って』


マリアが言う
「リナ…っ」

ソニアが視線を落として言う
「お母さん 受け入れられなくて ずっと待っていたわ でも あの人は… いくら待っても もう 二度と 帰って来ないのよ …だから お別れしたの …それで」

ソニアがマリアを見て言う
「これからは お母さん  もう お父さんには 頼らずに 生きていくわ …もちろん マリアと一緒にね?」

ソニアが微笑する

マリアが苦笑して言う
「…うん 分かった ありがとう お母さん」

ソニアが微笑して頷く

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