花売り娘は身代わり花嫁

えりー

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お揃いの羽織の完成

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昨夜も結局ウィザードのペースに巻き込まれてしまった。
「悔しい~・・・!」
なんだかんだ言っていつも彼のペースに持って行かれてしまう。
本当に悔しくてつい口からもれてしまった。
結局昨夜もウィザードに抱かれてしまった。
本当は夜遅くまで編み物をするつもりだったのに。
それなのにウィザードに邪魔されてしまった。
夫を邪魔扱いしてはいけないが一生懸命作っている今、邪魔以外の何物でもない。
(どうして、毎晩ウィザード様は私を抱くのかしら)
いくら新婚とはいえ回数が多いような気がする。
気のせいだろうか?
悩んでみても仕方がない。
「よし!今日こそ完成させるんだ!」
そう思い編み物に励んだ。
(何とかウィザード様が帰って来るまでには完成しそう)
お揃いだと知ったらどんな顔をするだろう。
その顔が早く見たい。
きっと驚くに違いない。
おやつのスコーンを食べ終え、リーゼはまた作業を再開した。
「リーゼ様、あんまり根を詰めると・・・」
「大丈夫です!あと少しで完成なんです」
メイドはそれ以上何も言わなかったが心配されていることだけは分かった。
夜になり何とか完成させることが出来た。
ちょうどウィザードが帰ってきた。
ウィザードはまた寝室にいないリーゼを探してリーゼの自室を訪れた。
リーゼは机に突っ伏し眠っていた。
リーゼの手には今まで作っていたと思われるものが握られていた。
それをそっと彼女の手から抜き取って広げてみるとそれは羽織だった。
「お揃いの羽織・・・」
ウィザードは驚いた。
(俺とお揃いの物が欲しくて羽織を作っていたのか・・・言えば買ってやったのに)
ウィザードは起こさないようにそっとリーゼを抱き上げ、ベッドまで運んでやった。
耳元で「リーゼ」と声をかけてみたが反応はない。
「そんなに疲れるまで根をつめて作っていたのか」
半ば呆れた。
しかしリーゼにとっては手作りでお揃いの物というものは特別な物の様に感じたのだ。
もしかしてウィザードにとって迷惑になるかもしれないと思いながらも一生懸命作った。
ウィザードは昨夜喜んで受け取ってくれた。
リーゼは眠ってしまったために重要なものを見逃してしまった。
ウィザードの驚きの表情とあきれ顔だ。
「お休み、リーゼ」
そう言い額にキスをして眠らせてやった。
本当は今日も抱くつもりで帰ってきたのだがこの調子では無理だろう。
今晩は諦めてウィザードは大人しく休むことにした。
毎晩リーゼを抱く理由はただ一つ、リーゼが愛おしいからだ。
リーゼを壊してしまわないように優しく抱く。
たまに暴走してしまう事があるが・・・基本的には優しく抱いているつもりだ。
リーゼは時々拒むがその姿も愛らしく見える。
だから無理やりにでも抱く。
リーゼはそんなことには気付いていない。
ウィザードはリーゼの全てが愛おしくて仕方ない。
初めて会った時から気になっていた。
今、思うとあれが初恋だったのかもしれない。
リーゼはどうなのだろう。
リーゼには色々な理由があり、ウィザードの元へやって来た。
しかし、今は愛していると言ってくれる。
いつ、どのタイミングで自分を好きになってくれたのかウィザードには分らなかった。
鏡を見ると怖い顔の男が映っている。
この顔を恐れずに向かい合ってくれた唯一の少女。
目が覚めてから聞いてみるのもいいかもしれない。
ウィザードはそうすると仲がより深まるような気がした。
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