上 下
51 / 55
21章

アールスローン戦記Ⅱ 脱出

しおりを挟む
ログウェルン城 中央ルーム

爆発が起きる Mハイケルが手榴弾を手に振り返って言う
「1打目の着弾を確認… しかし?ここもやはり 所有分を全て 投入すべきだったのか?悪魔の…」
アースが顔を上げて言う
「この場所にて そちらを行っては 下手をすれば ここに居る我々が 全員生き埋めになるだろう?まぁ お前はそれでも 助かるかもしれないがな?悪魔の兵士殿?」
Mハイケルが言う
「…そうだったな 確かに そちらの可能性も有る …では もう1打か?」
Mハイケルが手榴弾を片手に持つ アースが気付くと言う
「いや 待て」
Mハイケルが動きを止めると アースが言う
「ターゲットが出て来た様だ」
ARTマシーナリーたちが注目する 視線の先 爆煙の漂う中に クレターが現れる ART隊員たちがハッと息を飲む クレターがアースを見ると周囲のARTマシーナリーを見てから 息を吸い 爆煙に衝撃を受け咽る ART隊員たちが衝撃を受け アースが言う
「すまない 余りにも 待ち時間が 長過ぎた事から こちらから向かおうかと 通路を広げる作業を開始してしまっていた」
クレターが言う
「そうか それは こちらこそ すまなかったな?何しろ この城は広過ぎて ここまで来るのにも 時間を有してしまうのだ」
クレターがニヤリと笑む アースが言う
「なるほど 不便な居城だな?心情を察する」
クレターが衝撃を受け疑問してから言う
「そ… それは… …そうだな?では 痛み入る…」
ラミリツが呆れて言う
「今のはさ?遠回しな 自慢だったと思うんだけど?」
アースの声が聞こえる
『そうだったのか?では 返答を失敗した』
隊員Cが呆れて言う
「いえ むしろ どストレートだったと思いますけどね?」
アースの声が聞こえる
『そうか では 成功だったな?』
隊員Fが苦笑する

ログウェルン城 司令塔

司令塔隊員Aが言う
「クレター司令官 敵機械兵らへ接触っ!」
司令塔隊員Bが言う
「今かっ!?」
司令塔隊員Cが言う
「いや!まだだっ!?クレター司令官は 合図を待てとっ!?」
司令塔隊員Bが言う
「なら その合図とはっ!?」
司令塔隊員たちが顔を見合わせる

ログウェルン城 中央ルーム

アースが言う
「私は アールスローン帝国軍レギスト特殊部隊 通称 ARTの司令官 アース・メイヴン・ハブロスだ」
クレターが視線を強める アースが言う
「もし お前が クレター司令官と呼ばれる この土地の司令官であると言う事なら 単刀直入に言わせてもらうが?」
クレターが沈黙してアースを見詰めている アースが言う
「今直ぐに この土地に生きる 生命への冒涜を …最低限に置いて 己と同じ 人間へ対する 生命への軽視を止め 人体の脳核を用いた 機械兵士の製造を 即刻停止しろ!」
クレターが疑問して言う
「…うん?」
アースが言う
「我々の用件はそれだけだ そちらを受け入れると言うのであれば 我々は その返答を持って 己の土地へと帰還する」
クレターが呆気に取られた後言う
「…本気で言っておるのか?」
アースが言う
「勿論だ この期に及んで わざわざ 他の用件を言う必要は無い これまでに お前が行なった 全ての生命へ対し 本心から謝罪し 行いを改め この土地の統括へ邁進すると言うのであれば 過去 お前の行いにより 命を奪われた 彼らも お前を許すだろう 更に 必要と有れば 彼らの魂を鎮める その手伝いを 私がしてやっても良い」
クレターが呆気に取られた状態からアースを見る アースが視線を強めて言う
「さあっ 答えを言え!重ねて言って置くが 私は 余り気の長い方ではないぞっ?」
クレターがきょとんとした様子から 軽く噴き出し 笑い出す
「…くっ はは…?はははは… あっははははっ!」
ART隊員たちが一瞬驚き 表情を険しくする クレターが笑いを抑えきれない様子で言う
「何を言い出すかと思いきや?ARTの司令官?そして その貴様が ここへ来た その理由が…?この土地の人間の 生命への軽視を止めろだと?更には機械兵士を作るなと?それを言う為に 自ら敵陣へやって来たと言うのか!?くっはっはっはっはっ!」
クレターが笑い続ける アースが首を傾げて言う
「…私は 私からの質問へ対する お前の返答を 待っているのだが?」
クレターが笑いを収めて言う
「あぁ… そうだったか?それは すまなかった 異国の司令官殿は 余りにも 可笑しな事を言うものでな?答えを返そうにも それが出来ないほどに 笑わされてしまった」
アースが言う
「…そうか 何が可笑しかったのかは 理解が出来ないが まぁ 良いだろう それが国の違いと言うのであれば そちらに関しては 受け入れはするが …では そろそろ 聞かせてもらいたいのだが?」
クレターが笑んで言う
「聞かせてもらいたいか?では 良いだろう じっくりと聞いてくれ 面白い話を聞かせてくれた 異国の司令官殿への返答を そして 諸君への …そうだな?この度の 歓迎の1曲を?」
クレターがヴァイオリンを構える アースが一瞬驚く ART隊員たちが驚くと ラミリツが言う
「ヴァイオリン…?」
隊員Aが言う
「俺たちの… アールスローンの物と 同じ物か?」
モニターにクレターのヴァイオリンがアップにされる シュナイゼルが言う
「見た目は… 我々の世界のそちらと 同じ物と見受けられますが?」
隊員Vが言う
「やっぱ 司令官って人はよぉ…?」
隊員Nが言い掛ける
「ヴァイオリンの演奏が うま…」
ヴァイオリンの雑音が響く ART隊員たちが衝撃を受け 隊員Nが耳を塞ぎながら言う
「うるさぁあーっ!?」
隊員Vが耳を塞ぎながら言う
「メッチャ 下手ぁーっ!?」
アースが視線を強める

ログウェルン城 司令塔

室内にクレターのヴァイオリンの音が響いている 司令塔隊員たちが表情を顰めつつ言う
「こ、これか…?」 「これが… 合図?」
司令塔隊員Bが言う
「い、良いんじゃないかっ?少なくとも このプログラムを乗せるには 丁度良い波長だっ!」
司令塔隊員Cがハッとして言う
「言われてみればっ?確かにっ!?」
司令塔隊員たちがモニターに映っている波形を見る

ログウェルン城 中央ルーム

クレターが演奏を終える 隊員Cが表情を強張らせて言う
「や… やっと 終わった…?」
ART1隊員たちが耳を塞いでいた状態から顔を上げる ラミリツがホッと溜息を吐くと クレターが笑んで言う
「ご静聴を感謝する 気に入ってもらえたかな?」
Mハイケルが顔を上げて言う
「二度と御免だ」
アースが言う
「生憎 私を含む ここに居るアールスローンの民には 馴染めない音ではあったが …そちらが諸君の土地が 好む音であると言うのならば 否定はしない」
クレターが笑んで言う
「どの様な事も受け入れてくれるとは 何所までも 可笑しな司令官だ しかし 確か…?その司令官殿は?この城へ 一体何用で 来られたのだったか?」
アースが言う
「忘れたと言うのか?私は お前からの そちらの返答を この数分間 ずっと待ち続けている」
クレターが言う
「あぁ それは生憎だったな?しかし そもそも この私が?貴様らゴミからの質問に 答えるとでも思っていたのか?」
ART隊員たちが一瞬驚いた後表情を怒らせる アースが視線を細めて言う
「待つだけ 無駄であったと言う事か… 最も そのお前から 良い返答を得られるとは こちらも 思っては居なかったが」
クレターが笑んで言う
「では そう言う事だ …司令室!機械兵どもを 再起動させろっ!今直ぐにだっ!」
動きを止めていた機械兵士らが起動する ラミリツが怒って言う
「それなら こっちだってっ!ART2!第二防衛体制から 第一防衛体制へ移行!…良いよねっ!?ハブロス司令官っ!?」
アースが言う
「そうだな マシーナリーを用いる間は お前たちART2を…」
シュナイゼルの声が聞こえる
『た、隊長… いえっ ハブロス司令官!』
アースが反応し Mシュナイゼルを見て言う
「どうした?」
クレターが笑う
「くっはははは!」
アースが疑問すると ラミリツの声が聞こえる
「マシーナリーがっ …動かないっ!?」
アースが驚いて言う
「何っ?」
クレターが喜んで言う
「掛かったなっ!?愚かな ゴミどもがっ!」
アースが視線を強める

ログウェルン城 司令塔

司令塔隊員が言う
「中央ルーム 機械兵 再起動完了っ!」 「各システム異常なし!」
司令塔隊員Bが言う
「電磁システム 及び 阻害プログラムによる 電磁波攻撃 成功っ!敵機械兵らの電装システムを ダウンさせた模様!」
司令塔隊員Aが言う
「やったっ!クレター司令官の作戦勝ちだなっ!」
司令塔隊員たちが間を置いて言う
「…にしても」 「酷い… 演奏だったな…」 「…ああ きっと 仕方が無かったんだろうが…?」
司令塔隊員たちが困り汗を流す

ログウェルン城 中央ルーム

ラミリツがスイッチ類を動かしながら言う
「駄目っ!?何をしても 動かないよっ!?ハブロス司令官っ!?」
ラミリツがモニターを見る アースが言う
「音声は届いている… そしてモニター類も映像を映していると言う事は 制御を抑えられたのは マシーナリーの駆動回路のみ と言う事なのか…?」
機械兵士らが武器を構える クレターが言う
「その様な悠長な話をしていて良いのか?それとも 己の置かれている状況が 理解出来ていないのか?司令官ともあろう者が!?」
アースが考えていた状態から視線を上げて言う
「状況は理解している 明瞭な返答では無かったが… そうとなれば 改めて 確認をさせてもらうが 現状が お前からの返答であると …私は その様に認識をして良いのだろうか?それとも?私からの こちらの質問にも 明瞭な返答を行なうつもりは無いのか?クレター司令官?」
クレターが言う
「…ふん?そうか どうしても この私から 返答を貰いたいというのだな?贅沢なゴミだ… だが まぁ良いだろう そこまで言うのなら 貴様の希望通り 返答をくれてやる 貴様から この私への希望要望は 全てNOだ!分かったかっ 愚かな アールスローン帝国の司令官!あっははははっ!」
アースが言う
「そうか 良く分かった… しかし 1つ訂正をして置くのなら 愚かであるのは 私ではなく お前の方だ クレター司令官!」
クレターが言う
「何?…貴様 この状況下で 己の劣勢も分からんのかっ!?何所までも 愚かな司令官なのだっ!?構わんっ 機械兵どもの停止制御を解除しろ!今の内に!動けぬ奴らを 1体残らず…っ!」
アースが言う
「ART1!人体にて 起動っ!」
ART1隊員たちがコックピットを押し開き言う
「「了解!司令官っ!」」
クレターが驚く Mハイケルが振り向いて言う
「どういう訳か 私は こちらのマシーナリーに置いても 動かれる様なのだが?」
アースが言う
「ほう?真に不甲斐ない初世代の悪魔の兵士が たまには役に立つのか?」
Mハイケルが衝撃を受けて言う
「そちらの言い方が 奴と同等に気に入らないのだが?」
アースが言う
「ではそちらは 私の言葉を 払拭する働きを行なってから言え ハイケル少佐」
Mハイケルが両手に銃を持って言う
「了解 悪魔の司令官」
アースが口角を上げる クレターが疑問して言う
「馬鹿な!?何故 あの1体の機械兵が動かれる!?それに…」
ART1隊員たちが 対マシーナリー武器を手に構える Mハイケルが言う
「私が奴らの攻撃を抑える お前たちは 攻撃へ専念を!狙いは 可能な限り首をっ しかし 困難であるなら 頭部であっても構わないっ 片っ端から排除しろっ!」
ART1隊員たちが言う
「「了解!少佐ぁー!」」
クレターが視線を強めてから ART2マシーナリーを見て言う
「あちらの白い機械兵らは動けぬ事に対し 奴らは 機械兵から降りる事が叶った?どう言う事だ?コックピットの開閉に電子制御を用いていないとでも言うのかっ!?」
アースが視線を背けて言う
「あぁ そちらの発想は無かったな?」
クレターが衝撃を受ける アースが言う
「電子制御を支配される… このような事象が 異なる土地に置いても 用いられる技法であると言うのであれば 今後は そちらを考慮した上で コックピットの構造を 考慮し直すのは 良いかもしれない」
クレターが悔やんでから言う
「…クッ とは言え 今の奴らは 人の体っ!例え1体の機械兵が動かれた所でっ こちらの48体もの機械兵を 倒す事など…!…っ!?」
クレターが驚き 後ず去って言う
「なん… だと…っ!?」
クレターが表情を強張らせて言う
「人の身で…っ!?機械兵をっ!?」
ART1隊員たちが 機械兵士らを倒している クレターが言う
「こうとなっては 仕方が無いっ!司令塔っ!機械兵らの自壊システムをセットしろっ!」
アースが視線を向けると クレターが一歩下がる アースが言う
「なるほど… やはり そちらの戦法も 組み込まれていたか」
ラミリツが驚き言う
「また 爆発するって事っ!?ならっ!?」
ラミリツがサブモニターを見ると 出入り口が閉鎖される ラミリツがハッとして思う
(退路が絶たれたっ!?これじゃ…っ!?)
ラミリツがメインモニターを見ると クレターがニヤリと笑んでから立ち去り クレターの居なくなった通路が閉鎖される ラミリツがハッとすると 演奏が聞こえて来る ラミリツが驚きサブモニターへ向く 

ログウェルン城 司令塔

司令塔隊員たちが呆気に取られて言う
「な… 何だ?」 「この音… この演奏は?」
司令塔隊員Aが言う
「パンジョーの音…?あっ あの!?敵の司令官がっ!?」
司令塔隊員たちがモニターを見る

ログウェルン城 中央ルーム

ART1隊員たちが顔を向けると アースがパンジョーを弾いていて 機械兵士らを見て思う
(聞こえるか?お前たちの楽器の音だ お前たちになら 伝わる筈だっ!)
アースの目に魂の光が見えている アースがパンジョーを鳴らして思う
(さぁっ!応えろっ!お前たちならば 出来る!奴の命令に 購って見せろっ!お前たちの… 魂の力でっ!)
アースが意識を込めてパンジョーを演奏する 光の羽根が舞う ラミリツが呆気に取られると言う
「…何?これは… 羽根?」
ラミリツが目の前に舞い落ちた光の羽根を手の平に受けると 光の羽根が弾けて消える ラミリツが驚き呆気に取られる 隊員Fが 照準を向けていたスコープに映る機械兵士の様子に 反応して言う
「…うん?何か…?様子が変わった?」
隊員Fの銃を支えていた 隊員Nと隊員Vが疑問して言う
「「え?」」
隊員Fたちの周りにも光の羽根が舞い落ちるが無反応で居る

ログウェルン城 司令塔

司令塔隊員が言う
「プログラム開始!機械兵 自壊システム 発動しますっ!」
司令塔隊員たちが思わず体に力を入れる 間を置いて 司令塔隊員たちが疑問すると言う
「…ど、どうした?」 「自壊システムが…」
司令塔隊員たちがモニターを見て呆気に取られて言う
「発動しないっ!?…1体も!?」

ログウェルン城 通路

クレターが走っていて立ち止まると振り返って言う
「…おかしい?何の衝撃も音も無いとは?如何に あの自壊システムが 不備の有る機能とは言え 1機でも発動すれば 衝動や物音ぐらいは聞こえて来よう筈だが?」

ログウェルン城 中央ルーム

アースがパンジョーの演奏を終えると 微笑して言う
「良くやった 上出来だ お前たちの魂は とても強い意志を持っている その想いは… この楽器を私へ預けてくれた 彼らと同等か?」
アースの視線の先 機械兵士らの頭部に沢山の魂の光が見えている アースが微笑する Mラミリツが起動しRDD001の隣へ来ると言う
「僕にも見えるよ?彼らは 僕らと一緒に この土地へ帰って来た あの魂たち?村に お墓を作ってあげたのに… こっちに付いて来ちゃったの?」
アースが言う
「いや?あの魂は あの機械兵らへ込められていた 脳核に有ったものだ 先程までは 憎悪や恐怖を示す 赤い光を放っていたが 今は そのお前の目に見ている通りだ」
Mラミリツがアースの手にあるパンジョーを見て言う
「そうだったんだ?なら その楽器で?彼らの心を癒したって事?」
アースがパンジョーを見て言う
「そうだな?あの機械兵士らの魂の光は 先程のクレター司令官の演奏に 少なからず反応を示していた そうとあれば 彼らの こちらの楽器を用いた演奏であれば より一層 彼らの魂へ 思いを伝える事が可能であろうと考え 行なったまでだが」
Mラミリツが衝撃を受けると言う
「え…?そう考えて行なった… って事はさ?それじゃ?それが出来なかった時は?どうするつもりだったの?勿論そっちも考えて有ったんだよね?ハブロス司令官!?」
アースが言う
「勿論だ 音楽による彼らのサポートが不可能であると判断をした際には この防衛特化RDD001マシーナリーの防衛シールドと共に 私の気合で お前たちを守ってやる予定だった」
ART隊員たちが衝撃を受け 隊員Bが言う
「予定ー?」
隊員Fが苦笑して言う
「そっちも… 予定で…?」
隊員Cが表情を引きつらせて言う
「有り得ねぇ… 流石…」
アースが言う
「さて そちらはそうと 奴の魂の光は 捕捉しているとは言え 余り離れられても面倒だ マシーナリーの制御も取り戻したというのであれば 問題ない …ハイケル少佐」
Mハイケルが顔を向ける アースが言う
「奴が逃避した通路を閉鎖している あちらの壁を破壊しろ」
Mハイケルが銃を構えて言う
「了解 司令官」
Mハイケルがジャストショットを行なうと 壁が壊れる Mハイケルが言う
「クリア 指定された壁を破壊した …が?この後の作戦は?ハブロス司令官?」
アースが言う
「結構 では ART1 及び ART2は これより…」
ART隊員たちがアースへ向く

ログウェルン城 司令塔

クレターが足早にやって来ると 扉が開かれ クレターが後方へ視線を向けつつ入室しながら言う
「中央ルームに居る 奴らの状況はどうなったっ!?何故 自爆装置が… っ!?」
クレターが室内へ顔を向けると呆気に取られる 室内には誰も居ない クレターが言葉を失った状態から周囲を見てて言う
「ど、何処へ行ったっ!?おいっ!?ゴミ共っ!?」
クレターが呆気に取られた後気付いて言う
「まさか… この城から逃げ… …っ?」
周囲が振動しクレターが疑問して振り返ると扉が破壊されRDD001が這いずって現れる クレターが驚いて言う
「ば、馬鹿なっ!?いくら機械に入っているとは言えっ!?司令官とある貴様が!?」
RDD001がクレターを見てから 周囲を見て アースの声が聞こえる
「ほう?ここは…?言うなれば司令塔か?しかし 人が操作を行うであろう 機材は動いているが 肝心のそちらを操作するであろう人間が 誰も居ない と言う事は…?仲間に捨てられたのか?クレター司令官?」
クレターが表情をしかめ RDD001を見ると言う
「…クッ 黙れっ!あの様な役立たずのゴミなどっ この私の仲間などではないっ!」
クレターが逃げ出す RDD001が顔を向けると言う
「ふん… 往生際まで悪い奴だ」
RDD001が動き出す

ログウェルン城 中央ルーム

通路が大破している ARTマシーナリーたちが見上げていて Mラミリツが言う
「いくら あの001マシーナリーが防衛特化だからってさ?…本当に?」
ラミリツが言う
「大丈夫かな?非戦闘員のハブロス司令官を 1人で行かせるだなんて…」
M隊員Cが呆れて言う
「大丈夫だと思いますけどね?なにしろ ハブロス司令官は 戦闘員を越える非戦闘員の 悪魔の指令官様ですから?」

ログウェルン城 通路

クレターが走りながら叫ぶ
「誰か居らぬのかっ!?人間の兵士どもっ!今直ぐ 私の下へ来いっ!」
クレターの後方の通路が大破し RDD001が現れる クレターが驚き振り返ると周囲を見て気付き エレベーターへ乗り込んで降下する RDD001が通路を大破させながらやって来ると エレベーターを覗き込む

ログウェルン城 地下

エレベーターが到着すると クレターが息を切らせつつ逃げ出して来て 振り返ると笑んで言う
「はぁ… はぁ… …どうだっ?いくら頑丈な機械の身であろうとも あの場所からここまでは60メートルはある 質量の大きな 機械の身で落ちれば 中に居る人間はその衝撃に耐えられぬと言うもの…」
クレターがホッとして言う
「…いや?それ以前に ここまでの進路を得る事さえ…」
クレターが背を向けると 後方で上部からの衝撃派による開通が行なわれ クレターが驚いて振り返ると 続いてRDD001が落下してきてジェットエンジンの衝撃緩和を行なって着地する クレターが呆気に取られた後 困惑して言う
「し、しつこい奴めっ …クッ」
クレターが走って逃げる RDD001が顔を上げる RDD001内でアースが言う
「まだ 逃げるつもりか?面倒な奴め… とは言え 余り遊んでも居られない そろそろ 本気で捕まえに向かうべきか …うん?」
RDD001の足元でパキパキ音が鳴る RDD001が足元を見る アースが目を見開いて言う
「…っ これはっ!?」
RDD001が周囲を見ると 見渡す限りの空間に大量の人骨が転がっている アースが呆気に取られた状態からハッとすると アースの周囲に魂の光が集まっている

クレターが息を切らせつつ通信機の場所へ来ると装置を操作してから言う
「はぁ… はぁ… クレター司令官だっ 誰でも良い!直ぐに地下廃棄施設へ…っ!」
爆音が轟く クレターがハッとして振り返ると RDD001がレッドシグナルを向ける クレターが後退って言う
「や… 奴は悪魔かっ!?くそっ!!」
クレターが走って逃げる RDD001がやって来ると立ち止まる クレターの逃避先には多くの障害物が山積している RDD001がそれを確認すると手を振り払う 一瞬の後 振り払われた前方の空間が 気合波に吹き飛ばされる RDD001がクレターを追って歩いて行く 周囲に黒い羽根が舞い落ちて行く

ログウェルン城 中央ルーム

轟音と共に地響きがする ARTマシーナリーたちが反応すると 隊員Nが慌てて言う
「ま、またかっ!?今度はっ!?」
隊員Vが言う
「今度は近いぞっ!?それに この揺れは さっきと同じで!?」
サブモニターの隊員Nが言う
『なら やっぱ またっ!?アニキが気合でっ!?』
隊員Fがモニターを見て居て言う
「衝撃波形から 多分 ハブロス司令官の あの技だと… けど さっきは 通路の侵入先で?今度は …下からって言うのは?」
隊員Bが言う
「下ってー?」
Mハイケルが下を見て言う
「では ハブロス司令官は 現在は この下に?」
轟音が次々に響く ARTマシーナリーたちが周囲を見る

ログウェルン城 地下

クレターが走っていると後方の障害物がなぎ払われる クレターが衝撃派に吹き飛ばされ床に倒れると身を起こしながら言う
「何故だ!?何故 誰も来ないっ!?ログウェルン兵どもは 何処へ行ったっ!?まさか 奴らも逃げ出したのかっ!?」
クレターが顔を向けると エレベーターがある RDD001がクレターを捕まえようと手を伸ばすが クレターが間一髪逃れてエレベーターへ乗り込んで上昇する RDD001が顔を向けると アースが舌打ちをして言う
「チッ… 逃したか 必死に逃れる者を捕まえると言うのは 存外手間の掛かるものだな?今なら あのマーレー少佐の失態続きも 理解が出来る… アールスローンへ戻ったら あの頃の侘びでもして置くか?」
RDD001が周囲を見て言う
「いや… 少々派手に行い過ぎた これ以上を行っては こちらの構造物が持たないと言う可能性も否めない」
RDD001が手を下げると顔を上げる

ログウェルン城 中央ルーム

ARTマシーナリーたちにアースの通信が聞こえる
『ART総員 聞こえるか?』
ART隊員たちがハッとすると ラミリツが食い付いて言う
「こちらART2!通信聞こえてるよっ!ハブロス司令官!?」
Mハイケルが Mラミリツを振り向いて言う
「こちらART1も 同じだ それで?ハブロス司令官 ターゲットは?」
アースの声が聞こえる
『逃した』
ARTマシーナリーたちが衝撃を受ける アースが言う
『共に 城内には 敵兵とされる人間も機械兵士も居なかった 従って ART1及びART2は マシーナリーの警備及び保護として数名を残し その他の隊員は マシーナリーを降り 人体にて 奴の捕獲へと向かえ 現在 ターゲットの所在は…』

開発室

鍵が差し込まれ回されると 扉が開く クレターが息を切らせつつ部屋へ進み居ると 周囲を見渡す 周囲には機械兵士が並んでいる クレターが舌打ちをして言う
「…クソッ あの愚かな連中が 無駄に兵を動かしたお陰で…っ 見付けたら 唯では置かぬっ」
クレターが通路を進む

通路

ART1に続きART2隊員たちが走っている

ログウェルン城 中央ルーム

床が下部から突き壊されると 続いて ジェット音と共にRDD001が飛び上がって来て 中央ルームの床に着地する Mシュナイゼルが振り返ると言う
「お帰りなさいませ ハブロス司令官」
RDD001がMシュナイゼルの横へやって来ると アースが言う
「ああ ターゲットを得られないままに マシーナリーの燃料を 浪費させてしまった」
シュナイゼルが苦笑する アースが視線を強めて言う
「しかし その価値は有った」
シュナイゼルが疑問すると言う
「…と 申されますと?」
RDD001がMシュナイゼルと 起動しているマシーナリーたちを見てから Mシュナイゼルを見て言う
「悪くない人選だ お前たちが居てくれるのであれば こちらは大丈夫だろう シュナイゼル副隊長」
シュナイゼルが言う
「はっ!ハブロス司令官っ!」
アースがコックピットを出て来て言う
「ここからは私も 先行しているART1及びART2の彼らと同じく 人体にて ターゲットを追う 従って…」
シュナイゼルが驚き慌てて言う
「そちらは危険ですっ ターゲットの処理は彼らへ任せ ハブロス司令官はこちらでっ!?」
アースがコックピットから先へ向かいながら言う
「奴との話は まだ終えていない そうとなれば 彼らの言葉を… 彼らの思いを受け取った私が 直接 奴と話さなければ …私の気が収まらないっ」
RDD001がアースを手の平に乗せ通路へ橋渡しをする Mシュナイゼルが一歩近付いて言う
「そうは申されましても 貴方様の身に もしもの事があってはっ!?唯ですら 非戦闘員の司令官が自ら 敵地へ赴くと言う危険を 冒されて居られるのですっ 最低限に置かれましても 防衛力に富んでいる そちらのマシーナリーへご搭乗されて居られなければっ!」
アースが振り返って言う
「その防衛力に富んだ 貴重なマシーナリー及び その他の 貴重なマシーナリーに関しては… マスターラキンゼス隊員」
M隊員Cがギクッと反応する アースが言う
「お前に 彼らの保護を任せる 万が一の際には お前の力を持って 彼ら全てのマシーナリーの起動 及び 退避の指示を行え」
隊員Cが慌てて言う
「ぜってー無理なんですけどっ!?」
アースが言う
「では 頼んだぞ?」
M隊員Cが慌てて言う
「俺 無理だって 言ってますけどっ!?」
アースが通路へ入って行く Mシュナイゼルが言う
「ハブロス司令官っ!」
M隊員Cが言う
「ハブロス司令官ーっ!?」
アースが去って行く

サンプル保管室

クレターが檻の中に見付けると言う
「よしっ 貴様を生かして置いた価値があったぞっ!起きろっ!今こそ 貴様の出番だっ!」
クレターが檻の鍵を開ける 檻の中で両腕を拘束されている人物が目を開く

通路

ART隊員たちが通路を走っていて ラミリツが顔を向けると言う
「見付けた!ここに階段がある!上へ行けそうだよ!?」
ラミリツのイヤホンにアースの声が聞こえる
『位置的には 現在お前の居る場所より 50メートル手前と言った辺りだが 階数の方は… そちらより凡そ2フロアほど上だ』
ラミリツが言う
「了解っ それじゃ…」

通路手前

アースが目を細めると言う
「…それと 周囲には その他の魂の光も見られる そちらは恐らく… 人体を持った 生体の魂だ」
アースのイヤホンにラミリツの声が聞こえる
『え…?それじゃっ!?』
アースが言う
「お前たちであれば 問題の無い相手であろうと思われるが 警戒は崩すなよ?先行 ART1は第一襲撃体制にて臨め ART2は周囲警戒 及び ART1のサポートを行え」
ラミリツが言う
『ART2 了解!』
ハイケルの声が聞こえる
『ART1 了解』
アースがイヤホンから手を離すと 周囲を伺いながら歩いて行く

サンプル保管室

両腕の拘束が外される クレターが言う
「相手は 貴様が以前対峙したと言っていた あの第6プラントの機械兵だ 貴様は以前の戦いに置いても 奴らの機械兵を倒せていた ならば 今度はこちらも機械兵を用いて 貴様の補助を行わせるとなれば 勝算は十分に…!」
ウィルシュが拘束されていた両腕を擦りながら言う
「…テは?」
クレターが顔を向けて言う
「うん?」
ウィルシュが言う
「…俺に与えられていた ”神の使い”は?」
クレターが反応して言う
「あぁ… あれは… 神の下へとお返しをした」
ウィルシュが言う
「そっか… …なら 俺の剣は?」
クレターが言う
「貴様の…?あぁ あれは… あちらも 特別な武器だ そうと有れば 当然 神の使いと共に… 保管されていた その場所から 突如消えたと 報告があった」
ウィルシュが苦笑すると顔を上げて言う
「ハハ… 何だよ?身体が変わらねぇんなら そっちも変わってねぇのかと思ってたら…」
クレターが言う
「貴様の身に施された 生命力の強化技術は 神の力と言われはするが ログヴェルン帝国が作ったプログラム技術にて 神の力を再現しているに過ぎない 従って 真の神の力とは異なり 本物の不死の能力は持たない だが それでも」
ウィルシュが沈黙する クレターが笑んで言う
「その能力と共に 重力圧縮を実行する事が出来る 貴様の能力さえあればっ 人の身の上であっても機械兵を相手にする事が可能だっ さぁっ!私と共に来い!このクレター司令官を 少なからず追い詰めた あの悪魔っ 第6プラントの司令官へ ログヴェルン帝国の力を思い知らせてくれるっ!」
クレターが踵を返す ウィルシュが言う
「…あぁ 頑張れよ?」
クレターが言う
「な… 何っ?」
クレターが振り返る ウィルシュが笑んで言う
「お前じゃ あの司令官に 敵いやしねぇと思うけどな?」
クレターが一瞬呆気に取られた後 気を取り直して言う
「何を言っているっ!?さぁ 来いっ!私と共に!…いやっ この城の機械兵どもと共に 奴らをっ!」
ウィルシュが言う
「大体 お前は?この城の機械兵ども って奴を 動かせるのかよ?」
クレターが言う
「何を馬鹿なっ!?私が 命じさえすればっ!」
ウィルシュが言う
「お前はただ お前の独裁に怯える ログウェルンの人間に 命令しているだけだろ?そのお前自身は 戦えもしねぇくせに!」
クレターが言葉を飲む ウィルシュが笑んで言う
「…けど アイツは違う …だから お前じゃ 敵わないって 教えてやってるんだよ?」
クレターが沈黙した状態から 悔しがって言う
「私は司令官だっ!このログウェルンの指揮を 神から任されているっ!その私の命に従わないと言うのかっ!?ログウェルン ファーストクラスター ウィルシュっ!?」
ウィルシュがニヤリと笑む 近くで爆音が轟く クレターがハッとして振り返る

通路

爆煙が消えた場所に扉が有る ハイケルが言う
「1つでは 足りなかった様だ… ならば?」
ハイケルが手に持っている手榴弾を見て数を考える ラミリツが部屋の上部に書かれている文字を見て言う
「何て書いてあるのかは分からないけど この部屋は他の部屋の扉と違う感じで 凄く強化されてるみたいだから…」
ハイケルが複数手榴弾を手に持って ラミリツを見て言う
「…では やはり 所有分を全て …か?」
隊員Fが苦笑して言う
「少佐 それは… 止めた方が良いのでは…?」
ハイケルが隊員Fへ向いて言う
「そうなのか?しかし ハブロス司令官は 以前 私へ その様にしろと…?」
ラミリツが扉に手を当てて言う
「ハブロス司令官が?まさか?…大体 そんな事して もしこの後ろに ターゲットが居たとした… らあっ!?」
扉が開きラミリツが転び入る ART2隊員たちが慌てて言う
「「た、隊長っ!?」」
ラミリツが即座に剣を構えようとする ART2隊員たちが剣を構え ART1隊員たちが慌てて銃を構える 皆の視線の先無人の研究室の様子が見え 皆が僅かに力を抜く ハイケルが手榴弾の構えを解除すると言う
「扉の後ろにターゲットは居なかった …共に 扉には 施錠はされていなかったものと推測される」
ART隊員たちが衝撃を受ける アースの声が聞こえる
「先に確認を 行わなかったのか?」
ART隊員たちが顔を向けると ラミリツが言う
「ごめん… だって この先に居るって言うから… てっきり?」
アースが顔を向けて言う
「ターゲットは逃走した この奥に 更に 上階へ向かう通路がある様子だ」
ラミリツが気を取り直して言う
「了解っ それじゃ…?」
ハイケルが銃を装備して言う
「我々 ART1が先行する ラミリツ隊長を含むART2は 周囲警戒 及び ハブロス司令官の護衛を」
ラミリツが頷いて言う
「了解っ …ART2 周囲の警戒を強化 確認次第 攻撃を許可する!」
ART2隊員たちが言う
「「了解 隊長!」」
ハイケルが言う
「ART1 行くぞ 私に付いて来い」
ART1隊員たちが言う
「「了解!少佐ぁー!」」
ハイケルとART1隊員たちが室内へ突入する アースが歩いて続くと 途中で立ち止まり 横目に別の通路を見る ラミリツが周囲を警戒しつつアースと共に立ち止まると アースへ言う
「今までの施設の構造と この通路の見た感じからして… 上部へ向かう通路があるとしたら ART1の行く方が 合ってると思うけど?」
ART2隊員たちが追い着き ラミリツとアースを見る アースが視線を向けたまま言う
「ああ そうだな?奴の魂の光も 同じ方向へ向かっていた …この通路を一度抜けた その後に」
ラミリツがアースを見て周囲の状況を見てから 視線を戻して言う
「…そうなんだ?それじゃ…?」
アースが言う
「いや 今は良いだろう 我々も ART1を追うぞ」
ラミリツが言う
「了解 司令官!」

ログウェルン城 屋上

クレターが疲れながら走って出て来ると銃声が響き クレターの足元の床に弾丸が当たる クレターがハッとして振り返ると ハイケルが銃を向けていて言う
「フリーズ 余計な動きは行なわずに ゆっくりとこちらへ向け」
クレターが表情を悔しめてから ハイケルへ向き直る ハイケルの後ろにART1隊員たちが集結する クレターがハイケルを見て軽く笑う ハイケルが銃を持つ手を強めて言う
「この銃の銃口は お前の頭へロックオンされている 少しでも不審な動きを見せれば…」
クレターが言う
「それで 私を脅しているつもりか?愚かな兵だ 貴様の役目は何だ?貴様らの司令官は 私を殺せ と命じたのか?違うだろう?」
ハイケルが反応する クレターが言う
「私を捕らえるようにと 命じたのでは無いのか?そうと有れば 貴様はその様な脅しを用いた所で この私の動きを封じる事は出来ない」
ハイケルが呆気に取られてから言う
「…そうだな お前の言う事は正しい」
隊員Aが衝撃を受けて言う
「しょ、少佐っ!?」
隊員Bが言う
「えー?それじゃー?」
クレターが笑んで言う
「…フッ」
クレターが一歩後方へ足を向けようとする ハイケルが気付いて言う
「いや しかし それならば?」
ハイケルが銃を構え直すと クレターがハッとする ハイケルが銃を放つ クレターが驚くとクレターの頬を銃弾がかすめる クレターが驚いてそれを見る ハイケルが硝煙の上がる銃口を向けたまま言う
「殺す事は許されないが 動く事が出来ない程度の攻撃は 容認される そうとなれば 移動を制する為に 足を狙うか… 若しくは 全ての行動を制する為に 命への危険が無い範囲にて より強い苦痛を与える箇所を狙うべきか…?」
ハイケルが銃口をクレターへ向る クレターが悔しそうに歯噛みして言う
「ク…ッ」
アースの声が聞こえる
「どちらも不要だ ハイケル少佐」
ハイケルが反応すると ART1隊員たちが後ろを見てから両脇へ退き アースがやって来る ハイケルが銃を向けたまま言う
「どちらもとは?では 他に 何所を狙えと?」
アースが言う
「必要ない 銃を下せ」
ハイケルが呆気に取られてから 横目にアースへ視線を向けて言う
「しかし…っ」
ハイケルの視線の先 アースがクレターを見詰めたまま言う
「銃を下せ ハイケル少佐 命令だ」
ハイケルが一瞬間を置いた後言う
「…了解 司令官」
ハイケルが銃を下すと ラミリツが反応して身構える アースが言う
「ART総員 現状維持 待機だ」
ラミリツが一瞬驚いてアースを見る ハイケルが言う
「ART1 了解」
ラミリツが息を飲んでから言う
「…ART2 了解」
ART隊員たちが顔を向ける アースがクレターへ向かって行く クレターがART隊員たちとアースを見てから 間を置いて アースへ隠し持っていた銃を片手で向けて言う
「動くなっ!」
ART隊員たちがハッと驚く アースが一度止まると クレターの顔を見て再び歩き出す ART隊員たちと共にクレターが驚くと 慌てて言う
「う、動くなと言っておろうっ!?この武器の威力であるならば 人間の身体である 貴様を倒す事など造作も無いっ!それ以上 近付くなっ!撃つぞっ!?」
クレターが銃を向けたまま後退る アースがゆっくりと追って歩く ラミリツが言う
「ハ、ハブロス司令官っ!?」
ハイケルが手に持ったままの銃を構えようとする クレターがハイケルを見て言う
「貴様らも動くなっ!動けば 貴様らの司令官を…っ!」
ハイケルが舌打ちをする
「…チッ」
アースが言う
「私を?」
クレターがハッとしてアースへ向く アースが言う
「動くな 近付くな と 言ったな?では そちらを行なったら お前はどうすると言ったか?」
クレターが視線を強める アースが微笑して近付いて行く クレターがハッとすると クレターの足が絶壁に達する クレターが後方を確認すると 慌てて体勢を立て直し 銃をアースへ向けて言う
「ならばっ 撃つぞっ!ここで貴様も道連れにしてくれるっ!」
アースが立ち止まる クレターが銃を向けている アースがクレターへ向かって一歩進む クレターが気を引き締める ラミリツがハッとすると 銃声が響く ラミリツが思わず叫ぶ
「ハブロス司令官っ!」
ハイケルとART隊員たちが驚く クレターが驚き呆気に取られると言う
「な…っ!?」
クレターの視線の先 銃弾がアースの前の空間で止まっている アースが一度銃弾を見てからクレターを見る クレターが呆気に取られたまま言う
「貴様は…っ!」
止まっていた銃弾が地面に落ちる クレターが言う
「一体 何者なのだ…!?」
アースが言う
「私が 何者か?そちらの返答であるなら 私は最初に伝えた筈だ 私は アールスローン帝国軍レギスト特殊部隊の 司令官だ」
クレターが言う
「司令官?たかが司令官だと?そんな筈は無いっ 貴様は…っ この第5プラントへ何をしに来たっ!?」
アースが言う
「何だ?ここまで 返答を引き伸ばして来たのかと思いきや お前は私からの質問を忘れてしまっていたのか?」
クレターが言う
「何…!?」
アースが言う
「では 改めて問う クレター司令官」
クレターが反応する アースが言う
「お前が そちらの総称で呼ばれる この帝国の司令官であるのなら この土地や この世界に生きる 生命への冒涜を 最低限に置いて 人間へ対する 生命への軽視を止め 人体の脳核を用いた 機械兵士の製造を 即刻停止しろ」
クレターがアースを見る アースがクレターを見下ろして言う
「返答を要求する 出来るのか出来ないのか… お前の言葉で YESかNOでも良い 返答を言え クレター司令官!」
クレターが言葉を飲む アースが沈黙している 強い風が吹きクレターの後方にある鐘楼が音を鳴らす クレターがハッとして後ろを見てから アースを見る アースは黙って見詰めている 鐘楼がしつこく鳴り響く クレターが思わず耳を塞ぐと アースが手を差し出す クレターが一瞬驚いてから顔を上げて言う
「…それは出来ぬっ 答えはNOだっ!」
アースが表情を落として言う
「…そうか 残念だ」
アースが手を下す クレターが言う
「だがっ 貴様のアールスローン帝国へは…っ 第6プラントの人間には 手を出さぬ事は約束をするっ それで良かろうっ!?」
アースが言う
「なるほど 理解した… 私はお前の行いや その思想を受け入れる事は出来ない お前がそれを行おうとするのなら 私はどの様な手段を持ってしても止める だが お前がそちらを止めると言うのなら 私は」
アースがもう一度手を差し伸べて言う
「お前さえも守ってやれる 今 この場に置いても… そうと在れば もはやお前に残された道は無いだろう?返答を訂正しろ クレター司令官 お前がこれからも その役名の下に生き続けるのであれば」
ART隊員たちが見詰める クレターがART隊員たちとアースを見てから アースの手を見る アースが言う
「先に言って置くが」
クレターがアースを見ると アースがクレターを見詰めていて言う
「私には お前の魂の光が見えている」
クレターが呆気に取られて言う
「魂の…?」
アースが言う
「言い換えるならば お前の嘘が見えている」
クレターがハッとする アースが言う
「従って 本心にて誓え クレター司令官 そうでなければ 私はお前の手を取る事は出来ない それは 彼らも…」
アースの周囲に赤い魂の光たちが渦巻いている アースが言う
「お前が命じ その命を奪われた 多くの魂たちが 今も お前を確認している その彼らの為にも」
クレターが呆気に取られた状態から口角を上げ言う
「魂… か?…ふっ …ははははっ 面白い 魂が見える?それは 大したものだな?ならば その魂とやらは 何故 私を今まで自由にしていた?貴様の言う通り 私は 今までに 数え切れぬ人間を 機械兵の製造に用いて来たっ そして もし本当に魂や何かがあると申すのであればっ とっくの昔に 私は その魂とやらに 消滅させられていただろう!?そして それを守ろうとでも言う 貴様はっ!?」
クレターがアースの腕を掴む ART隊員たちがハッとすると クレターが言う
「さあっ!そこの兵士ども!私の前から消えろっ!さもなくば 私はここからっ!この者を道連れに 飛び降りるっ!」
クレターがアースを見る アースは沈黙している ART隊員たちが顔を見合わせ 隊員Bが言う
「ア、アイツ!飛び降りるってーっ!?どうしようっ!?アッちゃんーっ!?」
隊員Aが衝撃を受けて言う
「え!?俺ーっ!?ど、どうしようって 言われても…!?ど、どうしましょうっ!?少佐っ!?ラミリツ隊長っ!?」
ラミリツが言う
「奴には今 他に逃げ道が無い…っ あの状態じゃ 本当に やりかねないよっ!?」
ハイケルが言う
「そして 相手が誰であれ 人質を取られたとあれば 我々に出来る事は 要求に従う事…」
ハイケルがアースを見てから言う
「…だ それで良い様だ」
ラミリツが頷いて言う
「うんっ 誰であろうと 人質の救出が最優先!それなら!?」
ART隊員たちがクレターを見る クレターが言う
「何をもたもたとしている!例え銃は利かずとも この高さであれば…!」
周囲に地響きがして 何所からか爆発音が聞こえる アースが言う
「何だ?」
クレターとアースの近くで爆発が起きる アースがハッとすると クレターとアースの居る鐘楼が壊れる クレターが驚くと ART隊員たちが驚き ラミリツが叫ぶ
「ハブロス司令官っ!」
ハイケルがハッとしてラミリツの腕を掴んで言う
「間に合わない ラミリツ隊長っ!」
ラミリツが怒って叫ぶ
「離せぇええっ!」
ラミリツが拘束された腕を振り払うと走って叫ぶ
「ハブロス司令官ーっ!」

クレターが目を見開いている クレターの身体が落下して行く最中 見上げた視界に アースが何も無い空間に浮いて見える 周囲に白と黒の光の羽根が舞っている クレターが言う
「やはり 奴は…っ!」
クレターの周囲に赤い魂の光が渦巻いて暗い地の底へ落ちて行く

ラミリツが抱き締めると 一瞬遅れてラミリツの両腕に重さが掛かる ラミリツがハッとすると言う
「うあっ!?」
アースが絶壁にぶら下がっていて 後方へ向くと ラミリツがアースの胴体部分を後方から支えていて 必死に言う
「あっ… ART2…!総員ん~~っ!」
ART2隊員たちがハッとして言う
「「りょ、了解 隊長っ!」」
ART2隊員たちが慌ててラミリツの下へ駆け寄って アースの引き上げを手伝う ART1隊員たちが呆気に取られていた状態から顔を見合せて言う
「てっきり 間に合わないかと…?」 「俺も… ラミリツ隊長は 間に合わない様に見えたのに?」 「間に合ってた …のか?」
隊員Bが言う
「えー?それじゃー?」
ART1隊員たちの視線の先 ART2隊員らによってアースの身体が引き上げられる ラミリツがホッと肩の力を抜くと怒って言う
「このっ… 馬あ鹿ぁああっ!」
アースが片耳を押えて言う
「己の司令官へ対し 馬鹿と言うな ラミリツ隊長 就業中だぞ?」
ラミリツが怒りながら言う
「馬鹿だから 馬鹿って言ってるのっ!もう少しで ホントに 危なかったじゃないっ!?あんな事してっ!本当に落ちちゃったら どうするつもりだったのさっ!?魂の光は見えるけどっ 分かるけどっ その彼らは魂で 何が出来るって言うのさっ!?彼らはハブロス司令官に 何か伝える事は出来たって マシーナリーを動かせたって ハブロス司令官が 落ちちゃうのを止める事なんて そんな事出来る筈無いだろうしっ!?もし出来たとしても 僕は そんなんじゃ 安心出来ないのっ!だって それこそ もしも もしもっ ギュっ!?」
アースがラミリツを押え付けて言う
「分かった それ以上吠えるな エーメレス」
ラミリツが言う
「犬と一緒にしないで…っ」
アースが言う
「それよりも この爆発は?」
城内で爆発音が続く イヤホンにシュナイゼルの声が聞こえる
『こちらART2副隊長っ!ART総員へ緊急連絡っ!』
アースがイヤホンを押えて言う
「どうした?シュナイゼル副隊長?」
ラミリツがアースを見てからイヤホンを押える

ログウェルン城 中央ルーム

周囲が地響く中 シュナイゼルがイヤホンを押さえモニターを前に言う
「現在っ 城内の至る箇所より熱源反応値の上昇と共に爆発を認識っ!それらの規則性から 意図された連鎖的な爆破システムであると推測されます!既に爆発が起きたその場所や 他の熱源反応箇所を見る限り この爆破は恐らく…っ!」
M隊員Cが急速回避をすると 次の瞬間目前に瓦礫が落下して来る 隊員Cが衝撃を受け驚いて言う
「のおわあっ!?急に 身体が動いたと思ったらあっ!?」
M隊員Cが顔を上げると次々に瓦礫が落下して来る M隊員Cが衝撃を受けて言う
「げぇええーっ!?やべぇっ!?ここは やべぇってっ!?シュナイゼル副隊長っ!?」
M隊員Cが振り返ると Mシュナイゼルが言う
「この城の…っ!」

ログウェルン城 通路

ART隊員たちが走っている シュナイゼルの声が聞こえる
『この施設自体の 爆破システムでは無いかと思われますっ!どうか急いで戻って下さいっ 早急に 脱出しなければ 残りの爆破装置が作動したら この城は崩壊します!』
ハイケルが言う
「ART1!退避だ!全速前進っ!来た道を戻れ!」
ラミリツが言う
「ART2も同じく!周囲警戒 …なんて してる場合じゃないよっ!兎に角…っ!」
アースが走っていて ふと立ち止まり通路の先を向くと思う
(あの魂の光が…?)
アースがハッとすると アースの腕が引かれ ラミリツが腕を引いて走りながら言う
「何してるのっ!立ち止まっちゃダメっ!急いでっ!今は 何よりも この城から退避しないとっ!」
アースが腕を引かれたまま周囲を見て言う
「ああ そうだったな ART総員は全力で退避だ 周囲に構わず 自身の保身を考えろ お前たちも 私に構わず 先に向かえ」
アースが後方のART2隊員たちへ顔を向ける ART2隊員たちが反応する ラミリツが言う
「行って!ハブロス司令官は 僕が守るからっ!」
ART2隊員たちが顔を見合わせてから言う
「「了解 隊長!ハブロス司令官っ!」」
ART2隊員たちが先行する ラミリツとアースが続く

ログウェルン城 中央ルーム

瓦礫が複数降って来る M隊員Cが見上げて悲鳴を上げる
「うおわあぁあーっ キタキタァアアー!?」
M隊員Cが次々にARTマシーナリーたちを移動させながら言う
「アンタは こっち!アンタは こっちっ!アンタはーっ こっちっ!」
移動させたARTマシーナリーたちの 元居た場所に瓦礫が落下する M隊員Cが汗を拭う動作をして言う
「ふぅ~ 危なかったぁ… てぇかっ 面倒臭ぁっ!自分で避けてくれねぇかなぁあっ マジでっ!?」
M隊員Cの頭に落下した瓦礫の破片が飛んで来る M隊員Cが次々にARTマシーナリーたちを移動させる 隊員Cが涙目で片手で頭を抑えていて言う
「自分への被害もよっ!?最大限で 避けてくんねぇかなぁあっ!?いくら仲間のマシーナリーを守る為だから…っ …てっ!?」
M隊員Cが敵機械兵士を移動させる M隊員Cが言う
「それっ!?敵の機械兵士だからっ!?聞いてるっ!?俺の言葉 聞いてるっ!?ナノマシーン ラキンゼスー!?」
瓦礫破片がM隊員Cの頭部へヒットして良い音が響く M隊員Cが衝撃を受ける

ログウェルン城 通路

爆発音が次々に響いている ART1隊員にART2隊員が続き 少し離れてラミリツとアースが走る 周囲の壁や天井に亀裂が入る アースが気付くと 前を走る隊員たちと差を見てから ラミリツへ向いて言う
「お前も先に行け ラミリツ隊長!」
ラミリツが言う
「嫌だっ!」
アースが衝撃を受けると言う
「な…っ!?司令官の指示に 嫌だ と言うなっ 命令だっ 先に…!」
ラミリツが言う
「今は良いからっ!何も考えずに 走ってっ!速くっ!」
ラミリツがアースの腕を引く アースが一瞬表情を苦しめてから思う
(以前も同様に… この様にして 無理やりに走らされはしたが…)
アースが息を切らせつつ先を見ると どんどん前を走る隊員たちとの距離が開く アースが思う
(今回は長距離を走り切る事と共に スピードが要 そうとなっては… やはり 彼ら 戦闘員との差は 歴然にして …このままではっ)
アースがラミリツを見る 周囲の壁や天井の亀裂が悪化して行く アースが言う
「先に行けっ ラミリツ隊長 お前まで 間に合わなくなるぞっ」
ラミリツが言う
「それなら 尚更っ!僕は死んでも この手は離さないっ!」
アースが衝撃を受けてから言う
「死んだら離せよっ!?いやっ そうではなく…」
ラミリツが怒って言う
「良いから 走ってっ!走れないなら おぶってあげるからっ!」
アースが衝撃を受けてから言う
「そちらは遠慮して置く …お前が縮むだろう?」
ラミリツがアースへ向いて言う
「責任取ってよねっ!?」
アースが言う
「いや やはり止めて置く それより…」
激しい轟音が響く 無線にART2隊員たちの声が聞こえる
『シュナイゼル副隊長っ!』
無線にハイケルの声が聞こえる
『マスターラキンゼス隊員っ!』
隊員Cの悲鳴が聞こえる
『マジでーっ!?』
隊員Bの声が聞こえる
『サッちゃんっ!』
アースとラミリツがハッとすると アースが叫ぶ
「急ぐぞっ!」
ラミリツが言う
「了解っ!」
ラミリツとアースがそれぞれで走る

ログウェルン城 中央ルーム通路入り口

ART隊員たちが見下ろしている ラミリツとアースがやって来て ラミリツが言う
「何してるの 皆っ!?到着したのなら 早く マシーナリーへっ!?」
ハイケルが振り向いて言う
「生憎だが そのマシーナリーが…」
ラミリツが驚いて言う
「まさか さっきのっ!?」
ラミリツが下を見下ろすと 中央ルームの床が抜けていて マシーナリーや機械兵士が地下へ落下している 通路が崩壊し始める ラミリツがハッとして振り返ると アースが崩壊を振り返りつつ走って来て言う
「ART総員!飛べっ!」
ART隊員たちが衝撃を受け ラミリツが言う
「えっ!?と、飛べってっ!?けどマシーナリーがっ!床が抜けて 落下してるんだよ ハブロス司令官っ!これじゃっ!?」
ハイケルが言う
「人体では ジェットジャンプは出来ない そうとなれば 現状で飛ぶと言う事は出来…」
アースが言う
「構わん 跳べっ!ART総員!私に続けーっ!」
アースが走って来た勢いのままに手すりを飛び越え跳ぶ ART隊員たちが驚き ラミリツが慌てて手を向けて叫ぶ
「ハブロス司令官っ!」
ハイケルがハッとして後方を向くと通路が崩れて行く ハイケルが言う
「司令官へ続けー!」
ART隊員たちがハッとして後方を見ると同時にハイケルが跳ぶ 隊員Bが跳んで言う
「了解 少佐ぁーっ!」
ART隊員が通路の崩壊に思わず叫ぶ
「「了解 少佐ぁーっ!」」
ART隊員たちが皆 通路から跳ぶ 通路が塞がる ART隊員たちが落下する 皆が悲鳴を上げる中 ラミリツが言う
「わぁあああーっ!ハブロス司令官ーっ!」
アースが意を決すると地面落下数メートル手前で気合波を放つ 気合波の反動がART隊員たちを体を押し上げる ART隊員たちが驚く アースが華麗に着地する ART隊員たちが無様に落下する アースが立ち上がって言う
「作戦 成功 …だ」
瓦礫に埋まっているM隊員Cが起き上がって呆れて言う
「有り得ねぇ… 相変わらず あの人… いや あの悪魔は… …ってっ 痛ぇっ!?」
M隊員Cの頭に隊員Bが着地して言う
「あー ごめーん?サッちゃんー 大丈夫ー?」
M隊員Cが怒って言う
「人の頭に着地しないでくれるー!?」
隊員Bが言う
「えー?だってー?」
瓦礫破片が降って来る M隊員Cがハッとすると 瓦礫破片から隊員Bを守り M隊員Cが瓦礫から起き上がると言う
「…テテ って 今は それより… 早く お前も マシーナリーにっ!」
隊員BがM隊員Cに庇われていて 呆気に取られて言う
「サ… サッちゃん…っ」
アースが言う
「総員 マシーナリーへ搭乗しろ!時間が無い 急げ!」
ラミリツが言う
「了解 司令官!皆 急いで!」
ART2隊員たちが言う
「「了解!隊長!」」
ハイケルが言う
「ART1も!」
ART1隊員たちがマシーナリーへ向かいながら言う
「「了解 少佐ぁー!」」
ハイケルが頷いて言う
「良しっ」

ARTマシーナリーたちが起動する ラミリツが操縦桿を起こしながら言う
「マシーナリー起動完了 システムオールグリーン!シュナイゼルっ!周囲状況はっ!?」
サブモニターに映っているシュナイゼルが言う
『落下により 進入経路からの同退避は不可能と認識 従いまして 別ルートの探索を行なっておりますが センサーによる探索では 今の所…っ』
ラミリツが言う
「なら 直接 向かって探すしかないっ!?ハブロス司令官っ!?」
MラミリツがRDD001を見る RDD001内モニターにエラー表示がされている ラミリツの声が聞こえる
『退路の捜索を行うなら 複数班分けをして…っ 隊員たちを離れさせる事になるけど しょうがないよね!?それで 退路を見付けた班は報告を!無線は通じてるし!それで良いよね!?』
アースが周囲を見ていた状態から RDD001が体の向きを変えて言う
「退路はこちらだっ ART総員 方位 南東20度へ向かえ」
ARTマシーナリーたちが顔を向ける ラミリツが呆気に取られて言う
「え?退路が… 分かったの!?センサーに反応は無いけど!?」
アースの声が聞こえる
『この施設は 東方90度から南方100度までを水堀にて防衛を固めている しかし 城は勿論 要塞と言う物は 通常地下から地上への通路を複数設けるものだ そして この城の北西は絶壁となれば 地下の通路は 地上から確認出来るものとは 異なる位置へ配置を行なうのが常 そちらの条件を持ち 更に こちらの方向には…』
ラミリツと隊員たちが呆気に取られている アースが視線を強めて言う
「僅かではあるが…っ 生物の魂の光が見て取られている!水の中とは異なる 統一性のある動き 恐らく 我々と同じ呼吸を必要とする小動物が 城の外へ退避しているのだろう 密室から水堀を越える空間があるとなれば それは 地上への通路と推測される そうとあれば 我々は彼らへと続くっ!」
隊員たちが呆気に取られた状態からハッとして言う
「「了解!司令官!」」
ARTマシーナリーたちが滑走を開始する

ログウェルン城 地下

ARTマシーナリーたちが滑走していて Mハイケルが顔を上げ言う
「目視に置いて 現状我々の周囲に それらしき形跡は見られないが… 周囲センサーに反応は?出口と思われる情報は無いか?」
隊員Aがモニターから顔を上げて言う
「今の所 センサーに反応は無しですっ 少佐!」
Mハイケルが周囲を見てから言う
「明かりが無い事から 目視ではなく センサーによる確認の他に それを見付ける術は無いのだが…」
ART2隊員の声が聞こえる
『こちらART2 エディン隊員!確実とは言い切れませんが それらしき情報を確認しました!サーモセンサーにて 方位南東20度 前方45メートル!周囲の温度より そちらの部分のみが 温度上昇しています!』
Mハイケルが言う
「この地下空間の外部は水堀… そして その中に置いて 温度の異なる箇所があると言う事は… ART2 エディン隊員 了解だ 総員 サーモセンサーを起動!そちらへ向かうぞ!」
ART1隊員が言う
「「了解!少佐ぁー!」」
ラミリツの声が聞こえる
『方位南東20度 前方45メートル… 念の為 座標値の伝達を!』
ART2隊員が言う
『了解 隊長!詳細座標値を伝達します!』 
RDD001内 アースのイヤホンにART2隊員の声が聞こえている
『座標値は…』
アースがハッとして顔を向ける ART2マシーナリーが過ぎ去る中 RDD001が停止する 最後尾を走行していたART2マシーナリーが停止して振り返ると RDD001が他方へ走り去って行く ART2隊員が思わず言う
「あ…っ」
ART2マシーナリーがRDD001とARTマシーナリーたちを交互に見ると ART2隊員の声が聞こえる
『リヴァー隊員?どうしたっ?見失うぞ!?』
ART2隊員が言う
「あ、ああ…」
ART2隊員がRDD001を見つつ ARTマシーナリーたちを追って行く

Mハイケルが周囲を見て言う
「南東20度 伝達を受けた箇所より凡そ45メートル この辺りの筈だが… それらしき通路は?」
ART2隊員の声が聞こえる
『詳細座標はX20Y82です!その位置より 一直線に南東へ通路が在るものと…』
Mハイケルが顔を向けて言う
「X20Y82?…こちらか?いや?しかし こちらは壁に塞がれている様子だが…?」
ラミリツの声が聞こえる
『エディン隊員の言う通り そこから一直線に南東へ通じる通路があるみたい!ちょっと そこ退いてっ ハイケル少佐!』
Mハイケルが振り向くと後方へ退避する Mラミリツがプラズマセイバーを構え突き向かいながら言う
「やぁあーっ!」
Mハイケルが衝撃を受けて言う
「よせっ!ラミリツ隊長っ!?万が一 水掘りへの壁を突き破ればっ!?」
Mラミリツが壁へプラズマセイバーを突き刺すと 壁の瓦礫が破損して通路が現れる Mハイケルが呆気に取られると ラミリツが微笑して言う
「やった!僕にも見えたんだよっ ハブロス司令官っ!?彼らの魂の光が!僕に こっちだよってっ!…って?あれ?」
Mラミリツがキョロキョロして言う
「ハブロス司令官?」

ログウェルン城 地下制御室

制御システムに表示がされていて赤いランプが点滅している ウィルシュが苦笑して言う
「デカイ城だからな?ぶっ壊すにも 時間が掛かっちまう けど…」
ウィルシュが手に持っているドッグタグの束を見てから言う
「もうすぐだ… いくら強化生命プログラムがあるったって この城の重さに潰されたら 生きちゃ居られない… もうすぐ 俺も お前らの所へ…」
制御システムの赤いランプが残り2つある 最後から2番目のランプが点滅している ウィルシュが言う
「次が終われば …もう直ぐだ」
ウィルシュが目を閉じると 強い衝撃が周囲を破壊する ウィルシュが驚いて目を開くと言う
「…なっ!?何だっ!?まだ 後2つっ!?」
ウィルシュの横の壁が壊される ウィルシュが驚いて言う
「お、お前はっ!?」
RDD001が顔を上げるとアースが言う
「ほう?やはり その魂の光は お前であったか ログウェルン ファーストクラスター ウィルシュ」
ウィルシュがハッとしてから苦笑して言う
「こんな所で わざわざ そのフルネームを呼んでくれるなんてな?そのアンタは…」
アースが言う
「アース・メイヴン・ハブロスだ」
ウィルシュが呆気に取られてから苦笑して言う
「…チッ 何だよ?こっちも 呼んでやろうってしてたのに 相変わらず…」
アースが言う
「この度は 貴殿らのプラントへ お招きを頂き 感謝している」
ウィルシュが呆気に取られて言う
「あぁ?」
アースが言う
「お前が 私の情報を こちらのプラントへ持ち帰ってくれた …お陰で 我々のプラントから こちらへ至るゲートを開く事が 可能となった」
ウィルシュが呆気に取られてから口角を上げて言う
「は?何の事か分からねぇけど 最後の最後に アンタから礼を言われるって言うのも 悪かねぇかもな?」
アースが言う
「最後の最後?」
ウィルシュが制御システムを見て言う
「逃げるんだろ?早くしねぇと 間に合わなくなるぜ?もうすぐ この地下の燃料庫が爆破される そうなりゃ この城は一気にお仕舞いだ」
アースが言う
「この爆破は お前の仕業であったと言う事か?」
ウィルシュが言う
「ああ …この城は 俺ら ログウェルンの兵が守る城だった それが…」
アースが言う
「クレター司令官の指揮する 機械兵士の部隊に 敗北したのか?」
ウィルシュが言う
「違うっ!ログウェルンの兵はっ 負けはしなかったっ!けどっ アイツが…!お前らのプラントの!カイ・アーク・フォライサーがっ!」
RDD001が沈黙する ウィルシュがドッグタグの束を見せ付けて言う
「そこへ クレターの野郎が 追い討ちを掛けてっ この城を奪いやがったんだ!」
アースが言う
「そうか それで?何故 その彼らと共に この城を守っていたのであろう お前が この城を破壊する?」
ウィルシュが表情を悲しませて言う
「俺は… 居なかった この城も 仲間も… 守れなかった …だから」
ウィルシュがRDD001を見て言う
「あの野郎に好き勝手にされちまった この城と一緒に 俺も皆の所へ行くんだよ」
ウィルシュが微笑する アースが言う
「なるほど?やはり お前は… 救い様の無い 馬鹿の様だ」
ウィルシュが衝撃を受けて言う
「なぁあっ!?こ、この野郎…っ 最期ぐらいっ!?」
アースが言う
「奴の機械兵士の技術が取り込まれているのであろう この城を破壊する事は 後の世界の為には有意義と言えるかもしれない だが そちらの作戦へ お前も運命を共にする?そちらは何故だ?」
ウィルシュが言う
「だから言ってるだろっ!?俺はっ!仲間たちと一緒に戦えなかった!だから 俺は この城の破壊を手土産に 皆の所へ逝くんだよっ!?」
アースが言う
「そうか では その様なお前を お前の仲間たちが 歓迎すると思っているのか?」
ウィルシュが呆気に取られる アースが言う
「分からなければ 逆に考えろ 単純な話だ お前が先に死んだ仲間として 生き残った仲間が この城の破壊と共に その命を捨てると言う お前は それが嬉しいのか?」
ウィルシュが呆気に取られたまま言う
「そ… それは…っ」
ウィルシュが手に持っているドッグタグを意識する アースが言う
「お前はまだ生きている そうとなれば 城は失おうとも 仲間たちが守り続けた このログウェルンの地を 最後まで守るべきではないのか?」
ウィルシュが呆気に取られて言う
「ログウェルンの地を…っ?」
制御装置がブザーを鳴らす ウィルシュがハッとして顔を向けると RDD001のコックピットが開かれアースが出て来て言う
「来いっ!」
ウィルシュが顔を向けると アースが言う
「考える事ならいつでも出来る ならば今は生きろ!それだけで良い!人の身で走っては 間に合わないっ!急げ!」
ウィルシュが呆気に取られた状態から ドッグタグの束を握り締めると 顔を上げ アースの手を取る アースとウィルシュがRDD001へ乗り込み RDD001が急反転して滑走する

Mラミリツが滑走している

回想

ラミリツが微笑して言う
『やった!僕にも見えたんだよっ ハブロス司令官っ!?彼らの魂の光が!僕に こっちだよってっ!…って?あれ?ハブロス司令官?』
ラミリツがコンソールを操作しながら言う
『ハブロス司令官?聞こえる?あれ…?ハブロス司令官?何処…?』
MラミリツがARTマシーナリーたちを見て言う
『ねぇ!?誰か!?ハブロス司令官を見なかった!?ハブロス司令官っ!?』
Mラミリツが周囲を探す ART2隊員が言う
『あ、あの… 隊長 自分 先ほど… ハブロス司令官の乗られる 001マシーナリーが…』
ART2マシーナリーが言う
『我々の進行方向から 離れて向かわれるのを… 確認 しました…』
Mラミリツが衝撃を受け怒って言う
『嘘ぉっ!?何でっ!?大体 どうして その時 僕に 教えてくれなかったのさっ!?リヴァー隊員っ!!』
ART2マシーナリーが衝撃を受け慌てて言う
『も、申し訳ありません…っ』

回想終了

ラミリツがモニターを見ながら言う
「周辺モニター エコー探査は不可っ 無線も通じない… リヴァー隊員はこっちの方向へ向かったって言ってたけど それだけじゃ… こうなったら!」
Mラミリツが叫ぶ
「ハブロス司令官!ハブロス司令官ーっ!何所ーっ!?」
Mラミリツが移動する ラミリツが表情を困らせつつ言う
「本当にもうっ 手を離すと すぐ どっか行っちゃうんだからっ いつも 僕にガキだガキだって言うくせに 自分の方がよっぽど…っ」
Mラミリツが停止して叫ぶ
「ハブロス司令官!ハブロス司令官ーっ!?」
遠くで崩壊音が響く Mラミリツがハッとして振り向くと ラミリツが言う
「早く見付けないとっ 間に合わない…っ」
ラミリツがめい一杯叫ぶ
「ハブロス司令官ーっ!!」
アースの声が聞こえる
『うるさいぞ ガキッ!無線に叫ぶな』
ラミリツがハッとすると Mラミリツの振り返った先 RDD001が滑走して来る Mラミリツが言う
「ハブロス司令官っ!」
RDD001が去り際にMラミリツの腕を掴み 滑走しながら言う
「崩壊まで時間が無い …と言うのに この様な場所に 1人で居るとは 迷子にでもなったのか?ラミリツ隊長?」
Mラミリツが衝撃を受けて言う
「そっちこそっ!?僕は ハブロス司令官を 探しに来たのっ!」
RDD001が言う
「そうか では退路のナビを… お前のART2 エディン隊員が 退路の座標を確認していた そちらの伝達を行え 命令だ」
ラミリツが一瞬呆気に取られた後苦笑して言う
「もう… それじゃ それを聞いた僕が 迎えに来るって事も 作戦の内だったって事?」
アースの声が聞こえる
『そちらの可能性も考慮をしていたが 来なければ 来ないで お前たちの魂の光を探せば良いだけの事 しかし そちらはそれなりに体力を消耗する』
ラミリツが一瞬呆気に取られてから言う
「体力を…?そうだったんだ?それじゃ…」
Mラミリツが言う
「座標値はX20Y82!皆には 先に行く様に言ってあるから 僕らも急がないと!」
RDD001が言う
「良し では お前が先行を… っ!?」
MラミリツがRDD001の腕を掴み返していて言う
「先行するけど もう離さないからねっ?」
RDD001が言う
「崩壊寸前の この状況下で もはやこれ以上に 退路を離脱する理由も無いだろう?」
Mラミリツが言う
「それでも 離さない!」
ラミリツがハッとすると モニターに警告表示が複数現れる ラミリツが言う
「それに もう本当にっ 急ごうっ!ハブロス司令官っ!」
MラミリツとRDD001が加速する 城の崩壊が進む

ログウェルン城 城外

M隊員Aが振り返って言う
「こちらART1アラン隊員!通路の先は 城外へ通じていました!周囲モニターにも異常なし!退路として問題は有りません!…しかしっ」
M隊員AとM隊員Bが視線を遠くへ向ける M隊員Bが言う
「ここから見てもー お城はもう崩壊が超ー進んでてー 今に崩れ落ちそうで有りますー!少佐ぁー!だからーっ」

ログウェルン城 退路手前

Mハイケルが振り返っている M隊員Bの声が聞こえる
『早く早くーっ!少佐もーっ!?それから…』
Mハイケルが顔を向けて言う
「ART2総員 命令だ 今直ぐに お前たちは退路の先へと向かえ」
ART2マシーナリーたちが 退路を背にラミリツを待っている Mハイケルが言う
「ART2総員 気持ちは分かるが ラミリツ隊長は ハブロス司令官は勿論 お前たちの事も 守りたいと考えている」
ART2マシーナリーたちが反応する Mハイケルが言う
「更に言うなら ARTは軍隊だ そうとなれば 上官の命令は絶対 …もう一度言う ART2総員 今直ぐにお前たちは退路の先へと向かえ 上官命令だ」
ART2隊員たちがサブモニターを見る サブモニターに映るシュナイゼルが顔を上げると Mシュナイゼルが言う
「…了解です ハイケル少佐 …ART2 総員!」
ART2マシーナリーたちが顔を上げる

ログウェルン城 地下

MラミリツとRDD001が滑走していて ラミリツがモニターを見てから顔を上げて言う
「退路まで 残り4.8キロメートル!滑走速度 最高速で残り凡そ5分っ」
アースの声が聞こえる
『先ほど 爆破装置を確認した 最後の爆破である 地下に備えられた発動までは… 恐らく 残り5分も掛からない』
ラミリツが呆気に取られて言う
「そ、それじゃ…っ」
RDD001内 アースが視線を強めている ラミリツの声が聞こえる
『もっと急がないと 間に合わないって事っ!?だけど 滑走速度は これで限界だしっ!?…防衛強化分 そっちのボディは重いからっ』
アースが言う
「そうだな そうとなれば…」
ウィルシュがアースを見る ラミリツの声が聞こえる
『だからって言ってもっ 僕は この手は離さないからねっ!もう 絶対!ロックしちゃうもんね!』
アースが呆れて言う
「子供か…」
ラミリツの声が聞こえる
『うるさいのっ そっちこそっ!?』
アースが言う
「それより このままでは間に合わない ラミリツ隊長 作戦を実行するぞ」
ラミリツが疑問して言う
『作戦を…?何か方法があるの?…あっ 手を離す事以外でね?』
アースが言う
「分かっている それより時間が無い マシーナリーの加速を強化する」
ラミリツが呆気に取られて言う
「え?それは… どうやって?だって 今でも既に 最高速で…?」
アースの声が聞こえる
『ジェットエンジンを使用すれば良い』
RDD001内 ラミリツが慌てて言う
『ジェットエンジンをっ!?まさか その加速でっ!?む、無茶だよ ハブロス司令官っ!?ジェットエンジンの出力は 本当にっ!?あれは 元々 空を飛ぶくらい 強力なものなんだからっ!?』
アースが笑んで言う
「だからこそ 使うのだろう?」
ラミリツの声が聞こえる
『それはそうかもしれないけど…っ でも… 失敗するかもしれないっ そうしたら やっぱり 使わない方が良かったかもって…っ!?』
アースが言う
「失敗したら?何だと言う?失敗しようが このまま進もうが同じ事 そうと言うなら 今使わなくて どうする?」
ウィルシュが呆気に取られている Mラミリツ内 ラミリツが表情を困らせてから言う
「そ、それは… そうかもしれないけど…」
アースの声が聞こえる
『使えるものは 全て使うべきだ そして 失敗が目に見えて居ると言うのなら その失敗を越えた先に 新たな成功の可能性が現れる!ラミリツ隊長っ!』
ラミリツがハッとする アースが言う
『ジェットエンジンを起動しろ!出力最大値へセット!』
ラミリツが意を決して言う
「了解!司令官!」
MラミリツとRDD001のジェットエンジンが稼動する ラミリツが言う
「ジェットエンジン起動!出力最大値へ到達っ!」
アースが言う
「放てーっ!」
MラミリツとRDD001のジェットエンジンが点火すると MラミリツとRDD001がジェット滑走して行く 周囲の崩壊が進む

ログウェルン城 退路手前

周囲の崩壊が進む Mハイケルが言う
「そろそろ 限界か… シュナイゼル副隊長」
Mハイケルが顔を向ける Mシュナイゼルが地下空間を見詰めている Mハイケルが言う
「これ以上は待てない 我々も離脱するぞ シュナイゼル副隊長っ」
Mシュナイゼルが顔を上げると振り返って言う
「了解です 少佐っ」
Mハイケルが退路を行く Mシュナイゼルが一度振り返ってから Mハイケルに続く

3キロ手前

MラミリツとRDD001がジェット滑走している Mラミリツ内 ラミリツが自身に掛かる重力に歯を食いしばって耐えている RDD001内 アースが顔を向けるとコンソールに固定されている携帯のモニターに映っている天使のアイコンがへたれている アースが言う
「ラミリツ隊長 無事か?」
ラミリツの声が聞こえる
『なん…っ とか…っ』
アースが思う
(防衛特化のこちらとは異なり 俊敏性を高める為の軽量化の為に 防衛力を犠牲にしている420マシーナリーでは マシーナリー自体の耐久性は勿論 そちらへ搭乗する隊員への負担も異なるか…)
アースが言う
「私のマシーナリーを先行させる 多少は圧力が軽減されるだろう」
RDD001がMラミリツの前に出る

爆破システムの最後のランプが反応を示すと共に爆発する アースがハッとして振り返る

ログウェルン城 城外

ART隊員たちがハッとして皆が反応する

ログウェルン城 地下

崩壊が一気に進む アースが言う
「このままでは…っ!」
ラミリツが圧力に耐えつつ後ろを向くと Mラミリツが引き寄せられる ラミリツが驚くと RDD001が後部パネルを開くと共に Mラミリツを小脇に抱え アースが言う
「001マシーナリー 防衛シールド出力最大!共に ジェットシステム最大出力!ハデに飛ばせーっ!」
RDD001の出力が上がり急加速する ラミリツが悲鳴を上げて言う
「ま、また加速っ!?でも これなら!…あっ!」
MラミリツとRDD001の目前で退路が瓦礫に埋まる ラミリツが言う
「そ、そんな…」

ログウェルン城 城外

隊員Aが言う
「そんな…っ 退路まで!?」
皆が息を飲む 隊員Cが言う
「これじゃ もう…」
隊員Bが言う
「えー?」
隊員Nと隊員Vが泣きながら言う
「「アニキ~~っ」」
ART隊員たちが沈黙する シュナイゼルが言う
「隊長…」
皆が瓦礫に埋まった退路を見る

アースが言う
「邪魔を…」
RDD001が更に加速して言う
「するなぁああーっ!」
RDD001が突っ込み 瓦礫に埋まった退路を突破する Mラミリツ内でラミリツが言う
「もう… これ 以上… は… …」
ラミリツの目に外光と共に RDD001の背と白と黒の光の羽根が舞って見える ラミリツが失神する 

ログウェルン城 城外

ART隊員たちが神妙にしていると 瓦礫が突破され ARTマシーナリーたちが衝撃を受ける RDD001とMラミリツが到着してジェットエンジンを停止させる 隊員Cが衝撃を受けて言う
「キ、キタァー!?」
隊員Aが呆気に取られて言う
「ハ… ハブロス司令官っ!?」
隊員Nと隊員Vが喜んで叫ぶ
「「アニキィイイー!」」
ART2隊員たちがホッとすると シュナイゼルが微笑する Mハイケルが言う
「流石は 悪魔の… がぁっ!?」
瓦礫がMハイケルの上に降って来てMハイケルが潰される アースが言う
「作戦成功だ」
アースが視線を向ける ART2マシーナリーたちがMラミリツの下へ向かう


ラミリツが眠っている 

ラミリツの意識の中 アニキがギターを弾いている ラミリツがハッとして喜ぶと言う
『アニキ!?』
ラミリツが駆け寄ると アニキが一度ラミリツを見てからギターを弾き続ける ラミリツが言う
『初めて聴く曲!新曲!?また ナックキラーの新しいアルバムが出るのっ!?…って あれ?アニキ?何で…?』
ラミリツが視線を向けると アニキが弾いているギターがバンジョーだと分かる ラミリツが言う
『エレキギターじゃない… それに それは… その楽器は…』
アニキがラミリツを見て微笑してから弾き続ける ラミリツが呆気に取られていた状態からその場に座り 聞きながら言う
『やっぱ… 上手だね?それに その曲… いつもとは全然違う 静かで とっても寂しい感じ… でも とっても…』 
ラミリツがアニキを見る アニキがラミリツを見て口パクする

 ―― Permit him ――

ラミリツが疑問して言う
『…え?』

ラミリツが目を覚ますとハッとして起き上がって言う
「…っ!?ここはっ!?」
ラミリツが周囲を見ると マシーナリーのコックピット内だと分かる ラミリツが呆気に取られたまま言う
「マシーナリーのコックピット?けど…」
ラミリツが思う
(僕のマシーナリーじゃない… 他の… 僕が今までに乗った 別の型式のマシーナリーでもない …備品は 同じだけど?…って あれ?夢の中で 聞いていた筈の…?)
ラミリツが呆気に取られて言う
「曲が… 続いて…?」
ウィルシュの声が聞こえる
「…良い曲だな?」
ラミリツがハッとすると慌てて向き直って言う
「なっ!?お、お前はっ!?」
ラミリツが驚いて周囲を見て 剣を手に取ってウィルシュを見る ウィルシュが言う
「これが お前たちの国の曲なのか?俺たちの国の曲とは まったく違う… …けど 良い …そう感じる」
ラミリツが呆気に取られた状態から 言う
「…うん 僕もそう感じる 良いと思う… この曲を聴いたのは初めてだし この楽器も… 僕らの国のものとは違うけど 似たような音の出る楽器が有る だから 僕の聞き慣れた音に 近く感じるし…」
ラミリツが思う
(それに 何でだろう?ジャンルも弾いている人も違うけど 似てる感じがする… アニキと…)
ラミリツが視線を向けると 村の墓標の前でアースがバンジョーを弾いている ラミリツがアースを見てからウィルシュを見る ウィルシュがアースを見ていた状態から手に持っているドッグタグを見る ラミリツが気付いて言う
「それは?何?」
ウィルシュが一度ラミリツを見てから ドッグタグを見て言う
「認識票だ」
ラミリツが言う
「認識票?」
ウィルシュが言う
「兵士になった奴が 自分を示す為に首に掛けてる… 死んだり傷付いたりした時の為に」
ウィルシュが自分の首に掛かっているドッグタグを見せる ラミリツが気付くとドッグタグの束を見て言う
「それじゃ…っ?」
ウィルシュが言う
「これは ログウェルン城の兵士たちの物だ… 俺の仲間だった奴らの… あの城の廃棄施設内で拾った …皆 野郎のおもちゃに使われちまってた…っ 生かしてやってるって 言ってたのによっ」
ラミリツが言う
「もしかして それで?アールスローンに?」
ウィルシュが言う
「最初のは別の理由だったが 2回目の時はな… … …悪かった」
ラミリツが呆気に取られた後 苦笑して言う
「仕方無いね?そんなんじゃ 怒れないよ それに 今は…」
ラミリツがアースを見てから言う
「この曲を聴いて居たらさ?怒るなんて出来ないって…?そんな感じ?」
ラミリツがウィルシュを見て微笑する ウィルシュが苦笑して言う
「…ああ 本当に すげぇ奴だ お前たちの… 司令官はよ?」
ラミリツが言う
「もちろんだよ?だって 僕らの司令官 ハブロス司令官は 世界一の司令官だからね?」
ウィルシュが呆気に取られた後 苦笑して言う
「…かもな?」
ラミリツが微笑する ラミリツとウィルシュが顔を向ける アースが演奏を終え墓標を見ると微笑する 周囲にART1とART2の皆が居る


続く
しおりを挟む

処理中です...