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20章

アールスローン戦記Ⅱ 秘策

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サウス村

突風が過ぎるとその場にアースたちが現れる アースが辺りを見渡して言う
「小さな村だ 人探しは容易であると思われるが」
ラミリツがマリアへ向いて言う
「マリアさんがお助けしたいと言う 女性の名前は確か…?」
マリアが言う
「あ、はいっ お名前はサリアさんです それに サリアさんの御自宅なら この道をまっすぐ行った 村の真ん中にある 辺りのお家より 一回り大きなお家なので すぐに分かると思います」
アースが言う
「村の中央辺りにある 一回り大きな家… と言う事は」
アースが顔を向けると 畑仕事をしていた若者の内の1人が驚いた様子から慌てて駆け寄って来て言う
「おい どうなってるんだっ!?お前っ!?どうやって!?」
若者がマリアへ近付こうとすると ラミリツが割って入って身構える マリアが呆気に取られると 若者がラミリツとアースを見てからマリアへ向いて言う
「そうか!?こいつらに 助けられたのか!?それなら サリアはっ!?サリアも 一緒だよなっ!?」
マリアが若者の首に掛けられているネックレスに気付きハッとして言う
「クロムさん …ですよね?その… ごめんなさい サリアさんは… 連れて行かれてしまって」
クロムが驚いて言う
「連れて行かれたって…?それじゃっ!?」
マリアが言う
「ですがっ!私たちは サリアさんを助けに行くんですっ それで…!」
クロムが反応して言う
「…助けに?お前たちが?」
クロムがマリアとアースたちを見る ラミリツが警戒を続けている マリアがクロムとラミリツを見てから言う
「はいっ ですから その… こう言う場合は… 何と言いますか えっと…?」
アースが考えていた状態から言う
「…では この様な場合は どちらかと言えば 先に聞く話の方が 優位に立つ事が多くあるのだが 現状の我々の前に置いて 優先順位は無い そうとなれば 我々はアールスローンの女帝陛下の民として レディーファーストで良いだろう?」
マリアが呆気に取られて言う
「え?…えっと?」
アースがマリアへ向いて言う
「マリア殿と 彼との接点を お聞かせ願いたいのだが?」
マリアが言う
「あ、はいっ そうですね?では… えっと… … …」
マリアが考えていると アースが言う
「今更ではあるが そもそも マリア殿は 何故 こちらの国へ?」
マリアが反応する アースがレイを見てから言う
「私の勝手な考察に置いて レイ・アーク・フォライサー殿が わざわざ貴女を 危険の孕まれる この国へお連れする事は 無いと思うのだが?」
マリアが言う
「は、はい!そうですね?私は…っ この国へは 間違って来てしまって」
アースが言う
「間違って… そうか では それで?」
マリアが言う
「あ… はいっ それで… えっと 私は ここが何処なのかも分からず ウィザードさまともはぐれてしまって 困っていた所を たまたま 道端で… こちらの クロムさんや他のお2人と お会いしたんです」
ラミリツが言う
「この人と 後2人… つまり 3人と?」
隊員Cが言う
「3人って… それって まさかですよね…?」
マリアが疑問する アースが言う
「そちらの話は いつの話だろうか?それと 正確ではなくとも 目に見えていた日差しの感覚であって結構 時間の方も」
マリアが言う
「いつと言うのは 昨日です 時間は 夕方 …私の感覚で言えは 5時とか6時とかって 夜に差し掛かる頃です ですから そちらの意味でも 困ってしまっていて…」
アースが言う
「なるほど 良く分かった では 続きを」
隊員Cが言う
「やっぱり それって…?」
ラミリツが言う
「僕らとの一件があった あの後だろうね?ワンス村の村長さん あの後 直ぐに釈放してしまったって言ってたから」
マリアがラミリツの言葉に視線を向ける アースが言う
「今は マリア殿の話を 伺おう」
皆が反応し マリアが言う
「あ、はいっ それで私は クロムさんたちの ご好意の下…」
マリアが話を続ける

アースが言う
「…そして 夜も更けていたと言う事から マリア殿は そちらのクロム殿の恋人である サリア殿の家へ そして 彼女の… ベッドを間借りして 夜を越したと言う事か」
マリアが言う
「はい そうなんです」
ラミリツが言う
「家に招くだけじゃなくて ベッドも…」
隊員Cが言う
「ベッドって言っても 藁ですよ きっと?」
マリアが言う
「私が見知らぬ土地で困っていたと言うのなら その私を この村へ導いたのは アーク様のお導きだろうからって… 村の食料も少ないというのに 見ず知らずの私にも 夕食を分けて頂いたりして 本当に とても良くして頂いたんです」
アースが言う
「なるほど では マリア殿がサリア殿を お助けしたいと思われる経緯は そちらの恩が全てと言う事だろうか?」
マリアが言う
「え?あ、はいっ そうですね?でもっ そのっ …経緯はそうですけど 本当に…っ お話なんかも 私が 1人で途方に暮れて落ち込んでいるのを サリアさんは 自分も それは分かると… ほんの少しの間でも 恋人の行方が分からなくなった時には …クロムさんが 他の村の男の人たちと一緒に 突然居なくなってしまっていた時には 自分も凄く心細かったって…っ だから 私の気持ちは分かると 慰めてくれたんです …ですから それなら 今度は 私もっ!?…いえっ 私がっ 助けないとっ!?私も力になりたいんですっ!」
クロムが沈黙する 隊員Cがラミリツを見る ラミリツが一度隊員Cを見てからクロムへ警戒を戻す 隊員Cが困ってからアースを見ると アースが言う
「恩の方はともかくとして ぼぼ私情であると言った所だが マリア殿の想いの程は良く分かった」
マリアが表情を困らせ視線を落とす レイが笑顔で言う
「マリアは優しいからな!」
マリアが反応してから苦笑して言う
「優しいのは サリアさんの方ですよ ウィザードさま?あの時だって… 本当は この村から連れて行かれる人数に 私は1人余計に居て… ウィザードさまが壁を壊した あの時に あのドサクサに紛れて 逃げてしまう事も出来たんです 私を数合わせの身代わりに使って… だけど それは出来ないと …でもっ サリアさんは… クロムさんに会いたいって」
クロムが反応する マリアが悲しそうに微笑して言う
「村に帰りたいって 泣いていました…」
クロムが手を握り締める アースが言う
「マリア殿の経緯と共に サリア殿の想いの程も伺えた 話はそれ位で良いだろう マリア殿 貴重な情報の提供を感謝する」
マリアが一瞬呆気に取られてから言う
「…あっ い、いえっ!その… 分かり辛かったかもしれませんが でも 私はっ どうしてもっ 納得が行かないですっ 好きな人だって居るのにっ それを引き裂かれて 無理やり アークの遣いにさせられてしまうなんてっ」
アースが言う
「そちらは 貴女のお国や 我々の国に置かれる 通常や常識と呼ばれる範囲ではあるが 国が変われば それらも変わると言うもの… 従って 本来であるなら 如何なる理由の下に置かれても 部外者である我々が こちらの国へ干渉する事は 思わしく無いのだが」
マリアが一瞬何かを言おうとして表情を落す アースが言う
「…アークの導きか?」
皆が反応する アースが続けて言う
「時には 神や… 悪魔の悪戯などが あっても面白いだろう?偶然にして そちらの想いを共有する 我々と言う力が 集まったとなればな?」
隊員Cが衝撃を受けて言う
「…って 事は もしかして…?」
ラミリツが微笑して言う
「神様も悪戯をするって言うなら しょうがないよね?何しろ 僕らのアールスローンの神様は 2人も居るんだし?」
マリアが一瞬呆気に取られてから言う
「神様が2人…?」
隊員Cが言う
「片方は 悪魔って呼ばれてますけどね?」
マリアが気付いて言う
「あ…!つまり」
アースが言う
「では 最後に 聞かずとも 分かっては居るつもりだが 一応 確認を取って置く クロム殿 貴方は 我々の行おうとしている サリア殿の奪還に 賛成か?」
クロムが乗り出して言う
「もちろんだっ!それに…っ!」
アースが言う
「分かった では 後は 彼女のご両親を訪ねよう マリア殿は 一夜の宿を頂いたと言う経緯もある 彼女のご両親とは既に顔見知りだろう?彼女と共に連れ去られた マリア殿が戻ったと言うのなら 話も早く済みそうだ 従って そちらの反応と 出来れば 彼女の奪還に対する是非を問いたい」
隊員Cが言う
「え?じゃぁ また… 覗きに行くんすか?俺と?」
アースが言う
「こちらの村内であれば 我々の姿は既に知られている そうとなれば 第2ブロックの街中とは異なり 我々の姿を隠す必要は無いだろう」
隊員Cがホッとして言う
「あぁ 良かった…」
マリアが言う
「彼女のご両親に サリアさんを奪還する事の 是非を?…あ、そうでしたね 先程の国が違えば… と言う?」
アースが言う
「第2ブロックの住民は 例え己の娘が連れ去られようとも アークの遣いとされる事を受け入れていた そして そちらの栄誉を望んでいるのか… 本心ではなかったとしても 少なくとも そちらが常識とされる土地ではあると言う事だ そうとなれば こちらの村に置いても 彼女の奪還を望まれない可能性がある」
マリアが心配して言う
「…その …時は?」
アースが間を置く クロムが言う
「…村の連中は兎も角っ 彼女の両親は 喜んでくれる!それなら それで良いじゃないかっ!?村の連中が許さないって言うならっ 俺も プレスト夫妻と同じ様に サリアと一緒にこの村を出る!」
アースが言う
「そちらのプレスト夫妻とは?」
クロムが言う
「アンタたちは ワンス村と この村を行き来してたんだ だったら 知ってるだろう?ワンス村の村外れにある あの家だ!あの家に住む人はっ」
アースとラミリツと隊員Cが反応する クロムが言う
「俺とサリアと同じだ この村の奴じゃないけど プレストって人は 元は第2ブロックの人で アークの遣いにされようとしていた女と 2人で逃げ出したんだっ それで今は ワンス村の村外れで2人で生きてる …俺も噂話でしか聞いた事は無かったけど 昨日 ワンス村へ向った あの時に見て 本当の話だったんだって …だから 俺もっ」
マリアが表情を明るめる ラミリツが苦笑する クロムが言う
「それにっ 彼女の両親なら わざわざ話を聞かなくても分かる!彼女の父親は 元は村で人一倍働く人だったのに サリアが連れ去られてからは 農作業が全然はかどってねぇし 母親は寝込んじまってるって話だ アンタの知りたい事は これで十分じゃないか!?」
アースが言う
「なるほど 良いだろう… お前のお陰で 条件は整った」

【 ART 本部内 】

警報が鳴り響いている
『…り返します 緊急事態発生 現在ART本部内に居る隊員は 管轄部署に関わらず 直ちに緊急対応A-9を受託 A-9対応体勢にて 緊急退避を行って下さい 繰り返します 緊急事態発生 現在…』
通路で爆発が起きる 轟音が響くと 通路が次々に閉鎖されて行く

【 ART マシーナリー研究開発室 】

エミーが振り向いて驚いて言う
「嘘でしょっ!?野郎 ここまで来やがるつもりっ!?」
ランコックが奥から走って来て言う
「おいっ エミー!おめぇ!何 のん気に こんな所に居やがるんだぁっ!?早くこっち来いっ!Aー9対応だぞ 永ー久っ!永久に安全な場所を探して 逃げろって事だぁっ 忘れたかぁっ!?」
エミーが言う
「それは覚えてるけど!?ここにはっ!」
エミーが顔を向けた先 整備中のマシーナリーが装置に設置されている エミーが言う
「この修理中のマシーナリーだけじゃないっ 他にも 在庫確保してある 未調整のマシーナリーだって 沢山あるのにっ!?このマシーナリーたちを置いて 永久に安全な場所を探せなんて!そんな夢見ながら逃げろなんて 出来っこないっ!」
ランコックが言う
「馬鹿野郎っ!?んな事言いやがっても あの無駄に馬鹿デカイ 重金属振り回す イカレタ兄ちゃんに 燃やされちまっても知らねぇぞ!?お前 あんな男が趣味だったのかぁっ!?」
エミーが衝撃を受け怒って言う
「冗談じゃないっ あんな男は趣味じゃないしっ!…そもそも マシーナリーを傷付ける男は ハブロス司令官も含めて 大っ嫌いよっ!」
通路で爆発音が轟く エミーとランコックが驚いて振り返ると 爆煙の中からウィルシュが姿を見せる ランコックが衝撃を受ける エミーが目を丸くして言う
「…嘘っ!?ART1は!?ART2はっ!?」
ウィルシュがエミーに気付き顔を向ける ランコックが言う
「逃げろっ!エミーっ!」
エミーが後ず去る

【 ART 司令塔 】

オペ男Bが言う
「ART2 第3待機場所へ 待機完了!」
オペ男Aが言う
「ART1 同じく第3待機場所後方へ到達 ART2の援護配置に付きます!」
オペ子Aは作業に熱中している オペ子Bがオペ子Aを伺ってから振り返って言う
「中佐っ!?第2待機場所を飛ばして 第3待機場所で良かったのでしょうか!?ART1だけでも 第2待機場所へ向わせた方が 良かったのではっ!?」
グレイゼスが言う
「ART1、ART2は 単独では時間稼ぎにもならないと言う事が 出入り口前の交戦と共に 第1防衛待機場所での対戦にて 既に答えが出されている そうとなれば…」
グレイゼスのモニターの中で 大破したART出入り口前と第1防衛待機場所の映像が表示されている グレイゼスが言う
「第1待機場所で一度交戦を行った ART2を休ませる為にも この際 第2待機場所は構わず進行させる …大丈夫だ このART本部は 防衛要塞としての役割も持たせてある ただ場所を明け渡すと言っても 特殊合板の防衛壁を破るには ART2を休ませるだけの時間は 稼がれる計算だっ」
オペ子Bが表情を困らせて言う
「それはそうですが…っ 第2待機場所… 第2防衛ラインには マシーナリー研究室が…っ ARTの大切なマシーナリーたちの情報が蓄積されている 研究開発室がありますっ あの場所に損傷を与えては 後のマシーナリーの整備や開発に 大きな打撃となるのでは ないでしょうか…っ!?」
グレイゼスが言う
「確かに スペアを含む 開発途中のパーツやその他 在庫として このART本部へ連れて来たマシーナリーたちも居るが… 最も重要な マシーナリーの改善データに関しては 帝国のコンピュータへもバックアップを残してある だから 大丈夫だ 少なくとも 後の研究開発への影響は 防がれる」
オペ子Bが言う
「そう… ですか それなら… そちらの研究員たちと 一緒に作業をされていた 中佐が仰るのでしたら 余計な口出しを失礼しました」
グレイゼスが作業の手を動かしつつ微笑して言う
「いや?シーナ君と交友の深い ナリア君なら兎も角 ルイネ君にまで 心配してもらえていたとなれば シーナ君はもちろんだが 開発室の皆も喜ぶだろう …最も その彼らはと言えば もうとっくに A-9対応にて退避を済ませているだろうけどな?」
ブザーが鳴る グレイゼスとオペ子B呆気に取られると オペ子Bが慌ててコンソールを操作して言う
「救援ブザーを確認っ 発生場所は… マシーナリー研究開発室っ!?えっ!?そんなっ!?」
メインモニターに映像が映り 映像の中で ウィルシュがエミーとランコックへ向って行く オペ子Bが驚き口を押さえる グレイゼスが慌てて言う
「エミー君っ!?ランコック整備士長っ!?何で 彼らがっ!?マシーナリーとは違う 替えの利かない 人体の2人がっ!?」
隊員Bが慌てて言う
「早く助けに行かないとっ!中佐っ!?」
グレイゼスが表情を焦らせる

【 ART マシーナリー研究開発室 】

ウィルシュが歩みを進めると エミーがマシーナリーの前に立って言う
「それ以上 マシーナリーに 近付かないでっ!」
ウィルシュが立ち止まり周囲を伺う ランコックがエミーへ言う
「エミー!おめぇ!好い加減にしろっ そのマシーナリーは もう死んじまってるんだろっ 動かせもしねぇ上に 今はパイロットも居ねぇ!こんな時くれぇは おめぇも 男らしく諦めて 早く こっち来いっ!」
ウィルシュがゆっくり歩みを進める エミーが言う
「嫌よっ!諦めたりなんかしないっ アタシは女だしっ 諦めるのが男だって言うんなら 尚更っ!アタシはARTの女整備士として 最後まで コイツらと一緒に居るわよっ!」
ウィルシュがエミーの前に立ち止まると エミーの後ろに置かれているマシーナリーを見てから唾を吐いて言う
「…マシーナリー?この機械兵士の事だったな?この国の連中は 自ら望んで機械兵士に同化するだけじゃなく 生身の体を盾にしてまで コイツを守るのか?…呆れたぜ?」
エミーが言う
「何とでも言いなさいよっ アンタにマシーナリーの何が分かるって言うのっ!?人を守る為に造られて 戦わされて 壊されて…っ それでも 人と魂を通わせてくれるっ そう言うプログラムで作られているからとかって 言う事じゃない 少なくとも コイツらマシーナリーはっ アタシらの仲間なのよっ!」
ウィルシュが言う
「は?分かんねぇな?機械兵士なんざ 唯の機械だ プログラムだの設計だのは分からねぇが 機械は機械 唯の物だろう?人や動物とは違う 命も何もありはしねぇ だから その機械を動かす為に 人間を使ってるんじゃねぇか?」
エミーが言う
「違うっ!確かに 機械は生物では無くて 物かもしれないっ だけど そこには… 生物の体を動かす命は無くとも 魂はあるのよっ!物にだって 魂は宿る!少なくとも このARTで共に過ごして来た コイツらには アタシら整備士たちの魂が 込められているっ!だから 渡さないっ アンタに壊させはしないわ!」
エミーが視線を強める ウィルシュが呆気に取られた後 プッと笑い出して言う
「プッ…ハハハハッ!渡さない?壊させはしないって?渡されたって要らねぇもんだが そこまで言われたんじゃ 面白ぇ そのお前の目の前で ぶっ壊してやるよ?」
ウィルシュが巨大剣を構える エミーが歯を食いしばる ランコックが叫ぶ
「エミーッ!」
ウィルシュが巨大剣を振り上げると巨大剣に炎が纏われる エミー思わず強く目を瞑る ウィルシュが巨大剣を振り下ろしながら言う
「避けねぇなら そいつと一緒に 心中しろ!機械に魂を奪われた 哀れな女がっ!」
ウィルシュが巨大剣を振り下ろす ランコックが息を飲む シーナの声が響く
「エミーッ!!」
発砲音が響く ウィルシュがハッとして横を向いて巨大剣を盾にすると 刀身に高圧プラズマ光弾がヒットする その衝撃波でエミーが悲鳴を上げて吹っ飛ぶ
「キャァアッ!」
エミーの体がマシーナリーにぶつかるとマシーナリーを背に意識を失う ウィルシュが歯を食いしばり力で抑えると言う
「邪魔しやがって…っ」
ウィルシュがプラズマ光弾へ視線を向けると プラズマ光弾が推進力を失って空間上に止まる
「そら!お返しだっ!」
ウィルシュが巨大剣を振るって光弾を弾くと 光弾が元来た方へ Mシーナへ向って行く Mシーナの中グレイゼスの声が響く
『回避だっ シーナ隊員!』
シーナが舌打ちをして操縦桿を操作する Mシーナが回避した先で再びM700を構える シーナがモニターを見ると サブモニターの中で ランコックがエミーを抱き上げシーナへ向いて頷く シーナが頷いて言う
「エミーを 安全な所へ お願いします!ランコック整備士長!」
シーナのイヤホンにランコックの声が聞こえる
『当ったりめぇよっ こっちは まかしとけ!』
ランコックが一度ウィルシュを横目に見てから エミーを抱いて逃げて行く ウィルシュが横目にそれを見てから言う
「…チッ 折角 良い所だったってぇのに いつもいつも まったく邪魔な連中だな!?」
Mシーナが言う
「邪魔をするのは当然よっ!私たちは ARTの仲間なんだからっ!」
ウィルシュが呆気に取られて言う
「…女?」
ウィルシュがエミーの居た場所を見てからMシーナを見て言う
「女の整備士だけじゃなくて 女を入れた機械兵士まで利用するのか… あのクソ司令官の野郎はっ 最低だな?うちの司令官と同等だぜ!」
シーナが呆気に取られて言う
「最低…?私たちARTの ハブロス司令官を 最低と言ったの?」
ウィルシュが言う
「ああ そうだ!お前らの司令官は 最低だっ!」
シーナが俯いている グレイゼスの声が聞こえる
『シーナ隊員っ エミー君救出作戦は成功だ!その場は退避!後は 第3待機場所に構えている ART1、ART2へ任せて シーナ隊員は…』
シーナが怒って顔を上げて言う
「…るさないっ!私たちARTの最高の司令官である ハブロス司令官に 最低と言う言葉を使った 貴方は…っ!」
MシーナがM700を構えて言う
「この最高のマシーナリーと 最高の発案技法!最高のソウルを持って ぶっ潰すっ!」
ウィルシュが呆れて言う
「あぁ?」
グレイゼスの慌てた声が聞こえる
『シ、シーナ君っ!?いやっ シーナ隊員っ!?』
シーナが言う
「現ARTで唯一の女機動隊員の最高のソウルを 派手にキメてやるよ!最新発案技法49!」
シーナが照準を合わせる グレイゼスが言う
『ちょ、ちょっとまったっ!シーナ君っ!?その最新発案技法は知らないが ターゲットには あらゆる銃撃が利かないと…』
シーナが言う
「最高のソウルを込めれば 問題ありません!」
グレイゼスが言う
『いやっ もうっ 最高もソウルも良いからっ!そこは退避…っ!』
シーナが言う
「マスターグレイゼス中佐!すみませんっ!最高のソウルを込める為 無線は一旦切らさせて頂きますっ!」
グレイゼスが言う
『最高のソウルを込める為ってっ!?いやっ それより 退避を…っ』
シーナが無線のスイッチを切る

【 ART 司令塔 】

グレイゼスがヘッドホンに聞こえた無線の切れる音にハッとして言う
「シ、シーナ君っ!?いやっ シーナ隊員っ!?」
グレイゼスがコンソールを見てから オペ子Bへ言う
「シーナ君のっ!ART1-31号機の無線を 強制開通しろ!」
オペ子Bが振り向いて言う
「駄目ですっ 手動で無線回路を遮断されているので プログラム上では操作出来ません!」
グレイゼスが頭を抱えて言う
「あぁあっ もうっ!勝手な事をっ!?無線を切って 何をしようと言うんだっ!?最高のソウルを込めるってっ?そんな非現実的な それこそ 魔法のような事で 現状の奴のロストテクノロジーの力を 打破出来る筈が…っ」
ラキンゼスが言う
「ART1-31号機 PM700の発砲を確認!」
グレイゼスが慌てて言う
「駄目だっ!また 弾かれるっ!回避を!…そ、そうだっ!室内放送でっ!?」
グレイゼスがコンソールを操作していると オペ子Bが驚いて言う
「…ちゅ、中佐っ!前をっ!メインモニターを見て下さいっ シーナ隊員の!いえ、ART1-31号機の攻撃が!」
グレイゼスが操作を中断して顔を上げると 呆気に取られて言う
「…なっ?なぁあっ!?何だっ!?何があったっ!?」
グレイゼスの視線の先 メインモニターに映っているウィルシュが銃撃を食らった様子で 負傷して表情を顰めている グレイゼスが慌てて言う
「メインモニターの映像戻してっ!5秒前だ!急げっ!」
オペ子Bが言う
「りょ、了解っ 中佐!」

【 神の国 】

第2ブロック 門前

アースたちが物陰に隠れていて アースが門監視塔を見上げて言う
「彼女らが乗せられた馬車が通過をする際に 確認をした所 あちらの門は あの監視塔にあるスイッチを押す事で 機械的に開閉を行うものらしい」
ラミリツが双眼鏡を覗いていて言う
「スイッチを…?あ!あの柱に付けられている?」
マリアがラミリツを見る アースが言う
「恐らくお前の言うそちらで 間違いは無いだろう」
ラミリツが双眼鏡を外して言う
「何て言うか… あんな所に大切な門の開閉スイッチを設置してしまうなんて 無用心だね?こっちから狙撃でもされたら どうするつもりだろう?あんな場所じゃ 一発じゃない?」
マリアが言う
「狙撃…?」
マリアが監視塔を見上げる アースが言う
「その通りだ 最も 通常であるのなら こちらの第2ブロックの科学技術には そちらの心配が無いと言う事も 含まれての設置である …とも取られるが」
ラミリツがマリアへ双眼鏡を貸してから アースへ向いて言う
「…そっか?それもそうだよね?この第2ブロックの兵士は 銃火器を所持していないし?それこそ ベルトのバックルだって無い位なんだから 狙撃の心配なんて最初から 無いって事?」
アースが言う
「そう言う事だ …では マスターラキンゼス隊員」
隊員Cが衝撃を受けて言う
「えぇえっ!?」
マリアが反応して振り向く 隊員Cが表情を困らせて言う
「えっとぉ…?俺に… どうしろと?」
アースが言う
「そこで話を聞いていたのなら 改めて説明の必要は無い筈だが?」
隊員Cが苦笑して言う
「あぁ やっぱり… 狙撃… ですか?俺が?」
マリアが衝撃を受けて言う
「えっ!?」
隊員Cが衝撃を受けてマリアへ向いて言う
「え?今 ”えっ!?”って言いました?」
マリアが衝撃を受け慌てて言う
「あぁっ いえっ その…っ!?わ、私は 決して …隊員さんが 狙撃をする事へ対して言った訳では… その…」
クロムが言う
「その ”ソゲキ”って?」
アースがクロムへ向き微笑して言う
「正に お前が その手に持っている そちらを使用すると言う事だ」
クロムがハッとして猟銃を見て言う
「あっ これをかっ!?」
アースが言う
「そうだな そちらの猟銃であるなら 威力も程良いだろう ARTの最新小銃M91では スイッチもろとも開閉装置自体を 破壊してしまうと言う可能性も否めない」
クロムが困りながら言う
「そ、そうなのか…?けど これは プレストさんに借りて来ただけで 俺は まだ一度も」
アースが言う
「安心しろ 素人のお前では 狙撃はもちろん 唯 撃つと言う事でさえ難しいだろう 従って ここは …彼へ任せれば良い」
アースが視線で隊員Cを示す クロムが言う
「…えっ!?」
隊員Cが衝撃を受けて言う
「今 ”えっ!?”って言った?」
マリアが苦笑する クロムが言う
「…本当に この人で大丈夫なのか?」
隊員Cが呆れて言う
「その上 直球で言われた…」
マリアが苦笑する レイが疑問する クロムがアースを見てから 隊員Cへ猟銃を渡す 隊員Cが猟銃の照準を合わせつつ 周囲の心配に言う
「何でいつもこう…っ」
マリアとクロムが顔を見合わせ マリアが苦笑する クロムが沈黙する アースが2人を見てから言う
「心配は不要だ 彼は こう見えても」
隊員Cが不満げに言う
「”こう見えても”って…」
アースが言う
「実は それなりの 隊員だ」
マリアとクロムが沈黙する 隊員Cが衝撃を受け怒って言う
「今 ”それなりのって どういう意味だろう?” とか思ってますよねっ!?」
マリアが衝撃を受け慌てて言う
「いっ!?いえっ!?私は 決して その様な事はっ!?」
クロムが言う
「俺は思ってたよ?」
マリアと隊員Cが衝撃を受ける アースが言う
「素直で宜しい」
隊員Cが不満げに言う
「宜しくない…」
アースが言う
「では そちらの不安を払拭する為にも 今更だが この時間を利用して マリア殿も初対面であろう こちらの隊員を紹介して置こう 彼の名は マスターラキンゼス隊員 またの名を サキシュ隊員 現在はART1の機動隊員であり マシーナリーを用いた戦いに従事しているが 元は人体にて 武器弾薬を用いた 事件や事故の対処を行う 国防軍の機動隊員であった者だ」
マリアが反応して言う
「そ、そうだったのですか 国防軍… 確か アールスローンの2大勢力と言われている ラミリツさんの政府と もう1つの…?」
アースが言う
「その通り しかも 彼の元居た所属は 国防軍17部隊 通称 レギスト機動部隊と呼ばれる 国防軍に置かれるNo1の機動部隊だ そして そのレギスト機動部隊の特色は 各々が 自身の最も得意とする銃火器を用いて 訓練を行う事で 個人はもちろん部隊の総力を高めるものとしている その上に置いて 元そちらの機動隊員であった サキシュ隊員の使用銃火器 メインアームとも言われる そちらこそが この小銃だった」
マリアが言う
「メインアーム… では つまり」
アースが微笑して言う
「そう つまり それほどの 小銃の使い手である 彼であるのなら?この場所から 十分に小銃の射程距離内にある あちらのスイッチを狙撃する程度の事は?」
アースが隊員Cを見る 隊員Cが猟銃のセットを終えて言う
「準備完了です 司令官」
マリアが微笑して言う
「あのっ 先ほどは失礼しました えっと… マスター… あれ?えっと… サキシュ隊員さん?」
隊員Cが反応し苦笑しつつ言う
「あぁ どっちでも良いですけど …あ、それじゃ 自己紹介もしてもらったんで 今更ながら 宜しくって事で?」
マリアが微笑して言う
「はいっ こちらこそ 私は マリアです こちらは… 私のウィザードさまで 名前は… もう何度か聞いてると思いますが でも そちらは 基本的に秘密にしているので… あ、私たちの国で… では… ありますが?」
隊員Cが言う
「あ、そうなんすか?じゃぁ… 俺も どっちかっつったら マスターの名前は 秘密にしたい所です …とは言っても こっちも めっちゃ呼ばれてますけど」
マリアが一瞬呆気に取られた後軽く笑う 隊員Cがマリアの笑顔に一瞬見惚れてから慌てて取り繕う アースが言う
「では 元国防軍の上官にして 現ARTの上官でもある この私の期待はもちろん マリア殿の期待も十分に得られたであろう所で お前の実力を発揮してくれ マスターラキンゼス隊員 任せたぞ?」
隊員Cが衝撃を受けてから言う
「うっ… は、はい… 了解 元国防軍総司令官にして 現ART司令官」
隊員Cが猟銃を構えて思う
(って… 相変わらず こんな時だけ ヤケにすげぇ期待が乗っかって来た けど… 流石に 今回は大丈夫だよな?俺だって 伊達に 国防軍レギスト機動部隊に10年間も居た訳じゃない その間に 少佐や皆と一緒に このメインアームの小銃を使って戦って来たんだ …それに今だって マシーナリーで使っている銃は この…っ)
隊員Cが猟銃を持つ手に意識を向けて言う
「いつでもっ!」
アースが言う
「よし サキシュ隊員の準備は万端となれば 後はサポートだが このまま猟銃を発砲しては その発砲音はもちろん 予定外に門が開くという事で騒ぎとなってしまうだろう そこで レイ・アーク・フォライサー殿」
レイが疑問して言う
「うん?何だ?アーク・メイヴン・ハブロス?」
アースが言う
「この場所からでも見える あちらの… 貴方が壁を破壊した建物だが」
レイが言う
「うん?ああ、俺が壁をぶっ壊したあの建物が どうかしたのか?アーク・メイヴン・ハブロス?」
アースが言う
「あちらの建物には 現在 魂の光は見られない… つまりは無人だ」
レイが言う
「う~んと… うん そうだな?風の声でも あそこには 今 誰も居ないってさ?」
アースが言う
「では この際だ 建物の管理所有者には申し訳ないが 既に ほぼ半壊している建物だ そうとなれば この際 ハデにぶっ壊してくれ」
マリアが衝撃を受けて言う
「えっ!?」
レイが言う
「今度はハデにぶっ壊すのか?何でだ?もうマリアは あの建物に捕まっても居ないんだし 俺は あの建物の壁をぶっ壊したけど 別に ハデにぶっ壊したかった訳じゃ無いぞ?」
アースが言う
「そちらは分かってはいるが 先程も言った通り これから行う狙撃のサポートとして …つまり あちらの建物を破壊する事で 人々の注意をあちらへ引き付けたい」
マリアが言う
「なるほどっ そうですね!?あの時だって ハデにぶっ壊した訳ではなかったですが 壁を壊した事で 警報なども鳴り響いて 大きな騒ぎになっていました!」
アースが言う
「そう言う事だ そして サキシュ隊員は そちらの騒ぎ乗じて 狙撃を行え」
隊員Cが言う
「了解 司令官!」
アースがレイを見てからマリアへ向いて言う
「マリア殿」
マリアがハッとすると言う
「は、はいっ!…ではっ ウィザードさまっ!?」
レイが疑問して言う
「うん?何だ マリア?」
マリアが言う
「あの建物を ハデにぶっ壊してしまって下さいっ!」
レイが驚いて言う
「おぉっ!?そうなのかっ!?よし 任せろマリア!俺のデカイ魔力の一発なら あんな建物なんて いくらでもぶっ壊してやれるぞー!」
レイが風を集め建物へ放つ 一瞬の後 建物がハデに爆発をして警報が鳴る 人々が驚き建物へ向く アースが言う
「よし 今だっ!サキシュ隊員!」
隊員Cが気を引き締め引き金を引く 猟銃が放たれ アースたちが顔を向けると 皆の視線の先 銃弾がスイッチの下に当たり 衛兵が騒ぎへ顔を向けていた状態から一瞬疑問してスイッチを見る アースたちが衝撃を受け ラミリツが思わず言う
「えっ?」
マリアが呆気に取られて言う
「外れ… ましたね?」
アースが表情を顰める 隊員Cが言う
「…ア、アレ?」
アースが一度咳払いをして言う
「うん…っ サキシュ隊員… いや マスターラキンゼス隊員?」
隊員Cが慌てて言う
「あぁっ ス、スンマセン もっかいっ!?」
隊員Cが猟銃の充填を行い構え直す アースが建物の方の騒ぎを確認してから言う
「あちらの騒ぎが落ち着いてしまっては 気付かれる… 次で 確実に決めろっ マスターラキンゼス隊員っ」
隊員Cが言う
「りょ、了解っ!司令官っ!」
ラミリツが言う
「落ち着いてっ サキシュ隊員!元国防軍レギスト機動部隊の隊員なら 余裕だろっ!?」
隊員Cが言う
「は、はいっ もちろん!?」
隊員Cが思う
(そうだぜっ!?失敗する筈が無いっ 距離は十分射程内!あの国防軍レギスト駐屯地の 第一訓練所の射撃訓練と変わらねぇ!…ならっ!)
隊員Cが言う
「次でキメます!」
アースが言う
「よしっ お前のタイミングで構わない やれっ サキシュ隊員!」
隊員Cが言う
「了解っ 司令官!」
隊員Cが視線を強める 皆が息を飲む 隊員Cが引き金を引くと 猟銃が放たれ 監視塔の手摺に当たる 衛兵が疑問して手摺を見る 皆が衝撃を受け ラミリツが呆れて言う
「は、外れたんだけど…?」
マリアが言う
「さっきより 外れましたね…?」
隊員Cが呆気に取られて言う
「ア、アレ…?何で…?」
アースが建物の騒ぎを気にして言う
「…クッ もはや時間が無いっ」
隊員Cが慌てて充填をして言う
「りょ、了解っ 次こそ… あっ!?」
隊員Cが充填を済ませ構えようとすると 猟銃が奪われる 隊員Cがハッとして顔を上げると アースが言う
「2発目の狙撃で監視塔の兵士に 完全に意識を向けられた これ以上の失敗は許されないっ」
隊員Cが慌てて言う
「は、はいっ!?では 今度こそキメますから…っ!?って!?ちょ!?何でっ!?あの…っ その照準 ちゃんと合わせたんですけどっ!?ハブロス司令官!?」
ラミリツが振り向くと アースが猟銃の調整をしている ラミリツが慌てて言う
「ちょっとっ!?ハブロス司令官!?何 取り上げちゃってんの!?しかも そんなにいじっちゃって!?どうするつもりっ!?…って まさかっ!?」
アースが猟銃を構える 隊員Cとラミリツとマリアが慌てて言う
「「「えぇえ~っ!?」」」
ラミリツが言う
「ハ、ハブロス司令官っ!?」
隊員Cが言う
「あのっ いくらなんでも!?俺だって… 非戦闘員の ハブロス司令官よりは…っ」
マリアが言う
「あ、あのっ!?これ以上の失敗が 許されないと言う事でしたらっ!?ここは落ち着いて!?さ、3度目の正直とも言いますし…っ!?」
ラミリツが言う
「そうだよっ!?気持ちは分かるけど ここは 元国防軍レギスト機動部隊のサキシュ隊員に任せた方が 良いって…っ!ハブロス司令官っ!?」
アースが視線を強め引き金を引くと 放たれた銃弾がスイッチにヒットする 衛兵が一瞬呆気に取られてからスイッチを見ると共に 門が開き始め 衛兵が驚いて門を見下ろす 隊員Cとラミリツとマリアが呆気に取られ ラミリツが言う
「え?えっと…?」
マリアが呆気に取られて言う
「あ… 当たりましたね…?」
隊員Cが表情を引きつらせて言う
「い、1発で…?しかも 非戦闘員が…?」
アースが猟銃の構えを解除すると言う
「良し …では こちらは 一応 お前へと返却して置く それと 使い方は分かったと思うが よほどの事がない限り お前はこちらを使用をするな」
クロムが猟銃を受け取りながら言う
「あ、ああ…」
ラミリツが言う
「それってさ?非戦闘員のハブロス司令官が 命中させちゃった後に言っても 説得力が まったく無いと思うんだけど?」
マリアが言う
「非戦闘員の…?えっと… 良く当たりましたね?確か… マスター… いえっ サキシュ隊員さんは?」
隊員Cが言う
「俺 戦闘員で オマケに元国防軍レギスト機動部隊 小銃メインアームチームのメンバーですけど?非戦闘員の 元国防軍総司令官にして 現ART司令官… 様?」
アースが言う
「それらどちらの立場に置かれようとも 私は 歴代国防軍長にして 高位富裕層ハブロス家の長男として この27年間 高位富裕層 狩猟大会におかれる 無敗の1番を保持している」
マリアとラミリツが衝撃を受け ラミリツが言う
「そ、そうだったんだ?知らなかった…」
マリアが言う
「狩猟大会の無敗の… な、何だか 凄いですね?流石は…?」
隊員Cが呆れて言う
「流石は 悪魔の司令官…」
アースが言う
「よし 多少のタイムロスはあったが 第一作戦 門の開口は成功だ 第二作戦 潜入作戦を開始するぞ レイ・アーク・フォライサー殿」
レイが疑問して言う
「ん?今度は何だ?アーク・メイヴン・ハブロス?」

【 ART マシーナリー研究開発室 】

B手榴弾が向かって来る ウィルシュが顔を上げ意識を向けると 一瞬B手榴弾が止まり掛けるが 次の瞬間再び向かって行く ウィルシュが言う
「またかっ!?」
B手榴弾に銃撃が加わり爆発する 爆煙が収まると ウィルシュが巨大剣で防御体制を取っていて 込めていた力と共に目を開くとハッとして後ろへ向く ウィルシュの後方にMシーナが移動していて GT700を構えていて言う
「ハデに食らいやがれーっ!このっ ××野郎ぉー!」
ウィルシュが瞬時に巨大剣を構え直して盾にする GT700の銃弾が巨大剣に防がれる

【 ART 司令塔 】

メインモニターにマシーナリー研究開発室の状況が映し出されている グレイゼスがコンソールを操作すると 顔を上げて言う
「そっちはどうだっ!?」
オペ子Bが顔を向けて言う
「駄目ですっ やはり 物理的に回線を切られている以上 こちらからの復旧信号では 繋がりません!」
グレイゼスが顔を上げ メインモニターを見て言う
「一体どうなっているんだっ?何で シーナ君のマシーナリーによる攻撃は ターゲットに威力を阻害されない!?シーナ君のマシーナリー… ART1-31号機は その塗装に関しては異色だが 他は何一つ 他のART1-01号機から30号機までと変わらないのに それが何故…っ!?」
オペ子Bが言う
「やはり 回線を切った事… 無線回線が 関係しているのでしょうか?」
グレイゼスが言う
「無線を閉口する事で ターゲットの能力を 相殺させる事が出来ると言う事なのか?だとすれば ARTの無線に使用している何かが…!?その周波数や 会話の内容が…!?」
ラキンゼスが言う
「理由は分からなくても 現状は攻撃が通じるって言うんなら 今戦闘が行われている マシーナリー研究開発室へ ART1やART2の連中も 向わせた方が良いんじゃないかっ!?」
グレイゼスがラキンゼスへ向いて言う
「それは そうかもしれないが… 出来る事ならその原因を突き止め 現状 そのART1ART2の戦闘態勢が整っている 第3待機場所へ シーナ隊員を使って誘導させる方が効果的なんだ シーナ隊員の攻撃は有効とは言え この場所では…っ」
メインモニターの中で ウィルシュが室内の物陰を使って Mシーナの銃撃を回避している グレイゼスが言う
「我々のマシーナリーより 体の小さいターゲットの方が 遥かに有利だ そして 奴は 今… その瞬間を狙っているっ 早くシーナ隊員へ 無線を繋げ 有効対策の確認と …退避指示を!」
ラキンゼスがモニターの表示にハッとして言う
「ART1-31号機っ 残弾数ゼロっ!」
グレイゼスが言う
「マズイッ!」
グレイゼスがコンソールのスイッチを押して叫ぶ
「シーナ隊員っ!」

【 ART マシーナリー研究開発室 】

室内放送にグレイゼスの声が響く
『退避だっ!その場を明け渡し 退避しろっ!シーナ隊員っ!』
Mシーナの持つGT700のシリンダーが空転している シーナが言う
「折角追い詰めたのに ここからって所で 弾切れっ!?」
ウィルシュが気付き 物影から出て笑んで言う
「へっ!まったく ハデに暴れやがって… このじゃじゃ馬女が」
ウィルシュが巨大剣を構えて言う
「そろそろ お仕置きしてやらないとな?」
Mシーナが言う
「こっちの弾丸が尽きてから出て来るなんてっ なんて肝っ玉の小さい男なのっ!?」
ウィルシュが衝撃を受けて言う
「クッ… うるせえぞ!この あばずれ女っ!」
シーナが周囲のモニターを見て思う
(替えの弾倉はっ!?…ここは戦闘区域じゃないから 武器弾薬の搬出装置は無い それなら…!?とにかく 何か武器を…っ)
Mシーナが 周囲を見る グレイゼスの声が響く
『シーナ隊員っ!』

【 ART 司令塔 】

ラキンゼスが言う
「ART1-31号機 金属探知システム起動っ …多分だが これ きっと 武器を探してるんじゃないか!?」
グレイゼスが言う
「金属探知システムで 武器を…っ!?それは 確かに有効手段だが …いや そうじゃなくてっ こっちは 退避するようにと 指示を送っているのに 司令官不在時の司令塔主任の命令無視は 処罰対象だぞっ!?」
オペ子Bが言う
「あの… そちらの処罰対象条件は 基本無線を用いた上での 命令に対する対処のみですので 無線記録のされない 室内放送では処罰対象になりませんが…」
グレイゼスが言う
「無線記録はされなくとも この司令塔内のデータは記録されている それを使えば 記録証明に出来るだろう」
ラキンゼスが言う
「けど こっちの記録はあっても シーナ隊員が 聞いていないって言ったら 終わりじゃないか?」
グレイゼスが言う
「シーナ隊員がそうと言った所で ART1-31号機内の収録音声に 同じ音が記録されていれば 言い逃れは出来ない マシーナリー無線と同じく 確実に聞こえていたという証拠だ」
ラキンゼスが言う
「あぁ なるほどね…?」
オペ子Bが言う
「それより 中佐っ!?」
グレイゼスが言う
「ああ そうだな?今は シーナ隊員を命令無視の処罰対象にする その方法では無く どうやって… 命令を聞かない 今の彼女に 撤退命令を 受託させるかだが…っ」
オペ子Bが言う
「では もう 無線開通の処理は 諦めて良いと言う事ですか?」
オペ男Aが小声で言う
「出来ないものは出来ないって… 諦めも重要だよな?」
オペ男Bが苦笑して オペ男Aとオペ男Bが オペ子Aを見る オペ子Aは必死に作業をしている グレイゼスが言う
「出来ないものは出来なくとも 諦める訳には行かないんだっ!」
オペ男Aとオペ男Bが衝撃を受け オペ男Aが苦笑して言う
「聞こえてた…?」
オペ男Bが苦笑して言う
「みたいだな?すげぇ…」
グレイゼスが言う
「とは言え 無線に関しては もうやらなくて良い そっちが通じた所で 現状 俺からの指示を無視しているシーナ隊員が その無線に応じると言う保証も無いからな」
オペ子Bが言う
「では!?私は何をしますかっ!?指示をお願いします 中佐っ」
グレイゼスが頭を抱えて言う
「ああっ それこそ そんな風に シーナ君を 俺の指示に従ってくれる様にする その方法を 探して欲しいんだが…っ んな事命じたって無理だよな?そのルイネ君は 俺の指示に従ってくれる隊員なんだから…っ」
ラキンゼスが閃いて言う
「…うん?それなら…?中佐?」
グレイゼスがラキンゼスへ向いて言う
「何だ?俺の指示に従ってくれない隊員2人目の ライム大尉?」
ラキンゼスが衝撃を受けてから言う
「え?俺… 従ってると思うんだけどな…?まぁ いっか?なら ここは 思い切って 中佐が シーナ隊員の指示に 従ったら良いんじゃないですかね?」
グレイゼスが呆気に取られて言う
「え…?」
ラキンゼスが言う
「押して駄目なら 引いてみろって言うでしょう?ハブロス司令官だって シーナ隊員の意見は 結構取り入れますし?お陰で そのシーナ隊員も ハブロス司令官の命令を 素直に聞く様になりましたよ?」
グレイゼスが呆気に取られた状態から言う
「…そう?そう言う事?なるほどっ!それならっ!?」
グレイゼスがコンソールのスイッチを押す

【 ART マシーナリー研究開発室 】

ウィルシュが攻撃を繰り出す Mシーナが回避している グレイゼスの声が聞こえる
『シーナ隊員!F-41だっ!その位置に GT700の弾倉が置かれているっ!それから S-18に M900 充填済みが1丁っ!』
ウィルシュが反応してから舌打ちして言う
「…チッ 場所の意味は分からねぇが どうやら 折角消費させた武器を与える作戦みたいだな?それなら… その前にっ!」
ウィルシュが巨大剣を構え直して 向いながら言う
「一気に片を付けさせてもらうぜっ!」
シーナがメインモニターに向かって見えるウィルシュの姿にハッとして言う
「っ!来るっ!」
Mシーナが一歩引く

【 ART 司令塔 】

グレイゼスが言う
「よしっ!そこだっ!この状態なら タイミングも完璧だっ!ハデにキメろっ!シーナ隊員っ!」
オペ子Bとオペ男Aとオペ男Bとラキンゼスが呆気に取られ オペ子Bが苦笑する オペ男Aが苦笑して言う
「誰かさんみてぇ…」
ラキンゼスが言う
「ハブロス司令官の真似か グレイゼス中佐?」
グレイゼスが衝撃を受ける オペ男Bが言う
「いや?今のは素だったな?」
オペ子Bが言う
「口癖って 聞いていると移っちゃいますからね?」
オペ男Bが言う
「まぁ 気持ちは分かるって シーナ隊員が居た場所は 見事にS-18 充填済みのM900なら あの距離を向かって来るターゲットに狙いを付ける時間は十分 しかも 真正面となれば 銃火器のプロフェッショナル シーナ隊員じゃなくても マシーナリーの銃撃オートシステムのサポートで ばっちり…」
グレイゼスが肩の力を抜く オペ男Aが言う
「勝ったな?」
グレイゼスが脱力して言う
「…間に合った」
オペ男Aがグレイゼスの様子に疑問すると 隣でオペ男Bが驚いて言う
「なぁああっ!?シ、シーナ隊員っ!?」
オペ男Aが疑問してメインモニターを見ると驚いて言う
「えっ!?そ、そんなっ!?何で…っ!?」

【 ART マシーナリー研究開発室 】

ウィルシュが巨大剣を肩へ担ぐと 笑んで言う
「へっ!女を機械兵士から引っ張り出して トドメを刺すなんて んな 弱臭ぇ事はしねぇよ?それに 動かなくなった機械兵士ごとやるなんて 無駄な力も使いたくねぇし 後は精々女らしさでも 磨くんだな?じゃじゃ馬女?」
ウィルシュが立ち去る ウィルシュが居た先にMシーナが大破していて コックピットが叩き開かれると シーナが顔を出して怒って言う
「誰が じゃじゃ馬女よっ!このーっ アンタなんて 私たちの最高の司令官である ハブロス司令官が 最高のソウルでぶっ飛ばすんだから!覚悟しておきなさいよ!私の最高のマシーナリーを傷付けた事 後悔させてやるんだからーっ!」
ウィルシュが歩きながら言う
「良く騒ぐ女だな…?」
ペリーテが面白そうに奇声を発する
「ピュポポポポー!」

【 ART 司令塔 】

オペ男Aが呆気に取られて言う
「な… 何で…?」
オペ男Bが言う
「装備が… 間に合わなかったのか?」
ラキンゼスがコンソールを操作しながら言う
「いや ART1-31号機は M900に手も伸ばしてなかったぞ?ひょっとして… 土壇場で ビビッちまったのかな?」
スピーカーからシーナの声が聞こえる
『こちらART1SP隊員シーナ隊員… 申し訳ありません マスターグレイゼス中佐 ターゲットの撃破任務 失敗しました…っ 悔しいです 折角追い詰めた所で 銃弾が…っ』
メインモニターに 室内のコンソールを使って通話を行っているシーナが映っている オペ男Aが言う
「いや… だから?すぐそこのS-18に充填済みのM900があるって 指示をしたのに?」
シーナが驚いて言う
『えっ!?そうだったんですかっ?…そちらの情報は 知りませんでした 無線も切っていたので 指示を頂いていたと言う事でしたら そちらは 聞こえていませんでした 申し訳ありません』
グレイゼスが言う
「いや、無線は諦めて 室内放送で 伝えたんだが?それも 放送音量最大で?」
シーナが反応してから視線を逸らして言う
『あ… その… それ以前に コックピット内で大音量で 音楽をかけていたもので…』
オペ子Bが言う
「音楽を…?」
グレイゼスがハッとして言う
「まさかっ!?」
通路で爆音が轟く 隊員たちがハッとして 作業を開始する グレイゼスが言う
「シーナ君っ!その音楽って もしかしてっ!?」
グレイゼスが引き出しを引き出すと ナックキラーのCDがある


続く
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