コレクター王と白髪娘

えりー

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グレン

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グレンは珍しいものが好きだ。
自分で言うのもおかしいと思うが変わっていると思う。
自室にコレクションを持ち込むのが趣味なのだ。
マリアを見つけたのは偶然だった。
マリアは綺麗な白髪にルビーのような瞳、透けるような白い肌をしていた。
明らかに他の人間とは違う容姿をしていた。
最初は様子を窺っているだけだったが徐々に欲しくて堪らなくなってきた。
ある日、野菜を売っている彼女を拉致し、城の後宮に軟禁した。
抵抗していた彼女も母親の為ならと後宮に入ることに納得した。
彼女の母親は今、高度医療施設で治療を受けている。
わざわざ、マリアにはその事は伝えていない。
恩を着せたいわけではないからだ。
マリアを手に入れたら満たされると思っていたが手に入れても一向に心が満たされない。
何故か考えてみるとすぐに答えが出た。
グレンは”マリア”の全てが欲しいのだと。
体も心も自分に繋ぎ止めたい欲求に駆られている自分に気が付いた時、それは不可能なような気がした。
マリアは自分の事を嫌っているし、少し恐れている。
体は無理やりにでも奪ってしまえばいいが、それでは心が手に入らない。
グレンは悩んだ。
マリアは宝石やドレスを嫌っている気がした。
庶民が喜びそうなものを考えたが思いつかなかった。
側近に訊ねてみると愛玩動物などどうかという案が出た。
すぐに子犬を手配し、マリアに贈った。
公務の途中抜け出してきたのでマリアの反応を見ていない。
呼び鈴を鳴らし、マナを呼びつけた。
するとマナから喜ばしい報告を受けた。
「マリア様は大層お喜びになっていますよ」
「お名前まで付けて可愛がっておられます」
マリアを喜ばせることが出来たことがこんなに嬉しいとは思わなかった。
心にじんわりと甘い疼きが広がってくる。
毎日、マリアの父親に手紙を書いていた。
マリアの父親は彼女が後宮に入ったことを知ると怒鳴り込んできたのだ。
その怒りは全て自分に向かっていた。
衛兵たちは手出しが出来なかったので側近を連れ直接マリアの父親と面会した。
事情を話すと少し大人しくなり瞳に涙をためていた。
そして毎日マリアの様子を手紙に書いて届けると約束をした。
父親は納得せざるおえず、肩を落として帰って行った。
この事もマリアには話さなかった。
彼女の心はいつだって家族に向いている。
マリアを独占したくてやった自己満足な行動だった。
自分には家族はいない。
父王も母も幼い頃に流行り病で亡くなってしまった。
だから家族の絆というものがよくわからない。
正直マリアがあんなに家族を想える事が羨ましいと感じてしまった。
幼いながらも強い王を演じてきた。
決して他の者の傀儡にならないように。
全て自分の意思で今までやってきた。
今更、家族を恋しがるなんて滑稽な事だー・・・。
グレンはそんな自分を小さく嘲笑った。
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