上 下
52 / 55
22章

アールスローン戦記Ⅱ 世界を救う作戦会議

しおりを挟む
【 アールスローン帝国 】

帝国要塞内 マシーナリー保管所

ゲートが開かれ ARTマシーナリーたちが次々に入って来る 隊員Bが言う
「ただいまー!アールスローン!」
隊員Aが軽く笑って言う
『ははっ 確かに バイちゃんの言う通り 今回はアールスローンに ただいま だな?』
隊員Cが言う
「それこそ早く 家に ただいまを言って 風呂にでも入りて―なー?…って?」
M隊員Cが周囲を見て叫ぶ
「んじゃ こりゃぁあーっ!?」
M隊員Bが言う
「えー?」
帝国の要塞が崩壊している

コックピット内で皆が呆気に取られる ラミリツが呆気に取られていた状態から振り返って言う
「ハブロス司令官っ!」
Mラミリツが振り返った先 001マシーナリーの中 アースが携帯を操作しつつ言う
「まずはART本部へ 我々の帰還報告 及び アールスローン国内の現状確認を行う 総員 待機だ」
ラミリツが言う
「了解 司令官」
ラミリツが思う
(一体何があったんだろうっ?皆は…っ?無事なの…っ?)
ラミリツが手を握り締める ハイケルが無表情に言う
『ART1 了解』

【 国防軍レギスト駐屯地 】

屋外

ART1の隊員たちが呆気に取られていて 隊員Nが言う
「これが…?」
隊員Fが言う
「アールスローン1番の 防衛力があると言われていた あの… 国防軍レギスト駐屯地?」
隊員Vが言う
「嘘だろ…っ?」
隊員たちが見渡すと 駐屯地の建物は半壊し 建物前の土地には Mユラが乗り捨てられていて 周囲で復旧工事がされている 地面が粉砕していて 所々クレーターが出来ている 隊員たちが言葉を失っている

ミーティングルーム

ハイケルが言う
「ライビンが指揮を?」
バックスが言う
「ああ 総司令官補佐官が 自ら前線へ立ち 応援に駆け付けた ユラ・アース・メイヴン殿と 我々国防軍レギスト機動部隊を指揮し ターゲットと対戦を行った お陰で… 我々は かの天使を撃退する事に 成功した」
ハイケルが言う
「では 作戦は成功 達成ランクは?」
バックスが言う
「達成ランクは Sランクだ」
ハイケルがホッとする バックスが言う
「…だがそれは 我々 国防軍レギスト駐屯地に置かれる達成ランクであり ハイケル少佐… 君が今 所属している ARTの隊員は含まれてはいない」
ハイケルが反応して言う
「ARTの隊員は…?それは どう言う意味だ?」

【 マイルズ地区 中央病院 】

通路

病室前のベンチで マーガレットがあやされていて笑っている マリが微笑して言う
「お父さんは今 ARTの上官さんとお話し中だから マーガレットはお母さんと一緒に ここでちょっとだけ 待ってましょうね~?」
マーガレットが笑っている マリが微笑してマーガレットを抱くと 神妙な面持ちになる

病室内

アースが言う
「体調はどうだ?マスター… いや… … …ART司令塔主任?」
グレイゼスが笑んで言う
「お陰様で?ナノマシーンの除去を行ったんで 輸血も出来て 体調は好調です」
アースが言う
「そうか… それは不幸中の幸いではあったが」
アースがサイドテーブルに置かれている 見慣れたアタッシュケースを見て言う
「彼らへ 挨拶をしても?」
グレイゼスが言う
「はい もちろん ?グレイゼスも ハブロス司令官に 会いたがっていると思いますよ?」
アースが苦笑して言う
「文句の一つでも言いたいのだろう?甘んじて受け入れるとも」
グレイゼスが苦笑する アースがアタッシュケースへ向き直りケースを開ける

【 ART本部 司令塔 】

ラミリツが驚いて言う
「マスターグレイゼス中佐が 重症っ!?」
オペ子Bが困って言う
「はい… しかし えっと… その… そうと言っても… 命に別状はなく 肉体的にも精神的にも 異常は見られないと言う事なんですが…」
ラミリツが言う
「え?それって…?だって 重症だって?」
オペ子Bが言う
「重症と言うのは その… 中佐が マスターとして 居られなくなってしまったと言う事で 緊急除去を行ったんです …ナノマシーンの」
ラミリツが言う
「ナノマシーンの?…え?それって…?」
ラキンゼスが言う
「つまり アイツも 俺と同じで 今はもう マスターでは無いって事ですよ?ラミリツ隊長?」
ラミリツが言う
「マスターじゃない…っ?それじゃ マスターグレイゼス中佐は!?」
オペ子Bがラキンゼスを見る ラキンゼスがさぁ?と言う素振り オペ子Bが苦笑してラミリツを見て顔を振る ラミリツが呆気に取られる

【 マイルズ地区 中央病院 】

病室内

マリがマーガレットをあやしている ハイケルが言う
「ハブロス司令官が?」
グレイゼスが言う
「ああ 慰労と言うか わざわざ来てくれてな?グレイゼスたちにも 礼を言ってくれたみたいだ」
ハイケルが横目にアタッシュケースを見て言う
「そうか…」
グレイゼスがアタッシュケースに手を置いて言う
「お前も言うか?ハイケル?」
ハイケルが言う
「俺は ナノマシーングレイゼスに 世話になった覚えはない」
グレイゼスが一瞬呆気に取られてから苦笑して言う
「おいおい?良く言うぜ?国防軍時代に続きARTでも お前たちの作戦やその他 全ての部隊行動に 彼らは力を貸してくれていたんだぞ?ハイケル?」
ハイケルが言う
「そうか 俺は 彼らにではなく お前に助けられて来たのだと思っている 従って 礼を言うのなら  俺はお前へ言い そのお前が彼らへ言えば良い筈だ」
グレイゼスが呆気に取られてから 苦笑して言う
「俺からの礼は… もう少し 落ち着いてからしようと思ってるんだ… 彼らへの礼は多過ぎて 正直 何から言ったら良いのか 整理が出来なくてな?」
ハイケルがグレイゼスを見て言う
「早速 ナノマシーンを失っての 劣化か?そんな調子で 大丈夫なのか?戦いは これから始まるんだ お前は早急に ART司令塔へ戻らなければならない」
グレイゼスが反応してハイケルを見ると言う
「ハイケル… …そうだな?折角の入院と言う名の休暇なのに ゆっくり休んでも居られなそうだ?」
ハイケルが微笑して言う
「”当然だ”」

【 ART地下牢 】

アースが言う
「このARTの 最高の司令塔主任の力を奪われはしたが 代償として 得られたものは大きかったと見るべきか?メリ・アーク・フォライサー?」
アースの視線の先 牢の中に捕らえられているメリが顔を逸らす アースが反応する 牢が開く音がする メリが反応すると アースがメリの前に立ち手を向ける メリが恐怖に目をつぶって顔を逸らすと メリの髪をわずかに動かし アースが言う
「女性の顔に傷を負わせるとは」
メリが目を開き横目にアースを見る アースが言う
「貴女は あのウィザードらの国のアークだろう?ならば 身に負った怪我などは 魔法で治せるのではないのか?」
メリが言う
「…貴方も知っているでしょう アウターの異常魔力… ベガ様が放たれた 反転魔力の蔓延する空間で負った器の損失は ベガ様のお力でなければ 回復はされません …あのヴァンパイは別であった様ですが…」
アースが言う
「反転魔力… 我々が異常電波と呼んでいる現象の事か なるほど?…他に何を知っている?ベガの側近であったアーク」
メリが目を伏せる アースが言う
「と言った所で 答える筈も無いか」
メリが言う
「私が知っている事は1つだけです」
アースが言う
「そちらは?」
メリが言う
「間もなく この世界は 終焉を迎えます」
アースが言う
「それは 奴が… ベガが終わらせると言う事か?」
メリが言う
「ええ… ベガ様の下へ向かうのならば 貴方は助かりますよ?アース・メイヴン・ハブロス?…と言った所で 貴方の答えは…」
アースが言う
「そうか?では 向かってやろう」
メリが言う
「え…っ?」
アースが言う
「貴女も来るか?メリ・アーク・フォライサー 私と… 私のARTの仲間たちと共に?」
メリが一瞬呆気に取られた後 苦笑して目を逸らしてから言う
「…貴方が連れて行くと言うのでしたら」
アースが口角を上げる

【 ART司令塔 】

アースがやって来ると言う
「現状報告を」
オペ子たちが反応して顔を見合わせる アースがその様子にオペ子Aを見る オペ子Aがハッとして言う
「は、はいっ 現状報告 本日出隊部隊 及び 休暇部隊は予定通り ART本部 隊員は…っ」
アースが視線を向ける オペ子Aが手を握り締めて言う
「ART本部隊員は… マスターグレイゼス中佐の負傷の1件のみ… その他… 異常は… ありません…っ」
アースが言う
「マスターグレイゼス中佐には 私が直接面会を行って来た 負傷の回復状態は好調 本人の様子からしても 直ぐにでも復帰は可能だ」
オペ子Aが言う
「しかしっ 中佐はっ!」
オペ男たちが視線を逸らす ラキンゼスが苦笑して言う
「アイツは戻って来るに決まってる!この俺が その根拠だ!」
オペ男ABが顔を見合わせてから苦笑して言う
「そうだな?」 「って言っても ライム隊員みたいになってしまっても困るけど…?」
ラキンゼスが衝撃を受けて言う
「そら どう言う意味かねっ!?オペ男B君っ!?」
オペ男Bが衝撃を受けて言う
「オペ男Bって!?それ 俺かっ!?」
アースが頭を押さえて言う
「あぁ… 確かに マスターグレイゼス中佐が ライム隊員の様に 劣化をしてしまっては 我々ARTが守るべき 世界以前に このARTの存亡が…」
ラキンゼスが衝撃を受け言う
「ハブロス司令官っ!?」
オペ子たちが呆気に取られてから軽く笑う アースが苦笑して言う
「フッ… 冗談だ ライム隊員は… それなりに 今も このARTの為に 活躍をしてくれている」
ラキンゼスが呆れて言う
「それなりって…」
アースが言う
「確かに ナノマシーンを得ていた 以前の様には行かない事も有るだろう しかし 例えそうとあろうとも 彼は優秀な隊員だ この場所へ戻ってさえ来れば このART司令塔主任の その称号に違わぬ働きをしてくれる筈だ… ライム隊員とは違ってな?」
ラキンゼスが言う
「司令官っ!?」
皆が笑う アースが言う
「冗談だ 分かるだろう?」
ラキンゼスが言う
「そりゃ 分かりますけど… 勘弁してくださいよ~?」
アースが苦笑する 皆が笑っている

【 マイルズ地区 中央病院 】

グレイゼスが身体をほぐして体調を確認している マリがマーガレットを抱いていて グレイゼスを見てから言う
「グレイ君は… ARTへ戻りたいのね?それこそ 今すぐにでも?」
グレイゼスが言う
「ああ こんな時こそ 早くあの場所へ戻らないと 俺の席が 優秀な誰かさんに取られてしまうかもしれないからな?それこそ 現状のアールスローン1の誰かさんに?」
マリが言う
「グレイ君は… その場所へ戻っても もう ナノマシーングレイゼスは一緒には居ない… グレイ君も… 司令塔での指示を 間違えてしまう事も 有るかもしれない…」
グレイゼスが反応すると微笑して言う
「そうだね?今までは 俺の考えだと思っていた事も 気付かないだけで 彼らの補佐を受けていた筈だから」
マリが心配げに言う
「グレイ君は… 怖くは無いの?」
グレイゼスが言う
「怖いさ?」
マリがハッと顔を上げて言う
「それじゃ…っ !?」
マリが顔を上げた先 目の前にグレイゼスが立っていて言う
「司令塔は ハイケルや彼ら機動部隊へ指示を与える場所 彼らの命を預かっていると言っても過言じゃない …けど ナノマシーンの除去を行って それこそ すっからかんになった気分で考えてみたんだ 俺が居ない間に… 俺以外の司令塔主任の指示の下 アイツらが動くのかなって考えたら…」
マリが言う
「そうしたら?」
グレイゼスが言う
「それは 悔しいと 思った」
マリが言う
「悔しい?」
グレイゼスが言う
「うん… それこそ万が一の事態で その誰かの指示の下 彼らの力を出し切られなかったら?そう考えたら 逆に 俺なら出来る筈だって?俺は… 今も昔もハブロス司令官の様な 突拍子もない作戦を考える事は出来ないけれど ARTの彼らの力の事なら 誰よりも分かっているつもりなんだ」
グレイゼスが思う
(特に アイツの事に関しては…)
グレイゼスの脳裏にハイケルの姿が浮かぶ グレイゼスが言う
「アイツらの事を任せられるのは 今も昔も 俺自身だって そう思った …だから 戻る 俺は 必ず …あの場所へ!」
グレイゼスが意を決する マリが心配気に言う
「グレイ君…」
マーガレットが嬉しそうに笑う マリが気付きマーガレットを見て苦笑する グレイゼスが微笑する

翌日

【 ART司令塔 】

アースが言う
「各部隊 予備を含めたマシーナリーの総数報告と 技術部隊を用いて全機の状態確認を行わせろ」
オペ子Aが言う
「了解 司令官 各部隊 予備を含めたマシーナリーの総数報告と 技術部隊を用いた全機の状態確認を行なわせます」
アースが言う
「国防軍レギスト駐屯地の被害状況と そちらへ対する我々ARTへの影響を確認しろ」
オペ子Bが言う
「了解 司令官 国防軍レギスト駐屯地の被害状況と そちらへ対する我々ARTへの影響を確認します」
アースが言う
「アールスローン国 政府の現状 及び そちらへ対する 世論調査を」
オペ男Aが言う
「了解 司令官 アールスローン国 政府の現状 及び そちらへ対する 世論調査を行います」
アースが言う
「アールスローン国 国防軍の状況 及び そちらへ対する 世論調査を」
オペ男Bが言う
「了解 司令官 アールスローン国 国防軍の状況 及び そちらへ対する 世論調査を行います」
アースが言う
「ART職員 及び 隊員らの 最新状況を確認しろ」
ラキンゼスが言う
「了解 司令官っ ART職員 及び 隊員らの 最新状況を確認!ハブロス司令官の限りない指示に ヒーヒー言ってる司令塔隊員らと その司令塔の主任不在へ対する焦りを確認中!どうぞー?」
アースが言う
「そちらは この場所に置いても分かる事だ そうではなく この場所からでは分からない そちらを確認しろ ライム大尉!」
ラキンゼスが言う
「了解 司令官!」
アースが表情を険しくする 後方通路からグレイゼスの声が聞こえる
「作戦開始前とは言え 平常時でしたら そんなに厳しく指示をされなくても ここに居るアールスローン1の司令塔隊員たちは ちゃんとやってくれますよ?ハブロス司令官?」
皆が反応して表情を明るめる アースが振り返ると グレイゼスが居て苦笑して言う
「とは言いましても その司令塔主任である自分が 出隊時間に遅れまして すみません 司令官?」
アースが苦笑して言う
「良く戻って来た」
オペ子たちが顔を見合わせ微笑する アースが言う
「それで?このARTの 最高の司令塔主任 元マスターグレイゼス中佐は 今は何と?」
グレイゼスが苦笑して言う
「実はまだ 決まって居ませんでして?」
アースが呆気に取られる グレイゼスが言う
「自分の新しい名前を考えるより ここへ戻る事を優先してしまいました 司令官?」
アースが微笑して言う
「そうか 分かった ではそちらの決定がなされるまでの間は暫定として… ”ごんべぇ中佐”  で良いのか?」
グレイゼスが衝撃を受けて言う
「それは止めて下さいっ」
オペ子たちが呆気に取られてから笑う ラキンゼスが苦笑する

アースが去って行く グレイゼスが苦笑して見送ると 向き直って言う
「俺の居ない間 皆 良く 頑張ってくれた ちょっと その~… ハブロス司令官 推奨の ARTの最高の司令塔主任としては パワーダウンしてしまったと思うけど これからも どうか 宜しく頼む」
オペ子たちが微笑して言う
「もちろんです 中佐!」 「こちらこそ!」 「お帰りなさい 中佐!」
ラキンゼスが疲れを見せて言う
「ほんっとにもぉ~ 中佐が居ない間の ハブロス司令官の 横暴ぶりと言ったら~?」
皆が苦笑する グレイゼスが苦笑すると言う
「そうか 皆 大変だったな?それじゃ ここからは 気持ちを切り替えて!さっきの!ハブロス司令官の指示の程を 宜しく!」
皆が転ぶ グレイゼスが疑問して言う
「あらぁ?」
オペ子たちが苦笑して言う
「変わらない…」
ラキンゼスが慌てて言う
「それじゃ 意味が無いだろー!?」
グレイゼスが疑問して言う
「えぇっと~?」

通路

アースが携帯で通話をしつつ言う
「そちらの状況はどうだ?」
携帯からファーストの声が聞こえる
『大方 通常通りです 一部 マスターグレイゼス中佐を知る隊員らの中には 戸惑いの様子も見られるとの事ですが』
アースが言う
「本人は先ほど こちらのARTへ出隊をした 私の目から見て 状態は悪くない …いや?むしろ 現状の己のポジションである ART司令塔主任としてのプライドが強く見て取られた 彼は大丈夫だ… この情報を撒いて そちらの国防軍の者たちを 安心させてやってくれ」
ファーストの声が聞こえる
『了解 そちらは迅速に行わせます』
アースが言う
「ああ …ついでに 私からの礼も伝えて欲しい 心配を掛けたと」

【 国防軍 総司令本部 】

ファーストが呆気に取られていた状態から微笑して言う
「了解 司令官!」
受話器からアースの声が聞こえる
『フッ… では こちらからは以上だが?』
ファーストが言う
「はい では 1つお伺いしたい事が」
アースの声が聞こえる
『何だ?』
ファーストが資料を見ながら言う
「こちらの国防軍レギスト駐屯地へ残されている 兄上の… ユラ・アース・メイヴン殿が用いていた ARTの大型マシーナリーですが 返却には大型クレーンの手配を必要としますので 外注の依頼を掛けなくてはなりません 勿論相応の保証は掛けますが 国防軍でもない他の者が手を付ける事になります そちらは宜しいですか?」
アースが僅かに間を置いてから言う
『…こちらで確認をした限りではあるが ユラがお前を助けに行ったのは 彼自身の判断であったそうだ もちろん 誰の指示も仰いで居ない 勝手な判断ではあったが』
ファーストが言う
「兄上が来てくれなければ 私は 確実に助かりませんでした そして 彼女を… メリ・アーク・フォライサーを捕らえる事も 恐らく 叶わなかったでしょう」
アースが言う
『そうか 分かった では…』

【 ART 通路 】

アースが通話をしていて言う
「そちらのマシーナリーはそのままに 国防軍レギスト駐屯地へ 保管をしておいてくれ」
受話器からファーストの声が聞こえる
『え?こちらで…?国防軍で保管を?』
アースが言う
「ああ 今後 何が起きるかは 現状 把握は出来ないが ユラがお前を守ると言うのであれば そちらであって構わないだろう レギスト駐屯地ならば マシーナリーのエネルギー充填装置も在る」

【 国防軍 総司令本部 】

受話器からアースの声が聞こえる
『国防軍レムル駐屯地から技術者を派遣させ 整備保管をさせる様にしてくれ 必要とあれば調整や改良をしてくれて構わない あの機体は… 操縦者と共に 国防軍へ贈呈する』
ファーストが呆気に取られて言う
「え?それでは…っ」
部屋の扉が開き ユラが現れて言う
「ファースト!私のマシーナリーを回収しに来たのだが 駐屯地の連中が…!うん?通話中か?」
アースの声が聞こえる
『今日 この時を持って ユラ・アース・メイヴンは 国防軍総司令官補佐官の護衛官とする』
ファーストが言う
「兄上を僕の護衛に?」
ユラが反応して言う
「うん?」

【 ART 通路 】

アースが通話をしながら歩いていて言う
「正式な書類は 後ほど 秘書に送らせる そちらも 先んじて処理を行って置いてくれ …意外にも 奴の動きは速いからな?」
携帯からファーストの声が聞こえる
『了解 司令官 …その兄上でしたら 丁度 今 こちらにいらしてます』
携帯からユラの声が聞こえる
『通話の相手は ハブロス司令官か?』
アースが微笑する

【 国防軍 総司令本部 】

ファーストの持つ受話器からアースの声が聞こえる
『ユラ そこに居るな?引き続き ファーストの護衛を頼む 屋敷でも 国防軍に在ってもだ?』
ファーストがユラを見る ユラが気付き笑んで言う
「うむ?唐突に何を言われるかと思えば ファーストを守るのは 私がユラ・アース・メイヴンである以上当然の事!例え天使だろうが神が来ようとも 見事守り抜いてくれよう!」
ファーストの持つ受話器からアースの声が聞こえる
『そうか  心強いな では頼むぞ?ユラ?』

【 ART 通路 】

受話器からユラの声が聞こえる
『任せて置くが良い 司令官!』
受話器からファーストの声が聞こえる
『有難う御座います 父上 私も安心です』
アースが微笑すると言う
「ファースト 国防軍総司令官補佐官として 上手く使いこなすのだぞ?」
受話器からファーストの声が聞こえる
『はい!お任せ下さい 父上!』
受話器からユラの声が聞こえる
『うむ!元国防軍総司令官 アース・メイヴン・ハブロスの実子である ファーストならば 見事使いこなすと在ろう!…っと、何を使うのかは 私は知らぬが?』
アースが笑むと言う
「では 2人共 また今夜 夕食の席で」
アースが通話を切ると正面を向き歩いて行く

【 ART 第二訓練所 】

シュナイゼルが言う
「ART2総員 集合致しました!隊長!」
ラミリツが言う
「うん  それじゃいつも通り準備運動と柔軟を… 僕は司令塔へ行って マシーナリーを使えるのかの確認と 今後の予定を聞いて来るから」
シュナイゼルが言う
「了解  行ってらっしゃいませ  隊長」
ラミリツが言う
「そんなに掛からないと思うけど  その間の事は宜しく  シュナイゼル  皆も?」
ART2隊員らが言う
「「了解!行ってらっしゃいませ  隊長!」」
ラミリツが微笑すると頷いて言う
「うんっ」
ラミリツが訓練所を出て行く

【 ART本部 司令塔 】

グレイゼスが指示を出している
「それら世論へ対する政府各省からの反応は?政府警察は何か発表をしてるか?国防軍からは?」
オペ子Aが言う
「政府各省はほとんどが 警戒を強めていると言った趣旨の発言をしています 政府警察からはミックワイヤー長官が公式発表にて 国防軍と協力してアールスローンの防衛と安全に 全力で取り組むとの発言があります」
オペ子Bが言う
「国防軍は ヴォール・アーヴァイン・防長閣下が総司令官として 国防へ全力を向けると…」
ラミリツが呆気に取られていて言う
「あれ…?何か… いつもと違う?」
グレイゼスが言う
「それら政府国防軍の発表に対する 世論の反応は?」
オペ子Aが言う
「政府の発表に対しては 概ね好評で ミックワイヤー長官への支持率が上昇しています」
オペ子Bが言う
「国防軍の発表に対しては 幾分低迷で 特にレギスト駐屯地の惨状へ対する説明の要望が強く 詳細説明を 前総司令官を通してでも行うべきだと言う 一部メディアの発言へ便乗する動きがあります」
ラミリツが入室して来て言う
「前総司令官って…」
ラミリツがグレイゼスへ向いて言う
「アイツは何してんのさ?現国防軍総司令官 防長閣下は?」
グレイゼスがラミリツに気付くと苦笑して言う
「彼は まぁ… 元々 会見や何かと言った 公での発言は苦手そうですからね?声は大きいですけど?」
ラミリツが言う
「苦手とか何とか言ってる場合?引き受けたからには しっかりやれって言うんだよ… ハブロス司令官の国防軍が政府に世論負けするなんて事 あり得なかったのにさ?」
グレイゼスが言う
「その政府の攻長閣下としては 政府が国防軍より世論を味方にしている訳ですから ご気分が宜しいのでは?」
ラミリツが言う
「今はアールスローンの皆が一団となって戦う時でしょ?だったら 政府も国防軍も両方が支持を受けて その上でARTが活躍する …それがハブロス司令官の作戦なんじゃない?」
グレイゼスが言う
「仰る通りですかと?」
ラミリツが言う
「だったら?」
グレイゼスがコンソールを操作して言う
「はい 間もなく ネット配信となりますが ARTのライブ配信が始まります… と言っても 何処のチャンネルも取り上げるでしょうから 実質 これがARTの公式発表と言う事になります そこで 我らがARTの最高責任者 またの名を 前国防軍総司令官である アース・メイヴン・ハブロス司令官が何を言うのか…」
メインモニターに映像が映る グレイゼスが言う
「時間的にも丁度その後 国防軍の公式記者会見がありますから アーヴィン君はそれに便乗して発言をする事になるでしょう そこで 上手く傾きかけた世論を味方に付けられると良いんですが」
ラミリツが言う
「って言う事は ハブロス司令官のネット配信は やっぱ 国防軍の為にやるって事?なら事前の打ち合わせもしてあるって事だよね?」
グレイゼスが言う
「いえ?国防軍の公式記者会見は前々から予定されていましたが ARTのライブ配信はつい先ほど 急遽行うと言う事でしたから 事前の打ち合わせは… 出来たとしても 電話の一本くらいでは無いかと?」
ラミリツが言う
「そんなんで大丈夫なの?それこそARTのライブ配信を終えたハブロス司令官が そのまま国防軍の公式記者会見へでも向かった方が良いんじゃないの?」
グレイゼスが苦笑して言う
「っはは いくら世論が声を上げても 引退した前国防軍総司令官が 現総司令官健在の国防軍へ戻るなんて事はありませんよ?しかも その現総司令官は防長閣下で… あっ 配信が始まりますね?」
グレイゼスとラミリツがモニターを見る オペ子たちもモニターを見る モニターにARTの文字が現れ消えるとアースが映り アースが言う
『アールスローン国レギスト特殊部隊 総責任者兼司令官のアース・メイヴン・ハブロスです こちらの配信をご覧の皆様  日頃より 我々ARTへ ご支援ご声援を 誠にありがとうございます 本日 こちらの配信は…』

【 街頭 】

街頭モニターに人々が視線を向けている アースが言う
『現在は私が管理を行っているARTに置いてのみ 考案立案をされている作戦ですが そちらの作戦を実行するに当たり このアールスローン国 引いては 同じこの世界に住む 各国の方々へもその影響が有るものとの そちらの判断がなされた為 急遽 お伝えする旨となりました』
人々がどよめく

【 公式記者会見会場 控室 】

軍曹が衣装を着せられている状態で 部屋にあるモニターを見ていて呆気に取られる モニターの中アースが言う
『我々ARTは その結成がされる以前より 帝国との協力を持って その帝国より遥か先にまで存在する この大陸の調査を行って参りました その結果として 皆様もすでにご存じである 新たな国の発見と友好 更に…』
軍曹が視線を強める アースが言う
『帝国が脅威としていた者の 調査確認を行って参りました そして ついにここへ来て その脅威が今 このアールスローンを含む 全世界へ降り注ごうとしていると言う事実を 突き止めました』
軍曹が驚いて言う
「兄貴…?何を…っ!?」

【 政府本部 長官室 】

ミックワイヤーが焦りモニターを見詰めて居る モニターの中でアースが言う
『そちらの最も近い被害となりますのが 先日起きた 帝国 及び アールスローン国 国防軍レギスト駐屯地への襲撃です それら2つの場所は どちらも この世界の脅威とされている者から送られた襲撃者によって甚大な被害を被りました』
ミックワイヤーが視線を強める モニターの中でアースが言う
『しかし 帝国の皇帝陛下や 国防軍の隊員らの協力を得て 襲撃者たるその者を 拘束する事に成功し 更には 捕らえたその者から 情報を得るに至りました その内容と言いますのが 冒頭 私が申し上げた 今 全世界へ降り注ごうとしている脅威 即ち… この世界の粛清と言われるものです』
ミックワイヤーが驚いて受話器を取る

【 街頭 】

人々がどよめき顔を見合わせる 街頭モニターの中でアースが言う
『帝国や我々アールスローンの防衛を司る組織が 脅威としているその者には それを行う事の出来る科学力が有り 既に その準備は整っているとの事 従って 我々ARTはこの世界の窮地とも言える事態に対し アールスローン国政府、国防軍 並びに帝国やその他 今までに友好を築いて来た それら全ての力をお借りし この世界の脅威とされる その者を退治して参ります』
人々の中に居る 私服の隊員Aが呆気に取られて言う
「なぁあああっ!?」
隊員Aの隣に居る 私服の隊員Bが呆気に取られて言う
「えぇえーっ?アッちゃんーっ!?」

【 国防軍総司令本部 】

ファーストが驚き呆気に取られている 隣に居るユラが頷いて言う
「流石はハブロス司令官だ!そのハブロス司令官のARTへ任せて置けば 何も問題はあるまい!?そうであろう!?ファースト!?」
ファーストが呆気に取られつつ言う
「い、いえ…っ 今は  そちらの問題では…っ」
デスクにある電話が鳴り出す

【 公式記者会見会場 控室 】

軍曹が驚き呆気に取られている モニターの中でアースが言う
『この度は 差し迫った事態へ対し 事前の告知も無く この様な重大発表を行った事へ対し 深く謝罪いたしますと共に どうか この放送をご覧の皆様は この世界を守るため 多くの仲間たちと共に戦う 我々ARTからの吉報を信じ お待ち頂きたいと存じます』
アースが敬礼すると放送が消える モニターにキャスターが映り言う
『…っ た、ただいまの放送へ対し 我々8チャンネラーは 放送元のART 及び 政府や国防軍へ確認の連絡を致しております 詳細に関しましては 分かり次第 順次 お知らせを致します』
軍曹が言葉を失って言う
「あ… ああ…っ!?兄貴…っ!?」
キャスターが言う
『それでは お時間になりましたので ここからは… 国防軍総司令官による 公式記者会見の模様を お伝え致します 会場からの生中継です!』
軍曹が衝撃を受け叫ぶ
「なぁああーーっ!?」

【 ART本部 司令塔 】

グレイゼスが驚き呆気に取られている ラミリツが呆気に取られた状態から顔を向けて言う
「…そう なの?」
グレイゼスが顔を引きつらせて言う
「さあ…?」
ラミリツが衝撃を受けて言う
「えっ!?」
グレイゼスの前にあるコンソールの電話が鳴る グレイゼスが衝撃を受けて受話器を取るとアースの声が聞こえる
『マスターグレイゼス中佐 配信は聞いていたな?』
グレイゼスが言う
「き… 聞いていましたけど?ハブロス司令官っ?」

【 ART本部 通路 】

アースが歩きながら通話をしていて言う
「では 改めての説明は必要ないな?直ちに準備を開始しろ」
アースの手にある携帯からグレイゼスの焦った声が聞こえる
『その前にっ 根本的な説明を…っ!』
アースが通話を切ると立ち去って行く

【 ART本部 司令塔 】

グレイゼスがツーツー音のする受話器を手に顔を引きつらせる ラミリツが言う
「えっと… 取り敢えず 皆  召集… する?」
グレイゼスが頭を抱えると叫ぶ
「勝手にして下さいっ!もぉ~~!?」
ラミリツが苦笑して言う
「えぇ~?」

【 公式記者会見会場 】

軍曹の前で大量のフラッシュが炊かれている 軍曹が沈黙している
「…」
記者たちが押しかけて言う
「防長閣下っ!?先ほどのARTのライブ配信は ご覧になりましたかっ!?」
「前国防軍総司令官でもあられる 現ARTのアース・メイヴン・ハブロス司令官の配信へついて一言っ!?」
「世界の 脅威 とはっ!?国防軍はっ!?防長閣下も詳細をご存じなのでしょうかっ!?」
「世界の 粛清 とは!?アールスローンに住まう我々は!?我々にも被害があると言う事ですか!?」
「防長閣下っ!?」
「防長閣下っ!どうか お言葉をっ!」
軍曹が黙り込んだ後 意を決して叫ぶ
「我々国防軍はっ このアールスローンを守るっ その為に存在しているのである!従って 世界の脅威であろうと 粛清であろうとっ!何があろうと この地を守り抜く!その為の国防軍であるっ!」
軍曹が言い切ると共に 踵を返して立ち去る 記者たちが驚きに呆気に取られていた状態から言う
「防長閣下っ!」
「防長閣下ー!?」

【 ART本部 地下牢 】

メリが視線を落として居ると 鉄格子の開かれる音に続いて 視界の下に杖が落とされる メリがハッとして顔を上げると アースが居て言う
「私はこれから この国のアークの下へ向かうが 貴女も来るか メリ・アーク・フォライサー?同じ姓を持つと言う事は 貴女も 彼の兄弟と言う事になるのだろう?」
メリが言う
「この国のアーク… …宜しいのですか?私に会わせても?」
アースが言う
「ふん?貴女に負ける程の者であったのなら それまでの事 このプラントの神を倒す そちらの作戦には使えないと言う事だ」
メリが言う
「…本当に ベガ様へ購おうと?」
アースが言う
「このプラントを粛清しようと言うのだろう?その様な神に 購わない理由が何処にある?」
アースが牢を出て行く メリが顔を向けて言う
「まだ… 今ならっ!貴方だけであれば!ベガ様はお助け下さいますっ!アース・メイヴン・ハブロス」
アースが足を止めると顔を向けて言う
「そして 己以外の 全てが無くなった この世界に 一体何の価値があると言うのだ?」
メリが呆気に取られて言う
「そ… それは…っ」
アースが向き直って言う
「私は 今の この世界を愛しているんだ」
メリが驚いてアースを見る アースが言う
「私の愛するこの世界を …この世界に生きる命を 私は守り抜いて見せる」
アースが立ち去る メリが呆気に取られていた状態から視線を落とし 視界に入った杖を見ると 再び視線をアースへ戻す アースは歩き続けている メリが困って視線を泳がせてから 杖を取って立ち上がる

ART本部からRDD001が帝国へ向け発進して行く

【 帝国 玉座の間 】

RDD001が到着すると上体を下げコックピットを開く アースが出て来ると振り返って言う
「ご苦労 後はいつも通り 帰るまで 自由にして居ろ」
RDD001がコックピットを閉じると上体を戻しグリーンシグナルを点滅させてから去って行く アースがそれを見送り振り返ると 玉座に居るネロが目を開いて言う
「後をつけられた訳ではあるまい?」
アースが微笑して言う
「久方ぶりの再会では無いのか?ネロ・アーク・フォライサー殿 何なら 兄弟水入らず席を外してやっても良いが?」
ネロが玉座から立ち上がる アースが笑んで言う
「間違っても 貴方が消される様な事は無いのだろう?」
ネロが言う
「戯言を… 例え同じ姓を与えられようと 我と奴では そもそも蓄えられし力が異なる 高々数百年を生きただけの者が この我へ何ぞ出来得るものか?」
ネロが玉座から離れて行く アースが玉座へ座ると言う
「そうと言う割には 数百年所か たったの数十年しか生きていない… しかも 新人類の私に敗れて居た様だが?この期に及んで 今更アークの歳を聞くつもりもないが 本当に大丈夫か?我らが黒き神?」
ネロが言う
「お前は己が申す通り 持ち得る知識は数十年… 故に知らぬ事が多過ぎるのだ そのお前へ諭すのは我が役目に在らず とは申せど 我を黒き神と崇めるなれば しばらく黙って居ろ」
アースが鼻で笑うと ひじ掛けに頬杖を突いて眺める ネロが数歩行くと立ち止まって言う
「そこで何をしている?この城へ踏み入ったからには 今更 逃れるつもりもあるまい?」
ネロの視線の先 出入り口の影に居たメリが反応すると 一度視線を落としてから入室して行く

【 ART本部 司令塔 】

オペ子Aが言う
「中佐!政府長ミックワイヤー長官から お電話で…っ」
オペ子Bが言う
「中佐っ こちらも 国防軍長 防長閣下から 折り返しで良いので 至急 ご連絡を頂きたいとっ」
オペ男Aが言う
「中佐っ!国防軍 総司令官補佐官から 連絡入ってます!取れる時で良いので 繋いで欲しいとっ」
オペ男Bが言う
「中佐!ARTの外部委託 事務処理事務所から 電話回線とARTのサイトが炎上してると連絡が!」
グレイゼスが頭を抱えて叫ぶ
「ハブロス司令官は外出中で その本人以外は 何も公言出来ないと言って切ってくれーー!」
ラミリツが苦笑して言う
「えーっと… 隊員たちからの連絡で ART本部周辺の道がメディアやその他 ハブロス司令官のライブ配信を見た人たちが押し寄せて来ていて 通行出来ないらしくて… このままだと出隊出来ないって?取り敢えず… 政府警察の交通局へ連絡入れて 整備してくれって言う?」

【 帝国 玉座の間 】

アースの前に空間モニターが表示されていて そこに映っているリックが言う
『ついにヤろうってぇのか?ハブロ?』
アースが言う
「粛清の時は近いとの事だ そうとあれば 正確な日時は分からずとも これ以上 手をこまねいている暇は無いだろう?」
アースが視線を向けた先 メリが出入り口の前に現れ顔を背ける アースがネロとメリの様子を眺めながら言う
「それで 貴方方の協力を得たいのだが?」
モニターの中のリックが アースの様子に気付き言う
『あん?ハブロ てめぇ… この期に及んで 本気でンな事言ってやがんのかぁ?この俺様がぁ?このプラントを巻き込む喧嘩に参加しねぇ訳がねぇだろ?…ってぇ?ンな事より てめぇは?この俺様をよそに一体何を…?』
リックが映っているモニターがひん曲がって後方を見る リックとアースの視線の先 ネロが杖を軽く動かすと杖が光り メリの身体が引き寄せられる メリが驚いて言う
「きゃあっ!?」
メリがネロの目前で身体を反らされた状態で停止する アースが僅かに心配する リックが反応して言う
『おぉうっ!?』
メリが身動きの出来ない状態に言う
「う…うぅ…っ!?」
ネロがメリの顔を見て言う
「醜いな?アークともあろう者が その様な顔を他者へ晒し続けるとは?」
メリが視線を逸らして言う
「うぅ…っ」
アースが言う
「彼女の怪我へは 神の力が影響を与えているのだそうだ 故に アークの力では 治す事が出来ないと」
ネロが僅かにアースへ視線を向けてから言う
「神の力が?クック… 笑わせる そもそもアークとは 神の力を封じし箱 つまり アークと名付けられし 我々こそが神の力 その力 持つ者が 神の力を拭えぬとは?」
ネロがメリの顔の傷へ杖を向けるとメリの顔から傷が消える アースが呆気に取られて言う
「ほう…?」
メリが疑問する ネロが言う
「フッ… そうだな?己の顔とあっては見えぬか?」
ネロがメリへ向けていた杖を変身させる 杖が刀に替わると その研ぎ澄まされた刀身に メリの綺麗に治った顔が映る メリが驚く モニターの中リックが笑んで言う
『その程度のアークに ヴィンの野郎は殺され掛けやがったのか?ハッ!情けねぇ… 折角この俺様が認めてやったってぇのに やっぱ 知能特化のヴァンパイアは… いや?それこそ あのヴィンの野郎は 野郎の趣味で ヒーヒー言ってやがっただけかもなぁ?そぉでなけりゃぁ…』
リックがゲートから現れ メリの近くへ行くと笑んで言う
「この俺様の下僕を 喘がせてくれた礼を その体に たっぷりしてやらなけりゃ ならねぇんだよなぁ?」
リックがニヤリと笑うと牙が見える メリが気付くと表情を強めて言う
「ヴァンパイア…っ 貴方は あのヴィンと呼ばれていたヴァンパイアの 仲間ですね?」
リックが言う
「仲間じゃねぇよ?アイツは俺様の下僕だ とは言え 別の国のアークに遊ばせてやるのは癪だからな?そいつをしてくれたてめぇには 何時かどっかでそのツケを払わせてやろうと思って居たんだが… こんな良いタイミングを得られるとはツイてたぜ?」
リックがメリを見てニヤリと笑む メリが杖を構え吹雪を纏う リックがその吹雪を見て鼻で笑うと 姿を消す メリがハッとすると 一瞬の内にメリが床へ叩きつけられ悲鳴を上げる
「あうっ!?」
リックがニヤリと笑んで言う
「良いぜ?やっぱ 女は 良い声で喘がせるのが一番だぜ?」
リックがメリのローブを引きちぎる メリが驚き叫ぶ
「きゃぁあっ!?何をっ!?」
リックが言う
「言っただろ?俺様の下僕をヒーヒー言わせてくれやがったツケを 払わせてやるってな?もちろん?その支払いは てめぇのその身体でっ!!」
メリがリックに押さえ付けられたままリックを見上げる リックが笑んでいると エレキギターの音が響く リックが衝撃を受け言う
「があっ!?て、てめぇ… ハブロっ!?」
アースがエレキギターを手に言う
「ここはアールスローン… 女性を守る国の中に置いて ヴァンパイアが… 無理やり女性を襲おうとはっ!?」
アースがエレキギターをかき鳴らして言う
「どうやら一曲 聞きたいらしいなっ!?エリックアーベストっ!!」
リックが悲鳴を上げて言う
「や、止めやがれっ!!ハブローっ!!」
アースがエレキギターを弾いている リックが悲鳴を上げて のたうち回っている メリが呆気に取られて言う
「な、何が起きて…?」
メリが思う
(あの強力なヴァンパイアが… 苦しがっている?)
メリのローブに黒い光が纏わると破れていたローブが元に戻る メリがハッとして顔を上げると ネロが顔を逸らしていて言う
「近頃の女アークは 他者へ無様な負傷を見せるだけに留まらず… 己の裸体を晒す事も厭わぬらしいな?」
メリが頬を染め両手で身体を覆って言う
「そ、その様な事はありませんっ それらの事は どちらも 私の力が及ばなかった事が為に…っ」
ネロが言う
「負傷の治療は兎も角… 切れた布を直す程度の事であれば 貴様とあっても出来得る事… 先程は勿論 先日は そちらもせずに 裸体でこの要塞の外を飛び回って居た様だが?」
メリが衝撃を受け不安げに言う
「ご… ご覧になって…っ おられたのですか…っ?」
ネロが言う
「我は 今 この城に住んでいる そうとあれば… 些細な事には手を出さずとしてはいるが 外の騒ぎを監視するのは当然の事… 増してや この城へも被害を与えられたとあれば ハブロの部下が手を引けば 次は我が向かうべきと備え …見ていた」
メリが赤面を両手で覆って言う
「殺して下さいっ!」
リックが倒れる アースがエレキギターを弾き終えた姿で言う
「ふんっ …さて?皆の挨拶も済んだところで この世界の存亡を賭けた 作戦会議を始めるぞ?」
エレキギターを構えたアースの足元にリックが倒れていて ネロの足元ではメリが顔を覆ってうずくまっている


続く
しおりを挟む

処理中です...