愛し方を知らない少年

えりー

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ルミ

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ルミは両親と兄をいきなり押し入ってきた殺し屋に殺され、一人だけ助かった。
ルミは殺し屋を憎んでいた。
しかし、自分ではどうしようもない。
復讐したくとも目が見えない。
生活を送るので精一杯だ。
ルミの本当の両親は殺されたルミュール家の人々ではない。
ルミは元々孤児院で育ち、ルミュール家にひきとられた。
ルミュール家の人々は皆親切で、ルミを哀れに思い引き取ってくれた。
そして、良い暮らしをさせてくれた。
もちろん貴族の教養、振舞い方も教え込まれた。
とても良い家族だったと思う。
だが、突然殺されてしまった。
今は、カズキに拾われ世話をしてもらっている。
衣食住を貰い彼女は恵まれていると思った。
カズキには感謝している。
あのままだったら野垂れ死にしていたかもしれない。
ただ気になるのは毎日出掛けては、血の匂いをさせて帰ってくることだ。
一体何の仕事をしているのだろうと思ったが、養ってもらっている身で軽々しく聞いてはいけない気がした。
この世の中には惨めな仕事がたくさんある。
もし惨めな仕事をしているのだったら聞かない方がいい。
ルミは口数は少ないがカズキとの生活を気に入っていた。
話かければ彼はちゃんと会話をしてくれるし、ルミに親切にしてくれている。
ルミはカズキに想いを寄せるようになり、今では家事は全て任されている。
この間は崖から落ちていて絶望的な状態から救ってくれた。
ルミはカズキの顔を見てみたいといつも思っていた。
しかし、この目では見ることは出来ない。
この目は生まれつき見えない。
せめて少しでも見ることが出来ればいいのにと思う。
ルミは彼の声が好きだった。
少し低い声で話す時は穏やかに話す。
きっと彼は優しい人間なのだと思う。
ルミは彼の事を何も知らない。
何を聞いて、何を聞いてはいけないのか、正直分からない。
だからなかなか彼の事に踏み込めなかった。
それでもやはりルミはカズキの事を好きになっていて彼の事なら何でも知りたいと思うようになっていた。
盲目の自分がそんな感情を抱いていては彼には迷惑でしかないかもしれないが、一度好きだと自覚してしまうと自分の感情を抑えることは難しくなる。
告白してもうまくいかないと思い、まだ彼には想いを伝えていない。
もし、この想いを伝えたら今の関係が壊れるかもしれない。
ルミはそれが怖かった。
追い出されはしないだろうが、気まずい関係になるのは避けたかった。
いつまで想いを伝えずにいられるかルミにも分からなかった。
今日もまだ彼は帰ってこない。
今日は怪我をしていなければいいなと思いながら彼の帰りを待った。
すると戸が開く音がした。
「カズキ、お帰りなさい」
「・・・」
カズキから返事がない。
「カズキ?」
不安になりながら戸の方へ近づいていくとカズキが言った。
「来るな」
突然の拒絶にルミは戸惑った。
「どうして?」
そう問うと彼は言った。
「今日はいつもより汚れているんだ、俺に触るとお前まで汚れる」
「そんなこと気にしないで」
そう言い手を伸ばした。
するといつもより濃い血の香りがした。
「カズキ怪我をしているの!?」
暫く沈黙が続いた後カズキが口を開いた。
「ああ、風呂に入って血を洗い流してきたいんだが」
「お風呂の用意はできてます。入ってきてください」
「悪いな」
そう言うと彼は浴室へ入って行った。
彼の仕事とは一体何なのだろう。
そう考えながら救急箱の用意をした。
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